殺せんせーの教え子たち   作:宇津木 沙坂

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桃井緋音と訓練二日目

 Q、走る才能をより磨く最も効率の良い練習は?

 A、走ること。

 

 Q、泳ぐ才能をより磨く最も効率の良い練習は?

 A、泳ぐこと。

 

 Q、サッカーの才能をより磨く最も効率の良い練習は?

 A、サッカーをすること。

 

 

 Q、暗殺(人殺し)の才能をより磨く最も効率の良い練習は?

 A、暗殺(人殺し)すること。

 

 

 目が覚めた時、何故だか僕は、茅野に抱きしめられていた。

 というより、何故か女子部屋にいた。

 

「────なんでっ⁉︎」

 

 僕の絶叫と共に、茅野は目を覚ました。

 目を合わせた茅野は、何故だか、とても悲しそうな顔を一瞬だけして。

 すぐに、完璧な笑顔を貼り付けて。

 

「…………おはよう。渚」

 

 その笑みは、多分、写真にすれば数百万枚は売れて。

 動画にすれば、億回は再生されて。

 映画にすれば、四百億に届きそうで。

 兎にも角にも、完璧で、美しくて、誰も彼もを魅了するような笑みで。

 この笑顔を朝起きた時、隣で向けられたなら、それだけで何も食べなくても一日中走り続けられそうなんだけど。

 

 でも、なんだか、無理してるように見えた。

 

「………なんか、元気ない?大丈夫?」

 

 それだけで。

 完璧だと思っていた笑顔は、凍りついて。

 ハンマーで叩かれたみたいに砕け散った。

 

「………ううん。大丈夫。大丈夫、だよ。大丈夫、だから。

 ………渚は、大丈夫?」

「………えっと、うん。なんで女子部屋にいるかは分からないけど、大丈夫、だよ」

「………そっか。朝食の前には、部屋に戻らないとね」

「あ、そうだね。うん」

 

 茅野の布団から抜け出して、誰も起こさないように、細心の注意を払いながら。

 僕は、こっそりと、女子部屋を後にした。

 

「………あ、そっか。練習で寝落ちしちゃったんだ」

 

 それで、部屋が分からなくて途方に暮れてた先輩が、取り敢えず寝かせるために、女子部屋に運んでくれたんだ。

 お礼、ちゃんと言わないと。

 あの人がいなかったら、暗(・)殺(・)の(・)才(・)能(・)を(・)伸(・)ば(・)す(・)練(・)習(・)な(・)ん(・)て(・)出(・)来(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)し(・)。

 

「………あ、そういえば、何回かあったっけ、こういうの」

 

 そう。

 学校にいる時は、基本的に、先輩の部屋で練習していたから。

 そのまま疲れて寝落ちしちゃって、起きたら、隣で先輩が寝ていることも何度かあった。

 最初の方は僕がベッドで先輩がソファだったんだよね。キツイ練習させちゃってるから、ゆっくり休めるようにって。

 懐かしいなぁ。どっちがベッドで寝るのか言い合いになって、そうして結局、二人でベッドで寝るようになったんだっけ。

 冬場は寒いし、先輩の体温かなり暖かいから、湯たんぽ代わりに抱きしめてたこともあったな。

 流石にビンタされたけど。

 

「───あれ、じゃあなんで、今日は先輩じゃなくて茅野だったんだろう?」

 

 そう。

 いつもだったら、こういう時、隣で寝てるのは先輩だったから。

 先輩だったら、あんまり驚かなかったかも。

 女子部屋は驚いたけど。

 

「………まぁ、良いか」

 

 部屋に帰りながら、夢(・)の(・)中(・)で(・)行(・)っ(・)て(・)い(・)た(・)暗(・)殺(・)を(・)思(・)い(・)出(・)す(・)。

 そう。どんな才能も、磨き上げるコツは、数(・)を(・)こ(・)な(・)す(・)こ(・)と(・)だ(・)。

 メンタルトレースは自己催眠、これを応用することで、夢の中で、限りなく現実に近い暗殺を繰り返す。

 そして、暗殺対象は。

 

