大浴場。
広くて綺麗で高級そうな施設に似つかわしく、広くて綺麗で高級そうな、大浴場。
そこの露天風呂で、オレは、のんびりゆっくりしていた。
なるほど。これが極楽というやつか。
「ふぅ、ここいい湯だねぇ」
「だなぁ」
オレも渚とカルマも溶けてる。
スライム殺せんせーを思い出す溶け方だ。
それはそれとして。
「いつから渚は、狐判先輩と組んでたんだ?」
正直そこ気になる。
「あー、茅野にも話したんだけど、今年の元旦からだよ。浅野くん経由で連絡先知ったらしくて、それでね」
最初は人見知りを発揮してたからか、弱々しくて、放っておけない先輩だったんだけどなぁ。
いつの間にか、めちゃくちゃ怖い先輩になってた。
「いやー、烏間先生に勝ったのもビビったけど、あのやり方まじでビビったわ」
「あはははは。ま、まぁ、和泉先輩も納得してたし」
「納得してたとしてもクラスメイトを文字通り捨て駒として使うの怖すぎるだろ。
何よりそれをきっかけに和泉先輩をクラスにまた馴染ませるつもりなのが怖い」
「俺はそれよか桃井先輩の本性にビビった」
「あー、それは僕も知らなかった」
「オレはなんとなく察してたがな」
と、そこで浅野がやってきた。
テーブルゲーム部に入り浸っている奴だし、ちょっと詳しく聞きたいかもしれん。
「なぁ浅野。お前は狐判先輩があそこまで怖い先輩だってこと、知ってたのか?」
「まぁ、多少はな。でも、今まではそういうところ、抑えていたんだがな」
ふうん。まぁ、色々あったんだろうな。あの先輩も。
あんなに怖い先輩が、あんなにオドオドした弱々しい先輩になっていたんだ。相当な過去があったんだろう。
渚は知ってそうだが、話すような奴じゃないしな。聞かないでおくか。
「しかしまぁ、潮田は凄まじいな。まさか父さんをあそこまであっさり殺すとは」
「まぁ次からは警戒も跳ね上がってるだろうから難しいと思うけど」
しかし殺し屋は、一回殺せばそれで終わりだからな。
本当に、あの渚は凄まじかった。
「あれ、マジでどうやってんの」
「分かっててもどうしようもないものだし教えとくけど、メンタルトレースの応用だよ。
感情を制御して、殺気だけ完全に消して殺しただけ」
「普通に考えて攻撃する瞬間は殺気が出るものなんだがな」
兄弟子ですら殺気を完全に消せてはいなかった。
というかあの瞬間、兄弟子みたく、渚の全身にモヤがかかって見えた。
行き着くとこの、まだ一歩手前、なんだろうな。
「どうやって、そこまでの練度に至ったんだ?」
「そこは秘密」
畜生。訓練内容知れたら、桔梗も近いところまで行けるかも知れないのに。
「まぁ、この試験は間違いなく僕にうってつけだし。
一気に勝ちに行かせてもらうよ」
なんというか、少しだけ、意外かも知れない。
いや勿論、渚は勝ちには来てるんだが、ここまでとは。
まぁ、それだけ、あのクラスが好きなのか。
「………なんか、浴場の方、騒がしくない?」
渚もそう思うか?
なんか盛り上がってるんだよな。
「………他に客は居ないが、一応公共の施設だしな。生徒会として、注意しておくか」
「俺はパース」
「うるさいお前も来い赤羽。お前も生徒会だろうが」
「いってらっしゃーい」
渚が見送る裏で、オレたちは注意するべく、大浴場に向かった。
のんびりしながら、夜空を眺める。
みんなが怖がるのも無理はないんだけど。
でも。
「…………まぁ、怖いところもあるかもしれないけど、良い先輩だよ。あの人は」
全身の力を抜いて、肩までしっかり湯船に浸かりながら、そんなことを考える。
あの人は、優しい人でもあるから。
それが、こんなに怖がられるのが、少しだけ、悲しい。
「………はぁ、先輩は、先輩なりに、真面目にやってるだけなんだよ」
そう。それだけで───。
僕は、このとき。
とても大事なことを、忘れていたんだ。
「………お前たちは何をしているんだ………?」
浅野の困惑もよく分かる。
何故戸塚は葛城の葛城を計測している?
