クルーズ船の会議室。
そこで、三年生の各クラス首脳陣が集まっていた。
代表者として、堀北学が議長を務める。
「それでは、作戦会議を始める。
まずは、各クラスの要注意人物を挙げていく。
要注意人物だとややこしいので特記戦力と呼称する」
ネーミングセンスは兄妹である。
「特記戦力はSからC。
Sは最低三十人。
Aは最低二十人。
Bは最低十人。
Cは最低五人。
なお、バックアップ要員はこの原則に当てはまらない」
この辺り、怖いくらいに兄妹である。
「一年生から入る。
一年生特記戦力は合計二十一人だ。
まずは、Dクラスから」
全員の端末に、一人の生徒の顔写真とプロトOAA評価が表示される。
全員が少しだけ意外そうな顔をした。
「特記戦力C。
元から優秀な生徒ではあったが、この一ヶ月で爆発的な成長を遂げている。
身体能力、近接格闘術、射撃術、指揮能力、援護能力。その全てが高水準でまとまっている。非常にバランスの取れた人物だ。
決して警戒は怠るな」
「………ふーん。確かに、爆発的と言って良い成長だね。綾小路から色々と盗んでいるみたいだ。良いねぇ。こう言う柔軟なやつは僕の好みだ」
「金石の評価には基本的に同意した上で、なんといいますか、各クラスの仲は本当にいいようですね。他クラスの生徒に教えを乞うても拒否されず、それどころかしっかりと育成までしているのですから」
「これは君たちの成果だろう。誇っていいぞ、金織」
「…………なぜ、上から目線なのですか?」
「はーいそこまで。博。話の腰を折らない。ごめんね堀北。金織。続けて」
黄乃に促されて、堀北学は僅かに頷いてから続けた。
「続いて、特記戦力A。一之瀬帆波。
神崎以上に高水準でバランスの取れた各種能力に加えて、高い指揮能力の持ち主であり、その場にいるだけで他の生徒たちの調子を上げることができる生徒だ。
厄介な生徒だが、危機に陥れば他の生徒たちが積極的に庇うだろう。餌として利用することも考慮しておけ」
「生徒会の後輩じゃない。そんな言い方良くないわよ」
「学くん。本気なのはいい事ですが、言い方というものがあります」
「…………その、あれだ。
人気の裏返しで、誘蛾灯としての役割をこなせるやも」
「大差ないわよ」
発言があまりにもあれなので、橘茜と占藤メメに軽く叱られた。
少しだけ落ち込んだが、切り替えて。
「んん。次に移ろう。特記戦力S。雪村あかり。
高水準でバランスの取れた各種能力は、一之瀬を僅かに上回っているに留まるが、機動力の一点では一之瀬どころか鈴音にすら匹敵する。
単体でのスペックだけなら最強格だが、指揮能力自体はそこそこ優秀どまりだな。
だが、潮田や赤羽、綾小路、鈴音、櫛田などとかなり高水準の連係も持ち合わせている。
総じて、現Dクラス最強の生徒と言っていい」
「騎馬戦の時の跳び回るやつ凄かったわね」
「ねー。堀北ちゃんと同じくらい速いってことは、あたしも翔子も状況次第じゃ逃げられるかもね」
リードこそあったが、堀北鈴音は二人に確かに勝利した。
それに匹敵する機動力となると、決して油断ならない相手だ。
「そして、特記戦力S。潮田渚。
近接格闘術、射撃術は優秀だが、身体能力は男子の中では下の方。女子と比べても上の中どまり。機動力には突出したものは確かにあるが、それでも精々それくらいだ。
だが、底知れぬ何かを感じる生徒でもある。体育祭の棒倒しでは、単独行動を許されていた。その時点で、同じく単独行動を許されていた高円寺六助に並ぶ何かを有する可能性が高い。
最高戦力の一角だと思われる。
特に警戒しろ」
「そうね。送られて来た模擬戦でも、露骨なぐらい活躍していないもの。四百万を稼ぐような生徒があの程度の活躍なわけがない。
…………それにあの始業式の日、高円寺に呼ばれて背後に来るまで、私は何も感じ取れなかった。