 潮(・)田(・)渚(・)の(・)ク(・)ラ(・)ス(・)メ(・)イ(・)ト(・)。

 潮(・)田(・)渚(・)の(・)友(・)達(・)。

 潮(・)田(・)渚(・)の(・)先(・)輩(・)。

 潮(・)田(・)渚(・)の(・)家(・)族(・)。

 

 ───当然だ。

 だって、トレースできるのは。

 その人を理解して、共感して、想像出来るぐらい。

 近くにいる人間だけなんだから。

 

 メンタルトレースで彼らになって、戻るために彼らを殺す。

 この過程を、よ(・)り(・)鮮(・)明(・)に(・)イ(・)メ(・)ー(・)ジ(・)す(・)る(・)た(・)め(・)に(・)、目(・)隠(・)し(・)を(・)し(・)て(・)、稔(・)は(・)耳(・)元(・)で(・)状(・)況(・)を(・)説(・)明(・)し(・)て(・)、そ(・)れ(・)を(・)元(・)に(・)暗(・)殺(・)現(・)場(・)を(・)再(・)現(・)す(・)る(・)。

 

 ────実質的に、夢の中でこそあるが。

 潮(・)田(・)渚(・)は(・)既(・)に(・)、自(・)身(・)に(・)近(・)し(・)い(・)人(・)間(・)を(・)三(・)百(・)回(・)近(・)く(・)は(・)殺(・)し(・)て(・)い(・)る(・)。

 それだけの経験と、潮田渚の才能を合わせれば当然。

 

 殺(・)気(・)を(・)完(・)全(・)に(・)消(・)し(・)て(・)殺(・)す(・)な(・)ど(・)容(・)易(・)い(・)こ(・)と(・)だ(・)。

 

 ───げに恐ろしきは、二人の精神性。

 いとも容易く、後輩の暗殺現場を現実的にイメージして言語化出来る狐判稔の、その想像力と、感性。

 いとも容易く、自身に近しい人間を自覚的に殺すことが出来る潮田渚の、その才能と、感性。

 

 二人は、夢の中だと、完全に割り切っている。

 必要なことだと、完全に割り切っている。

 言い換えれば、二人は、これが仕事であると完全に割り切れるのなら。

 いとも容易く、現実でも人殺しができるということだ。

 

 ──しかし、潮田渚には、恩師がその命を捧げて残したブレーキがある。

 潮田渚こそ、一番良く知っている。

 恩師(ヒト)を殺す痛みを。

 

 だからこそ、本当の意味で、現実で命を奪うことを割り切ることはなく。

 しかしだからこそ、誰よりも鮮明に、人を殺す瞬間をイメージ出来て。

 そしてだからこそ、狐判稔は、自身の罪深さを、自覚出来なかった。

 

 だからこそ、こうして、狐判稔は。

 盛大に、失敗したのだ。

 

「…………ごめんね。雪村さん」

「────今回の試験が終わったら、金輪際渚に近づかないでください。

 必要なことだとしても、殆ど夢の中だとしても、あなたは渚に、近しい人を殺させた。何度も、何度も。

 …………渚にとってそれは、殆ど現実なんです。だってそうじゃなきゃ、殺(・)気(・)を(・)完(・)全(・)に(・)消(・)せ(・)る(・)ぐ(・)ら(・)い(・)才(・)能(・)を(・)磨(・)く(・)な(・)ん(・)て(・)出(・)来(・)な(・)い(・)。

 …………そんなの、やっていいことじゃない」

「…………うん。そうだね」

「…………でも、渚が、それをしなければならなかったのは。

 …………私たちが、弱かったから」

 

 そう。

 雪村あかりは。

 一之瀬帆波は。

 現一年Dクラスは。

 安定していた。

 安心して、定まっていた。

 上を目指す気がなかった、というわけではない。

 勝つ気がなかった、というわけではない。

 

 ただ、現状に、不満が無かったから。

 だから、彼女たちは、変わらなかった。変われなかった。

 だって、それまでは、変わらずとも勝てたから。

 

 潮田渚と雪村あかりは、もっと速い段階で、変われたかも知れなくて。

 でも、潮田渚は、『佐倉愛里ストーカー事件』で、自身の才能の恐ろしさを客観視したから、可能な限りブレーキをかけていて。

 雪村あかりは、『元一年Aクラス脅迫事件』の顛末から、競争を無意識のうちに避けていたから。

 だから、潮田渚が動くには、雪村あかりが動くには、時間がかかって。

 かかった結果、潮田渚は、現実と錯覚するほどリアルな夢の中で、人を殺して、才能を磨き始めて。

 

