恋愛に倫理なんていりません。
二股なんて日本では許されないことなどよく知っています。
それでも、私は。
愛美さんを傷付けたくなくて。
でも、どうしても、カルマくんが好きになったから。
だからこうして、あなたを、騙します。
二月十三日 土曜日。
「え、えっと、その、これが、ひよりさんの頼んでいた、媚薬、です。
効果は、その、半日程度、です」
「ありがとうございます。愛美さん」
「でも、その、本当に、盛るんですか?」
「ふふふ、勿論です。
愛美さんも、好きな人と、そういうことしたくないのですが?」
「…………しょ、正直、その、したい、です」
「あぁ。愛美さんは、本当に可愛らしいですね」
さて、準備しましょう。
チョコを渡すのは明日の十五時。
効き目は半日なので深夜三時までですね。
つまりそれまでは誰にも見つからない部屋が必要なのですが。
合宿所の奥の角部屋なら誰にも見つからないでしょう。
………それはそれとして万が一があってはムードが台無しです。
こういう時に手を貸してくれる人が一人いるのは感謝ですね。
「木下さん。ここで明日の夜三時まで、見張をお願いしますね」
「勿論です椎名様っ!」
よしよし。
これで万が一の時は、すぐさまベランダから脱出できるようになっています。
脱出するまでは、木下さんに足止めしてもらうとしましょう。
「ううむ、このお部屋、床と壁しかありませんね。ほとんど掃除もされてません。
仕方ありません。お掃除して、テーブルと椅子と、それからお布団も運びましょう」
こういう時は、伊吹さんです。
Cクラス女子一番の力持ち。
本当に頼りになります。
お布団一枚と、お茶会用のテーブルと椅子三つ。
壁や床が殺風景ですが、仕方ありませんね。
「…………ねぇ椎名。あんたの頼みだから正直に聞いたけどさ、ここで何するつもりなの?」
「うふふふふふ。内緒です」
「…………あっそ」
さて、チョコを作りましょう。
お料理はたくさん練習しましたし、私の腕も間違いなくレベルアップしています。
その上で、私の知るいちばんの料理上手の手も借りましょう。
キッチンで準備して、チョコ作り開始です。
さて、スピーカーで通話を繋げます。
『あ!お電話ありがとうございます椎名さんっ!』
「えぇ。お久しぶりです。なでしこさん。すいません。中々キャンプ出来なくて」
『いえいえそんなっ!全寮制の東京の高校なんて、ほんとうに大変でしょうしっ』
各務原なでしこさん。
本栖湖キャンプで知り合った、山梨県の女子高生。
たまに連絡を取り合うのですが、本当に料理上手でネット上でレシピを公開しているのだとか。
お菓子作りも知っているそうなので、手を借りたいですね。
『メールでもう読みましたけど、チョコレート作りたいんですよねっ!
やっぱり赤羽さん宛のチョコですかっ!』
「ええ。それで、なでしこさんにアドバイスを、と」
『いくらでも聞いてくださいっ!こう見えて、お菓子作りも得意なんですよっ!』
「ふふ。頼りにしてます」
『さてっ!どんなチョコを作りたいんですか?』
「一口サイズで、その、中にソースが仕込めるチョコを作りたいんです」
『ふむふむ。一口サイズ………中にソース………ウィスキーボンボンみたいなやつですねっ!』
「ふふ。確かにそうですね」
中に仕込むのは、ウィスキーなんて可愛いものな強力媚薬ですけれど。
愛美さんお手製ですからね。
『中にソースを仕込むやり方なんですけど、シリコン製の型とかありますか?』
「えぇ。ちゃんと、ハートの型です」
あぁ。早く、このチョコを食べて欲しいです。
そうして。そうして私たちのことも………。
『おおっ、凄くいいですねっ!
じゃあ、湯煎したチョコを中に入れながら、スプーンとかで塗り広げるように、行き渡らせてくださいっ!
