一、二年生チームは、敢えて全クラスのフラッグを一箇所にまとめていた。
これは桐山先輩の作戦だ。
『今回の試験、単純に俺達の方が二倍多い。
これを活かさない手はない。
わざわざフラッグを分散させて各個撃破される危険を犯すよりは、フラッグを一箇所に集めて、防衛人数を可能な限り増やすべきだ』
正直異論はない。
至極合理的で当たり前の判断だ。
ひとクラスから半数前後ずつを集めて、二年Cクラスは緋音以外全員を集めて、百八十人近い部隊を防衛に回して、それ以外で攻撃を担当する。
大まかな作戦はこんな感じだ。
「私たちのクラスからは、幸村くんを代表として二十五名防衛に回すわ。
清隆くんと高円寺くんは単独行動。
桔梗さんは私の部隊に。
平田くんは、残りの攻撃部隊の指揮を」
「了解」
「オッケー」
「分かったよ」
「構わないとも」
そうして、オレは単独で森をフリーランニングで駆け回る。
駆け回りながらも防衛の役に立つよう、ワイヤーガンでワイヤーを辺りに張り巡らせていく。
さて、卜部先輩とも話し合った結果、オレが金石先輩を抑えることになった。
まぁ、まずは索敵からなんだが。
頼んだぞ、寛治。
池寛治は森の中を進みながら思い返している。
綾小路清隆に教えられたフラッグがある可能性の高い場所。
『おそらく、向こうはフラッグを分断しているはずだ。何故か分かるか?』
『うーん、…………一箇所に集めると、防衛の手が足りなくなるから、とか?』
『正解だ』
『うぉっ、やった』
『今回の試験、単純にオレたちが倍多い。
だからこそ、わざわざ一箇所に集めて攻撃側を集めさせるよりは、分断してオレたちをバラけさせた方がいい』
『つっても、それだと結局、集まった攻撃側に一箇所ずつ攻められたら不味くねぇか?』
『相手からしたら、オレたちが攻撃に時間を割いてくれるのは願ってもないことなんだ。その間に攻められるから』
『……あー、集まる時間に加えて、わざわざ四箇所回る時間がかかるわけね』
『だからこそ、基本的に攻撃部隊は分散している』
『でもさそれってフラッグの数が多いこっちでやっても良くね?』
『逆に聞くが、飛騨先輩たちが来た時、たった二十人で守り切れると思うか?』
『…………無理じゃね?』
『そう、無理だ。三年の攻撃を防ぐのに、一クラスじゃとても足りない。
だからこそ、一番防戦の上手い桐山先輩が、一年生や二年生の防戦指揮官に指示を出しながら防衛するのが、一番の対策なんだ』
『なるほど。…………それを踏まえると、三年生は多分、入り組んだ地形とかにフラッグ置いてるかもな』
『………ふっ、どうしてそう考えた?』
『………最悪、大勢の生徒が来た時でも入り組んだ地形なら、強引に数を減らせるはずだし』
『───満点解答だ。花丸をやろう』
『野郎の花丸とか誰得だよ』
『男の先生全否定じゃないか』
兎にも角にも、入り組んだ地形。
でも、多分これ。
他の斥候も間違いなく気付いている。
だからこそ、一番最初に見つけたい。
フラッグを一番取りやすいのは、最初に見つけたクラスだから。
「………経験を活かせ。………闇雲に当たるな。………夏休み、お前はこの島中遊び回っただろうが」
頭の中にしまい込んでいた記憶の地図を取り出して確認する。
入り組んだ地形。入り組んだ地形。入り組んだ地形………。
ダメだ、候補が多すぎる。
洞窟、森の奥、海の入り江………。
海の入り江、か?
