昨日からずっと、あかりちゃんの様子が変な気がする。
何が変なのと言われたら、なんとなく変としか言えないんだけど、でも、とにかく変。
聞き出そうとしても、あかりちゃんは笑って誤魔化していて。
だから何も分からなくて、いつの間にか三日目の夜。
「………ね、ねぇ。堀北さんってさ、あかりちゃんと同じ中学だったんだよね?」
「まぁ、そうね」
「なんか、その、今あかりちゃん、なんか変なんだけど、分かる?」
「………そう、ね。
………なんだか、その、罪悪感のようなものを、抱えていた時期に似ているような気がするわ」
堀北さんと同じ部屋で良かった。
私の知らないあかりちゃん、三年E組の茅野カエデさんを知っている人だから。
「罪悪感、かぁ………。
何か、悪いことしちゃったのかなぁ?」
「本人は何も悪く無いことなのに、勝手に罪悪感を抱え込むこともあるから」
殺せんせーの過去とか復讐とか諸々。
本人何も悪くなかったのにずっと気にしていたと知って、さすがに驚いた。
優しすぎるでしょう。
「………本人は悪く無いのに、かぁ」
「そうね。少しばかり清隆くんに似てるわ。彼も───」
「あ、惚気は良いや」
隙あらば惚気ようとしてくるんだよな堀北さん。
それさえなければ本当に完璧なのに。
「…………その、惚気のつもりは無いのだけれど」
「普通に惚気だよ自覚して」
「…………そう、なの」
「『完全無欠の生徒会長』にも意外な、いえ、予想通りの弱点があるようですね」
「…………その、『完全無欠の生徒会長』っていうのは何かしら。森下さん」
森下藍さん。同じ部屋で、Aクラス屈指の実力者で、Aクラス屈指の変人。
やれやれとでも言いたげにていうか実際言ったんだけど、森下さんは、語り出す。
「現生徒会の面々についた二つ名ですよ。実に私好みの素晴らしい二つ名でした。提唱者にはなれなかったことが悔やまれますね」
「…………二つ名って、恥ずかしいし痛々しいわ。
漫画じゃあるまいし」
「この学校やってることほとんど漫画ですよ?」
それはそうだよね。うん。
いやほんと、国立でこんなことやってる学校あるんだなーって。
「まぁ、それもそうなのだけれど。
その、二つ名ってどういうやつなのよ。なんだか恥ずかしいわ」
「あなただったら『完全無欠の生徒会長』ですね。
学力、身体能力、人格、家族、恋人。その全てに一切の欠点がないことからこのような二つ名となりました」
「………恋人に欠点がないは違う気がするけど」
「それに関しては神室さんの言う通りね」
神室さんは思わずと言った様子で口を挟んで。
堀北さんは、そこは素直に認めていた。
まぁ、うん。だよね。
「しかしながら、綾小路清隆はその誠実さを見せ、屑小路清隆でも女の敵小路清隆でもないことを示しました。二股小路清隆であることは証明しましたが。
それに堀北学の要求、あなたとだけ付き合えというそれに真っ向から歯向かって一度勝利して見せたことは、学校中の伝説となっています」
「………それってさ、坂柳の失恋が学校中の伝説にもなっているって認識で良い?」
「ちょっと伊吹さん」
………伊吹さんの酷く残酷な確認に、森下さんは固まった。
木下さんは思わずと言った様子で声を掛けた。
森下さんは、少しだけ気まずげな顔で。
「………まぁ、その、逆説的に、そうなりますが」
「後で有栖にお仕置きされても知らないわよ」
「勝手に広がってただけですよ。私は何もしてません」
「まぁ、ここって結構閉鎖的だからねー」
娯楽とかゴシップネタとか、あんまり外からのやつ入ってこないから。
結果的に、学校のそういうのが広まりがちなんだよね。
「………ぅうん。その、生徒会についているということは、一之瀬さんにも?」
「………あ、さては私も道連れにしようとしてるなこのやろー」
「私と同じ恥と痛みを知りなさい」
「ひどーい」
森下さんは楽しそうに、私の二つ名を大真面目に語り出した。
あ、これ思ったよりも恥ずかしい。
「『青天白日の生徒会広報』。それが一之瀬帆波の二つ名です。
欠点がないのもそうですが、何より人格が素晴らしいのと、太陽のようなリーダーでもあることから、このような二つ名となっています」
「………うっわー、なんか恥ずかしいね」
「帆波姫よりマシでしょ」
「あー、それよかマシか。うん」
ていうか伊吹さん思い出させないでよ。折角忘れてたのに。
「さて、他にリクエストがありますか?」
「ここまで来たら全員分聞いちゃおうよ」
「そうね。なら清隆くんからお願いするわ」
「良いでしょう。『天下無双の副会長』。それが綾小路清隆の二つ名です」
「ま、天下無双って着くのも納得の強さよね」
「学年最強だし」
神室さんの言う通り、綾小路くんの二つ名は納得しかない。
学年最強だし。
「ふぅん。じゃあ、桔梗さんは?」
「『表裏一体の会長秘書』ですね。基本的に誰にでも優しい人気者で、しかし怒ると本当に怖いので」
「体育祭で高円寺叱り飛ばしてるの凄かったよね」
「まーあれはふざけ過ぎたアイツが悪いけどね」
木下さんは借り物競走のお題でふざけた結果、全校生徒の前で正座させられて言葉遣いを正された高円寺くんを思い出していたみたい。
でも伊吹さんの言う通り、あれはふざけ過ぎた高円寺くんが悪いよね。
それで表裏一体かぁ。
裏っていうには真っ当過ぎない?
