殺せんせーの教え子たち   作:宇津木 沙坂

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 八話で終わりのつもりだったのに………。


夕食の時間 一時間目

 夕食はバイキング形式。

 好きな料理を好きにとって食べてくれ、という形なのだが、実は席にはある決まりがある。

 一テーブル八人席なのだが、全て別々のクラスの生徒でなければならない。

 席替えは自由でこそあるが、それでも、同じクラスの生徒と卓を囲むことは許されないというもの。

 今回の試験では、他クラス、他学年の生徒とも必ず協力関係を結ばなければならないので、こういう決まりがある。

 提案したのは一之瀬と茅野と榎中に須知先輩。

 あいつら誰とでも仲良くできるからってこんなに残酷な提案してきやがった。

 採用した鈴音も鈴音だ。元コミュ障の癖に。

 冬休み中に手を組んでいつもの四人(オレ、渚、浅野、カルマ)で一年生は埋めようと思っていたのだが、バレて鈴音と桔梗に叱られた。

 ギリギリまで抵抗していたのだが、ご褒美でやられた。その、色々と凄かった(アイドルコスでご奉仕)が、それはそれとして契約書まで書かせてくるの酷すぎる。

 契約書のせいで生徒会の先輩方を誘えない。ちくしょう。森先輩がいてくれたら本当に楽だったのに。

 何より、同室が高円寺だったのが終わってる。

 今日はアイツが引っ付いて揶揄い倒してきたせいで、同室の他のクラスの奴らと、まともに話せなかった。

 

 なので、オレは一から、席とメンバーを決めなければならない。

 

 まぁ、一人は、もう決めているのだが。

 

 料理を取っている最中のその人に話しかける。

 

「すいません。桃井パイセン」

「む?なんじゃ綾小路か。どうかしたのか?」

「はい。夕食、一緒に食べませんか」

「別に構わんぞ。しかし、妾も一人。あと六人集めなければな」

 

 それは意外だ。パイセンなら、大人気だと思っていたのだが。

 

「まぁ、あんなところを見せて仕舞えばのう。クラスメイトならいざ知らず、それ以外とは少し距離ができてしまったのじゃ。

 これはこれで楽なのじゃが」

「そうですか。じゃあ、他の人も探しますか」

「うむ。そうするとしよう」

 

 しかし困った。桃井パイセン人気を利用して、簡単に人を集めるつもりだったのだが。

 大体の席は埋まっているし、空いてる席には同じクラスのやつがいる。

 と、そこで、既に二人だけで席に着いている先輩に気付いた。

 いや、だが、しかし、あの二人は少し。

 

「む、あそこ二人じゃな。二年AクラスにBクラスか。

 綾小路、あそこに混ざろうと思うのじゃが、どう思う?」

「…………良いんじゃ、ないでしょうか」

 

 ちくしょう。オレのコミュ力だと断れない………!

 桃井パイセンについていって、その席に向かう。

 

「ご一緒しても構わんか?鬼(・)龍(・)院(・)、星(・)穹(・)恒(・)。綾小路も一緒じゃが」

「俺は構わない。だが、何故わざわざフルネーム呼びなんだ?」

「星穹は他にもおるし、下の名前で呼び合えるほど、仲良くはないじゃろう?

 後輩なら、先輩をつけるだけで良いのじゃが」

「そういう理由なら恒でいい。

 名前で呼ばれたところで、俺はあまり気にしない。

 桃井が気にするなら、フルネーム呼びでも構わないが」

「ふむ。なら恒と呼ばせてもらおう。妾も名前呼びでも構わんぞ?名字で呼びたいなら話は別じゃが」

「………そうだな。そちらがそれでもいいなら、緋音と呼ばせてもらおう。

 綾小路も、好きに呼んでくれて構わない。恒でも星穹でも、呼びたいように呼ぶと良い」

「本当ですか?じゃあ、恒先輩で」

 

 まじで良い人。本当にいい人。

 イケメン過ぎるからちょっと気後れしてたけど、気遣いも出来る凄い良い人。好き。

 

