チームを入れ替えてフラッグ争奪戦を繰り返した一週間が終わり、再びの土曜日。
オレと鈴音と桔梗は、今度はちゃんと、鈴音のお婆さんの家に来ていた。
鈴音のお婆さんの家は、古風で歴史のある古民家だった。
「全く。自分たちのイチャイチャに私を巻き込むんじゃないよ」
「ごめんね。お婆ちゃん」
「本当にごめんなさい」
「ごめんなさい」
「別に良いけどね。お茶も和菓子も美味しかったし。
まぁ、アンタら全員墓参り手伝いな」
「最初からそのつもりよ」
柄杓と、家紋入りの木製のバケツに、線香が数本。それから、柔らかい匂いの菊の花。
墓参りか。初めてだな。
「もしかして堀北家って、その、結構古い家なのか?」
「歴史だけはある普通の家よ。苗字を名乗れたのは平民苗字許可令からだもの」
「諏訪──長野県の方から、確か、江戸時代頃に鎌倉に移り住んで、今に至るって感じだねぇ」
「なるほど。そうなんですね」
「あぁ。そう聞いてるよ。堀北の由来は知らないけどね。
ま、どうせ堀の北に家があったからだろうね」
家の歴史か。
正直、オレの家にはあまり興味がない。松雄家ならあるが。
先祖代々続いている家。
確か、白銀先輩のところは、結構な名家なんだったか。審判をしてくれた時も、育ちの良さとでも言うべきものが感じられる人だった。
鈴音もまた、堀北という家に生まれたからこそ、今のような人になったのだろう。
そういう繋がりがあったから、鈴音が堀北鈴音だったから。
オレは、きっと
「墓参り、かぁ。
ねぇ二人とも。堀北家の墓参り終わったら、櫛田家の墓参り行ってもいい?」
「別に構わないけれど、桔梗さんも鎌倉に?」
「うん。お爺ちゃんもお婆ちゃんも、もう死んじゃってるけどね」
堀北家の墓は、随分と綺麗だった。
頻繁に手入れされているのだろうと考えられる墓だった。
作法それ自体は少しだけ知っている。
確か、挨拶してから掃除して、水と花をあげて、線香と合掌して、片付け、か。
お供物は持ち帰るか、お墓に必ず残す場合もあるようだが。
堀北家はどうやら後者らしい。
「掃除と、後お花のお供え終わり、だね」
「なんだい。あんた鈴音と同じくらい綺麗好きだね」
「そうですね。綺麗にするのは楽しいですし、それに、親友のご先祖さまたちのお墓ですから」
「ふぅん。ま、内心がどうあれ、ご先祖様もきっと喜んでるだろうよ」
「…………そうですね」
桔梗の裏もあっさり気付いているのか。
なんだか凄いな。年の功ってやつか。
「えっと、線香って、どれくらいあげれば良いんですか?」
「あげたいだけあげな」
「…………それだと、多分、これだけじゃ足りないです」
「なんだい。そんなに感謝したいのかい?」
「えぇ。この人たちがいないと、鈴音に会えませんでしたから」
「ふん。二股坊主と聞いた時は、とんだ浮気者だと思ってたけど、そこまで想えるなら安心だねぇ」
「お婆ちゃん。少し黙ってよ恥ずかしいわ。清隆くん。ある分だけあげなさい」
「あぁ」
線香をあるだけあげながら、合掌して、心の中で、謝罪と礼と、決意表明をする。
浮気者でごめんなさい。
鈴音と会えたのは、あなたたちのお陰です。ありがとうございます。
隣で必ず、一生幸せにします。
「さて、こんなところでいいよ。アンタらは、櫛田さんちの墓参りに行きな」
「え、でも」
「私は一人でも帰れるよ。そこまでお年寄り扱いしないでくれ」
「大丈夫よ桔梗さん。お婆ちゃんなら、本当に大丈夫だもの」
「そう、ですか」
「その、今日は、ありがとうございました」
「墓参りで礼を言うなんて、不思議な子だね。
何も楽しくないだろうに」
「はい。謝罪と礼と決意表明が出来て、その、嬉しかった、ので」
「…………そうかい」
墓園の入り口で別れて、また、別の墓所へ。
櫛田家のお墓もまた、綺麗ではあった。
ただ、あまりお墓参りはされていなかったのか、所々に、僅かな汚れが。
「ま、遠いし、うち共働きで忙しいからね。
実家とちょっと距離あったし。
……………今となっては、そういうところに少し不満があったから、あんなことしてたのかも」
三人で丁寧に掃除して、お花を供えて、線香をあげて、合掌してお祈りする。
謝罪と、礼と、決意表明。
浮気者でごめんなさい。
桔梗と会えたのは、あなたたちのお陰です。ありがとうございます。
隣で必ず、一生幸せにします。
墓所を歩きながら、桔梗は自身の家のことを話し出した。
「………櫛田家は、ずっと古くから鎌倉に住んでいた家なんだって。
だから、お父さん家出る時ちょっと喧嘩みたいなのしちゃったらしくて、お墓参り、あんま来れてないの。
お寺の人がよくお手入れしてくれてるから、凄い綺麗なんだけどね」
「そう、だったのか」
そうなると、オレたち三人が結婚するときは、鎌倉に住んでみるのも悪くないかもしれないな。
自然も豊かで、過ごしやすい街だし。
観光客が多いのは少し面倒か?