…………気配すら読み取れないなんて初めての経験だったわ。
想像を絶する何かを有しているかも知れない」
白銀園子は間違いなく三年生ナンバースリーの実力者。
その彼女がこれほどに警戒するような生徒。それだけで、三年生の警戒度は大きく跳ね上がった。
「一年Dクラスは以上だ。
Cクラスに入る。
特記戦力C。榎中准。
身体能力、近接格闘術、射撃術。その全てでCクラスどころか学年でもトップクラスの実力者だ。
基礎的な能力のみなら間違いなく龍園より上。流石に赤羽よりは下だ。
だが指揮はできない。役割としては強力な兵士といったところだろう」
「堀北鈴音が生徒会に指名したんだ。これくらい優秀でなければ困る」
「なんだ律。やけに堀北鈴音を持ち上げるじゃないか」
「応援演説したからな」
だが風間律にとって最も警戒したい生徒は、まだその情報が出ていない。
まず間違いなく、Sだろうが。
「特記戦力A。龍園翔。
Cクラスのリーダーであり、高い指揮能力、身体能力、近接格闘術、そして底なしの体力とタフネスを誇る生徒だな。手段を選ばない狡猾さも持ち合わせている。体育祭の綱引きで見せた、一時的に身体能力を大幅に引き上げる何かも持っている。
何より、しぶとさは学年どころか学校でも上位だ。最大限に警戒しろ」
「無茶しすぎないで欲しいですね。今回は私、治療とか出来ないので」
なんというか、少し違う気がする。
そう思いながらも、取り敢えず一旦スルーして他の生徒に。
「特記戦力S。奥田愛美。
各種能力は平均より上程度。単純な戦力としての脅威度は低いが、彼女が作成して持ち込んだ毒物は非常に危険だ。
何より厄介なのは、使わせようと思えば誰でも使える点だな。Cクラスどころか一、二年生の誰もが必殺の毒を持っている可能性もある。
まぁ、流石にそこまでの数を個人で量産することは難しいだろう。持っていて二十人程度だとは思うが、最大限に警戒しろ」
「出たな。インチキ生徒一号」
「毒は些か狡くないか?」
「用意できるなら用意するのは当たり前だろう?」
「…………正直余り好みではないのだが」
「好みがどうこう言ってる場合かバカ上」
「こらこら。りったんもれおたんも、喧嘩はメッですよ」
二人は黙った。
言い方は可愛いのだが目が怖い。
黙らなかったら分かってますね?という裏の声が聞こえて来た。
「続けるぞ。特記戦力S。椎名ひより。
バックアップ要員でこそあるが、その推理力は目を見張るものがある。風間。お前の用意した奇策、もしや見破られるかも知れんぞ」
「見破られることも承知の上だ。謂わばこれは、名探偵椎名ひよりへの挑戦状というやつだからな」
「やれやれ。律は最近、人使いが荒いな。
………そういうところ嫌いじゃないが」
風間律の奇策は、椎名ひよりへの挑戦状。
果たして、この謎を解き明かせるのか?ということだ。
「最後に。特記戦力S。赤羽業。
各種能力は一年生トップクラス。
単独でも学校上位陣だが、その指揮能力もまた優秀だ。体育祭のリレーで見せた、身体能力を劇的に向上させる何かもある。
単独で挑むのは避けるように。
………まぁ、あれに関しては、見当をつけているが。
あちら側の最高戦力の一角だな」
「多分僕と同じような仮説を立ててるんじゃないかい?」
「恐らくはな。俺たちの仮説通りならば、俺たちも同じことができるはずだ」
「ま、出来るとしたら、僕と学と白銀と獅子上かな?」
唐突に自分の名前を出された白銀園子は色々考えて。
ピンと来た。
「………なるほど。そういうカラクリだったのね」
「………?おい律。どういうことだ?」
「………なるほどな。くくくっ、流石は赤羽。潰しがいがある」
三年生の各クラストップは、赤羽業と龍園翔の何かに見当がついたらしい。
しかしこれは消耗も激しい。
切りどころは気をつけなければ。
「では、Bクラスに入る。