「おいおい。私は許可を出していないぞ?」

「はぁ、組むときに約束しただろう。基本的に誰も拒まないと」

「基本的に、だろう?私にとっての基本に、この二人が当てはまっているかどうか」

「この二人がダメなら俺もダメだろう。生憎俺は、この二人よりも、俺が優れているとは思えない」

「………ふむ。まぁ、それもそうか。同席することを許す。席につけ」

「かたじけない」

「は、はぁ」

 

 やっぱこの先輩は強烈だ。

 卜部先輩からまぁまぁ雑に扱われるのもわかるというか、多分オレの高円寺への扱いに近いんだろうな。

 女版高円寺、とでもいうべき人だろう。

 

「うぅ〜む。別にペナルティとかは無いが、このままだとこれ以外の生徒がこの席に来ない可能性もあるのう。

 面子が中々に強烈過ぎじゃ」

 

 それはそう。

 二年生トップクラスの自由人に、学校トップの身体能力に、学年一のイケメンに、現生徒会副会長で学年最強。

 ここを選べる一年生、いるのか?

 

「あ、美紀ちゃん!あそことかいいんじゃない?恒もいるし安心安全だよっ‼︎」

「えっちょ、三七さん待って」

「おーい恒!この子この席でもいい⁇」

「……………俺は構わないが、その子が困っているだろう?」

 

 星穹三七に連れられた山村美紀は、あまりにも強力な面子に、目を回していた。

 山村の性格上、ここはキツいんじゃないか?

 いや、詳しくは知らないんだが。

 

「いやー、でも、恒が居るなら安心だし‼︎桃井先輩も良い人だし‼︎副会長もいるし大丈夫でしょ‼︎」

「あ、あれを見て尚平然と良い人と呼べるのか……。中々の強者じゃな。恒の妹は」

「あ、勘違いしないでよね桃井先輩!

 施設に入ったのはあたしが一番最初なんだから!年下だけどあたしがお姉ちゃんなんだからっ‼︎

 何だったら恒は末っ子なんだからっ‼︎」

「たった三ヶ月の差だろうに」

 

 凄いな星穹は。

 ここまでグイグイ行けるやつ、初めて見た。

 

「まぁそういうことで、よろしくねー‼︎」

「おい待て。私は許可していないぞ」

「あー、そっか。お願いします鬼龍院先輩っこの子をこの席に着かせてください!」

 

 素直に頭を下げて頼み込むが、鬼龍院先輩は嫌そうな顔をしていた。

 

「自分の意思も持たず、誰かに手助けしてもらうだけの生徒と卓を囲むなど、私は認められないな」

「どひゃー、鬼龍院先輩厳し〜。

 ここダメそうだね。別のとこ探そっか」

 

 至極あっさりと、星穹は踵を返そうとして。

 しかし、山村は、動こうとしなかった。

 

「…………美紀ちゃん?」

「お、お、お願いします、鬼龍院先輩……!

 その、ご一緒させて、ください………!」

 

 山村は、頭を下げて頼んだ。

 

「いやいや。この人と一緒に食べると美味しく食べられないって。他の卓探すの手伝うからさ」

「で、でも、さっき、三七さん、私の為に、頭まで下げてくれたから……!

 と、友達が、そこまで、してくれたのに、に、逃げたく、ない、です……!」

「気、気にしなくて良いのに……」

 

 それはそれとしてサラッと中々に失礼なこと言ったな星穹。

 鬼龍院先輩青筋立ててるぞ。

 恒先輩天を仰いで目元を覆ってる。

 

「ま、まぁ、良いだろう。

 せ、席に着くことを許す。山村美紀」

「は、はいっ!」

「うーん、ま、美紀ちゃんがそれで良いなら。

 恒っ!美紀ちゃんのことよろしくねっ」

 

 嵐のように、星穹は去っていって。

 ものの数秒で、同じ部屋の桔梗と茅野の席についた。あ、狐判先輩、最初はあの席なのか。

 あいつ、ヤバいな。

 

