殺せんせーの教え子たち   作:宇津木 沙坂

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 合宿編八話とか無理でしたね


森悠政と南雲雅

 作戦といっても、本当に、簡単な作戦でしかない。

 つまり。

 

『後藤は難しいこと考えず真正面から突っ込んでくれ。社は後藤に着いていく形で、でも、フォローとか考えなくて良い。二人ともやりたいようにやってくれ』

 

 作戦通り、後藤と社が突っ込んでいく。

 ある程度は離れた位置から、後藤は高く跳躍して、上からナイフを振り下ろす、けど。

 

「────うぇ、うそぉ!」

「流石に大振り過ぎですよ」

 

 手の甲で後藤のナイフを持った手首を受け流して、宙に浮いていた足を、右足で軽く蹴り上げて、後藤は空中でひっくり返って、盛大に、背中から落ちた。

 受け身はなんとか取れたようだ。

 本能的に危機感を抱いたのか、すぐさま転がってそこを離れる。

 浅野先生の踏み潰しは、寸前まで後藤の頭があった場所に突き立っていた。

 

「───シッ!」

 

 懐に飛び込みながら、社はナイフを突き出していくけど、浅野先生は簡単に受け流している。

 ダンスの動きを応用したのか、ぱっと見だとどこを狙っているのか分かりづらい動きで、だけど。

 

「悪くない動きですが、まだ正直過ぎるところがありますね。社くん。

 視線で狙いが丸分かりですよ」

「───チッ!」

「おらっ!」

 

 一旦下がった社と入れ替わるように、後藤が攻め立てていく。

 そして、二人に視線が引き付けられている間に。

 

『その間に、おれと南雲は浅野先生の死角から仕掛ける。けど───』

 

 浅野先生の背後から、南雲が突撃してから数秒待って、おれも突撃する。

 背後から襲いかかった南雲のナイフを、ノールックで簡単に躱して、三人連続の攻撃もあっさり捌き切る浅野先生。

 浅野先生のことだし、四人全員を常に警戒なんて簡単なことだろうけど、だからこそ。

 

「………なるほど、僅かにでも自身への警戒を緩めさせるための、時間差で不意打ち、ですか」

 

 ────まぁ、読まれてるよね。

 突撃して突き込んだナイフを、あっさり捌かれた。

 

 で(・)も(・)、本(・)命(・)は(・)こ(・)こ(・)か(・)ら(・)。

 

「────南雲っ!」

「オッケー!」

「っ!ほう、そう来ますか」

 

 おれたち四人は全員素人。連携なんて取れるはずないから、一対一を四回繰り返すだけで良い。

 そう、浅野先生達は考えている。

 実際、後藤と社は連係なんてしていない。ただ交互に一人づつ攻めていただけ。

 だから、浅野先生も錯覚、する、はず。多分。

 

 お(・)れ(・)と(・)南(・)雲(・)も(・)連(・)係(・)な(・)ん(・)て(・)で(・)き(・)な(・)い(・)っ(・)て(・)。

 

 でも、今おれ達は、連(・)係(・)し(・)て(・)る(・)。

 南雲がガンガン攻め立てていく裏で、おれは常に、浅野先生の背後を取って南雲の隙を埋めるように攻める。

 おれたちのどちらかが捕まりそうになったら一旦離れて、その間は、社と後藤が交互に攻撃して、また、おれと南雲で。

 

「…………なるほど。センスがあるな。森くんは」

 

 烏間惟臣は、感心していた。二人の連係を成り立たせている森の的確な状況判断はもちろんのこと、それ以上に、森の作戦に。

 

 南雲と二人で攻める時は、南雲が反撃を喰らいそうになったら攻撃して、捌く以上のことが出来ないように。

 今は、無(・)理(・)に(・)殺(・)し(・)に(・)行(・)く(・)必(・)要(・)は(・)な(・)い(・)。

 こっちは四人いるんだから。

 

「成程。四対一を利用して、浅(・)野(・)先(・)生(・)を(・)休(・)ま(・)せ(・)な(・)い(・)つ(・)も(・)り(・)か(・)」

 

