作戦会議の時間 一時間目
試験のルールとして。
お互いに、三日前には争奪模擬戦のうち、三戦の録画データを相手方に送らなければならない。
送る際に、出来る限り隠したい情報を隠して選んだ。
つまり、渚の暗殺。卜部先輩の人力ミサイル。九重先輩と坂柳のドローンドッグファイト。緋音のリミッター解除を相手は知らない。
まぁ、向こうも隠したい情報は隠しているので、なんらかの隠し球はあるだろうが。
訓練期間は完全に終わり、無人島に向かうクルーザーの会議室で。
現生徒会と各クラス首脳陣を中心とした、作戦会議を開いていた。
つまり、この会議の議長は。
「───生徒会長として、今回の会議の議長を務めます。堀北鈴音です。
それでは、会議を始めましょう」
鈴音の号令の元、作戦会議が始まった。
まず、百五十三名の三年生から選ばれた、十九名の生徒のデータが表示される。
「模擬戦でお互いのことはよく分かっているので、まずは三年生の要注意生徒を十九名ピックアップしました。
要注意生徒だとややこしいので、特記戦力と呼称します。
特記戦力はSからCでランク分けしています。
戦力評価基準としては、
S。最低三十人以上であたるべき。
A。最低二十人以上であたるべき。
B。最低十人以上であたるべき。
C。最低五人以上であたるべき。
バックアップ要員に関しては、この原則から外れます。
それでは、特記戦力、三年Dクラスから」
一人のゆるふわ黒髪ツインテールの生徒の顔写真がアップになる。
「特記戦力C。天久天馬先輩。
単体での戦闘能力こそ大したことはありません。単独での戦闘ならば、ほとんどの生徒が勝利できます。
しかし警戒すべきなのは、その高いサポート能力。
彼女が援護に回っている生徒は、百%以上の能力を発揮できます。
だからこそ、彼女は決して単独行動を取らず、援護できる最大人数の二人は一緒にいます。
他の特記戦力と組むと最悪なので、早い段階で仕留めたいですね。狙撃か暗殺を切る価値はあります」
「あー意見良いか?この先輩の一番怖いとこは、援護能力は勿論のこと、目的の為ならなんでもやる精神性だな。
多分自爆くらいはやってくるぞ?」
「ありがとう龍園くん。つけ加えておくわ」
ただでさえ強力な特記戦力を、実力の百%以上を引き出す生徒に援護させるなど最悪だ。
しかし、龍園が先輩をそこまで評するとはな。
写真だけ見ると、そんなに怖くなさそうなんだが。
「続いて、特記戦力A。剣城海先輩。
水泳部で培った持久力と柔軟性。そして、三年女子第三位の身体能力に加えて、剣道の経験を応用した剣術に、バイオリンで鍛えた指捌きによる高い命中精度の射撃とワイヤー術。
単純な戦闘力は勿論のこと、特殊技能も数多く揃えています。
投下からの包囲戦による圧殺を推奨します」
「…………先輩、剣道もやってたんだ」
「全国大会とか優勝してたんですね。びっくりしました」
「メチャクチャだなぁ。この人が指示に従うとか、風間先輩ヤバいんだなぁ」
近距離中距離特殊戦。
その全てで一級の実力者。
Aランクも納得だ。
現水泳部部長の両沢先輩と副部長雲雀先輩は、経歴の余りのぶっ飛びっぷりに驚いていた。
いや分かる。小学生でバイオリンコンクール金賞に加えてプロからスカウト。
中学で剣道部に入部して全国大会三連覇。
高育で水泳部に入部して都大会三連覇。
なんだこの人。
「続いて、特記戦力S。獅子上玲央先輩。
三年生男子二位の身体能力に加えて、高い近接格闘術、一定以上の命中率の射撃術も持ち合わせています。
単独での接近戦は絶対に挑まないで下さい。誰であってもです。
桃井先輩でも負けかねません。
包囲を食い破ってくる危険性もあるので、狙撃を推奨します」
「カルマに殴りかかって正座説教されてた先輩じゃん。おもろかった。
あの後試合とかしたの?」
「一応やったけど無理。単独での勝負とか絶対やだ」
堀北先輩の次に高い身体能力と、烏間先生に叩き込まれた近接格闘術の持ち主。
