殺せんせーの教え子たち   作:宇津木 沙坂

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 一部は日曜朝に書いてました。


Bクラスと秘密任務(シークレットミッション)

 

 土曜日。

 茅野は自分の持っている服の中で最も可愛い服を選んで、可愛いバッグを選んで、頬を赤く染めながら待っていた。

 前触れも無く唐突に渚から映画に行こうと誘われた。

 渚の夢の為にも、一旦は身を引くというか、邪魔にならないようにしようと考えていたが、あの二人を見ていると、私も何かした方が良いんじゃ無いかなって考えてしまう。

 いや、まぁ、あそこまで積極的には行けないけど!

 

(邪、邪魔にならないようにとか考えてたけど、渚から誘ってきたってことはそういうこと、だよね⁉︎……そういうことで、良いんだよね⁉︎)

 

 そんな茅野こと、雪村あかりを、一之瀬帆波は、たまたま見かけた。声を掛けようとして、明らかにデート前の雰囲気だったので、咄嗟に隠れた。

 物陰から顔を出しながら、あかりの様子をじっくりと観察する。

 明らかに見て分かるぐらいには気合の入った服装。白っぽいワンピース。丈は長めで、膝下まではある。動き易さと可愛さを兼ね備えた、白いサンダル。足の指に、少しコケティッシュな色気を感じてしまう。

 

(………あかりちゃん、すっごくソワソワしてる。相手は誰だろう?……渚くん、かな?)

 

 多分、仲が良い異性と知られてしまうと、元子役としてのファンに嫌な思いをさせてしまうかもしれないからなのか、あかりは男子とは一定の距離を常に置いている。

 ただそれも、潮田渚と過ごす時は少しだけ短くなっている。その辺りに気付けるのは、一之瀬ぐらいだ。

 

(……だから、()()()()()()()()()()()()()?)

 

 いつもはウェーブのかかったストレートなのだが、今日は変則的なツインテールだった。

 高めの位置で纏めて、ボリュームを少し出している。いつもが綺麗寄りだとするなら、今日は可愛いよりの髪型だ。

 

「ごめん。お待たせ、茅野」

「う、ううん。私もさっき来たばっかりだから……」

 

 そこにやはり渚が来た。

 …………いつもの教室でのやり取りよりも、近い距離だと思う。芸能人としてその辺りに気を使うのはよく分かるが、それはそれとしてもっと仲良くしてても良いのに。

 

(渚くんは、何というか、私服はちょっと男の子っぽいんだ)

 

 ショートボブ、というか、強いて言うなら渚の髪型はそんな感じだ。ボーイッシュな女子と言われても納得できるぐらいの髪型。

 ただ、私服は少し男の子っぽい。白に青の差し色が入ったフード付きパーカー。下から覗く無地の黒Tシャツ。大きめのチノパン。多分、今日は、ぱっと見でも男の子してる。

 

(……というか、茅野って、あかりちゃん?やっぱり、入学前から二人は知り合いだったのかな?)

 

 自己紹介の後、こっそり二人で抜け出していたのに気付いた一之瀬は、その時の違和感と、今この瞬間の違和感を重ね合わせ、その結論に至る。

 

(姓が変わってるってことは、…‥ご両親が、離婚した、とか?いや、そこはあまり気にしないでおこう)

 

 取り敢えず。そう取り敢えず。

 二人のデートを追跡してみよう。なんか、こう、面白そうなので。

 そんなことを考えながら、物陰から顔を出すと、目が合った。

 潮田渚と、目が合った。

 心臓は凄まじい勢いで跳ねながらも、すぐさま物陰に隠れる。

 

(気のせい………じゃないよね。絶対目が合ってたよね⁉︎えっ、気付かれた⁉︎この距離で⁉︎)

 

 視線を感じた方向に視線を向けた渚は、物陰に隠れる一之瀬を見つけ、少し悩んだ。

 雪村あかりは、高嶺の花だ。そう演出してるし演技している。

 で、あるならば、異性の自分と二人きりになっているところを見られるのはまずいかもしれない。

 

(でも、僕もなんだかんだで楽しみだったし、ここで止めるのは嫌だな。一応、茅野にも話すか)

 

 自然な動きで、茅野の頬に右手を添える。

 一瞬、茅野は何が起きたのか分からなかった。

 自分が何をされているのか、渚が何をしたのか把握して、急激に赤熱する。

 多分今湯気が出てる。

 

「な、な、なななななにににかなななな⁉︎⁉︎⁉︎」

「シーーーっ、落ち着いて」

「ひゃいっ」

 

 左手で立てた指を、唇の前に持ってきて、静かにのジェスチャーをする渚。

 茅野はそれよりも近付いた渚の唇に意識を完全に持ってかれる。

 思い出してしまう。自分が渚に殺された(落とされた)あの日あの時あの瞬間を。

 あの、あの、人格ごと支配されるような、あの感覚を。

 

(あわ、あわわわわわわわ、えっ嘘、するの、しちゃうの⁉︎)