「…………背後が海なら、攻めてくる方向は一箇所に絞れる」
模擬戦で桐山先輩が見せた地形戦。
実際、今回も桐山先輩は浜辺に陣地を敷いている。
「だとすれば、向こうも同じことを考えている可能性は高い………!」
記憶の中にある一番丁度いい広さの海の入り江に向かう。
万が一にも見つからないように隠れながら。
匍匐前進で漸くそこに辿り着いて、発見した。
試験開始から凡そ十一分。
「…………あれ、多分三年Aクラスだよな。金織先輩と神田先輩いるし。
うし」
ゴーグルを操作して、集音マイク機能をアクティベート。
一年Bクラス攻撃陣に向けて。
「Aクラスのフラッグを発見。マップにピンつけたから、至急向かってくれ」
『最高の仕事だ、寛治』
『完璧だよ、池くん』
『一番乗りだねぇ、キャンプボーイ』
『よし。そのまま攻撃側と合流して頂戴』
「りょーかい」
そーっと、そーっと、音を立てずにその場を後にしようとして。
うっかり、小枝を一本折ってしまった。
音に気づいたのか、こちら側に視線を向けて来た神田元と完全に目が合った。
一瞬だけ固まって、すぐに。
全速力で逃げ出した。
「───ごめん‼︎バレた‼︎俺のミス‼︎」
『最悪のミスだぞ、寛治』
『台無しだよ、池くん』
『第一脱落者だねぇ、キャンプボーイ』
『よし。そのまま一人引きつけて死んで頂戴』
「みんなひどいっ!」
だがそれはそれとして、堀北鈴音の指示は的確だ。
今自分は完全に孤立している!
この状況なら絶対殺しに来る!
多分死ぬけど一人引きつけられるなら最高の仕事!
なんだったら慣れ親しんだ森の中だし逃げ切れるかも!
なんて考えは甘かったようだ。
「────っ!」
風を切る音。気配がする。
咄嗟に首だけ後ろに回して確認すると。
なんと、飛騨翔子が追いかけて来ているではありませんか。
「あー、飛騨先輩来た。俺死んだわ」
『諦めるのは早いぞもう少し頑張れ。頑張って飛騨先輩後数秒でも引き離してくれ』
『うん。攻撃側に使ってないのは意外だけど、だとすれば守備の要だし』
『そうね。今のうちに急いでフラッグを』
「つっても防御側金織先輩と神田先輩居たぞ?大丈夫なのか?」
その通信を受け取った四人は、立ち止まった。
今、池寛治が言ったことを整理する。
本来、どちらか一人だけが使われるはずの金織美浪と神田元が、同じ防衛側にいた。
それは間違いなく、何かしらの異変だった。
「…………どういうこと?飛騨先輩に神田先輩に金織先輩まで防御に回しているというの?防御を優先しているにせよ、どう考えてもバランスがおかしいわ」
「…………何か、意図があるのは間違い無いよね?」
「…………佐倉さん。ドローンを飛ばして、スキャンを実行して頂戴」
『はい!わかりました!』
10クラスポイントを払う価値があると、堀北鈴音は判断した。
実際、その判断は正しかった。
「防御側十二人………?藤巻先輩も防御側に……?」
「攻撃重視って事なのかな」
「だとしたら、どうして飛騨先輩を攻撃側に使っていないの?」
「……………堀北先輩が攻撃側とか?」
「その可能性も否定できないけれど………」
考え込む堀北鈴音に、浅野学秀から通信が飛んできた。
試験開始から十三分。
「いやー、さっすが浅野。読み通りだな。
洞窟の中にフラッグ置いてやがる。
あれ、日野先輩ってことは、Bクラスか」
橋本正義はBクラスフラッグの位置を突き止めた、が。
少しだけ違和感を覚えた。
「………防御側の指揮官が日野先輩なのは良いけどよ、人少なすぎないか?十人しかいないぞ?」
取り敢えず浅野たちに報告した。
そこで、不意にこちら側に顔を向けて来た日野先輩と目が合った。
反射ですぐに逃げ出した。
だが。
「…………防御側の少なさを考えたら、追手は来ないはず」
「と、思うじゃん?」
聞こえて来た声が誰なのか、振り返らなくても分かったので。
「…………浅野ー、わりぃ、俺死ぬわ」
『ふざけるな。死ぬ気で逃げ────』
「追手、猫実先輩」
『…………遺言はあるか?』
「なんか変だぜ今。やばいかもしれねぇ」
『…………そのようだな』
「じゃ、あと頼むわ」
追い付かれた橋本正義は、背中を撃たれて
三年Bクラス。10クラスポイント獲得。
現在2942クラスポイント。
「へぇ。森で私から十四秒も逃げるなんて、中々やるじゃない。名前は?」
「…………池寛治です」
「覚えておくわ、池」
「…………恐縮です」
ショットガンでペイントをぶちまけられて、池寛治は
三年Aクラス。10クラスポイント獲得。
現在。3,522クラスポイント。
「………つまり、Bクラスも攻撃側に猫実先輩を使っていないと?」
『あぁ。守備も必要最低限だった』
「攻撃に人数をかけさせてのカウンター?それとも速攻?」
『どちらにせよ、飛騨先輩と猫実先輩を攻撃に使わない理由がない』
「………どちらにせよ、今はチャンス。平田くん達と合流次第攻撃を──」
『学秀くん。堀北さん。今地図データを送りました。確認してください』
坂柳有栖が送って来た地図データを確認すると。
三人は再び違和感を覚えた。
「………フラッグが近すぎる」
『これでは分断した意味が無いぞ』
『彼らの狙いが読めません。速攻で決めるつもりなのかと思っていましたが、それならばこの二人を使わない理由がない』
何が狙いだ?