正面戦闘で勝てるはずはない。
カルマがそこまで言うくらいだしなぁ。
「最後の一人です。特記戦力S。風間律先輩。
バックアップ要員なのは間違いありません。
三年生トップクラスの指揮能力を持ち合わせています。何よりも警戒すべきはその発想力。何をしてくるのかわからない人です。
その上で、おそらく九重先輩達のやっているドローンドッグファイトを、この人も出来ると予想しています。
安全な後方からの射撃支援も考えられるので、最警戒を」
「絶対なんかろくでもないことやってくるよこの人」
「確かに。絶対にやってくる。応援演説ヤバかったしな」
オレ達三人としては、演説でいきなり裏切りぶちかましてきた人だからなぁ。
マジで何やってくるか分からん。
後ドローンドッグファイト出来るか出来ないかで言えば出来る人だろうな。
多分十機じゃ済まない気もする。
「それでは、続いて三年Cクラスの特記戦力です。
一人目。特記戦力B。蝶乃紫苑先輩。
高い身体能力を持ち合わせており、特に機動力は学年女子でも第三位に位置します。その機動力を活かした高速戦闘がこの人の持ち味です。
そして、その上で高い援護能力も持ち合わせています。天久先輩のように誰とでもというわけではありませんが、Cクラスの特記戦力と連携されると手がつけられません。
斥候でもあるので、単独行動中に狙撃が望ましいですね」
「あの香月ボーイを叱り飛ばせるような人間だ。度胸も一級品だろうねぇ」
この人と組ませたら特にやばいのが香月先輩。
お互いがお互いの実力を引き出すから本当に手がつけられない。
あのぶっ飛んだ実力者とそれが出来る度胸が何よりもヤバい。
「続いて、特記戦力A。犬山護先輩。
三年生男子四位の身体能力の持ち主で、単純なパワーだけなら一位の兄さんに匹敵します。
何よりもそのタフネスと盾を使った防御術が異常です。守りに入った犬山先輩を正面から突破するのは不可能に近いですね。そしてその上で高い指揮能力も持ち合わせています。
恐らくは防御側の生徒なので、攻撃側は投下からの包囲戦か狙撃で対処してください」
「防御が得意、か。少し親近感を抱くな」
高い身体能力と防御力を誇るからこそ、Cクラスのフラッグを奪うのは至難の業だ。
桐山先輩のような指揮による防戦ではなく、単独の防戦。
それ故、中々崩せない。
「続いて、特記戦力S。香月遊真先輩。
三年生男子五位の身体能力の持ち主ですが、この人の場合は身体能力以上にその手先の器用さが尋常ではありません。
なんでも作ってきますしなんでも使ってきます。
その上で非常に高い戦闘技術の持ち主です。
何かをさせる前に狙撃で仕留めたいですね」
「遊真ちゃんはわたしよりヤバだよ〜。
多分時限爆弾とか地雷とか作ってきそう。後煙幕からの攪乱とかも警戒しないとだね」
体育祭でふざけ倒したその能力の高さは警戒に値するだろう。
あの堀北先輩でさえ、最後まで手品の種を暴くことは出来なかった。
「最後に、特記戦力S。白銀園子先輩。
三年生トップクラスの指揮能力の持ち主で、女子四位の身体能力。それに加えて、幼い頃から叩き込まれた近接格闘術。射撃の命中率も凄まじいです。
特殊な技能や得意な分野は、特にないですね。
単純な基礎スペックの高さと英才教育による高い技術が強みだからこそ、つける穴が殆どありません。
周囲の生徒が身を呈して庇う可能性もあります。この人が庇われないといけない状況にまで追い込めたなら、勝利は目前と言って良いですが。
投下からの包囲戦も普通に突破してくる危険性があるので、狙撃か暗殺で仕留めてください」
「つまるところ、渚か桔梗、山村か影乃先輩の役割対象だな」
「多分話術の揺さぶりとか聞かないから私だとキツイかも」
「出来る限り僕の暗殺は見せたくない。本命は堀北先輩だし。どうしようもなかったらやるけど」
この人は極まった基礎の持ち主だ。
だからこそ、弱点らしい弱点がない。正直一番嫌だな、こういう人は。