 そうして、今、雪村あかりは、後悔していた。

 

「………私が、もっと早くに動いていたら。

 ───環境は、整っていたんです。

 だって、卜部先輩の近くにいれたから。

 ………もし私が、変わろうと、卜部先輩から、メンタルトレースを教わろうとしていたら。

 ペーパーシャッフルで負けることは、無かった」

 

 あそこで負けて、歯車が、狂い出した。

 あそこで負けなければ、渚は、急激な変化を求めることはなく。

 三代目死神となる覚悟を固めることも、無かった。

 

「…………何より、度し難いのは。

 ────何より、許し難いのは。

 先輩を、私を、一番罰する資格がある渚が。

 私たちが、一番傷つけた渚が。

 一(・)切(・)傷(・)付(・)い(・)て(・)い(・)な(・)い(・)こ(・)と(・)な(・)ん(・)で(・)す(・)」

 

 ───そう。

 加害者が被害者で、被害者が加害者であった、『元一年Aクラス女子脅迫事件』とは違い。

 今(・)回(・)の(・)一(・)件(・)で(・)、本(・)当(・)の(・)意(・)味(・)の(・)被(・)害(・)者(・)は(・)居(・)な(・)い(・)。

 

 潮田渚は、傷付いてなんかいなくて。

 雪村あかりが、勝手に傷付いているだけ。

 自分勝手に、狐判稔を罰しているだけ。

 そして狐判稔が、勝手に傷付いているだけなのだ。

 だって───。

 自分の才能が磨かれるぐらい現実的な夢の中で、人(・)を(・)殺(・)し(・)た(・)潮(・)田(・)渚(・)は(・)。

 そもそも、現実では、誰も殺してなんかいなくて。

 そもそも、現実では、誰も殺されてなんかいなくて。

 そもそも、誰も、悪くなくて。

 

 だからこそ、度し難い。

 だからこそ、許し難い。

 だからこそ。だからこそ───。

 

「────私、………私。

 渚を好きで、居ていいのか、分からないよぉ」

 

 雪村あかりは。

 茅野カエデは。

 涙を、流していた。

 

 狐判稔は、何も、言えなかった。

 

 

 二日目の訓練で、特に印象に残っていることといえば。

 本(・)来(・)の(・)得(・)物(・)を(・)。

 木刀(カタナ)を解放した、桃井パイセンだった。

 

「………ほう。それが、君の本気か」

「えぇ。烏間先生。

 あなた相手なら、全力で、ぶつかれる。

 わたしの本性を、才能の全てを、ぶつけられる」

「───いいだろう。

 文字通り君の全てを受け止めて、上回ってやろう」

「うふ、うふふふふふふふふ。うふふふふふふふふふふふふふふ。

 あっははははははははは‼︎」

 

 昨日よりも苛烈に本性を表して。

 桃井パイセンは、音速と錯覚するぐらいの速度で突進して。 

 下段から、掬い上げるような突きを放った。

 烏間先生は一歩だけ後ろに下がって躱す。

 烏間先生の仕返しのローキックは、柄頭で受け止めた。

 柄頭は楕円形で、直径僅か5〜6cm程度。

 それで烏間先生の蹴りを受け止めることが出来るなんて。

 昨日の時点で分かっていたことだが、やはりあの人の強さは凄まじい。

 技術と身体能力が、非常に高い次元で合わさっている。

 ───あの人に、勝ちたい。

 そう、思って。

 

「ちょっ、清隆っ!ギブギブギブ!」

「あ、すまん」

 

 無意識のうちに、寛治の首を絞めていた。

 不味いな。勝利への渇望が、顔を出し始めている。

 桃井パイセンと、それから渚に、おそらく引き摺られている。

 まぁ、すぐさま元に戻る程度だ。なんの問題もないな。

 

 

「…………ねぇ、鈴音」

「…………えぇ。少し、不味いかも知れないわね」

 

 