「あ、じゃあ次はあかりちゃんのやつ聞いてみたい」
「『一世風靡の生徒会広報』ですね。
元国民的天才子役に相応しい二つ名でしょう」
「あー、確かに」
納得の二つ名だね。うん。
「じゃあ次学秀のやつ教えて」
「あ、それ私も気になる。シュウの二つ名どんなやつなの?」
さっきまでリズムゲーやってたのに、浅野くんの話題になった瞬間入ってきた九重先輩。
面白いな。分かりやすい。
「浅野くんどんなのだろ。気になるかも」
「『器用万能の生徒会会計』です。
出来ないこととか基本的にないので」
「歌もギターも凄かったし。また聞きたいわ」
「…………良いもん。ずっとゲームしてたし」
「ふーん、Aクラスってクラスでカラオケ大会とかするんだ」
木下さんの言う通り、私も気になった。
クラスでそんなことするんだ。意外。
「……あー、その、二人だけでカラオケ行ったときに」
「……これは惚気ではないかしら?」
「付き合ってはいないのでセーフです」
「藍、お口チャックで」
あー、こことここ、こんな感じなんだ。
あれ?でも浅野くん、クリスマスのイルミネーション九重先輩と見てたような?
え、まさか浅野くんも?
「同じAクラスの葛城が気になるからそれ教えて早くっ」
「はいはい、早く話を次に進めたいんですね真澄は。
やれやれ、仕方ありません。
『質実剛健の生徒会会計』。
まぁ、ぴったりでしょう」
「ピッタリね」
「ピッタリだね」
「ピッタリね。葛城くんをこれ以上ないくらい言い表してるわ」
葛城くんは凄くちゃんとしてる人だからなー。
質実剛健も納得しかない。
「赤羽の二つ名ってどんなやつなの?」
「『悪鬼羅刹の会計監査』ですね」
「完璧じゃない」
「ピッタリ過ぎる……」
「満点を超えて百二十点だね」
赤羽くんは、ねぇ?
悪い人じゃ……いや悪い人か。
悪い人だけど怖くない……いや怖いな。
悪くて怖い人だけど、なんだろう?
うーん、悪くて怖い人だけど、所々面白い人、かなぁ?