特記戦力B。幸村輝彦。
各種能力の高さは勿論のこと、高い指揮能力に加え、手榴弾による誘導もある。録画でも走り回る浅野を手榴弾で誘導して、綾小路に仕留めさせていた。
Bクラスは指揮官が多いのが、特に厄介な点だな」
「あらあら。凄まじい成長ね。ふふ、部長として鼻が高いわ」
「おいおい。後輩に花を持たせようなどとはしてくれるなよ?」
「失礼ね。ちゃんと全力で潰すわよ」
「なら良い」
剣城海との間で一瞬非常に物騒な会話が聞こえたが、全員聞かなかったことにした。
「特記戦力B。平田洋介。
各種能力の高さは勿論だが、高い指揮能力に加え、近接格闘術は特に目を見張るものがある。隠していた牙、というやつだろうな」
「ま、多分彼のD配属の理由なんだろうね。しかしまぁ、よく隠していたものだよ」
「………潮田の隠し球もこういうやつの可能性は?」
「………いえ。もっと恐ろしい何かな気がするの」
神田元は、平田洋介がここまでこれを隠し切っていたことに感嘆した。
蝶乃紫苑は、潮田渚の隠し球も暴力的なものなのではという可能性を指摘した。
白銀園子は、それとは違うもっと恐ろしいものの可能性を指摘していた。
「続けるぞ。特記戦力A。櫛田桔梗。
各種能力こそ平均よりも上程度だが、潮田と同じようななんらかの隠し球を持っていると睨んでいる。
それを考慮せずとも、鈴音と綾小路との連係は非常に強力だ。この三人を組ませないように徹底すべきだろう。
三人でかかってこられたら、俺もマズイかもな」
「この三人の連係は、間違いなく僕らの次に位置する。連係の完成度は学校二位といっていい」
「…………これって惚気なのかな?」
「惚気で良いんじゃない」
金石博の実質的なアツアツカップル認定+僕らの方がアツアツだけど?発言に、猫実詭々はなんとなく突っ込んで、飛騨翔子は適当に流した。
「特記戦力S。堀北鈴音。
各種能力は女子総合一位。
非常に高い指揮能力の持ち主でもあり、まず間違いなく一年女子最強の生徒。
単体でも凄まじく強いが、櫛田と同じように、綾小路との連係は出来る限り防ぎたい」
「来たな。堀北鈴音」
「随分と楽しそうだな。律」
「当然だ。僕のお気に入りの一年生の一人だぞ?」
「俺の妹なんだが?」
「はいはい。はいはい!これ以上は本当に不毛だからやめやめ!」
黄乃珠紀、数少ない常識人枠として、しっかりと仕事をこなしている。
「………話を戻そう。
特記戦力S。高円寺六助。
各種能力の高さは学年最高峰。
単純な身体能力だけなら、おそらく綾小路も上回るだろう。
単独で全てをひっくり返しかねない実力者だ。
あちら側の最高戦力の一角だな」
「ふふふふ。安心してください。彼の相手は、この僕に」
「ふっ、お前の相手を務めるとなると、少し可哀想になるな。策はあるのか?香月」
「もっちろんですよ!」
見たことないくらいキラッキラの顔で笑う香月に、三年生たちは高円寺にほんのりと同情した。
「特記戦力S。綾小路清隆。
総合力学年一位。
身体能力学年一位。
近接格闘術学年一位。
射撃術学年一位。
狙撃も高い精度でこなせる上で、高度なワイヤー術を使ってくる、間違いなく一年生最強の生徒だ。
あちら側の最高戦力の一人でもあるな」
「インチキ生徒二号きたな」
「僕か学のどちらかを抑えてくるだろうね」
「ま、そこを抑えるのは、勝ちの前提だものね」
どちらも自分の方に来て欲しいと願っていた。
綾小路と勝負がしたいので。
「さて、Aクラスに移ろう。
特記戦力A。神室真澄。
各種能力は高水準で纏まっているが、それ以上に指揮能力と連係が非常に厄介だな。
特定の生徒でこそあるが、そこと連係されると不味い」
「坂柳有栖親衛隊、ね。
面白いネーミングセンスよ。考えた人には賞状を贈りたいわ」
「…………私にも親衛隊あるんでしたよね?」