 正真正銘本気のパイセンと烏間先生の手合わせは、本当に凄まじくて。

 オレは時々、加減が効かなくなり始めた。

 勝利だけに価値を見出していた。

 けれど、これほどまでに勝利を追い求めるようになったのは、間違いなく、殺せんせーの影響だった。

 いくら挑んでも解けない(勝てない)問題に。

 それに挑み続ける度に。

 オレの、中に、この問題(ターゲット)を、何がなんでも解きたい(殺したい)、勝(・)ち(・)た(・)い(・)、という感(・)情(・)が、生まれて。

 そこからだんだんと、色々な感情を知り始めた。

 

 勝つことが全てだと教えられて。

 勝つために、人は道具だと学んで。

 勝つことしか許されない環境にいて。

 

 そこから抜け出せて、初めて、友達(浅野)が出来て。

 でも、勝ってしまったから、浅野とは、距離が出来て。

 オレは、当たり前の生活を求めて。

 普通になるために、勝つことを辞めようとして。

 でも、殺せんせーの手で、勝つことに、義務感ではなく達成感を得るようになって。

 そして、殺せんせーが死ぬと知って。

 そうなれば、もう、殺せんせーに勝つことはできなくて。

 だからオレは、渚に、殺せんせーの代わりを求めた。

 だって、オレを殺せるかも知れないのは、渚だけだったから。

 でも、現実の回答は、全く違うもので。

 だからこそ、オレは。

 オレは─────────(あの二人に勝ちたい)。

 

「や、やり、すぎ」

「…………ほんとに、すまん」

 

 いつの間にか、寛治は中々にズタボロだった。

 いやまぁ、昨日の和泉先輩程ではないけども。

 

 

「………今はまだ堪えられてるけど、これ、最悪あの日みたいなことになる、かな?」

「………そうね。その危険は、あるでしょうね」

 

 

 ………少し、不味いな。

 しかし、いや待て。

 確か、堀北先輩と手合わせした時は、同じものが間違いなく顔を出していて。

 けれどあの時は、間違いなく制御出来ていた。

 堀北先輩が強かったからか?

 それとも、他に理由が──。

 

 

「そろそろお昼よ。お弁当作ってきたから、一緒に食べましょう」

「あぁ。鈴音のご飯、ずっと食べたかったんだ」

 

 そっか、もうお昼なのか。

 昨日の夕食も今日の朝食もバイキングだったから、量は食べられたけど余り美味しくはなかったんだ。

 神崎なんかは、『胃袋完全に支配されているじゃないか』なんて呆れていたが。

 ていうかキッチン使えたんだな。

 

「まぁね。二月中だし、来週の日曜日はバレンタインデーでしょう?

 だから、練習としてキッチンは全生徒に解禁されているのよ」

「今日は私と鈴音の合作だよっ!存分に召し上がりなさいっ!」

「あぁ。存分に、楽しませてもらう」

 

 レジャーシートを敷いて、日陰になってる木の下で、三人で並んで弁当を食べる。

 しかし、パイセンまだやってるのか。

 お昼食べないのか?

 

「──そろそろ休憩にしよう。桃井くん」

「いやですっ!まだ、まだぁっ!」

「これ以上はダメだ」

 

 あっさりと木刀を奪い取って、烏間先生は武装解除させた。

 まぁ、やっぱりまだ差は結構あるようだ。

 

「あー!わたしの木刀ー!返してくださいっ‼︎」

「ダメだ。お昼を食べなさい」

「………むー、わかりました!食べ終わったらまた手合わせしてくださいっ!」

 

 桃井パイセンは、全力疾走で合宿所が用意してくれた弁当を取りに行って。

 そこで、須知先輩に声を掛けられた。

 

「おーい桃井ー、ご飯一緒に食べようよー」

「………………そうじゃな。うむ。妾も共に食べたいと思っておったところじゃ」

 

 酷く自然と、桃井パイセンはまた仮面を被って、Cクラスの連中と、楽しそうにお昼を食べていた。

 なんというか、どっちが素なのか分からないな。

 

「どっちも素なんじゃない?ていうか清隆。桃井先輩見過ぎだよ」

 

 ムッとした顔で、少し拗ねる桔梗。

 頬を膨らませている。あざとい。可愛い。

 拗ねた顔も可愛いな。うん。好き。

 無意識のうちに、オレは拗ねた桔梗の頬を指で突いていた。

 えいえい。

 