「はぁ。三七が迷惑をかけた。改めて、俺は星穹恒。何かあったら言ってくれ。可能な限り手を貸そう」

「桃井緋音じゃ」

「………………鬼龍院楓花だ」

「えっと、まぁ、流れというやつか。綾小路清隆だ」

「や、山村美紀、です。

 そ、その、三七さんは、いつも、沢山助けてくれるので」

 

 あの感じだと割と引っ張り回されてそうだけどな。

 

「………そうか。その、たまにすごく失礼なことを言うと思うが、悪意はないんだ。許してやってほしい」

「は、はい。その、慣れました、ので」

「………おい星穹。後であいつと話をさせろ。気に入った」

「………一応、俺も同席するが、それでも良いなら」

「構わん。この私にあそこまで失礼なことを言えるとは。フッ、面白い女だ」

「現実で、『ふっ、おもしれー女』が聞けるとは思わなかったのう。それだけでこの席を選んだ甲斐があると言うものじゃ」

「ですね。鬼龍院先輩が男だったら凄い面白いことになってましたよ」

「フラグが立ったのう。少女漫画の一ページ目に相応しいイベントじゃ」

「そのうち山村と鬼龍院先輩を取り合うことになるかもしれませんね」

「少女漫画の定番じゃな。それよりも綾小路。そなた中々に分(・)か(・)る(・)クチじゃな?」

「えぇ。家庭の事情で外に出られたの中二の三学期からなので。

 一通りのサブカルには、この二年で触れてきました」

 

 最近お気に入りの漫画は『ヒロアカ』だな。

 一番好きなのは荼毘。

 

「────ほう。家庭の事情、か」

「────あまり触れてやるな。鬼龍院」

 

 …………あー、この人たちも、これだけで色々察しちゃう人種なのね。

 ま、まぁ、何も言ってないのに、なんか全部察してきそうな卜部先輩ほどおかしくは無かった、な。うん。

 

「おや、ちょうど良いところに。ご一緒してもよろしいですか。綾小路くん」

「椎名か。オレは構わないぞ」

 

 卜部先輩と同じくらいおかしかったやつが来たな。

 何でカルマと奥田がE組だって分かったのか、ずっと不思議。

 山村と恒先輩と桃井パイセンなら大丈夫だろうが、鬼龍院先輩はどうだろう。

 

「───ほう。君が、椎名ひよりか」

「あら、鬼龍院先輩は、私のことをご存知だったのですね」

「まぁな。大会で『シンデレラ』をやっていたのもそうだが、卜部のやつが、君を手放しで褒めていたからな。

 『凄まじい推理力の後輩』、だと」

「それはそれは。お褒めに預かり恐悦至極です」

「席に着くと良い。色々と、聞かせてもらおうか」

「では遠慮なく。椎名ひよりです」

 

 自己紹介を返したのは、恒先輩からだった。

 

「星穹恒だ。よろしく頼む」

「桃井緋音じゃ」

「や、山村美紀、です」

「────改めて、鬼龍院楓花だ」

「綾小路清隆だ」

「…………綾小路くんは要らないのでは?」

「…………そういう流れかと」

 

 と、そこに、一人の男子生徒が声を掛けてきた。

 

「─────失礼します。同席してもよろしいでしょうか、鬼龍院先輩」

 

 神崎隆二。実質的な、Dクラスのナンバーツー。

 ─────初手で鬼龍院先輩から許可を貰うのか。なるほど、渚が認める観察眼だ。

 

「─────ほう。よく分かったな。こ(・)の(・)席(・)の(・)実(・)質(・)的(・)な(・)リ(・)ー(・)ダ(・)ー(・)が(・)、私(・)で(・)あ(・)る(・)と(・)い(・)う(・)こ(・)と(・)に(・)」

「まぁ、あなたが上座に座っていますし」

「それだけか?」

「……………綾小路は、積極的に動いてはいますが、一、二年生の交友関係はクラス内と生徒会、坂柳と神室、それからうちのクラスの渚と、そこにいる椎名くらい。

 つまり、こういう場では、消極的に動くだろうと思っていました。

 ─────一番この席のリーダーに相応しいだろう綾小路が、リーダーではないのなら。

 次にリーダーに相応しいあなたが、リーダーであると判断しました」

 