「榎中は?『天真爛漫』とか?」
「女子につくやつじゃない。似合ってはいるんだけど」
「惜しいですね。『明朗闊達の生徒会書記』です」
「意味的には大体同じのようね」
榎中くんかぁ。
まぁ多分、一年生男子榎中くん居なかったらもっと静かだったろうな。
綾小路くんも赤羽くんも浅野くんも葛城くんも、あそこまで人と仲良くできる人じゃないし。
「二年生は卜部先輩からにしよっか」
「『捲土重来の副会長』。名付けた人は中々のセンスですね。私にゃ及びませんか」
「ふーん、藤乃、そんな二つ名なんだ」
「九十九先輩的にはどう思います?」
「まー、合ってるんじゃない?」
九重先輩的にも合ってるんだ。さっきまでリズムゲーやってたのに、卜部先輩の話題になった瞬間また入ってきたの本当に面白くて分かりやすい人。
「朝比奈先輩は?」
「多分、一之瀬さん似たような意味合いだとは思うけれど」
「『恋慕渇望の生徒会監査』ですね。確か、二つ名それ自体が今月初め頃から出来たと橋本正義が言っていたので。
三学期初めから見せた、南雲雅へのあの様子からついたのでしょう」
「………アドバイスした堀北さんのせいだよ?」
「………そんなつもりは、なかったのだけれど」
「あー、あんたが余計なこと言ったのね生徒会長っ!」
「余計なことだなんて、失礼な先輩ですね」
「落ち着きなよ
「いやー!なずながー!なずなが壊れたーっ!おのれ南雲くんっ!この恨みはらさでおくべきか!」
「聞いてないし」
来間
最近のヤンデレ朝比奈先輩にビビっているんだとか。
まぁ、あれビビるよね。
本当に、堀北さんたちのせいだよ?
「さて、次行きましょう。須知先輩ね」
「はいはい。この人も確かつい最近着いたらしいですよ。『仏面鬼心の生徒会書記』です」
「あー、外側優しいけど内側怖いってこと?なんで?良い先輩だよ?」
「狐判稔と桃井緋音。二人のヤバい奴らを引き上げたヤバい人だからですね。
外面はすごく良いですが、絶対内心ヤバい奴だと思われているそうです」
「………あー、須知先輩、普通の人だよ?」
「そうね。内心はあまり表に出さない人だけれど」
稔先輩、自分のせいで須知先輩がそんな風に思われてるって知ったら、凄く申し訳なさそうにするんだろうな。
あ、そうだ稔先輩。
稔先輩も何か変だったけど、どうしたんだろう。
「最後の一人、森先輩ね」
「あ、だね。一番気になるかも?」
「『奇想天外の生徒会庶務』ですね。
南雲雅を引き抜くという、予想外も予想外の手段を取ったので」
「確かに」
「そんな言葉とは無縁な先輩だと思っていたのだけれどね」
「絶対ほむらのせいだよ」
「そうね。ほむら先輩に良くない影響を受けてるわ」
「あー、最近はほむら係変わってくれてるんだよね。ありがたいけどさ」
「なんですかそれ?」
「要はほむらとクラスメイトでトラブル起きたらフォローする係」
「絶対激務じゃん。両沢頑張ってたね」
「トラブル起こさないわけないのに。両沢先輩お疲れ様です」
「流石テーブルゲーム部。よく分かってるわね」
両沢先輩がそう言っているってことは、クラスでもあんな感じなのか。いやまぁ、分かってたんだけどさ。
「あー、でも最近は森くんの前だと大人しくなるわよ?」
分かりやすいな、花咲先輩。
「わっかりやすーい」
「そうですね。とても単純な先輩です」
九重先輩も神室さんもかなり分かりやすいけど。
「それ、あなたたちが言えたことかしら?」
「ブーメラン刺さってるよ堀北さん」
綾小路くんの前だと糖分九割マシになる癖に。
「それだと椎名も中々分かりやすいわね」
「そうですね。赤羽を目で追う椎名様、大変可愛らしいです」
「そうね。椎名さんも結構分かりやすいわ」
あー椎名さん、赤羽くんのこと好きだったんだ。
「藤乃はずっと分かりやすかったよ。もろに態度に出てたし」
「たまーに部室に堀北先輩が遊びに来ると、いつもの八割増しで嬉しそうでしたよね」
「ね。子犬かっての」
「生徒会業務引き継ぎの時も凄かったよね」
「そうね。話はちゃんと聞いているのだけれど、目は常に兄さんを追っていたわ。
副会長業務を教えている南雲先輩が心から呆れるぐらいに」
なんでアレで気付かなかったんだろう、堀北先輩。
「最近だと美紀は本当に分かりやすいですね」
「あの美紀が自分から連絡先聞きに行くなんてねぇ」
「あれは星穹が悪いでしょ。あの顔で隣に座って来て笑いかけて来て優しくして来たら、誰でも惚れるって」
「あー、でも意外なんだよね。星穹くんがあそこまで女子に優しくするなんてさ。
ほら、女性関係で色々トラブったらしいじゃん?」
朝比奈先輩からも聞いたことあるんだけど、星穹恒先輩、中学時代トラブルあり過ぎて、若干人間不信だったみたいなんだよね。
確かにそんな人があんなに女子に優しくするなんて、なんか理由あるのかな?