何がしたい?
何故この二人を使わない?
何故金織と神田と藤巻を全員防御に回している?
『CDクラスのフラッグは?』
『影も形もありませんね。相当うまく隠しているようです』
「…………平田くん、合流は撤回よ。防御側に戻って頂戴」
『良いの?フラッグ取れるかもしれないのに』
「嫌な予感がするの。なんだか失敗してしまったような気がする」
『…………うん。分かった』
そう。
致命的なミスを既に犯してしまったような、そんな気がする。
だが、合理的に考えてミスなどないはずだ。
仮に各クラスが攻撃に多くの比重を割いていたとしても、百人程度のはず。
防衛側の方は倍近いので、蜻蛉返りした攻撃部隊の誰かが、攻めあぐねている部隊の背後を強襲できるはず。
穴はないはず。
そこで、綾小路清隆と卜部藤乃からほぼ同時に通信が届いた。
『こちら綾小路。金石先輩を補足した。黄乃先輩も一緒だ』
『こちら卜部。堀北先輩を補足したわ。橘先輩も一緒ね』
最警戒対象の補足。
そう。それ自体は朗報のはずなのに。
浅野も、坂柳も、堀北も、全員。
嫌な予感を感じ取っていた。
「…………二人の現在位置を送って」
『今送った』
『こっちもよ』
送られた情報を確認する。
(島のほとんど反対側……?
清隆くんと卜部先輩を引き付けることが狙いだとしても、これは………)
浅野もまた、黙り込んでいた。
(………猫実先輩と飛騨先輩を攻撃に使ってないのもそうだが、何故、この二人をほぼ完全に孤立させている?
何より、Bクラスの攻撃側指揮官のはずの、黄乃先輩を使ってまで)
坂柳もまた、盤面を整理する。
(………今明らかになっている敵戦力は、三年Aクラス、三年Bクラスの防御側と、飛騨先輩と猫実先輩。堀北先輩、金石先輩。
他の戦力はどこに?)
あまりにも薄い守り。
それだけならば速攻狙いの可能性がある。
何故か使わない飛騨と猫実。
速攻狙いならば使わない理由がない。
何故か遠く離れている堀北学と金石博。
引き付けるためにしてはやりすぎだ。
意図がある。なければこんなことはしない。
「…………今、十五分ね」
試験開始から十五分。
第一ラウンドが開幕した。
浜辺に陣地を張っていた桐山は、中心から辺りを見渡している。
嘗て二年CDクラスが行った、完全防御陣形に少しだけ近い。
百八十人中五十人に盾を持たせて外側を守らせている。
フラッグのすぐそばに防衛狙撃手として星穹三七。
やがて、ドローンが顔を出す。
「───星穹!」
「りょーかい!」
ドローンが下げている手榴弾を狙撃する。
花咲ほむらが使っていた薬品を混ぜ合わせることで、小規模の爆発を起こすペイント。
奥田愛美の協力のもと、二種のペイント弾を半球ずつで固めることで、命中して潰れた瞬間に混じりあり、極小規模の爆発で誘爆させることができるようになった。
すなわち、地対空狙撃ペイント弾である。
手榴弾に完璧に命中して、空中で誘爆する。
防御陣形には到底届かない。
「よし。よくやった」
「わぉ!桐山先輩に褒められちゃった!」
「ふっ、調子のいい奴だな」
投下しようとしていたということは、おそらく攻撃部隊は既に配置完了している。
だからこそ、桐山は良く通る声で全体に指示を出した。