「むー、あむ」

「わひゃっ」

 

 指甘噛みされた。

 びっくりした。可愛い。好き。

 

「あぐあぐあぐ」

「ちょっ、辞めろ桔梗っ」

「やめらい。あぐあぐ」

「もう。はしたないわよ。桔梗さん」

「ちょっ、鈴音?鈴音も、その、顔近すぎるぞ?」

 

 肩にほっそりとした白い顎を乗っけてきた鈴音にびっくりした。

 距離近いな。綺麗だ。

 鈴音は、とても柔らかく笑っていた。好き。可愛い。

 箸で掴み上げた卵焼きを、オレに突き出してきた。

 

「はいあーん」

「………あーん」

 

 あーんしてくれた。美味しい。可愛い。好き。

 

「どう?美味しい?」

「あぁ。やっぱりこっちの方が美味しい」

「わらしも。あぐあぐ」

「オレの指は食べ物じゃないだろ?」

「えへへへへ」

 

 指を離して、桔梗は照れたように笑っていた。

 もっと甘噛みしてくれても良かったのに。可愛かった。

 

「さて、お昼もそろそろ終わりだけれど。

 まだ時間あるもの、お昼寝しましょう」

 

 自然な動きで、鈴音はオレを膝の上に倒してきた。

 超体育着改の、薄いタイツに覆われた、ほっそりとして、しかし柔らかい膝枕で。

 あ、鈴音の膝枕柔らかくて温かくて気持ち良い。好き。

 

「ふふふ。少し眠っても良いのよ?」

「…………あぁ。そうさせて貰おう」

 

 木漏れ日に照らされながら。

 涼しい風を浴びながら。

 鈴音の細やかでしなやかで、絹のように白く滑らかな手で頭を撫でられて。

 好き。綺麗。可愛い。

 ただそれだけを考えながら、眠りについた。

 

 

「………ひとまず、これで良いでしょう」

「………だねぇ。訓練終わりでも、これやらないとだね」

「問題は、来週ね」

「うん。清隆、桃井先輩と約束してたって言ってたもんね。

 烏間先生が三年生の方に顔を出してる時は、自(・)分(・)が(・)組(・)み(・)手(・)の(・)相(・)手(・)を(・)す(・)る(・)っ(・)て(・)」

「………まぁ、清隆くんしか、桃井先輩の相手は務まらないのでしょうけれど」

「あー、でも高円寺くんは?」

「身体能力は申し分無いのだけれど、技術が足りないわ」

「浅野くんは逆か」

「赤羽くんも、浅野くんと似たようなものね」

「………さ、最悪、どうする?」

「………まぁ、その、考えは、あるわ」

 

 耳打ちしてきた堀北鈴音の提案に。

 櫛田桔梗は、悲鳴をあげそうになった。

 

 

「……ね、ねぇ、あかりちゃん。

 なんか、調子悪い?大丈夫?」

「うん。大丈夫。気にしないで」

 

 一之瀬帆波に、完璧な笑みで返して。

 雪村あかりは、色々なものを覆い隠した。

 

 訓練二日目は、大きな波乱もなく、過ぎ去っていった。




 殺せんせーの影響で、今作綾小路くんは勝利ジャンキーになりました。
 逃げ若の殿の鬼ごっこジャンキーみたいなものです。
 相手が強大であればあるほど何がなんでも勝ちたいモードに入ります。
 ただし、これまでは、堀北さん櫛田さんを選べないことの罪悪感。松雄親子への罪悪感。ホワイトルームの罪を直視したことによる罪悪感などのデバフがあったのでこれが表に出ることはありませんでした。
 上記のうち二つが消えて、目の前に勝てないかもしれない強いやつが出てきちゃって、そいつとシンパシー感じちゃったもんだから、勝利ジャンキーが顔を出し初めてます。
 決して悪いものでは無いのですが、勝利したい対象がいきなり目の前から消えたりしちゃうと一気に機械化進行して暴走しちゃうので、堀北さん櫛田さんは出来る限り抑えたがっています。
 夜戦S気味なのはこれの影響。二人に勝ちたいので。
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