「あ、うん。非公式だけどね」
「…………強く生きてください、坂柳さん」
「有栖さんノリノリよ?」
「…………坂柳さん………?」
それで良いのだろうか。
それで良いのか。
「特記戦力A。森下藍。
各種能力は勿論のこと、神室と同じく坂柳有栖親衛隊での連係は非常に強力だ。
この二人が坂柳有栖親衛隊トップツーと見て良いだろうな」
「っっっっ、ま、学、今君最高に面白いこと言ってる自覚あるっ、?」
「わかりやすくて良いだろう?坂柳有栖親衛隊」
「っっっっっっ、だめ、ツボる……!」
お堅い堀北学の口から坂柳有栖親衛隊とかいう面白すぎる名前が出て来たので、三年生は全員ツボった。
真面目に会議を戻し続けて来た黄乃珠紀が一番ツボっていたので、二分ほど会議は止まった。
「さて、気を取り直して。特記戦力A。葛城康平。
各種能力も相当に高いが、特に目を見張るのはその指揮能力だな。
防戦指揮は桐山に次ぐと言って良い。
ふっ、生徒会に引き込んでおいても良かったかもしれん」
「みたいだね。まぁ、浅野が入るならって辞退されてたけど」
「無理に引き止めても良かったかもしれませんね」
元生徒会の堀北学と神田元と橘茜は、葛城康平を無理にでも生徒会に引き込むのも、悪い選択肢ではなかったなと思っていた。
「特記戦力S。坂柳有栖。
間違いなくバックアップ要員だな。
その盤面処理能力は学校でも五本の指に入るだろう。
占藤や風間のやっていたドローンドッグファイトもやってくるだろうな」
「多分八から十機、といったところね」
「まぁ、僕としても同意見だな」
「うふふふふふふ。本気で直接対決。楽しみだわ」
占藤メメの本当に楽しそうな様子に、Aクラスの面々は本当に後輩好きなんだなとまた思った。
「特記戦力S。浅野学秀。
総合力男子二位と言ったところだな。
各種能力は軒並み二位か三位。
指揮能力も非常に優秀。
出来ないことを探した方が早い。
総じて、あちら側の最高戦力の一角だろう」
「一年生で特に警戒すべき生徒は、綾小路、高円寺、浅野、赤羽、潮田。
この認識で間違いないかな?」
「そうだな。Sの中でも上位だ」
だが、こうして纏めてみると。
「層が厚いね。一年生は」
「そうね。でも、じゃあ二年生が弱いのかと言われると、そんなことは決してない」
占藤メメの言う通り。
二年生もまた、粒揃いだ。
「では、二年生の特記戦力を。
二年生特記戦力は、十三名。
まずは、二年Dクラスから」
エンドのEクラスと呼ばれたこのクラス。
だが、浅野學峯の手によって、間違いなく爆発的な成長を遂げている。
特に警戒すべきは、四人。
「特記戦力B。両沢眞子。
水泳部で培った高い身体能力に加え、近接格闘術、射撃術も優秀。
尚且つ高いレベルの指揮もこなせる、優秀な生徒だが。
予想外の出来事に対処するのが苦手なようだな」
「両沢は真面目だからな。
しかしまぁ、部活を引退してなお、こうして競えるとはな。中々成長しているようだし。
ふふふ、とても楽しみだ」
「あら、花を持たせるような真似はやめてよね?」
「安心しろ。ちゃんと潰すさ」
「なら良いわ」
またまた物騒な会話が聞こえたが全員スルーした。
「特記戦力S。森悠政。
各種能力学年トップクラス。
二年生男子総合力四位と言ったところだな。
高い指揮能力に加え援護能力、南雲、花咲とのレベルの高い連係、それから柔軟でぶっ飛んだ発想力の持ち主だ」
「南雲勧誘したのこいつからだっけ?ホント、イカれてる」
「あなたにだけはイカれてるとか言われたくないと思うわよ」
金石博のイカれてるとの評に、占藤メメのツッコミが入った。
イカれっぷりで金石に勝てる生徒はそうそういないだろう。
「特記戦力S。南雲雅。
二年生男子総合力一位。
身体能力一位。
近接格闘術一位。
射撃術一位。
狙撃もこなせる上で、綾小路から色々と盗み身に付けているようだな。