(えっ、うそっ!あの二人もうそこまで⁉︎)

 

 顔を近づけてくる渚。

 思わず目を閉じる茅野。

 覗き込みながら慌てる一之瀬。

 渚の唇は、茅野の耳元に近付き、呟く。

 

「一之瀬さんが見てる」

「…………へ?」

「どうしようか?」

「……あー、あー!あーー!!うんうん!そういうことだね!うん!分かってた!分かってたよ!変な期待とか全然してないよ!」

「………?どうしたの?」

「いや、うん。何でも無い。何でも無いよ。えっと、多分、帆波ちゃんなら、ちゃんと話せば分かってくれるし、話しちゃおっか」

「分かった。そうしようっか」

 

 一之瀬帆波は、あかりの耳元で何かを囁いた渚が、こちらに向けて歩み寄ってくるのを見て、慌ててその場を離れようとした。

 が、いつの間にか、視界の中にいたはずの渚を見失った、と思ったら、後ろに渚がいた。

 

「一之瀬さん。少し良い?」

「ふぇぇっ!にゃ、にゃんで、いつの間に後ろに⁉︎」

「帆波ちゃん。ちょっと三人で話そうか?」

「あ、あかりちゃん。にゃはははははははは〜〜」

「こ〜ら。可愛くしたって、逃がさないよ。帆波ちゃん」

「うん。跡をつけたり、覗いたりは、よくないからね」

 

 尾行とかそういうことをしているのが相手にばれたなら、それ相応の報復を受けることを、渚は良く知っている。

 何せ、自分がそういう目にあったので。

 

「お仕置き、しちゃう?渚」

「うん。お手入れ、しよっか」

「にゃ、にゃははははは。お手柔らかに〜〜」

 

 

 

 ショッピングモールには、想像以上に色々な店がある。例えば、そう。プリキュアの変身衣装だとか、そういうコスプレ衣装専門店、とでもいうべきお店すらも、あったりする。

 少なくとも今日の一之瀬にとっては、あったりしてしまう、という表現があっている。

 

「ね、ねぇ、もうこれ脱いで良い?」

「だ〜〜め。ほら、もっとカメラ意識して」

「ポーズとかとった方がいいんじゃないかな?」

「そうだね。ステッキはこんな感じで持ってみよっか」

「うぅ〜〜この服恥ずかしい〜〜」

 

 最近話題の黒色のプリキュア。ウィッグまでは無かったので、ピンクブロンドに、長めのステッキを持たせられて、決めポーズを取らされる一之瀬。

 そんな一之瀬の写真をノリノリで撮っていく茅野。

 照明やら何やらを完璧にサポートする渚。

 開店以来の逸材にテンションが最高潮になった店員の手により、最高の機材で写真を撮っていく。

 一之瀬の羞恥心と引き換えに、店の宣伝写真が増えていく。

 

「よし、次は動画いってみよっか」

「店員さん。何か言わせたいセリフとかあります?」

「はい!はい!台本持ってきます!」

「持ってこなくていいです!」

 

 結局は、押し切られる形で決め台詞と決めポーズを取りながら、動画に収められた。

 動画のデータは快く譲ってくれたので、デートのことを他の人に話さなければ、このデータを消してあげる、と約束した。

 

「ほ、本当に、消してくれるんだよね?」

「うん。()()()()()は、消してあげるよ」

「うん。()()()()()は、ね」

「絶対コピーとってあるやつじゃん!別にそんなの無くても話したりしないよ!」

「うん、知ってる」

「でも、帆波ちゃんの動画、ほんとに可愛いしカッコいいから、できれば欲しいかなぁって」

 

 一之瀬のイメージとは正反対にある、黒くてミステリアスな雰囲気のプリキュア。しかし、思ったよりも演技力があったのか、割とちゃんとミステリアスだった。思い返すと、声質は似ていたかもしれない。

 

「うぅ〜〜〜。可愛いくてカッコよかったってのは嬉しいんだけど、でもやっぱり恥ずかしいよ〜」

「宣伝写真で飾られるだろうし今更じゃない?」

「……写真と動画は別なの!」

「あぁ〜、その気持ちなんと無く分かるなぁ」

 

 元子役として、芸能人として、写真と動画ではまた別の羞恥心があることを良く知っている茅野。

 渚としては、羞恥心を削られる衣装は女装を何度か着させられたので、抵抗よりも諦めが勝っているかもしれない。動画も写真も、カルマと中村さんに既に取らされた。

 まぁ、カルマにはある程度の仕返しが出来たので、中村さんへのは卒業後になるだろうな。

 

「……結局、二人って昔からの付き合いってこと?」

「うん。そうだよ」

「磨瀬榛名として有名になっちゃったからね。僕と仲が良いって知られるのは、トラブルの元になるかもしれないってことで、隠すことにしたんだ」

 

 制服に着替えて、店から出る時の店員さんの、「また来てくださいね!」という声掛けに、渚と茅野はにこやかに答えたが、一之瀬は少し頬を引き攣らせながら答えた。

 