 綾小路清隆は、森悠政の作戦を看破した。

 確かに、訓練もろくに受けていない彼らが出来る、最も成功率の高い作戦だ。

 

「その上で、森先輩と南雲先輩は連係している。父さんはこの二人を相手にする時は、余裕が少しづつ減っていく」

 

 浅野学秀は、その類稀なる頭脳で、現状を理解し分析する。

 後藤と社は連携も何も無いから、一人づつあしらえば良いだけだが、森と南雲はそうはいかない。常に背後を取り続ける森に警戒しつつ、南雲を捌き切らなければならない。

 当然、負担は増える。

 

「二対一だとこれは出来ないね。三対一でも無理だ。だって連係できる二人が体勢を立て直している間、一人だけで相手してたら速攻で死ぬ」

 

 赤羽業は、その観察眼と経験で理解し分析する。

 連係はまだまだ稚拙。実際今この瞬間、森が捕まりそうになって、瞬時に南雲がフォローした。

 そうして二人が一旦離れたタイミングで、後藤が仕掛ける。

 だが後藤はすぐにやられそうになって、そこで社が割って入る。

 その社がやられそうになる時には、森と南雲の体勢は整っている。

 

「浅野先生の技術は、確かに高いレベルにあるけど、どうしても年齢を重ねたことによる体力の低下は無視できない。

 だ(・)か(・)ら(・)休(・)む(・)暇(・)を(・)与(・)え(・)な(・)い(・)こ(・)と(・)で(・)隙(・)を(・)作(・)ろ(・)う(・)と(・)し(・)て(・)い(・)る(・)。

 本当に森先輩、訓練とか受けてないの?」

 

 潮田渚は驚いた。ズブの素人でしか無い森はしかし、成功率のかなり高い作戦を考えついて問題なく実行している。

 まぁ、高いといっても、一割もいかないぐらいなんだけど。

 

 一瞬だけ、浅野先生の体勢が崩れた。けど──。

 

「おらっ!」

 

 後藤は再びの大跳躍からの、今度は振り下ろしではなく突き下ろし。

 線ではなく点の攻撃だから、受け流すのは難しいだろうが。

 跳(・)躍(・)す(・)る(・)と(・)分(・)か(・)り(・)き(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)な(・)ら(・)隙(・)で(・)し(・)か(・)無(・)い(・)。

 

 一瞬隙を演出すれば、後藤はこうするだろうということを、浅野學峯は理解していた。

 

「────うぇうそぉっ!」

「君のジャンプ力は確かに強力ですが、使い所を考えましょう」

 

 頭を狙った突き下ろしを、首を傾けて躱しながら、カウンター気味に首裏に手刀を打ち込み気絶させる。

 

「────っ、がっ」

 

 そう、これで一人減った。

 

「森先輩の作戦は、四対一が大前提。一人減った今、作戦は完全に崩壊したわ。

 どうリカバリーするのかしら」

 

 堀北鈴音は、期待する。

 自身が選んだ生徒会庶務、森悠政の、次の一手に。

 

 予想通り、まぁ、最初にやられるのは後藤だろうって思ってた。

 さっきまでだったら、ここで社が割って入って、その後でおれと南雲の連係。

 でも、ここでは順番を入れ替えて、おれと南雲で攻める。

 ただし───。

 

 正面からおれは突撃して、太腿狙いで突き込んだ。

 簡単に捌かれる。予想通り。

 捕まる寸前で、足元に転がりながら飛び込んで、浅野先生の足元に落ちてた後藤のナイフも拾って、手数を増やした二刀流で、正面から。

 

 背(・)後(・)は(・)常(・)に(・)、南(・)雲(・)が(・)狙(・)っ(・)て(・)る(・)。

 

「後藤先輩がやられる前提で動いてたんだ。森先輩。そうしてフリーになったナイフを回収して、二刀流で手数を増やしつつ、自身と南雲先輩の役割を入れ替えた。

 どこまでも徹底的に、浅(・)野(・)先(・)生(・)を(・)疲(・)れ(・)さ(・)せ(・)る(・)為(・)に(・)」

 