温度管理は丁寧に!体温と同じ温度を意識すると、口の中でとろけて、甘さがいっぱいに広がりますっ!』
「…………ふむ。こんな、かんじ、ですかね」
むむ?これで良いんでしょうか?
『ちょっとビデオにしますね。カメラで撮ってくださいっ』
「どうでしょうか」
『お、良い感じですっ!余分なチョコは、ひっくり返して落としてくださいっ!』
ふむ。こんな感じですかね。
『あっ!それだとちょっと落とし過ぎですっ!ソースが漏れちゃいますっ!』
「む、むむむ、難しいですね」
ですが、難しければ難しいほど。
手間をかければかけるほど。
愛を感じるとは、思いませんか?
『頑張りましょうっ!椎名さんっ!
赤羽さんを、メロメロにしちゃうんですっ!』
「えぇ。そのつもりですよ。なでしこさん」
まぁ、メロメロ(意味深)ですが。
あぁ。なんだか少しだけ、ゾクゾクします。
う、うふふふふふふふ。
カルマくんの体力は凄いです。
そこに、奥田さんの特製媚薬なんて追加してしまったら、どうなってしまうんでしょう。
あぁ、私たち、どれだけ、
『よしっ!良い感じですっ!そしたら冷蔵庫に入れて完全に固めてくださいっ!固まったらソースを入れて、上からチョコレートで蓋をして、完全に固めて終わりですっ!』
‘
三時間後。
完全に固まってますね。
「よし、では、ソースを入れますね」
『およよ?ソース、もう出来てるんですか?』
「ええ。私の大好きな親友が、作ってくれたんですよ」
『おおっ!じゃあ、親友さんとの合作ですねっ!』
「ええ。バレンタインにぴったりです」
『そうですねっ!』
そこで、各務原なでしこは、首を傾げた。
(あれ?親友さんの作ったソースを入れるってことは、椎名さんお手製とは言えない、よね?
あれれ?なのに、バレンタインにぴったり?
どゆこと?)
親友が
(…………まいっか!)
特に気にしないことにした。
『蓋のチョコレートも、テンパリングを忘れずに、三十六度でっ!』
そうして、再び冷蔵庫へ。
三時間後。
「おお、完璧ですね」
『ええっ!後は崩さないようにはずしてっ!箱に入れて、完成ですっ!』
15センチの正方形の箱。
それに、仕切りを四つ入れて、九つの一口チョコを丁寧に。
体温で溶けてしまうので、ギリギリまで冷蔵庫に入れて、クーラーボックスに閉まって持ち運びましょう。
さて、それまでは、しっかり、冷蔵庫に。
もう、夜ですね。
「………夜遅くまで、ありがとうございました。なでしこさん」
『お気になさらずっ!椎名さんのためなら徹夜でもっ!