「それでは、三年Bクラスに。
特記戦力A。日野曜先輩。
高い指揮能力の持ち主ですね。恐らく防御側の指揮官を務めると予想しています。
単独での戦闘力こそ、こちらの上位陣なら問題なく対処できる人ですが、その指揮能力により部隊の実力を百%以上に跳ね上げさせる事が可能です。
攻撃側は正面からの攻略は避けて、狙撃か投下による撹乱からの包囲戦を」
「白銀先輩と同じように、他の生徒が文字通り身を呈して守ってくる可能性もあるな」
日野先輩は、それだけの敬愛を他の生徒から抱かれていた。
多分結構な生徒が身を投げ出して庇ってくるな。
「特記戦力A。黄乃珠紀先輩。
恐らくはBクラスの攻撃側の指揮官ですね。本人の身体能力、近接格闘術、射撃能力も学年上位。あらゆるスペック、ステータスが高水準でバランスよくまとまっています。女子総合力は、同率五位ですね。
何より警戒すべきは、連携。
金石先輩とこの人の連携は、兄さんすらも正面から打ち破る事ができます。
別々に動いているところを仕留めたいですね。投下からの包囲だと、合流までの時間を稼がれてしまうかもしれないので、狙撃か暗殺ですぐに仕留めてください」
「完全に分かり合ってるって感じの2人だよね」
「うん。連携勝負じゃ勝ち目ない」
茅野の言う通り、お互いの理解度が高過ぎる。完全にノールックで声掛けも一切してないのに完璧な連携で攻めてくるから、渚の言う通り、連携勝負で勝ち目はない。
じゃあ単独なら弱いのかと言うと、別にそんなことは微塵もないし、普通に強いのが本当に厄介だ。
「特記戦力S。真白珠莉先輩。
身体能力は平均より少し下程度。近接格闘術も基礎的なものに留まります。
しかし、その計算能力を応用した狙撃は凄まじい精度を誇ります。
何より、この人も金石先輩との連係が余りにも強力です。
黄乃先輩と金石先輩の連係にこの人の狙撃が追加されると、兄さんですら一方的にやられます。
「三人揃ったら強いって、単体だとそこまで強くないキャラにありがちな個性のはずなんだけどね」
「普通に単体でも強いの勘弁してほしいよね」
狐判先輩と緋音の言う通り。
三人揃ったら死ぬほど強いとかは、単体だったらそこまで強くないからこそ許される個性なんだがな。
単体でも普通に強いのはずるい。
流石に人力ミサイルは出来ない、よな?
あれできるの他にいないで欲しいんだが。
「特記戦力S。猫実詭々先輩。
女子総合力同率二位。三年女子同率一位の身体能力。高い近接格闘術に射撃術。
この人は何よりも、その脚の速さが余りにも恐ろしい。速すぎて照準が追いつかないので、射撃で狙うのは困難ですね。閉所に閉じ込められるなら話は別ですが。
暗殺狙いで行くべきです」
「跳躍力も結構あったよねこの人。助走なしで俺の身長ぐらいは跳べてたし」
「体育祭の騎馬戦、ヤバかった」
この人もまた、白銀先輩とかと同じだ。
速過ぎるからどうしようもない。そういう人だ。
狙撃したいが、走り回ってるこの人に当てられる気がしないし、何よりやることめちゃくちゃだからな。
予測とか殆ど無理だ。
「最後に、特記戦力S。金石博先輩。
身体能力学年三位。近接格闘術も相当に鍛え上げていますし、射撃術もまた同様に。
単純な戦闘能力だけでも脅威的ですが、黄乃先輩、真白先輩との連携。
そして、それに加えて、理屈では説明のつかない運の良さ。
この人を自由にさせれば敗北の可能性もある。
兄さんに次ぐ、三年生ナンバーツーは誇大広告でもなんでもないわね。
清隆くんか卜部先輩で対処してください」
「了解したわ」
「あぁ。任せてくれ」
数が殆ど意味をなさない人で、なぜか運良く暗殺が失敗する可能性も考えると、オレか卜部先輩の狙撃で初手で殺したい。殺せなかったら追い続けて動きを制限したい。何かさせたくない。
「では、三年Aクラスに。
特記戦力A。橘茜先輩。
身体能力、近接格闘術、射撃術。その全てが非常に優秀。女子総合力同率五位ですね。