というかタオル外してる奴結構いるがなんだこれは。
「………頼む浅野。こいつらを止めてくれ」
「………はっ?」
「流石は葛城さんですっ‼︎暫定トップですよっ‼︎」
「くっ、まさか葛城がここまで強いとは……!」
「大砲級の戦闘力、だと………⁉︎」
「言ったろ?旦那の戦闘力はAクラス随一だって」
なんだこれ。
「はっ、何諦めてんだよおめぇら」
「龍園さんっ‼︎」
「龍園さんっ‼︎」
「はっ、なんだ龍園。今のところ暫定トップはAクラスだぞ?それともアルベルトを使うつもりか?それはレギュレーション違反って奴だ」
なんだこれ。
え、コイツらマジで何してるの?
「は、かつての俺ならんなこと気にせずにアルベルトを使っただろうが、今の俺は格が違ぇ。
────来い榎中ぁ‼︎」
「はいはい。見せてやりゃ良いんだろ」
榎中准は、
そうして、外に出たそれは。
「な、な、なん、だと……⁉︎」
「と、戸塚ぁ!け、計測しろっ‼︎」
「お、おぅ橋本っ‼︎」
榎中の足元に跪いた戸塚弥彦は、その戦闘力を計測して。
戦慄する。
「ば、馬鹿な、大砲を超えた、戦車級……⁉︎」
「何、だと………⁉︎」
「あ、ありえない、旦那が、Aクラスが、負けた……⁉︎」
絶望に打ちひしがれる橋本たちAクラス。
それをみて、Cクラスの龍園は勝ち誇っていた。
なんだこれ。
「───ふっ、中々の戦闘力のようだね。榎中ボーイ」
やめろお前は来るな絶対めんどくさいことになる。
「高円寺っ‼︎」
「良くきた高円寺っ‼︎」
「Bクラスの強さを見せてやれっ‼︎」
既にタオルを外してる寛治(ハンドガン級)、春樹(ハンドガン級)、健(アサルトライフル級)、は、高円寺の参戦を心から歓迎しているらしい。
オレとは正反対だな。
「ふっ、ビッグボーイが来たなら相手をしてあげようと思ったのだが、よもや榎中ボーイがそこまで日本人離れしているとはね。
君ならば、私の本気を出すに相応しい」
「はっ、見せてみやがれ高円寺。お前の本気ってやつをなぁ‼︎」
「お前も見せろや」
榎中は隙をついて龍園の封印を奪い取った。
顕になる龍園の龍園は、非常に強力ではあった。
なんだこれ。
「くっ、目算で大砲級か……!」
「旦那とどっちが強いんだっ⁉︎」
浅野は眉間を揉んで深い溜息を吐いてきた。
その気持ち、良く分かるぞ。
「それでは、とくと見るが良いっ!」
高円寺は自身の封印を解き放った。
顕になった高円寺の高円寺は、あまりにも、あまりにも強大だった。
「な、なん、だと………⁉︎」
「すげー、俺よりデケェやつ初めてみた」
「戸塚ぁ‼︎計測しろぉ‼︎」
龍園の指示に従って、戸塚は高円寺にひざまづき、高円寺の高円寺の戦闘力を図る。
最大火力、継戦能力、その他諸々。
まず間違いなく。
「ざ、暫定最強………っ⁉︎こ、こんなの、兵器なんてレベルじゃねぇ……‼︎
ティ、T-レックスだ‼︎」
「ふっ、お楽しみ頂けたかな?」
高円寺六助(T-レックス級)は、勝ち誇った。
Bクラス三馬鹿は大盛り上がりだ。
「うぉぉぉ‼︎高円寺すげぇ‼︎」
「やっぱり高円寺しか勝たんっ‼︎」
「皆のもの!高円寺さまにひれ伏せぇ‼︎」
『ははぁ‼︎』
馬鹿Bクラス連中は、高円寺(T-レックス級)にひざまづいていた。
馬鹿どもが。
「……………なぁ清隆、生徒会として、止めに入らなくて良いのか?」
「馬鹿馬鹿しすぎて口を出す気にもならん」
「それもそうだな」
「あっはははは。ま、まぁ、楽しそうだし、ね?」
まぁ、啓誠と平田は、こういうのに参加するやつじゃないしな。
二人が封印したままで、安堵していたんだが。
「ふっ、まだ絶望するには早いぞ、ドラゴンボーイ」
「な、なん、だと……⁉︎」
「来たまえ!幸村ボーイ!平田ボーイ!そして、綾小路‼︎」
オレたち呼ばれた?