うふふふ、明日っ、頑張ってくださいねっ!』
「───えぇ。勿論です」
電話を切って。
さて、最終確認です。
直接カルマくんをお茶会に誘いたいんですが、彼女持ちのカルマくんを私が誘うと、まるで私が愛美さんからカルマくんを取ろうとしている悪女になってしまいます。
なので、榎中くんを通じて呼び出します。愛美さんからの伝言、という体で。
愛美さんは控えめな人でもあるので、彼氏の友達に伝言を頼んでもおかしくはありません。
直接誘わせるとボロが出そうなので、ギリギリまで部屋にいてもらいましょう。
まぁ、悪女になってしまうと言いましたけど、やってることは完全に悪女なんですよね。
催眠の代わりに媚薬で、カルマくんの正気を奪って、既成事実で、私と愛美さんとの二股を認めさせてしまう、という作戦ですし。
まぁ、その、流石に妊娠したら退学してしまうので、そこはどうにかしないと。
……………………………どうしましょう。
ゴムなんて売ってる筈ありませんし。
コンビニまで行きましょうか。
でも、もう門限過ぎてます。
日付、変わりそうですし、麓まで行くと流石に……。
明日の十五時までに買いに行けば……。
昼間からゴム買ったりしてたら店員に顔覚えられてしまいます。
学校に連絡行ったら終わりです。
……………そもそも、カルマくんのサイズ、分かりません。
……………あ。
た、確か、一、二年生男子は、大きさ比べやってた筈、です。
聞きに行けば、サイズは………。
そんなド下ネタ聞ける筈ありませんっ‼︎
ど、どうしましょう、どうしましょう。
むむむむむむ。
あ、確か、南雲先輩はおっしゃってました。
綾小路くん達がでかいと。
ゴムについてはあまり詳しくありませんが、一番大きいサイズなら間違いはないでしょう。
よし。森に行って、綾小路くん達から、いくつか譲ってもらいましょう。
そうと決まったら、即行動です。
この一週間で、真っ暗闇の中、この森に来てましたからね。
もう迷うことはありません。
例の木の下に近付くと、声が聞こえてきます。
ケモノのような人間の声。
今は、堀北さんの番のようです。
そーっと、そーっと、バレないように。
脱ぎ捨てられているお三方の服のポケットに、たくさんあります。
未開封の一箱、ゲットです。
まぁ、一箱あればオッケーでしょう。
帰る前に、チラリと、堀北さん達を見ます。
わ、わぁ、堀北さん、思いっきり抱え上げられてます。あの姿勢だと、体重も掛かって深いところまでいじめられてしまうはずです。
よ、涎、撒き散らしながら、殆ど泣き叫んでます。
で、でも、やっぱり、笑って、ます。
悦んで、ます。
あぁ。
あぁぁ。
私も、カルマくんに、ああされたい。
乱暴に、徹底的に、
あぁなっちゃいます。
私もきっと、あぁなっちゃいます。
だって、カルマくんに、媚薬なんて盛ってしまったら、もう、もう。
明日が、本当に、楽しみです。
二月 十四日。十五時。
「こんな部屋でお茶会なんて、変じゃない?愛美さん──」
「こんにちわ。カルマくん」
「こ、こんにちわ」
あらあら。
うふふ、びっくりしてしまってますね。
しょうがありません。彼女以外にも、女友達がいるんですから。
「…………どうして、ひよりさんも?」
「カルマくんに、チョコを作ってきたんです。
でも、彼女持ちのカルマくんに渡してしまうと、問題が起きてしまうでしょう?
なので、こうして、コッソリと」
「…………ひよりさんが、周りの噂とか気にするとは、思えないけど」
「うふふふ、以前だったら気にしませんでしたが、カルマくんは生徒会ですし」
「…………まぁ、それもそっか」
カルマくんが、椅子に座ります。
さぁ。
召し上がって、ください。
「じゃーん。見てください。
これ、なでしこさんからアドバイス貰いながら作ったチョコです。
凄いんですよ。口の中に入れると、体温で溶けて、中のソースが口の中に広がってしまうんです」