そしてその上で、高いサポート能力を兼ね備えています。
誰とでも完璧に合わせられますが、特に兄さんか占藤先輩と連携している時が恐ろしいですね。兄さんとは基本的に一緒に行動しているので、分断も狙えません。
この人を倒すとなると、兄さんを倒してからでないと不可能なので、現実的ではありません」
「また来た〜。連携すると強いのが単体でも強い人」
「ゲームバランス壊れすぎ。全員10クラスポイントとかおかしいって」
朝比奈先輩からは、ちょっとやってられないって心の声が漏れ聞こえてくるな。
九重先輩の言うように、この人たちは倒せても10クラスポイントしか貰えない。そう考えると、フラッグ全損一択なんだよな。
「特記戦力A。藤巻匠先輩。
大柄な体躯に見合った高い身体能力。一定以上の近接格闘術。射撃術。これといった長所がない代わりにこれといった短所のない人ですね。
どこまでも普通を、基礎スペックを高めている人。
だからこそ、崩すのも容易ではありません。
投下からの包囲戦が有効かと」
「普通が一番恐ろしいってやつだよね」
「バレーの時も、常に普通だった。調子がずっと普通で固定されているのもこの人の強みだね」
茅野と渚はバレーで特にこの人の普通さを知っている。どれほど追い詰めていたとしても、追い詰められていたとしても、普通の調子を崩さない。
この人は、普通の化物だ。
「特記戦力S。神田元先輩。
三年生トップクラスの指揮能力に加えて、高い身体能力、近接格闘術、射撃術を併せ持っています。
攻撃側と防御側、どちらの指揮もこなせるのが特徴です。
強いて言うなら、防御側の方が得意ですが。
この人も暗殺狙いで行くべきです」
「接敵するまでこの人がどっちの指揮官勤めてるのか分からないのがいやらしいよなぁ」
「本当に強いて言うならですからね。別に攻撃側指揮しても全然強いですし」
生徒会で一緒に仕事をこなしてきたからこそ、南雲先輩も浅野も、この人がどちらをこなしても強いだろうことを知っている。
だからこそ、斥候の仕事はかなり重要になるな。
「特記戦力S。金織美浪先輩。
女子総合力同率二位。指揮もかなりの高水準でこなせます。出来ないことは基本的にありませんね。やろうと思えば狙撃も出来ますし。ワイヤーを応用した罠も使って来ます。
何より、この人がいるだけで生徒たちの調子が上がります。
生徒たちが積極的に庇って来ますが、白銀先輩と同じように、この人が庇われるような状況に持ち込めたなら私たちの勝利は目前ですね。
投下包囲戦か暗殺での対処を」
「多分、神田先輩と逆側の指揮を担当するはず」
「恐らくはそうなるだろうな」
南雲先輩と桐山先輩の元生徒会コンビの言う通り、おそらく金織先輩と神田先輩が同じ側にいることはないだろう。
「特記戦力S。飛騨翔子先輩。
女子総合力同率二位。女子同率一位の身体能力。高い近接格闘術。それと引き換えに射撃術は絶望的ですね。ショットガンでの近接戦が基本になります。
猫実先輩と同じように速過ぎるので照準が定められませんし、その上で森に高い適性があります。生まれてからずっと山で暮らしていたからこその自然への慣れですね。
暗殺で仕留めてください」
「須藤と同じようにショットガンで来るのか。まぁ、射撃術に不安のある高い身体能力の生徒にはありな選択肢だが」
「森との親和性が高いのは厄介だな。地形で有利を取られるぞ」
浅野の言う通り、森で戦うのは不利な選択。
広場に誘導しての戦闘は最低条件だ。
「特記戦力S。占藤メメ先輩。
バックアップ要員ですが、ドローンドッグファイトも可能でしょうね。
指揮能力は間違いなく学年トップの一角。
全体を見ての盤面処理で、この人の右に出る人はいないでしょう」
「そりゃ私と有栖に出来たことがこの人にできないわけないよね」
「業腹ですがそうですね。ドローンドッグファイトは問題なくこなせるでしょう」
この人も風間先輩と同じように、絶対ドローン十機じゃ済まないよなぁ。