「そこまで家の歴史が分かっているなら、苗字の由来とかも知ってそうね」
「あぁ、うん。
確か、元々は刀鍛冶だったんだけど、刀狩りであんまり売れなくなって、金属製の櫛の職人に転職したんだって。まぁ、江戸の頃には廃業してたらしいけど。
それで、平民苗字許可令の時に、櫛田って苗字になったらしいよ?」
「安土桃山時代に転職なんてあったんだな」
「転職なんて大体どの時代にもあるでしょ」
しかし、そうか。
桔梗の家、元々櫛職人だったのか。
オレたち三人が墓所から出る丁度そこで、卜部先輩とあった。
「…………あら、あなたたちもお墓参りを?」
「はい。先輩もですか?」
「えぇ。お父さんの実家、鎌倉だったもの」
「なんだか、鎌倉にルーツを持つ家の人多いですね」
「偶然、にしては、少し出来過ぎかもな」
「にしても意外ね。桔梗さんと卜部先輩の墓所が、同じ寺にあるだなんて」
「あら。案外、先祖のどこかで血が繋がっているのかもしれないわね」
「鈴音の家も鎌倉に移り住んでいたみたいですし、案外私たち、辿ってみたら親戚かもしれませんね」
なんとなく、先輩も交えた四人で、のんびりと散歩することになった。
まぁ、別にデートというわけではないし。
後、その、な?
「あぁ、そうそう。
試験が終わったら、堀北さんに少し手伝ってほしいのだけれど」
「構いませんよ。………その、頑張ってください」
「えぇ。勿論」
そういえば、さっき鈴音と桔梗の苗字の由来を知ったから、少し気になるのだが。
卜部先輩の苗字の由来、どんな感じなんだろう。
知っているのか?
「卜部先輩は、自分の苗字の由来とか、知っているんですか?
古代から続く祭祀貴族の家とかですか?」
「いえ、それは違うわね。
元々、占いとかを良くしていたらしいのよ。
それで、卜部氏にあやかったらしいわ」
「いつ、どこからここに住んでいたのか、とかは知らないんですか?」
「そうね。殆ど知らないわ」
「占いとかよくしてたってことは、神職の家系だったりするかもしれませんね」
「およ?藤乃に清隆に、堀北に櫛田?」
と、今度は緋音にあった。
緋音も墓参りしていたのか、家紋入りの木製バケツと、少し萎びた花を持っていた。
「あら、あなたも鎌倉にルーツがあったのね。知らなかったわ」
「まー、基本学校から出ないからね。世間話で話すようなことでもないし。
もってことは、清隆たちも?」
「オレは、鈴音と桔梗について来ただけです。
謝罪と礼と、決意表明を兼ねて」
「ふーん。なるほどねぇ」
「あ、今、苗字の由来とか話してたんです。
桃井先輩は、何か知ってますか?」
「あんま知らないなぁ。あーでも、家は代々武道場やってたよ。
あ、わたし、爺様にこれ返してくるから」
「はい。また」
緋音と別れて、合宿所に戻る。
しかし、これほど鎌倉に縁のある人が集まっているなんて、運命的かもな。
同時刻、京都。
金石博と、黄乃珠紀と、真白珠莉、それから白銀園子は、金石家の墓参りに訪れていた。
「久しぶり。父さん。母さん。もう、十年振りだね」
「博。それよりも聞きたいことあるんだけど」
「殆ど来れなかったから、大掃除しようと思ってたんだけどね」
「痕跡的に、直近一ヶ月程度ですね」
「やれやれ。実の息子に連絡もなしかい?」
既に大掃除された後の墓を見て、三人は誰がここに来ていたのかを察して、少し笑ってしまった。
それはそれとして、珠紀は、再び質問する。
「ねぇ博。なんで白銀もお墓参り来てるの?」
「………元々、金石家は、結構な名家だったのよ。
だから、まぁ、嘗て親交のあった家のものとして、ね」
「え、そうだったの?」
「僕も昨日知ったけどね」
白銀園子は、語る。
金石家にあった不幸を。
「金石家は、相当な歴史を持っていた家よ。
けれど、戦後の不況、オイルショック、それからリーマンショックとか、兎に角色々な不況の煽りを受けて、先先代の当主、つまり、博のおじいさんの頃には、破産寸前だったのよ。そして、一家心中を計って、末っ子だった博のお父さんは、奇跡的に生き延びた」
「…………そう、だったの」
「…………翡翠先生は、知っていたのでしょうか」