「ふーん。凄い頑張って作ったんだね」
「えぇ。ほら、早速食べてください」
「うん。いただきます」
カルマくんは、一つを摘み上げて。
口の中に、入れて───。
「ひよりさん。はい、あーん」
「あーん」
……………………あ。
はんしゃで、たべちゃい、ました。
だっ、て、すき、な、ひと、が、あーん、する、から。
くちのなかで、ちょこが、とけて。
とけたちょこと、からみあったびやくが、わたしの、なか、に。
ズグン、と。
私の、丹田のあたりから、熱が、全身に駆け回ります。
あ、これ、強す、ぎ。
そ、即効性も、た、高いん、です、ね。
愛美、さん。流石、です。
「はーっ、はーっ、はーっ、はーっ、ぁ、あ、あぁ」
「どうしたの?ひよりさん。大丈夫?」
「ら、らい、じょうぶ、れしゅ」
「そっか。じゃあ、はい、あーん」
「あ、まっ、やめっ」
「───隙あり、だよ」
「あむっ」
口開いたの失敗でした。
二個目、ねじ込まれちゃいました。
また、チョコと媚薬が、絡まり合って。
失敗です。失敗しました。
確実に、気付かれても、媚薬飲ませられるように。
吐き出さないように。
そうして、こういうチョコにしたんですが。
初歩的なミスです。
カルマくんが吐き出せないなら、私も、吐き出せません。
二個目の媚薬が、私の胎内を虐みます。
汗が止まりません。
息が、荒れ狂います。
あ、下着、ぐちゃぐちゃ、です。
せっかく、かわいくて、きれいなの、つけてきた、のに。
「ぁ、ぁ、はー、はー、はーはーはーはーっ
あ、あぁ、あ、あー」
「あーあ、ひよりさん、酷い顔してるよ?」
言われなくてもわかってます。
涎と涙と諸々でぐちゃぐちゃです。
失敗しました。失敗しました。失敗しました。
「ぃ、ぃ、いつ、からぁ」
「…………ひよりさん達が、下の名前呼びになってたときから、かな」
「ぅ、ぅ、ぅぅぅぅぁぁ」
思わず、泣いてしまいます。
だって、だって、だって。
絶対、嫌われちゃいました。
「ぅ、ぅぅぅ。
わ、わらしぃ、かりゃま、くん、が、しゅき、でぇ」
「……………うん」
「れも、れもぉ、まな、まなみさん、も、しゅき、でぇ。
とりぇ、なくてぇ。
りゃかりゃ、りゃかりゃ、あやの、こうじくん、みたいにぃ」
最悪です。
最悪の告白です。
媚薬飲ませようとして。
媚薬飲ませられて。
言語も覚束ない中で、縋り付くような、告白なんて。
惨めすぎます。哀れすぎます。辛すぎます。
罰というには、重すぎます。
「………………ごめんね。ひよりさん」
「──────ぅぁ」
カルマくんが、謝ります。
「………………ごめんね」
「ぁ、ぁ、ぁぁ、あ」
もう一度、謝ります。
「………………俺も、好きだよ」
「─────────────」
媚薬でぐちゃぐちゃの思考が、一時的に、正常に、戻ります。
え、え?
え?
今、なん、て?
「……………愛美さんに、告白されてから。
……………しばらくは、浮かれてて」
ある日、組み手中の龍園に、言われた。
『おい。お前、椎名は良いのかよ?』
『………?なんで?』
『ちっ、の、クズがっ!』
『うぇっ、ちょ、急に、どうし──』
『テメェっ、いつまで目ぇ逸らしてんだぁ⁉︎
俺が殺してぇのは、そんなクズやろうじゃねぇっ!』
『だからっ、ひよりさんが、なんだって──』
『ほんとは気づいてんだろ!
テメェが椎名を好きなこともっ!
椎名がテメェを好きなこともっ!』
『───────────────』
『俺が殺してぇのはっ!
俺が超えてぇのはっ!
俺が憧れたのはっ!
今のお前じゃねぇっ!』
初めて、龍園に、負けた。
龍園に言われて、俺は、気付いた。
気付いて、しまった。
『あーあー、言われちゃったなぁバカルマ』
『……………准』
『ま、俺も同意見だけど。
別に良いだろ?綾小路も、金石先輩も、同じことしてんだぜ?