 櫛田桔梗は、冷静に分析する。

 それまで正面から相手をしていた南雲ではなく森が、手数を増やした二刀流で。

 それまでの四対一で、多少なりともの体力は消費しているから、ここでさらに大きな変化を加えて、より疲れさせる。

 そうして、隙(・)を(・)作(・)る(・)為(・)に(・)。

 

「なるほど。即興で思い付いたにしては、実に見事な作戦ですね。森くん。花丸をあげましょう」

「じゃあ当たってくださいよっ!」

「それは出来ませんね」

 

 肩を狙って右手のナイフは躱されて、横腹を狙った左手のナイフは捌かれた。

 背後から飛び込んできた南雲をあっさり躱して、その手を捕まえようとして。

 

 こ(・)こ(・)だ(・)。 

 

「社っ!」

「ちっ、絶対勝てよな!」

 

 作戦通り、南雲を庇って、社が捕まる。

 そのまま振り回されて、片手で地面に叩きつけられた。

 

「───くそがっ」

 

 気絶する寸前、社は、南(・)雲(・)に(・)自(・)身(・)の(・)ナ(・)イ(・)フ(・)を(・)投(・)げ(・)渡(・)し(・)た(・)。

 

 おれが再び、正面から。

 

「どこかで先輩達がやられて崩壊することは、最初から分かりきっていたから。

 連係の取れる森先輩と南雲先輩だけを残して、二(・)人(・)同(・)時(・)の(・)二(・)刀(・)流(・)で(・)、さ(・)ら(・)に(・)手(・)数(・)を(・)増(・)や(・)し(・)た(・)。

 四対一での削り、そして連係に加えて、二人同時の二刀流。

 確かに、これなら」

 

 茅野カエデは、森悠政の作戦を評価する。

 削って疲れさせて終盤で手数を増やして。

 実に、見事な、暗(・)殺(・)作(・)戦(・)で(・)あ(・)る(・)と(・)。

 

 惜しむらくは。

 

「見事な作戦、見事な連係でしたが───」

 

 いつの間にか、おれは腹に重い一撃を貰っていた。

 認識するのと痛みが走るのがほぼ同時。

 この人さっきまで手抜いてたな畜生。

 

「力量差があり過ぎましたね。しかし実に素晴らしい作戦でした──」

「っ、ま、だ、終わって、ない───‼︎」

 

 正面からおれが戦ってる時点で、どこかでこうなることは分かりきってた。

 最悪抱きつくつもりだったけど、腹狙ってくれて助かった。

 こ(・)れ(・)で(・)、捕(・)ま(・)え(・)ら(・)れ(・)る(・)。

 

 痛みに堪えながらも、森悠政は、浅野學峯の右手を、全身で抱きつくように捕まえて。

 片(・)手(・)の(・)浅(・)野(・)學(・)峯(・)の(・)背(・)後(・)か(・)ら(・)、南(・)雲(・)雅(・)が(・)攻(・)撃(・)す(・)る(・)。

 

「───なるほど。ここまでの全てがブラフ。

 本命は、自(・)身(・)を(・)犠(・)牲(・)に(・)浅(・)野(・)先(・)生(・)の(・)片(・)手(・)を(・)塞(・)ぐ(・)こ(・)と(・)。

 削って疲れさせて混乱させて片手を塞いで背後から手数を増やした二刀流で。

 実に見事な作戦ね」

 

 卜部藤乃は、その全てを看破して。

 素直に、称賛した。

 

 これなら、行ける───!

 心臓を狙った左手のナイフは、手首を掴まれて止められた、けど。

 頭を狙った右手のナイフは、もう、止められない!