「知ってたからこそ、博には教えなかったんでしょう」
心中から奇跡的に生き延びた少年が、しかし家族の借金を受け継がないために相続放棄し、思い出も何もかも捨て去って、それでも懸命に生きて家族を作り、そして不幸な事故にあって死んだ。
そんな事実、教えられるわけがない。
「名家、と呼ばれる家の中では、金石家の末路はタブー視されているわ。
特に私のお母様なんかは、ね」
下賤のもの。
それは、金石博が、孤児だからではない。
没落し、誇りを失い、家族を巻き込んで死のうとした、愚か者の家だったから。
「ま、僕にとっては、あまり関係なかったけどね」
「……あなたは、そういうだろうと思っていたわ」
そうして四人は、墓参りを始める。
軽く落ち葉を払って、乾拭きして、少しだけ萎びた花は捨てずに、追加で買って来た花を添えて線香をあげて、合掌する。
謝罪と、礼と、決意表明。
十年も来れなくてごめん。
僕と姉さんを産んでくれてありがとう。
復讐は必ず果たすけど、それが終わったら、僕も幸せに生きる。正直今もだいぶ幸せだけどね。
黄乃珠紀も、同じように。
謝罪と、礼と、決意表明。
その、息子さんに二股させてごめんなさい。
博と麗さんを産んでくれてありがとうございます。
隣で一生、幸せにします。
真白珠莉は、二人とは少し違って。
礼だけを。
博と麗さんを産んでくれてありがとうございます。
白銀園子は、どこまでも、静かに。
「…………じゃ、戻ろっか」
そうして、四人はお供物を埋めて、墓所を立ち去ろうとして。
墓所に似つかわしくない華やかな気配を感じ取った。
「おや、君もかい?金織」
「えぇ。しかしまさか、あなたと同じ墓所だとは思いませんでした」
金織美浪と、真白珠莉と、金石博。
三年生トップの美形三人が揃っているので、墓所なのに何故だか華やかな気配だった。
「───あら、美浪たちも?」
「なんだか、墓所の雰囲気ではないですね」
墓参りに来た占藤メメと、無理を言って彼女について来た橘茜は、墓所らしからぬ雰囲気に気付いて、美形トップスリーが集まっていることに気付いた。
占藤参戦によりトップフォーになったが。
この世に未練を残していた霊たちは、おそらく浄化されて成仏することだろう。
「占藤も、京都に?」
「まぁ、ね。………行きましょう。茜ちゃん」
「うん」
彼らと別れて、二人は、占藤家のお墓参りに。
丁寧に掃除して、花を添えて、線香をあげて。
帰り道で、不意に、占藤から話しかける。
「…………ごめんね。茜ちゃん」
「メメちゃんは悪くないよ」
「…………いいえ。私は、隠さなければならなかったの。
告白なんて、するべきじゃなかった」
「もう。自分を責めすぎだよ」
占藤メメは、自身の罪を告白する。懺悔する。
罪だ。そう、罪なのだ。
「…………後輩が、どれだけ私に後悔してほしくないと、そう思ってくれたとしても。
私は、後悔を抱え──」
「そういうの禁止です」
「…………………はい」
橘茜は、懺悔をぶった斬った。
そんなの聞くだけでちょっと辛いので。
「………メメちゃん。
メメちゃんは、私のこと、嫌い、かな?」
「………嫌えるわけない。
嫌えてたら、こんなに………」
堀北学と付き合った橘茜を、嫌えたのなら。
彼女と、親友でなくなっても良いと、心から思えたのなら。
そう思えたなら、どれだけ。
「………あなたは、命の恩人で。
でも、そんなことどうでも良いくらいに、あなたのその愛が、綺麗だった。
死んでも学くんの隣にいる、そんな覚悟に敬意を持った。
どんな時でも、まっすぐ向かい合ってくるところが、好きだった」
占藤メメは、橘茜に、憧れて、尊敬して、好感を持っていて。
だからこそ、嫌えなかった。
その、血を吐くような告白を受け入れて。
橘茜は。
告白した。
「………私も、ね。
メメちゃんに、憧れてたんだよ?」
「………そう、なの」
「うん。で、ちょっとむかっとしてた」
「………うぅ」
好きな人にそんな感情を抱かれていたと知って。
占藤メメの硝子のハートに、結構デカ目のヒビが入った。
「メメちゃんは、さ。
Aクラスで唯一、学くんと対等だったから」