なんだったら三年この二人だけがバックアップの可能性も全然ある。
「そして、特記戦力S。堀北学。
総合力は学校一位。
身体能力も学年一位。
近接格闘術、射撃術も学年一位。
それだけでなく、成長性もまだあるので、この一ヶ月で新しいものをたくさん身につけているでしょう。
狙撃だと防がれての
「うん。そのつもりで二ヶ月準備して来たんだし」
「僕は挑みに行くが、構わないか?」
「ずるいぜ、浅野。オレも混ぜろよ」
「えぇ。あなた達に隙を作って貰ってから、潮田くんの暗殺を通すのがメインプラン。
ですよね。狐判先輩」
「うん。暗殺の場を整えてもらうのが、浅野くん達の仕事。倒せたら倒しちゃっていいよ。無理だと思うけど」
「分かってないな狐判。そう言われたら熱くなるだろ?」
「メインということは、サブもあるのよね?」
「サブはリミッター解除した桃井先輩と赤羽くん達をぶつけて、その隙に清隆くんか卜部先輩の狙撃で仕留めるプランです」
「………正直、サブの方が成功率高そうね」
「視点を変えなよ藤乃。メインと同じくらいの成功率のサブプランがあるんだし、備えは万全だって」
そう。備えは確かに万全。
万全、なのだが。
バレーで対決した生徒たちと、生徒会で仕事をこなして来た南雲先輩たち、卜部先輩たちは、言い知れない不安のようなものを抱えていた。
「────ほんと、やってらんないよね」
そこで、桔梗が愚痴り出す。
「だってさぁ、三年化け物すぎじゃん。なにこれ?S多すぎじゃない?」
「…………確かにね〜。BとCが一人しかいないって何?二十人中S十二人で、Aが六人でしょ?普通これ、Cが一番多くなるものでしょ」
茅野も乗って愚痴り出した。
「…………そうだね。さっきも言ったけど、ゲームバランスおかしいよ。誰倒しても10クラスポイントだよ?やってらんねーこのクソゲー」
九重先輩も愚痴り出したな。
なるほど。オレも乗るか。
「オレとしては金石先輩が一番意味分からないがな。なんだよ運が良いって。ふざけてるのか?」
カルマも乗ってきた。
「俺は風間先輩とやるのしんどいなぁって。あの人ほんっとにろくでもないことやってくるよ。断言するけど」
浅野も、また。
「どうせメメ先輩のことだ。ドローン三十機でドッグファイトとかして来ても驚きはしない。ふざけるなと心から思うがな」
「やって来そうね。ほんと、ふざけるのも大概にしてほしいわ」
「連携しても強いのに単体でも強いってなによ。まだ常識的な天久先輩をちゃんと見習って」
「やってらんねぇよなぁ。ただでさえ化物じみた生徒会長とAクラスなのに、どのクラスも化物だらけと来てる。はっ、こんなにこえぇのは初めてだぜ」
「尻尾巻いて逃げても良いんだぜ?ぶっちゃけ俺逃げたいし」
「敵前逃亡は銃殺刑だよ?」
「稔先輩が言うと本気でやって来そうなの怖いですね」
「失礼だよ。三年生よりかは怖くないでしょ?ね?ね?」
「怖いですね」
「稔ちゃんが怖いのは世界の真理としてぇ。遊真ちゃんどれだけめちゃくちゃやってくるんだろーね?」
「香月ボーイのことだ。森中トラップ塗れの見本市でも驚きはしないさ」
「うっわぁ。さいっあく。ほんと勘弁してー」
「あーもー、やってらんない〜」
散々愚痴が飛び交っていく。高円寺すらも参戦していた。
だが、逆に空気は淀むことなく、むしろ澄んでいく。
不安を、恐れを、色々なものを共有して。
そうして。
「本当に勘弁してほしいわよね。戦力差はほとんど二倍なのに、勝てるかどうか分からないんだもの」
鈴音はそこで一旦黙って。
集まった生徒たちの顔を見て。
笑った。
「────それでは、真面目に。
三年生が恐ろしい。
そんなこと、この場に集う全員の共通認識だった。
だからこそ、桔梗は愚痴り出した。
恐怖を、不安を抱いているのは全員同じだと、共有するために。
そうして。
「────
鈴音が最後に締める。
うちのクラスで一年間見て来た光景で。
この場に集う全生徒が、思わず笑っていた。