 

「本当に、素晴らしい作戦です。森くん。そして、南雲くん」

「………………マジっすか」

 

 頭を狙ったオレのナイフは。

 噛(・)み(・)つ(・)き(・)で(・)止(・)め(・)ら(・)れ(・)て(・)た(・)。

 握りつぶされるんじゃ無いかって錯覚するぐらいの力で、左手首を掴まれて。

 片手で放り投げられて、地面に倒れ伏した。

 

「────百点満点中、百二十点をあげましょう」

 

 とても楽しそうに。

 浅野學峯(教師)は笑った。

 

 四人全員が倒れ伏したのを確認して。

 烏間惟臣は、声を張り上げる。

 

「───このように、四十代であったとしても、一定の技術があれば、ナイフを持った素人四人を制圧することも容易い!

 射撃も確かに重要だが、ナイフ術並びに近接格闘術は身に付けておいて損はない!

 諸君らも、存分に取り組むように!」

 

 生徒達は、真面目に、組み手を始めた。

 

 烏間は、気絶した四人の生徒を、一応確認する。

 浅野學峯が、手加減を間違えることなどあり得ないだろうが。

 

「四十代呼びは酷くありません?」

「事実でしょう」

 

 以前のように、雇い主と雇われの関係ではないので。

 二人の距離感は、とても、近い。

 

「ふふふふ、制圧するつもりは無かったんですがね。

 森くん、私の想像以上の生徒です」

「これに関しては、南雲くんの能力の高さもあるでしょう。正面から戦うのが最初から森くんだったのなら、もっと早くに終わっていました」

 

 そう。正面から向かうのが、南雲雅でなければ。

 もっと早くに、制圧されていただろう。

 

「彼らを鍛え上げること、とても、楽しくなってきましたね」

 

 浅野先生は、心から。

 楽しそうに、笑っていた。

 

「あなたはやはり、骨の髄まで、教師ですね」

 

 烏間先生は、思わず、笑ってしまった。

 

 訓練を続ける生徒達から、一歩外れて。

 烏間惟臣に、ある生徒が、話しかけてきた。

 

「烏間先生。先ほど、仰ってましたよね。四人一組で、自身にナイフを当てられたのなら、後は自由だって」

「───あぁ、確かに、そう言ったが」

 

 その、女(・)子(・)生(・)徒(・)の、名は。

 

「なら、私と、緋(・)音(・)ち(・)ゃ(・)ん(・)と、須(・)知(・)さ(・)ん(・)と、それから、和(・)泉(・)さ(・)ん(・)の四対一で、お願いできますか」

 

 唐突に名を呼ばれた三人の生徒のうち。

 一人は、無意識のうちに、凄絶な笑みを溢して。

 一人は、常ならぬ少女に、訝しんで。

 一人は、心から、恐れ震えた。

 

「構わない。作戦会議の時間も取ろう」

「ありがとうございます」

 

 その少女の行動に。

 卜部藤乃は、目を細め。

 九重九十九は、首を傾げ。

 花咲ほむらは、驚愕し。

 浅野学秀は、溜息を吐き。

 坂柳有栖は、納得して。

 神室真澄は、息を呑み。

 幸村啓誠は、正気を疑い。

 長谷部波瑠加は、素直に称賛して。

 佐倉愛里は、応援した。

 

「じゃあ、作戦を伝えるね。良い?」

「良い、けど、なんで?あなた、こういうことする人じゃなくない?

 ───狐判」

 

 狐判稔は、一年生のある生徒と、本当に一瞬だけ、目を合わせて。

 それだけでその男子生徒は、全てを理解した。

 

「────浅野先生。その間、僕達と、四対一でお願いします」

「構いませんが、誰と組むのですか?」

「拓人くんと、柴田くん、神崎くんです」

 

 名を呼ばれた三人の生徒は。

 一人は、やる気を漲らせ。

 一人は、恐れながらも、奮い立たせて。

 一人は、訝しんで。

 それでも全員、参加した。

 

「ふ、ふふふふ。楽しくなりそうですね」

 

 思わず、浅野理事長は、笑ってしまった。

 

 常では考えられない、その少年の様子を見て。

 

 綾小路清隆は、目を細め。

 赤羽業は、納得して。

 堀北鈴音は、首を傾げ。

 櫛田桔梗は、戦慄し。

 奥田愛美は、素直に応援して。

 