お前に出来ない道理はないだろ?』
『………………………でも、俺、は』
あの日。
卒業して、暫く経った日。
久しぶりに、愛美さんに会った。
なんて事ないデートの日。
なんとなく、気になってはいたし、チョコ貰えて浮かれるぐらいの女子ではあったから、嬉しくて。
でも、その日は、まだ。
愛美さんが、本気で好きな訳じゃなくて。
二人で、のんびりコーヒー飲んでいるうちに。
窓の外を、堀北さんが、通り過ぎたから。
なんとなく、綾小路のことを話した。
お互いに、あいつの思い出話で盛り上がって。
不意に、溢した。
『…………ほんっと、勝てる気しないわぁ』
『?カルマくんなら、勝てるんじゃないですか?』
『───────』
あの教室にいる奴らで。
綾小路に勝てるかも、なんて考えてる奴らは、渚以外一人もいなかった。
みんな、綾小路が最強だって認めてた。
俺も、イトナも、誰も彼も。
堀北さんと櫛田さんは、確かに綾小路に勝ったし、間違いなく、アイツの心を射止めたけど。
じゃあ、それで彼女達が、綾小路よりも強いかって言われたら、そんな事なくて。
俺は、ずっと、敗北感を抱えてて。
『なん、で』
『だって、カルマくんは、諦めませんから』
強いんじゃない。
諦めないから。
あっさりと、本心から。
俺が、勝てると、信じてくれる。
『…………そう、だね』
『そうです』
そんな人だから、俺は。
この人が、心から、好きになって。
そうして、この学校で。
口では偉そうなこと言ったけど、綾小路に勝てないかもって、そう思って。
どうやって龍園を育てようか、とか。
どうやってこのクラスを勝たせようか、とか。
そんなことを考えながら、愛美さんの実験を見ていて。
で、まぁ、小宮たちが何かし始めて。
そうして、ひよりさんの誘導に気付いて。
興味を抱いたから、話を聞きに行って。
そこで。
『良い先生だったんですね。その人は』
『化物でも、良い先生はいるでしょう?』
『あなたたちが言っているのか言わされているのかぐらい、分かりますよ』
俺は、嬉しかった。
E組での思い出は、E組の中でしか共有出来なくて。
それで良いって、思ってたんだけど。
あっさりとひよりさんは、受け止めてくれたから。
だから、本当に、嬉しくて。
無人島試験で、綾小路の目論見をぶっ壊してやるために。
今度こそ、アイツに勝つために。
文字通りの禁じ手で、全部をぶっ壊そうとして。
愛美さんとひよりさんも、ぶっ倒れて。
俺は、犯しては行けない間違いを、犯して。
船上試験で、ひよりさんが、あっさりと退学をかけて。
俺は、心から。
ひよりさんが退学になるのが、嫌だと思って。
あのバカどものせいで、ひよりさんまで俺らの戦いに巻き込むことになったり、ひよりさんと愛美さんの良くない写真とか撮らされたり。
体育祭で、クラスが本当に一つになって、初めて綾小路に勝てて。
選挙のとき、ひよりさんがもう退学にならないってなって、心から安心して。
ペーパーシャッフルの時、ひよりさんが、メンタルトレースなんて危ないもの身に付けて、心配して。
テントの時、ひよりさんの穏やかな笑顔に、安心して。
愛美さんに告白されて、心から嬉しくって。
でも、何か物足りなくって。
龍園に初めて負けちゃって。
准のやつに背中押されて。
あぁ、俺、ひよりさんも、好きなんだって、気付いた。
…………ううん。目を逸らしてたものを、直視した。
だから、准から、真剣な顔で伝言を聞かされた時。
ここに来る途中で、伊吹に、ちゃんと答え出せよって、怒鳴られながら背中蹴られた時。
部屋の前で、木下が、震えながらも、椎名様を泣かせたら許さないって言ってきた時。
俺も、クソ野郎になる覚悟を、決めた。
「………言うの遅くなって、本当にごめんね。
俺も、ひよりさんが好き。
俺は、愛美さんも好き。
まぁ、その、すごく最低な提案なんですけど。
二人とも、付き合ってくれませんか」
「………私は、それでも、良いですよ。
まぁ、その、他の人だと、やだなぁって思っちゃうんですけど、ひよりさんなら、良いかなぁって」
「………わ、わらひ、は、もと、から、そのつもり、なの、でぇ」
…………………なんか、奇跡の逆転満塁ホームラン決まったみたいです。
もう終わったって、諦めてたんですけど。
なんか、うまく行きました。
「………あ、あの、ぎ、ぎもん、なん、です、けど」
息を切らしながら、問いかけます。
「………なんでわたしにびやくのませたんですか?」
分かってたら食べなければ良いだけの話では?