「……………そう、かしら」
「うん。だって、学くんに何かを教えられたのは、メメちゃんだけだったんだよ?」
教え合いの関係。
それは、お互いに、最低でも同じだけの実力がなければ出来ない。
実力が下のものから何かを学ぶ時、上のものは教えられるのではなく勝手に盗んで学んでいるから。
メンタルトレースを堀北学に教えていた占藤メメは、同じだけの実力は持っていた。
「私は支えることしかできなくて。
元くんは、追いつくことしかできなくて。
翔子も、美浪も、追いつこうともしてなくて」
誰よりも先を走り続けていく堀北学に、追いつけたのは神田元だけで。
飛騨翔子も金織美浪も、最初から自分の道を走っていただけで。
どれだけ学んでも鍛えても、橘茜は支えることしか出来なくて。
占藤メメだけが、隣にいられた。
「だからずっと、メメちゃんが羨ましかった」
橘茜の、秘密にし続けていた告白を聞いて。
占藤メメは、驚いていた。
「そんなこと、考えてたの……?」
「うん。だから、学くんがメメちゃんを受け入れたとしても、納得するというか。
そんなに嫌じゃないというか。
私はほら、死んでもそばにはいるけど、助けることは出来なかったから」
堀北学が、誰かの助けを必要とした時。
助けを求めたのは、占藤メメだったから。
「だから、ね。
メメちゃんは何も悪いことなんてしてないんだから、そんなに自分を責めないで」
一人の少女は、静かに涙を流して。
一人の少女は、微笑みながらその涙を拭う。
二人の少女はほのかに笑いながら、並んで歩き出していた。
「………その、茜ちゃん」
「ん?なぁに?」
「最近、その、藤乃。
後輩の子がね。やけに私を応援してくるのよ」
「………もしかして卜部さんも、学くんのこと?」
「………まぁ、そうね」
「………………………」
死んでもそばにいるとは決めたが。
些か、その、なんというか。
女たらしが、すぎるのでは………?
「え、えぇ………?
ど、どうしよう、かなぁ」
「まぁ、その、茜ちゃんが嫌なら」
「うぅん。えぇ?そっかぁ」
凄く困った顔で。
橘茜は悩んでいた。
凄く凄く、悩んでいた。
「……………全く。藤乃ったら」
なんというか、その、吹っ切れてしまったのだろうか。
そんなことを考えながら、なんとなく墓所中に視線を走らせて。
ある一つの墓が、なんとなく、目に留まった。
十数年以上は、墓参りされていないのだろうか。
酷く汚れていて、掘られている家の名は、上半分が蔓に覆われて、その名の全容は分からなくて。
けれど───。
「……………まさか、ね」
読み取れる、その家の名は、『─小路』。
上が漢字一文字か二文字か分からないので、本当にそれなのかも分からなくて。
もし仮にそうだったとしても、決して珍しい苗字というわけではないから、同じ家とは限らない。
そう。後輩の家の、『
それに、別にそうだったところで何も変わらないので、それ以上は、気にしなかった。
さて、卜部と占藤。
この二家はどちらも占いを生業としていた。
嘗て、神職の家系だった。
この二家のルーツを遡っていくと、諏訪大社に辿り着く。
諏訪大社のある巫女と、その地に流れたある侍王子の子孫が、彼女たちのルーツ。
即ち、この二家は、
さて、金織。
この家のルーツは、京都の古い名家から分岐したものである。
その由来は、金のように煌びやかで美しい羽織を織っていたから。
全ては、長い歴史の中で完全に失伝したが。
ある婆娑羅大名の娘と、ある名家の遺児の子孫が、彼女のルーツ。
即ち、この家は、
さて、桃井。
この家のルーツは、信濃から江戸時代末期に鎌倉に移り住んだ、ある武芸者にして芸人が、井戸の中に落ちていた桃をなんとなく覚えていて。
平民苗字許可令の際に、なんとなくそれを苗字にしたのが、この家の成り立ちである。
彼女は興味がないので、知ろうとしなかったが。
ある
即ち、この家は、
さて、櫛田。
この家のルーツとなった刀鍛冶は、鎌倉時代から存在していた。
そう。
嘗て
即ち、櫛田家は、
さて、堀北。
この苗字の由来は、堀の北側に家があったから、ではなく。
いつかの先祖の願い。