 一之瀬帆波は、驚愕して。

 茅野カエデは、息を呑んだ。

 

「じゃあ、作戦を伝えるよ。神崎くん。柴田くん。拓人くん」

「おう!勝ちに行こうぜ渚!」

「あの人とやり合うのこえー」

「………勝てるのか。渚」

 

 潮田渚は、一瞬だけ、二年Cクラスの先輩女子に、視線を走らせて。

 真っ直ぐ、笑った。

 

「うん。勝つよ(殺すよ)」

 

 二人には、一分一秒でも、時間が必要なのだ。

 堀(・)北(・)学(・)を(・)、学(・)校(・)最(・)強(・)を(・)殺(・)す(・)為(・)に(・)。

 年明けからずっと、対策を練っているのだから。

 誰にも、秘密で。

 

 

 この学校のクラス分けには、実力以外にも、ある基準が存在している。

 ただし、坂柳理事長と殺せんせーの手によってクラス分けされた、元E組卒業生は、この基準から外れている。

 その基準とは。

 

 最も強い生徒、即ち、最も総合力の高い生徒は、Aクラスに。

 最も正しい生徒、即ち、最も社会貢献性の高い生徒は、Bクラスに。

 最も怖い生徒、即ち、最も暴力的な過去を持つ生徒は、Cクラスに。

 最もおかしい生徒、即ち、最も学校の評価基準から外れた何かを持つ生徒は、Dクラスに。

 

 だからこそ、三年生のうち。

 最も強かった堀北学は、Aクラスに。

 最も正しかった白銀園子は、Bクラスに。

 最も怖かった風間律は、Cクラスに。

 最もおかしかった金石博は、Dクラスに。

 

 それぞれ、配属された。

 

 そして、一年生のうち。

 最も強かった浅野学秀は、Aクラスに。

 最も正しかった一之瀬帆波は、Bクラスに。

 最も怖かった龍園翔は、Cクラスに。

 最もおかしかった高円寺六助は、Dクラスに。

 

 それぞれ、配属された。

 

 ならば、二年生は。

 

 最も強かった卜部藤乃は、Aクラスに。

 最も正しかった南雲雅は、Bクラスに。

 最もおかしかった花咲ほむらは、Dクラスに。

 

 そして、最も怖かった、狐判稔は、Cクラスに。

 

 それぞれ、配属された。

 

 狐判稔は、本来なら、Dクラスの生徒だった。

 高い潜在能力を有していながらも、その自己肯定感の低さに起因して、満足に能力を発揮できなかった生徒として。

 

 しかし、彼女が、小学生の頃に起こしたとある事件を理由に、最(・)も(・)怖(・)い(・)生(・)徒(・)と(・)し(・)て(・)C(・)ク(・)ラ(・)ス(・)に(・)配(・)属(・)さ(・)れ(・)た(・)。

 

 それまで、最も怖い生徒と判断されていたのは、桃井緋音だった。

 

 そして、もし、暗殺教室の卒業生達を含めて、学校の基準に従い、クラス分けがなされたのならば。

 

 最も強い生徒、綾小路清隆は、Aクラスに。

 最も正しい生徒、堀北鈴音は、Bクラスに。

 最も怖い生徒、赤羽業は、Cクラスに。

 

 最もおかしい生徒、潮田渚は、Dクラスに。

 

 それぞれ、配属されていただろう。

 

 二年生で最も怖い生徒と評価された、狐判稔と。

 一年生で最もおかしい生徒と評価された、潮田渚。

 

 この二人が、手を組んだ時。

 

 その、実力は、堀北学(学校最強)を、殺し得る。

 

「じゃあ、作戦通りに動いてね(死んでね)。和泉さん」

 

 いつも通りの声色で、いつも通りの顔で、いつも通りの狐判稔で。

 彼女は、その指示を、下した。

 

「ちょっ、ちょっと待ちなって狐判!そんな、そんなの、ダメだって!」

「烏間先生に勝つにはこれしかないよ」

「だ、だとしても、和泉にこんなのやらせるなんて………っ!わ、私がその役やるから!」

「さっき言ったでしょ?須知さんの役割は須知さんにしかこなせないんだよ?この役割をこなせるのは、和泉さんしかいないの」

「だ、だとしても………!も、桃井もなんか言ってよ!いつもだったら許せないって噛みつくところじゃないの⁉︎」

 