「───第一守備隊!盾を構えろ!」
最前列の守備隊が盾を構え、その隙間から銃口を覗かせる。
射撃戦になったなら、これで。
そこで森から白煙が立ち昇る。
「───なんだ?」
上空を見ると、そこには。
白い筒の様な何かが、ロケットよろしく飛んでいた。
火薬を応用して打ち上げて、空中で爆破して、ペイントを撒き散らす。
「───ようは、打ち上げ花火です」
攻撃側の香月遊真は、イタズラっぽく笑っていた。
「撃ち落とせ!」
「無理っ!速すぎ!」
狙おうとしたが、無理だ。
打ち上がるスピードが速すぎて捉えきれない。
最高到達点で、爆発。
ペイントが辺り一帯に撒き散らされる。
「くっ盾を上に構えろ!それ以外は散開っ!」
瞬時に対抗策を指示してそれを防いだが。
それでも守備隊はかなりやられた。
「九重!何人やられた!」
『六人!第一Aが二!第二Bが三!第二Cが一!』
「ちっ、持ってかれたな……!」
三年Cクラス。60クラスポイント追加。
現在2462ポイント。
「桐山!二発目だ!」
星穹恒の警告通り、二つ目の白筒が打ち上げられている。
速すぎて狙いが定められないならば。
ドローンのカメラがズームする。
『───移動予測地点をマーキングしてゴーグルに表示する!そこを狙って!』
「オッケー先輩!」
ゴーグルに表示された赤い点を狙撃。
白筒にペイント弾が直撃して誘爆する。
ペイントは到底、防御陣形には届かない。
「あら、もう防がれますか。
───なら、数を増やしましょう」
今度は同時に三つ打ち上げた。
「あーもう!先輩予測お願い!」
『ポイントつけた!急いで!』
白煙と共に登る途中の白筒のうち、一つは誘爆、一つは外して、一つはそもそも狙撃できなかった。
つまり。
「ごめん二発来るっ!」
「第二守備隊!前進して上を!他は散開!」
盾を構えた第二守備隊が斜め上を守る。
最前線に展開されている第一守備隊は、打ち上げられている森側に盾を向けたまま。
「防御が薄くなった隙に射撃が来るっ!迎撃体制っ!」
桐山の読み通り、二発のロケットペイント爆弾が爆発すると同時に、射撃が開始されるが。
射撃は完璧に防がれた。
しかし、先程以上に広範囲でばら撒かれたペイントで、防御陣形で守りきれなかった生徒が相当数やられた。
『第一C四!第二D一!第一D三!第一B三!計十一!』
「──チッ!」
三年Cクラス。110クラスポイント追加。
2572ポイント。
「やはり硬いわね、桐山」
攻撃側側指揮官白銀園子は、桐山生叶の能力を評価した。
だからこそ、容赦はしない。
「遊真、次は五発よ。二人はその隙に盾を構えて突撃」
「かしこまりました」
「了解しました」
「了解だ」
リュックサックから取り出して白筒をばら撒き、点火。
白煙は五つ。昇り竜が如く天に昇る。
「先輩!」
『予測済みっ!』
「今度こそっ!」
連続狙撃。
落とせたのは二発だけで──。
別方向から飛んできた三発の狙撃が、残り三発を完璧に撃ち落とした。
「わり、ちょっと遅くなった」
「二年Dクラス攻撃部隊!防御側に入る!」
二年Dクラス攻撃部隊。
南雲雅、森悠政、花咲ほむら、後藤圭、社佐、杉浦友也、水澤蘭の七名。
だが、全員が間違いなく粒ぞろい。
「よし!よくやった南雲!