カルマくんは、僅かに頬を上気させながら、悪い笑顔を浮かべました。
「ひよりさんの、今みたいな、情けない姿、見たかったから」
「………………あ、あ、あくむぅ」
「三個目、あげる。もうあげたけど」
「………………はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
「四個目、食べよっか」
「や、やらやらやらやらやらやらやぁ」
「はいあーん」
「やら、やら、やぁぁむ」
九個合ったチョコレートのうち、四個、食べさせられちゃいました。
胎内から、全身の毛細血管に至るまで、熱が広がっているのを、感じてしまいます。
悪魔です。
本当に、カルマくんは悪魔です。
「…………あむっ」
「うぇっ、ちょ、愛美さんっ⁉︎」
「ん、んーっっっっ」
羨ましく思ったのか、愛美さんも、自分から一つ食べました。
あー、もうどうにでもなれです。
「も、もう食べない方が」
「ひ、ひよりしゃんばかりじゅるいれしゅ!」
「いや、そういう話⁉︎」
「あむっ、あむっ、あむっ、〜〜〜〜っ!」
一気に追加で三つ。
合計四つ食べちゃいましたね。
机に突っ伏しちゃいましたね。
身体中細かく痙攣してますね。
色っぽく息を荒げてますね。
あと一個だけ残ってますね。
バレンタインですし。
机の上に、乗り出します。
あ、これほんとにだめですやばいです。
ふくがはだにふれるだけででんりゅうのようなかいかんが。
あ、いま、わたし、はてました。すかーとまで、ずぶぬれです。
はしたない、こえ、もれてます。
なんとか、ふるえるてで、さいごのいっこを、つまみあげて。
かるまくんの、くちもとに。
「わ、わたし、たちの、おてせいちょこれーと、です」
「あ、はぁ…………ぜひ、めしあがって、くらはい」
体温で溶けてしまうので。
外のチョコレートが溶けて、指を伝い始めて。
媚薬が、こぼれ落ちそうに、なって。
「───、覚悟は、いい?」
肉食獣の目をしたかるまくんは。
溶け始めた、私たちのおてせいちょこれーとを、食べて。
ちょこがたれた、わたしのゆびを、したでねぶりながら、きれいになめとって。
ゆびをねぶられるだけで、わたし、はてちゃいました。
まなみさん、やりすぎです。
「………あ、こりぇ、ひにん、やく、でも、ありゅ、のれぇ」
「はーっ、はーっ、はーっ、はーっ、ふーん?
そんな、あおって、くれちゃって、さぁ」
そんなのわたししりませんでした。
まなみさん、すごすぎです。
さぁ、これから、わたしたちだけの、ばれんたいんぱーてぃーです。
たーっぷり
心ゆくまで。
「「めしあがれ」」
悪魔です。
私が、私たちが好きになった人は、本当に悪魔です。
夜の悪魔は淫魔でした。
薬でぐずぐずのぐじょぐじょになった私たちを、さらに沢山、いじめてきました。
初めてキスして、そのまますぐにだなんて、あまりにも倒錯的です。
ファーストキスはレモンの味だなんて嘘っぱちですね。
ファーストキスはチョコの味でした。
夜の三時まで、私たちは、悪魔に蹂躙され尽くしました。
腰から下はもう痙攣しすぎて、まともに立てませんので。
その、翌日の訓練は、体調不良でズル休みしました。
私たち、どうしようもない悪い子になっちゃいました。
ぜーんぶぜーんぶ何もかも
もう、絶対に、
次回からは真面目に。