 そう、いつもの桃井緋音なら、そんなことは許せないと、声を上げて、止めに入るところだが。

 

 今の桃井緋音は、烏間惟臣から、一瞬たりとも目を逸らすまいと、凝視していた。

 無意識なうちに、酷く、凄絶な、笑みを溢して。

 

「────ねぇ、緋音ちゃん。

 あの人なら、手加減なんて、一切必要ないんだよ?」

「手、加減、が、いら、ない?」

「うん。緋音ちゃんがどれだけ本気でやっても、壊れることはないから」

「こ、壊れない、の…………?」

「うん。だからね。壊しに行こう(殺しに行こう)。緋音ちゃん」

「うん………。うん、うん!うん‼︎壊そう(殺そう)‼︎壊そうよ(殺そうよ)稔‼︎‼︎」

 

 今までのような、漫画のキャラクターの模倣を、完全に辞めて。

 桃井緋音は、その本性を、表した。

 

「な、何………?なん、なの………?」

 

 その本性に、須知萌香は、恐れ慄いた。

 無理もない。

 初めてそれを知った時、浅野学秀と坂柳有栖も、恐れ慄いたのだから。

 

「最終確認だよ。和泉さん(捨て駒さん)」

 

 気弱な少女であったはずの、現テーブルゲーム部部長は。

 和泉なすかに、指示を下す(死を命じる)。

 

「役割を、ちゃんとこなしてね(死にに行ってね)?」

 

 和泉なすかは、震えていた。

 それでも、これは、禊だから。

 裏切った自身が、ちゃんと赦されるための、儀式だから。

 

「う、うん、うん!うん‼︎わ、私、頑張るよ(ちゃんと死ぬよ)‼︎」

「うん。ちゃんと役割をこなせたら(死ねたら)、君を、クラスメイトとして、認めてあげる」

 

 その日、二年生は、思い知る。

 最も恐ろしい生徒は、南雲雅でも、卜部藤乃でもなく。

 狐判稔なのだということを。

 

 

「………なぁ、渚。これって、作戦なのか?」

「うん。そうだよ。これが作戦」

 

 星穹拓人は、困惑した。

 だって、こんなもの。

 と(・)て(・)も(・)で(・)は(・)な(・)い(・)が(・)、作(・)戦(・)と(・)は(・)呼(・)べ(・)な(・)い(・)だ(・)ろ(・)う(・)に(・)。

 

「ほ、本当に、俺らがやるのは、それだけでいいのか?」

「あぁ。浅野先生の強さは、よく見せつけられただろう?」

「うん。拓人くん達は、それだけでいいよ。

 ────────後は、僕がやるから(殺すから)」

 

 浅野學峯は、確かに強い。

 だがそれでも、もう、とっくのとうに肉体の全盛期は過ぎている。

 技術と肉体のバランスが、既に、少しだけ、ズレている。

 それを、確認したから。

 

 そう。現時点では恐らく、堀(・)北(・)学(・)の(・)方(・)が(・)強(・)い(・)。

 

 堀北学を殺すなら。

 浅野學峯を殺せないと話にならない。

 

「取り敢えず、一ヶ月の進捗確認だね。

 丁度いい練習問題(暗殺対象)だよ」

 

 軽くナイフを素振りして。

 潮田渚は、自然体で、身構える。

 

 暗殺教室主席。

 暗殺の天才。

 最もおかしい一年生。

 

 潮田渚は、その、実力を、発揮する。

 

「さぁ」

「さぁ」

 

 二年生で、最も怖い生徒と。

 一年生で、最もおかしい生徒は。

 

「作戦開始だよ」

「作戦開始だ」

 

 始まりを、宣言した。




 クラス分け基準の設定は独自のものです。
 でも、こういう基準ありそうだなって原作読んでて思いました。
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