行かなくて良いよな。
無視しようとしてたところ、文字通り大浴場中の視線が突き刺さってきた。
え、マジで参加しなきゃダメ?
「そ、そうだ‼︎Bクラスには、まだヤバいやつが三人もいるんだっ‼︎」
大興奮の寛治(ハンドガン級)。鼻血出ないように気をつけろよな。
「イケメンランキング二位にして彼女持ちっ!平田洋介っ‼︎」
「……………は、はは」
春樹(ハンドガン級)の紹介に、平田は、絶望の笑い声を溢した。
「筋肉四天王の一角にして、二股クソやろう!幸村輝彦っ‼︎」
「……………はぁ」
健(アサルトライフル級)の紹介に、啓誠は、絶望のため息を吐いた。
「そして何よりっ!学校最強が認めた純愛二股やろう‼︎」
「あの堀北を、あの櫛田を容易く打ち倒すその戦闘力は、まず間違いなくTーレックス級……!」
「イケメンランキング三位にして、学年最強の男……‼︎」
寛治(ハンドガン級)と春樹(ハンドガン級)と健(アサルトライフル級)は、大興奮で、オレの名を呼ぶ。
「「「綾小路清隆っ‼︎」」」
オレは、絶望のあまり、声すら出せなかった。
「ふっ、ダメ押しと行こうじゃないかっ‼︎」
「や、やめろ……………やめろぉ───‼︎」
龍園(大砲級)の懇願を無視して、諦めたオレたち三人は、封印を解いた。
「ひ、平田のやつ、やっぱりすげぇ……‼︎目算で戦車級………‼︎」
「イケメンはそこもイケメンなのか………⁉︎」
「……………はぁ」
平田(戦車級)は疲れていた。
「ゆ、幸村のやつ、ガリ勉だったくせに………‼︎」
「も、目算で、戦車級………⁉︎こ、これが筋肉四天王の一角……‼︎」
「……………はぁ」
啓誠(戦車級)も疲れていた。
「やっぱりヤベェぞ綾小路っ‼︎」
「あぁ‼︎二人同時に鳴かせられるだけの説得力っ‼︎」
「高円寺と同等、いやそれ以上っ‼︎」
「二人目の、T-レックス級、だと……⁉︎」
「……………はぁ」
オレ(T-レックス級)も疲れていた。
龍園(大砲級)は崩れ落ちた。
絶望のあまり、酷い顔をしている。
こんなところでそんな顔してんじゃねぇよ。
もっと相応しい場面あんだろうが。
「お、俺たちCクラスが、負けた……?」
「いいや、まだ終わってない」
「え、榎中……?」
「Come on Arbert!!」
酷く流暢な発音で、フィンガースナップと共に、榎中(戦車級)はその男を召喚した。
レギュレーション違反、山田アルベルト。
「ふっ、見せてもらおうか、ビッグボーイの力とやらをっ‼︎」
「それでは、ご開帳っ‼︎」
アルベルトのアルベルトが顔を出した。
「や、やっぱりすげぇぞアルベルト‼︎」
「目算で戦車級っ‼︎それもただの戦車じゃない、重戦車っ‼︎」
「だ、だが、清隆と高円寺には及ばねぇなぁ‼︎」
至極当然の話、戦車では、T-レックスには、勝てない。
それが、重戦車であったとしても。
「────ふっ、これは、切り札は切り札でも、本命じゃない‼︎」
榎中准(戦車級)は、見栄を切りながら、その男を読んだ。
「我らがCクラスの悪魔の力、とくとご覧あれ‼︎
おいでませ、赤羽業ぁ‼︎」
「はっ、やっと俺の出番?」
なんでお前はノリノリなんだよバカルマめ。
カルマは堂々と、封印を解いた。
「な、な、な、な、なん、だと………⁉︎」
「あ、ありえねぇ……‼︎高円寺と清隆より、上……⁉︎」
「あ、あんなもの、この世に存在する筈がねぇ………‼︎あ、悪魔だ‼︎悪魔級だ‼︎」
赤羽業(悪魔級)は、龍園(大砲級)に手を差し伸べた。
※T-レックス以上は基本的に同等です。
「勝負は、まだこっからだろ?」
「───っ、あぁ、そうだな‼︎」
なんで少年漫画みたいな展開してんだよ意味分かんねえ。
もっと相応しい場面あんだろうが。
カルマ(悪魔級)、龍園(大砲級)、榎中(戦車級)、アルベルト(重戦車級)。
※T-レックス以上は基本的に同等です。
そしてそれ以外にも、石崎(大砲級)、小宮(アサルトライフル級)などの、中々の戦闘力を誇る生徒たち。
なんだこれ。
「───くっ」
「質で上回る赤羽と、質と数を十分以上に兼ね備えたCクラス………‼︎
強いっ………‼︎」
寛治(ハンドガン級)と、春樹(ハンドガン級)は、恐れ慄いている。
「お、俺たちは、Aクラス、なのに……‼︎」
「諦めるなっ‼︎橋本っ‼︎」
「あ、浅野……⁉︎」
どうした急に。
のぼせたか?