「うちのクラスだと、佐倉さんと長谷部さんね。
というよりあそこまで分かりやすいのに、なんで幸村くんは一切気付かないのかしら」
「佐倉さんかー。渚くんずっと気にしてるみたいだよ?あの日、怖いもの見せちゃったーって」
「?佐倉さんは、お礼を言う機会が中々なくて申し訳なさそうだったわよ?」
「あれ?そうなの?」
あー、じゃあ、セッティングしたほうがいいかな?
ずっと思い詰めてるみたいだったし。渚くん。
「───そういえば、あなたはいつから潮田くんのことが好きになったのかしら、一之瀬さん」
「……………………ふぇ?」
瞬間、全員の視線が私に向いた。
これ以上ないくらい、面白そうって光が覗いている。
みんな驚いてはいなかった。
…………あ、あれぇ?
「な、なん、なんで?」
「なんでバレたのかってことかしら。
安心しなさい。この場の大体全員、うっすら気付いていたわよ」
「え、嘘っ!」
伊吹さんと木下さんを見る。
頷いた。
神室さんと森下さんを見る。
頷いた。
小橋さんを見る。
頷いた。
小野寺さんを見る。
頷いた。
先輩方を見る。
九重先輩を含む数人は頷いた。
え、嘘。
「え、え、え、え、み、みんないつから⁉︎」
「私は、大体五月過ぎからね。あなたの潮田くんへの視線に熱が籠っていたもの」
「堀北さん早くない⁉︎」
それ、多分事件直後だよね⁉︎
私自覚すらしてなかったよ⁉︎
自覚したのは最近だけど‼︎
「私らは体育祭ね。借り物競走で潮田連れて行く時、本当に嬉しそうだったもの」
「ですね。お題のお陰で手を繋げるのがよっぽど嬉しかったようですね、一之瀬帆波」
「あー、私も。なんだか凄く嬉しそうだったし」
「あ、私もです!帆波ちゃんずっと渚くん意識してたなーって思ってたのが、それで確信に変わりましたっ!」
た、確かに、確かに渚くんと手を繋げたの、今思い返すと嬉しかったな〜ってなったけど!
で、でも、その時も自覚してなかったんだよ⁉︎
「い、伊吹さんたちは……⁉︎」
「あー、まぁ、私らの場合、直接的にじゃないんだけどね」
「赤羽のヤツが凄く楽しそうに生徒会で一之瀬揶揄い倒してるってのを聞いてね。
奥田と椎名が『なんでそんなことしてるんですか』ってちょっとムッとしながら聞いたら、赤羽のヤツ悪い笑顔で『共通の知り合いを好きになったみたいだから、くっつけておもちゃにしよっかな』って答えててね。
それで、まぁ、一之瀬と赤羽の共通の知り合いって言ったら、潮田しかいないじゃんって」
あ、赤羽くんっ……‼︎
あ、あの男ぉ……‼︎
「こ、九重先輩はっ⁉︎」
「私も赤羽経由だね。ゲーセンで対戦してる時にさ、『最近渚付き合い悪いから、渚が女子の先輩と親密になってるって嘘情報、茅野ちゃんと一之瀬さんに教えよっかな』とか悪い笑顔で言ってたからさ。
まぁ、女子の先輩と親密になってるっての、嘘でもなかったんだけどね」
「赤羽くんっ………‼︎」
あ、あの悪魔ぁっ………‼︎
ゆ、許せない………‼︎
「………まぁ、赤羽くんに目を付けられたのが運の尽きね。
清隆くんも茅野さんも、それで凄く苦労したもの」
「許せないっ!私も揶揄い倒してやるっ!」
特に奥田さんと椎名さんとの関係でっ!
「あー、その、出来ればそこ関係で揶揄ったりするのは、やめて欲しいと言いますか」
「はっ?何言ってんの?揶揄っていいのは揶揄われる覚悟がある奴だけなんだよっ」
そう!赤羽くんは好きバレの刑に処しますっ‼︎
「私からもお願い一之瀬。椎名のためにも、出来る限り」
「………な、なんで?」
「………あの三人の関係、絶妙なのよね」
ぜ、絶妙……?
どういうこと?