 ……………おいおい。思いっきり喧嘩売ってるじゃないか。

 

「─────ほう。力の差を知らない愚か者かと思っていたが、違うな。

 貴様のその目、見覚えがある。

 自(・)身(・)の(・)弱(・)さ(・)を(・)理(・)解(・)す(・)る(・)が(・)故(・)に(・)、自(・)身(・)に(・)出(・)来(・)る(・)こ(・)と(・)を(・)や(・)ろ(・)う(・)と(・)す(・)る(・)男(・)の(・)目(・)だ(・)。

 ─────なるほど。貴様の目的は、綾小路と卓を囲むこと、か」

「……………そう、なのか?」

「あぁ。俺は、今よりも強くなりたい。いや、ならなければならない。

 だからこそ綾小路。学年で一番強いお前に少しでも近付き、少しでも会話して、少しでも何かを得たい」

 

 ………………なるほど。

 ──────クラスのため、か。

 

「あなたと綾小路を相手に、隠し事が出来るほど、俺は優れているとは思っていません。

 なので、正直に行きました。あなたたちは、こちらの方が好みでしょう?」

「くっくくくくく。実に良い。気に入った。卓を囲むことを許す」

「感謝します。改めまして、神崎隆二です」

 

 一番最初に返すのは、恒先輩。

 ここも、いつも通りだ。

 

「星穹恒だ。よろしく頼む」

「桃井緋音じゃ」

「鬼龍院楓花」

「や、山村美紀です」

「椎名ひよりです」

「綾小路清隆だ」

「………………綾小路と椎名は要らなくないか?」

「流れだな」

「流れです」

 

 まぁ神崎は普通にオレたちのことも知ってるだろうがな。

 

「────探したぜ。綾小路」

 

 ────なるほど。

 あなたと卓を囲めるのは、オレとしても、願ってもないことですね。

 南(・)雲(・)先(・)輩(・)。

 

「オレも、同席して良いな」

「……………ふん。構わん」

「……………久しいな。雅」

「おう。と言っても、大浴場で話したろ」

「……………それもそうだな。嫌すぎて記憶から消していた」

「あー分かります。久しぶりの会話がアレって、かなり嫌ですよね」

「俺も同意見だ。あれは可及的速やかに記憶から消去したい」

「分かるか。綾小路。神崎」

「はい」

「よく分かります」

 

 最強決定戦でオレたちは一応会ってはいるが。

 オレも恒先輩も神崎もそれは無かったことにしていた。

 気分的には初対面ということで。

 

「おいおい。文字通り裸の付き合いだっただろうが」

「女子もいるんだこれ以上話を広げるなバカ雅」

「完全に同意ですね。これ以上は生徒会副会長として見過ごせませんよバカ雲先輩」

「まぁ、その、あまり広げない方がよろしいかと」

 

 本当に。

 この人が乗り込んだからオレまで怒られたんだが?

 

「やれやれ。やはり男子はバカだな」

「そうですね。馬鹿ばっかりです」

「一緒にするな」

「一緒にしないでください」

「一緒にしないでください」

 

 オレたち三人の心は、完全に一致していた。

 鬼龍院先輩。椎名。それは、余りにも酷すぎます。

 

「全く。お前ら二人とも、あんなに立派なモノを持ってるのに、何でそんなに隠したがる?」

「普通は隠すものだろう。然るべき相手に見せるモノだ」

「その通りです」

「………あー、そういう話であったのか。余り分かりたくは無かったのう」

「………すまなかった」

「………本当にすいません」

「いやいや。構わん。まぁ、男子高校生とは、そういうものじゃろう」

「………え、えっと、何の、話、何ですか?」

 

 ………山村は、分からないのか。

 いや、分からない方が、きっと良いんだろうが。

 

「やれやれ。初心な子猫ちゃんだぜ。実践で教えてやろうか?」

「─────それ以上は朝比奈に報告するぞ」

「安心してください恒先輩。もう教えました」

「でかした綾小路」

「素晴らしいぞ綾小路。褒めてやろう」

「おいバカやめろ綾小路それは洒落に──」

 

 一瞬風が吹いて。

 南雲先輩の背後にいつの間にか現れた影乃先輩が、南雲先輩の首筋にコンパスを突き付けていた。

 いつの間にか席を立っていた恒先輩も、手刀を眉間に突きつけている。

 二人とも速いな。目で追うのがギリギリだった。

 というか影乃先輩、いつの間に南雲先輩の背後に?