「光は常に、お前たちのそばに居るっ。
最後の最後まで、諦めるな‼︎」
そして浅野は、封印を解いた。
「ディィアっ‼︎」
その、戦闘力は。
「な、なんだ、アレは………⁉︎」
「T-レックスも、悪魔も超えた存在………宇宙の神秘すら、感じさせる………」
「これ、が、ウルトラマン級………⁉︎」
※T-レックス以上は基本的に同等です。
円谷に謝れ。本当に謝れ。
浅野(ウルトラマン級)と、葛城(大砲級)と、鬼頭(大砲級)、橋本(アサルトライフル級)などが並び立つ。
※T-レックス以上は基本的に同等です。
やはり強いな。一年Aクラス。
何が強いんだ⁇⁇
「くそっ、俺たちは、蚊帳の外だってのか……⁉︎」
「これに関しては蚊帳の外でも良いと思うがな」
星穹拓人(大砲級)は、とても悔しそうに、項垂れていた。
神崎の言うことはよく分かる。
オレも蚊帳の外でいたかった。
「───いいや、ここから、勝つよ」
のぼせたんだな渚。
そうなんだよな渚。
そうであってくれ渚。
「はっ、お前みたいな一番可愛い男子圧倒的一位に選ばれるようなやつの戦闘力なんてたかがしれてんだろ」
「そうだぜ潮田。ここから先は、最低ハンドガン級の戦いだ。
鉛筆級は、お呼びじゃねぇ‼︎」
石崎(大砲級)と、戸塚(ハンドガン級)は、渚の参戦を拒むが。
修学旅行で見たことあるが、渚は、その、ヤバいぞ?
「まぁまぁ。一回見てから判断してよ。───ね?」
渚は、封印を、解いた。
そして、それが、顔を出す。
「ば、かな……⁉︎」
戸塚(ハンドガン級)は、絶望した。
「な、んだアレは……⁉︎」
石崎(大砲級)は、恐れ慄いた。
「やっっっば。可愛い顔してえげつなさすぎる……。面白」
榎中(戦車級)は、思わず笑ってしまい。
「Oh………Amazing………」
アルベルト(重戦車級)は、感嘆して。
「ふ、ふふふふふふふははははははっ‼︎流石だね、潮田‼︎」
高円寺(T-レックス級)は、賞賛し。
「───は、いつかの言葉を撤回するよ。渚。それを取るなんて、勿体無い」
カルマ(悪魔級)は、その強さを改めて認め。
※T-レックス以上は基本的に同等です。
「ふ、相手にとって不足はないぜっ‼︎」
浅野(ウルトラマン級)は、闘志を燃やして。
※T-レックス以上は基本的に同等です。
「さぁ、勝負といこう」
渚(死神級)は、笑っていた。
※T-レックス以上は基本的に同等です。
オレは、頼むから全員足を滑らせてひっくり返ってくれないかな、と思っていたのだが。
乱入者が、現れた。
「おいおい一年坊主ども、なぁに先輩ほったらかしで面白そうなことしてんだよ」
そうして、扉を勢いよく開いたのは。
「オレらも混ぜろよ」
南雲雅筆頭の、二年生男子だった。
頼むから帰ってくれ。本当に。
男子更衣室の傍のベンチで。
一人の少女が、待っていることに。
誰も、気付いていなかった。
渚は絶対デカい。