あちら側の最高戦力の一角だろう」
「南雲雅か。ふふ、出来ることなら僕と戦って欲しいけど」
「彼のことだ。十中八九、学狙いだろう」
神田元の予想通りになるだろうなと、全員思っていた。
「特記戦力S。花咲ほむら。
各種能力は学年でも上位。
奇想天外で予想もつかないような戦い方を得意とする生徒だな。
手先も相当に器用で自作で様々なものを作れるようだ。
あちら側の最高戦力の一角と見て間違いないだろう」
「ほむらさんはやることなすこと基本的にめちゃくちゃですからね」
「あれだけ好き勝手にやってるのを見ると、ちょっと羨ましいわね。人生楽しそうで」
確かに、相当な人生エンジョイ勢だろう。
エンジョイしすぎて死にかけたが。
「さて、二年Cクラスに移ろう。
特記戦力B。須知萌香。
各種能力は上位寄りだが、それ以上にバランサーとして非常に優秀だ。
指揮官としても優秀な上で、高い援護能力の持ち主だな」
「なぁんか親近感抱くなぁ。やばい奴らに振り回されてそうで」
「分かるぞ黄乃。唯一の常識人というポジション、非常に辛いよな」
「?あなた常識人だったの?」
「…………………………え?」
風間律は同じ常識人仲間として黄乃珠紀に同意しようとして。
あなた常識人じゃないでしょ(意訳)。
などと言われて面食らった。
「だ、だって僕、いつもこいつらに振り回されて…」
「割とあなたが振り回してるところもあるでしょ?」
「み、みんなあんまり言うこと聞かなくて…………」
「?まぁ、それは大変だと思うけど。でもあなた、ノリノリで裏切り者吊し上げてたじゃない」
「それは裏切る方が悪いだろっ!」
「それはそうなんだけど」
「そ、それに!いつも頭下げてるし!」
「まぁ、それは、その、ちゃんとリーダーしてると思うわ」
「だ、だよな!ちゃんとリーダーしてるよな!うん!」
常識人云々は完全にどこかに行っているようだが。
まぁいいか。
「特記戦力S。狐判稔。
非常に高い指揮能力の持ち主だな。
バックアップ要員のようだが、ドローンドッグファイトをこなせる生徒なのだろうが。
それ以上に味方を捨て駒にしたりと、容赦ない戦術を得意としているようだ」
「あらあら、吹っ切れたのね。ふふ、良いんじゃないかしら」
「いや、その、吹っ切れすぎじゃ無いかなぁ?」
「審議のときの南雲への勝ち方も、中々容赦なかったからね」
三年生は少し心配していた。
吹っ切れすぎじゃない?大丈夫?
「特記戦力S。桃井緋音。
射撃術はからっきしだが、それ以外が相当な異次元だな。
近接格闘術も身体能力も間違いなく学校最強だ。
一対一で勝つのは殆ど無理だろう」
「みたいね。体育祭でも化物じみてたけど、ここまでだったなんて」
「いやー、木刀持つと本当にヤバいね。技術と身体能力の調和がエグいわぁ」
女子身体能力ツートップは、手放しで賞賛した。
おそらく自分たちであっても、単独で挑めば食われるかもしれない。
「続いて、二年Bクラス。
特記戦力S。星穹恒。
男子総合力二位の実力者。
出来ないことを探した方が早いな。
基礎スペックが高いからこそ厄介な生徒だ」
「ヨウ先生の施設の子だよね」
「つい最近まで表に出ることはなかったんだがね。どんな心境の変化があったのやら」
なんとなく分かっていながらも、神田元は敢えて口にはしなかった。
「特記戦力S。朝比奈なずな。
女子総合力二位。
鬼龍院楓花に次ぐ実力者だな。
よくぞここまで鍛えたと言うべきだな。
高い指揮能力も備えた生徒だ。
星穹恒と同じく、基礎スペックを磨き上げているからこそ厄介な生徒だ」
「朝比奈めちゃくちゃ頑張ってたものねぇ」
「そうね。好ましい人だったわ」
「話しやすくて驕らなくてひたむきだったからな」
「あぁ。時折アドバイスしたくなる後輩だった」