苗字を名乗るのが許された時。
その苗字には、『北』の一文字を入れて欲しいという願いを、先祖代々伝え続けて。
そうして、平民苗字許可令の際、堀北を名乗ったことが、この苗字の由来であり。
その願いを残したのは、諏訪大社に由来する巫女であり。
即ち、堀北家は、
そして、金石と、綾小路。
実はこの家のルーツは、遡っていくと、ある一人の男に行き着いていく。
時代の境目に生まれ、文武の英才を活かす機会に恵まれず、されど五人の子宝に恵まれ天寿を全うした、
初代室町幕府将軍、
即ち、この二家は、
神とは、信仰故に存在する。
嘗て、北条時行の手によって、足利尊氏の中にいた悪神は討たれた。
しかし悪神は、長らく足利尊氏の中にあり、足利尊氏と同一に近い存在であった。
故に、足利尊氏への信仰も、僅かに悪神に流れ込んでいて。
祓われた悪神の、かけらのかけらのそのかけらが、七百年を超える時を超え、現代に。
されど、所詮はかけらのかけらのそのかけら。
歴史改変も未来視も成すことなどできず、誰かに取り憑けたとしても、大した誘導も出来はしない。
そうして、生き残った幸運な血族の少年に、かけらのかけらのそのかけらは、本能的に乗り移り。
しかし少年は、それの影響など殆ど受けず。
だが高校で、出会ってしまったのだ。
かけらのかけらのそのかけらは、本能的にその後輩に乗り移り。
故にその後輩は、
その後輩は、ずっと運が良かった。
そうして、容易く人を陥れることができた。
しかし、所詮はかけらのかけらのそのかけら。
千倍希釈された原液未満。
綾小路篤臣が、完全に敗北した時に、道連れとなって消えてしまう程度。
近い血筋の金石博に乗り移ったところで、なんの影響も与えられない程度。
だがここに、高い能力を持った息子がいる。
綾小路篤臣が、完全に敗北した時。
悪神のかけらのかけらのそのかけらは、
高い実力を持つが故に、かけらのかけらのそのかけらであれど、世界そのものに影響を及ぼせるようになってしまう。
だからこそ、本来は。
綾小路篤臣から乗り移った、悪神のかけらのかけらのそのかけらの影響で、狂ってしまった綾小路清隆が、世界そのものに悪しき影響を与えてしまう。
悪神にとっての、ハッピーエンドになってしまうはずだった。
『だからこそ、私はまだ、成仏する訳には行かないのですよ』
Q。何故、殺せんせーは、生徒たちの夢に現れることが出来るのか。
A。
人であった頃、彼は死
同業者に、
だからこそ、本来成仏するしかない霊であれど、現世に留まることができた。
吹けば飛ぶような弱小であれど、
だから彼は、己の死後、綾小路篤臣に、悪神のかけらのかけらのそのかけらがあることを理解した。
だから彼は、
かけらのかけらのそのかけらが、綾小路清隆に乗り移ろうとした時、捕まえて共に連れていく為に。
『ヌルフフフフフ。
安心して、綾小路篤臣を暗殺してください。
大丈夫です。余分なものは、私が連れて行きましょう。
生徒の未来は、ハッピーエンドでなければ!』
かけらのかけらのそのかけらが、綾小路清隆に乗り移りことなどあり得ない。
だって、マッハ20で変態スケベの、元人間現黄色いタコの超生物で、元殺し屋現教師が、ずっと見守っているから。
人を狂わす悪神のかけらのかけらのそのかけらは。
とっくのとうに詰んでいる。
最高の依代には既に、守り神がついているから。
そう。
殺せんせーは、最高の先生なのだから。
イメージ的には、よう実ワールドに松井ワールドがあるのではなく、松井ワールドによう実ワールドが入った感じです。
なので、綾小路篤臣の成功の裏には悪神のかけらのかけらのそのかけらが居ました。
本来勝って仕舞えばバッドエンドでしたが、殺せんせーがいるのでハッピーエンドになります。
まぁ、悪神でも居ないとこんなに上手くいく説明がつかなくね?って思ったので。
オリキャラ達は、松井ワールドによう実ワールドが入った結果、逃げ若キャラたちの遠い子孫だったり、として生えてきました。
飛騨と猫実は風間の遠い遠い子孫。
一期生たちのうち、戦闘技術の人は土岐の遠い遠い子孫。
科学技術の人は上杉ですね。
後付けですが。