 

「────恒くん。蓮くん。ありがとう。綾小路くんも、教えてくれてありがとう」

 

 その人は、朝比奈なずな先輩は、いつも浮かべている、明るい笑顔ではなくて。

 

「────ねぇ、雅。今、何を、しようと、して、いたの、かな?カナ?」

 

 見たことないくらい、殺意の滲ませた笑みを浮かべていた。

 

「い、いや、その、これは、だな」

「ねぇ、冬休みに私が告白した時、言ったよね?

 今の自分じゃ相応しくないって。

 だから、一番強くなって、もう、なずなを泣かせないようになるって」

「待ってくれなずな。それは、その、恥ずかしいから、余り話さないでほしくて、だな」

「私ね。雅のそれを信じたんだよ?

 一番強くなって、迎えに来てくれるって、思えたから、Cクラスに負けて、Bクラスに落ちちゃったけど、立ち直れたんだよ?」

「そ、そう、だな。うん。その、すごく、落ち込んでた、もんな」

「うんうん。あっ、勿論、雅たちに負けるつもりなんてないよ?

 Aクラスで卒業するのは私たちだけど。

 あ、そうなったら、雅は、私の、ペットになって、貰おっかな〜」

「な、なずな?なずなさん?」

 

 朝比奈先輩は、とても恍惚とした表情で、笑い出した。

 

「あー、それ良い。良いかも。

 ごめんね雅。一番強くなるって雅の目標、へし折りたくなってきたかも」

「な、なずな、さん………?」

 

 その、冬休み中に、南雲先輩と、卜部先輩が、二人きりで会っているところを目撃した瞬間ぐらいから、なんか、その、おかしくなっていったというか。

 ※二人はホワイトルームについて話していただけ。

 まぁ、二人きりで会った理由が理由だから、その、割とオレにも責任があるといいますか。

 いやでも、冬休み中は、卜部先輩以外にも、色んな女子と遊んでたし。

 後藤先輩と一緒にナンパしてたし。

 あ、やっぱオレあんま悪くないかも。

 

「ふ、ふふふふふふふ。

 首輪着けてぇ、リードで繋いでぇ、檻に入れてぇ、あ、ちゃーんと、一日三食、あげるから、安心、して、ヨネ」

「な、何も安心できないんですが……?」

「あ、もしかして、一人っきりだと寂しいって思ってる?

 安心して。同じ檻には入れられないけど、お友達は、呼んであげるから。 

 ね、蓮くん。恒くん」

「まぁ、ペットの散歩ぐらいなら」

「俺も、餌やりくらいなら構わない」

「おいお前ら少しはオレを人として扱え‼︎」

 

 お、おう。

 あ、朝比奈先輩、怖い、かも?

 

「────ふふふふふ。そうだ。首輪買いに行こうよ。雅にお似合いのやつ。

 私の名前も、ちゃんと書いておかないと」

 

 …………それは、その、オレにもダメージが来ると言いますか、何と言いますか。

 首輪云々が耳に入ってしまった桔梗は、机に突っ伏した。  

 隣に座っている茅野と星穹は心配している。 

 鈴音?まぁ、その、表面上は冷静だぞ?

 耳が赤くなってるから、隣の伊吹と神室は何となく察しているが。

 ……………その、オレの部屋には、オレの名前入りの、二人の首輪が、あるので。

 

「そ、それは、買わなくて、いいん、じゃないか?