「………赤羽は奥田が好きで。そして奥田も無意識のうちだけど赤羽が好き。
そして、椎名は赤羽が好き。
もし何かがあって、奥田が自分の気持ちに気付いたら、それだけで椎名は失恋する」
「………そう、ね。本当に、難儀な関係なのよね。あの三人は」
そっ、か。
確かに、堀北さんの言う通り難儀な関係だ。
私は、その、あかりちゃんに申し訳ないは申し訳ないんだけど、でも、渚くんは多分、あかりちゃんに想いを寄せてるわけじゃないから。
だから大きな問題は、まぁ、今の所は無いんだけど。
浅野くんのところは多分両方とも実質告白済みで、どっちが選ばれたとしても恨みっこなしって感じなんだと思う。
神室さんも九重先輩も、恋敵でこそあるけどちゃんと先輩後輩で友達だから。
幸村くんのところは、そもそもの幸村くんがまだどっちにも惹かれてないから。
だから関係はそう簡単には崩れなくて。
赤羽くん達は違う。
赤羽くんと奥田さんは気付いていない、自覚していないだけの両片思いで。
そして多分、椎名さんはそれに気付いてる。
だから、もし。
奥田さんが自分の想いに気付いたなら、それだけで。
三人の今の関係は、間違いなく崩壊する。
「赤羽も、椎名も、奥田も。
理由はどうあれ、クラスの為に動いてくれてる。
だから、私達は三人が不幸で終わるところを見たくはない。
…………でも、もし、奥田が自分の想いに気づいて、赤羽と付き合ったら。
椎名は間違いなく、二人から距離を取るの」
「…………えぇ。椎名様は、そういう人なので。
…………そして、奥田さんも赤羽も、そうなったら気付くでしょう。
────そうなってしまえば、二人は幸せに付き合えなくなってしまいます。だって、そういう人達なので」
「…………その辺りは、シュウと私たちとの大きな違いだね。
私も真澄も、勿論シュウも。
お互いに傷付いても、それでも幸せに付き合えないなんてことはない」
「…………そうね。私達はそれを覚悟の上で、お互いの想いを打ち明けた。
でも、椎名達はそれが出来ない。
────だって、赤羽がどっちを選ぶのかなんて、分かりきってるから」
そう、か。
それはそれとして。
私、凄く恥ずかしかったので。
「────そう。じゃあさ、私、どうして渚くん好きになったのか話すから。
好きな人がいる人は、ちゃんと話してね?」
「構わないわ。話を振ったのは私だもの」
「うぇぇ、マジィ?」
「………覚悟決めましょう。九十九先輩」
私、堀北さん、神室さん、九重先輩。
この四人が、今のところ対象者で。
「あー、まぁ、楽しませて貰うわね」
「あれ?伊吹さん、冬休みに山内くんと二人で映画行ってたって話だけど?」
「………黙りなさい木下」
「そういえば、体育祭の綱引きで山内の名前叫んでたわね?」
「………黙りなさい神室」
「そうそう。生徒会にはね、施設の不備も報告されるの。
だから、私は知ってるわよ。あなたと山内くんが、真夏のエレベーターに十五分も閉じ込められてたことも、ね」
「それ以上喋るな堀北っ‼︎」
「真夏、密室、二人きり。何も起きないわけもなく──」
「九重九十九っ‼︎アンタを殺すっ‼︎」
「うぎゃぁあ‼︎」
よし!ターゲットがさらに一人増えたねっ!
一人減ったけど。
あ、神室さん蘇生勉強してるのかな、復活した。
よし!一人増えたねっ!
「ふー、じゃ、じゃあ、その、話すよ?」
うぅー、自分で言ったことだけど、なんか、恥ずかしい。
その日の夜、みんなでの恋バナが盛り上がっていた。
堀北さんの糖分十三割増しの惚気で、夜なのにブラックコーヒー缶を合計二十本は消費して。
伊吹さんのツンデレケンカップルっぷりを揶揄って。
神室さんと九重先輩の恋愛ガチバトルの様子に、みんな固唾を飲んで聞き入って。
まぁ、総合的には、とても、楽しかったんだけど。
「あー、私が学秀に惚れた理由?
まぁ、その、色々あるんだけど、一番のきっかけは、
「───そ、そう、なんだ」
あっはははは。
まぁ、出来る限り、忘れてたかったんだけどね。
あー、嫌な事、思い出しちゃったなぁ。
めんどくさくて嫌なものを抱えながら。
三日目は終わったのでした。