南雲と星穹で打ち上がったら再び狙撃で撃墜しろ!」
「りょーかい!」
「了解」
すぐさま桐山は、森から盾を構えて突進してくる二人に視線を向ける。
盾は砂浜に轍を刻みながら、こちらの防御部隊へ。
「神里!アルベルト!水澤!足止めを!」
「Roger」
「オーライっ!」
「分かった」
間違いなくパワー最強格の三人が、迎え打つように盾を構えながら突進して。
盾と盾が激突する。
「────っ、なん、だこいつ」
「つ、よ………!」
「………sit」
轢かれるように、二人まとめて吹き飛ばされた。
一人多いのに吹き飛ばせる時点で、桐山は一人は獅子上だと断定して。
もう一人は、わからなかった。
(───香月先輩か?だとしたらロケットはもう)
再びロケット。
今度は、七つ。
「三つ落とす!」
「オッケ。オレ四つ」
二人がかりで瞬時に迎撃。
それと同時に、森から凄まじい勢いで走り出したのが二人。
撥ね飛ばされて体勢を立て直して、現在防御隊に盾を構えて突撃中の二人を背後から強襲しようとした、パワー最強格の三人を背後から。
「水澤っ!」
「分かってるわっ!」
振り向き様に、二人は同時に回し蹴りで男を蹴り飛ばそうとして。
それぞれ片手で容易く受け止められた。
動揺する。二人の実力なら片手で受け止めるなど。
「ふふ、甘いですよお二人とも」
振り回しながら、二人まとめて放り投げた。
一拍遅れて、アルベルトの体重をかけた一撃が襲い掛かってきた。
その重量級の一撃を真正面から片手で平然と受け止めて、鳩尾に一発。
一撃で完全にKOして、首をナイフで切って
受け身を取りながら起き上がった二年生近接最強格の二人は。
高速で襲い掛かってきた三年女子に翻弄される。
右から左から上から下から。
ありとあらゆる角度から、二つのナイフで切り掛かって。
一瞬空いた防御の隙にナイフを突き込んでまとめて
「───まったく、トドメぐらいちゃんと刺しなさい、遊真」
「紫苑さんがいるので任せたんですよ」
三年Cクラス。30クラスポイント追加。
2,602クラスポイント。
戦場に姿を現した香月遊真と蝶乃紫苑を見て。
桐山は動揺する。
(馬鹿な⁉︎もう一人は香月先輩じゃない⁉︎なら、まさか、いやしかしっ!)
盾を構えて突進してくる二人を、第一防御隊は十人がかりで押さえようとして。
激突から数秒で、全員吹き飛ばされた。
そこでようやく、盾に隠れていた二人の顔が露わになる。
一人は予想通り、Dクラスの獅子上玲央。
もう一人は。
(───馬鹿な、あり得ない………!)
三年Cクラスの守備の要。
そう。
(犬山先輩が攻撃側⁉︎)
ドローンカメラで戦場を確認していた九重九十九も驚愕する。
(確かに犬山先輩の身体能力なら攻撃側としても非常に優秀だし、獅子上先輩、犬山先輩、香月先輩もいるなら飛騨先輩たちを攻撃に使わなくてもいいけど!
倒れ伏した十人が、あちら側のドローンと森からの精密射撃で
「──トドメは貰いましたよ。Cクラスの皆様」
「別に構わないわ」
天久天馬のその発言に、白銀園子は簡潔に答えた。
三年Dクラス。100クラスポイント追加。
現在、2,206クラスポイント。
「さて、ここからは、森から出て撃ち合うわよ」
盾を持つ生徒と銃撃する生徒の二人一組。
森から出てきた生徒の数に、桐山生叶は目を見開いて。
ドローンカメラで把握していた九重九十九は、瞬時にスキャンを実行。誰がいるのか居ないのかを確認して、震える声で、報告する。
『こ、攻撃側、百二十三人。
Aクラス、二十六人、Bクラス、二十五人、Cクラス、さ、三十八人、Dクラス、三十四人。
Cクラス防御0人だし、Dクラス防御風間先輩と剣城先輩しかいない!
風間先輩バックアップだし、剣城先輩一人だけだよっ!』
「………おいおい。冗談きついぞ、九重。
マジで防御完全に捨ててんのかよ?」
南雲雅は引き攣った顔で。
ロケット爆弾の連発に、あの二人の攻撃で二十一人やられたので、今防御側は、百六十一名。
攻撃側と防御側の差は、僅か三十八名。
「よく言うでしょう。攻撃は最大の防御って」
顔を出して、よく通る声で話しかけてくる白銀園子。
南雲雅と星穹三七は瞬時に狙撃するが、頭部を狙った南雲雅の狙撃は首を傾けて、胸を狙った星穹三七の狙撃はアサルトライフルを盾にして防ぐ。
「…………見えてる状況じゃあ狙撃も何もねぇ」
「…………一旦隠れよっか」
「いや、オレは前線に出る」
「りょーかーい」
星穹三七はフラッグの元から離れて、森に向かって走り出す。
護衛として、Aクラスの男子生徒、司城大河を引き連れながら。
「………だとしても、些か思い切りが良すぎるでしょう」
「そうかしら?空き巣に遭うようなことはないと思っているけれど」
「へぇ、随分と隠し場所に自信持ってるんすね、センパイ」
「えぇ、そうね。
………無駄話は、ここまでにしましょう」
白銀園子は左手を挙げる。
三年生攻撃陣は、一斉に銃口を構えた。
「それじゃあ、
「迎撃開始っ!」
「攻撃開始」
第一ラウンドが勃発した。