蝶乃、白銀、犬山、獅子上などの頻繁にジムに通っていた面々は、ずっと鍛え続けて来た朝比奈なずなを見て来たので、堀北学にここまで評価されたことが、なんだか嬉しかった。
後方腕組み師匠面という奴である。
それはそれとして試験では潰すが。
「続いて、二年Aクラスに移ろう。
特記戦力S。桐山生叶。
男子総合力三位。
だが何よりも警戒すべきは、その防戦指揮だろう。桐山が防戦に集中しているのなら、最低でもひとクラス分以上の戦力をつぎ込まなければな」
「録画見たけどかっったいね。あれ突破するのしんどいよ?」
「そうですね。しかしまぁ、後輩がここまで育っているのを見ると、なんだか嬉しくなりますね」
「生徒会でもずっと頑張ってたもんねぇ」
元生徒会の面々からしてみれば、あの桐山がよくぞここまでと、涙すら流して感動していた。
こちらもまた、後方腕組み師匠面である。
それはそれとして試験では潰すが。
「特記戦力S。九重九十九。
バックアップ担当だが、情報支援のエキスパートだな。ドローンドッグファイトもこなせるだろう」
「多分十機は同時に動かしてくるわね。それくらいは出来るもの」
まぁ、流石に、流石にハッキングでこちらのドローンの操縦を奪ったりはしてこない。
「特記戦力S。鬼龍院楓花。
女子総合力一位の生徒だな。
自由で指揮など基本的には聞かない生徒だが、見たところ、卜部、朝比奈、桐山の指示には素直に従っているようだな。九重は気分で従うかどうか決めているようだが。
非常に優秀な生徒だ。警戒は怠るなよ」
「しかし、意外だねぇ。
あの鬼龍院が桐山の指示に素直に従っているなんて」
「そうですね。それに、以前よりも協調性を身に付けているようです」
嘗ての鬼龍院ならば、親しい友であったとしても連係などしなかっただろう。
「最後の特記戦力S。卜部藤乃。
総合力だけならば、その身体能力と近接格闘術が足を引っ張って、良くて学年十位程度だろうが、頭脳と射撃、狙撃術の精度が凄まじいな。
録画でも外したところはない。
あちら側の最高戦力の一角だろう」
「ただ狙撃が上手い、それだけの生徒では絶対に無いよ。跳弾狙撃ぐらいはやってくるんじゃないかな?」
「それくらいは出来そうですしね」
「まぁ、藤乃ならそれくらいはね」
嘗て生徒会でその片鱗を見たことのある神田と金織。
長らく共に過ごして来た占藤。
この三人は、彼女がただの狙撃で終わらせるわけないと確信していた。
「まぁ、長々と語ったが、彼らは間違いなく、俺たちが挑んできた敵の中で最も強大な敵だ」
「だね。だからこそ、僕らの最後の相手に相応しい」
「彼らを打ち破って、私たちはAクラスで卒業する」
「奴らを打ち破るのは僕のクラスだ。勝つのは僕らだ」
「…………その、仲間でもあるから、ね?」
橘茜は、おずおずとCDクラスリーダーを宥めた。
「安心して橘。競争相手でもあり仲間でもあることなんて、ちゃんと理解しているわ」
「僕は裏切りが嫌いだ。だから僕から裏切ることはない」
「ま、そもそも、今更裏切るようなヤツが、ここまで学達と戦えるはずもないよね」
彼らは一度も諦めなかった。
どれだけ相手が強大だとしても。
だからこそ。
「だからこそ、俺たちは最強に成れた。
お前達という、最高の
堀北学は今この場にいる全ての生徒と、一人一人順番に目を合わせて告げる。
「誰よりも敵として向かい合って来たからこそ、誰よりも心強い味方になれるだろう。
無論、競争でこそあるが、それ以上に。
そうして、丸一日近くかけた会議が終わり。
一日の休息を挟んで、今。
無人島の砂浜で、一つの家の兄妹が向かい合っていた。
「───今日、あなたから学校最強の生徒の称号を貰い受けるわ、兄さん」
「───良いだろう。この称号、容易くくれてやると思うなよ?」
学校を現在進行形で
その頼れる同級生と先輩達の。
最後の試験が、幕を開けた。