 だ、だってほら、卒業したら、その、さ?」

「────ホント⁉︎ホントにその気なの雅‼︎」

「お、お、おう。も、勿論だぜ。うん」

「えへへへへへへへ、やった〜〜〜〜」

 

 スキップしながら、とても嬉しそうな笑顔で、朝比奈先輩は席に戻った。

 朝比奈先輩の隣の坂柳と九重先輩は、南雲先輩に、産業廃棄物にも劣る何かを見る目を向けていた。

 

 多分、この席の、山村以外の全員が、同じ目を向けていた。

 

「さ、さて。席につこうぜ。うん」

 

 自然な動きで、南雲先輩(産業廃棄物未満)は、山村の隣に座ろうとして。

 目にも止まらぬ速さで、皿と食器とその他諸々と共に、恒先輩が、山村の隣に座った。

 

「ちょ、席替えには、まだ早くないか?」

「最初から俺はここに座っていたが」

 

 うん。恒先輩は、最初からそこに座っていたな。

 

「ふ、ふぇ、ふぇぇぇ」

「三七にも頼まれたからな。山村さんは、俺に任せてくれ(守る)」

「ふぇぇぇぇぇ」

 

 隣に座って来て、笑いかけて来た二年生ナンバーワン国宝級イケメンに、山村は完全に骨抜きにされていた。

 もう南雲先輩(産業廃棄物未満)ごとき、目に入らないだろう。

 

「しょ、しょうがねぇなぁ」

 

 さっきまで、恒先輩が座っていた席。

 即ち、鬼龍院先輩の隣に座ろうとして。

 

「私の隣に座るな。穢れる。椎名、こっちに来い」

「そうさせて貰います」

 

 オレの隣に座っていた椎名が、鬼龍院先輩の隣の席に移動した。

 代わりに神崎が座って、その神崎の隣に、南雲先輩(産業廃棄物未満)。

 

「………オレとしては、出来ることなら、綾小路の隣が良いんだが」

「妾の隣に座らせるわけなかろう。神崎は綾小路の隣が良いじゃろうし。必然、綾小路の隣は神崎と妾じゃ」

 

 南雲先輩(産業廃棄物未満)は端の席で、神崎の隣。

 神崎は一瞬だけ嫌そうな顔をしたが、流石に女子の隣に座らせるわけにはいかないのか、素直に受け入れていた。

 まぁ、つまりは山村の正面に南雲先輩(産業廃棄物未満)が来てしまうのだが。

 いくら南雲先輩(産業廃棄物未満)が目の前にいたとしても、今の山村の視界には、殆ど入らないだろう。

 だって、隣に国宝級イケメンがいる上で、積極的に笑いかけて話しかけてくれるんだぞ?

 南雲先輩(産業廃棄物未満)は確かに顔が良いが、所詮はチャラ男。性格も良い国宝級ガチイケメンに勝てる道理などない。

 

「………綾小路と大差はねぇだろ」

「それは余りにも失礼というものじゃぞ」

「………だって二股してんじゃん」

「しかし誠実ではあったぞ?其方なら、どうせ有栖殿もキープしたのじゃろう?」

「そもそも、こいつは堂々と二股します宣言などできん」

「どっちにも良い顔して隠してそのうちバレて刺されるでしょうね」

「それに、堀北先輩から一本取ることなど出来ないだろう」

「は?舐めんな恒。一本どころか百本取ってやるわ」

「…………そういうところは、尊敬できるんだがな」

 

 恒先輩は、深ーく溜息を吐いた。

 やはり流石は国宝級ガチイケメン。溜息を吐く姿すらも絵になるとは。山村はもう完全に骨抜きだ。

 

「まぁ良い。卓替えも席替えも自由だが、どうせこの卓に座った奴らは、卓替えなどしないだろうし。

 これから一ヶ月、この八人で、食事を取るとしよう」

 

 こうして、オレたちの卓は、揃った。

 

 では、いただきます。




 キャラが勝手に動いたんです‼︎
 朝比奈先輩がこんなことになるなんて‼︎
 二人はもっと、純愛のはずだったのにっ‼︎
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