「まぁ、納得はするけど、そんなに気にしなくてもいいんじゃない?」

「あ〜〜うん。でも、こうすれば、渚が目立たなくなるんだよね」

「うん。同じクラスに元天才子役と一之瀬さんがいる以上、僕を警戒する人は殆どいない。(暗殺者)にとって、これほど動きやすい状況はないよ」

「そういうものか〜」

 

 カフェで三人で一服しながら、軽く雑談する。

 茅野は、たっぷりプリンアラモードパフェ。〜採れたて新鮮チェリーを添えて〜。

 一之瀬はたっぷり特製グミアソート。〜出来たて!採れたて新鮮葡萄から店内で作りました!〜。

 渚はひんやりチョコレートフラッペ。〜カカオから作りました!シャリシャリチョコレートチップ入り!〜。

 ちなみにカフェの名前はハッピーパレットである。

 お菓子専門店であり、店内で実際にお菓子を作っているらしい。種類は多岐に渡り、定番のプリンから、チョコレート、変わりどころではグミなんかも。

 イケメン三人とギャル一人が店員のようだ。

 

「そういえば、時間は大丈夫なの?映画見にいくっていってたけど」

「大丈夫。時間は余裕あるからね」

「チケット取ってくれたの渚だし、その辺り私知らないんだよね」

 

 実はチケットはカップルシートチケットだということを、渚は伝え忘れていた。

 なので、この場で伝えておくことにした。

 

「そうそう。茅野、このチケットカップルシートなんだけど、良いよね?」

「うん。大丈ぶぇっ⁉︎」

「カップルシート⁉︎⁉︎」

 

 驚愕する茅野と、ワクワクを隠せずに喰らいつく一之瀬。キョトンとする渚。

 

「も、もしかして、嫌だった?」

「い、いいい嫌じゃ、ない、よ」

「い、嫌じゃ、ないんだね」

「帆波ちゃん⁉︎」

「ごめんねあかりちゃん!あっ、そろそろ私いかなきゃ、ご馳走様!楽しんでね!」

「あっ、うん。じゃあ、また月曜日に」

「ちょっと待ちなさい帆波ちゃん!」

「ごめんね!楽しんできて〜〜」

 

 グミを急いで食べ切った一之瀬は、これ以上二人の時間を邪魔するのも不味いので、偽の予定をでっち上げて、その場を撤退した。

 

(にしても、カップルシートかぁ。渚くん思ったよりも肉食系なのかな?いやぁ、でも、完全に友達だと思ってるからこそなのかなぁ。どうだろう?あかりちゃんは完全にそうだったけど)

 

 一之瀬が帰った後、茅野と渚はそのまま映画館に向かう。

 そんな二人を付け狙う、一人の悪魔がいた。悪魔は優男のような風貌の、赤い髪の長身な男だった。というか赤羽業だった。

 一之瀬に気を取られたので、渚は一切気付かなかったのだ。

 ある意味幸運である。スマホのフォルダがこれから潤うだろう。

 

(茅野ちゃん今のは攻めたな。あーんは流石に照れる、いや照れてないな渚のやつ。まっじで自己評価低すぎんだろ渚。自分が恋愛的な意味で好かれるとは一切考えてないにも程があるでしょ)

 

 写真は潤うが、おもちゃとして遊べるのは茅野だけだ。 

 渚のやつ、こう言う時はつまらんな。

 なお渚が聞くとめちゃくちゃキレる。人で遊ぶなって言う。ただそんなに怖くはない。カルマ的には精一杯威嚇するアライグマを見るような感覚だ。

 そんなことを考えながら写真を撮ることに集中していた赤羽業は、背後から近付いてくるクラスメイトに気付かなかった!

 急に後ろから肩に手を置かれてビックリしたカルマは、咄嗟に身構えながら振り向いた。

 勢いよく振り返るカルマに、奥田は一瞬肩を跳ねさせ、椎名は首を傾げていた。

 

「なーんだ。ひよりさんと愛美さんか。ビックリしたじゃん」

「それはこっちのセリフです」

「そ、そうです。何でそんなに身構えてたんですか?」

「いや、てっきり渚に頼まれてた綾小路辺りが来たのかなって」

 

 あの二人は割と協力関係のようなものを結んでいるので、自分のデートの時はカルマに写真を撮られるのを防ぐために、相手にカルマの索敵と撃退を依頼し合ったりはしそうなので。

 

「あ、あぁ。渚くんと茅野さん。今デートしてるんですね」

「うんうんそうそう。前の仕返し的なあれでね」

「仕返し?カルマくん一体何をやったんですか?」

「あれに関しては俺被害者だから。悪いのあいつらだったから」

「普段からこういうことしなければいいのに」

「分かってないな愛美さん。こんな面白いの見過ごすわけにはいかないでしょ?」

「………さっき綾小路くんと櫛田さんがデートしてましたけど、どうするんですか?」

「……なん、だと……?」

 

 同時進行で綾小路櫛田のデートが行われていると知って、動揺を隠せないカルマ。

 

(どっちだっ、……!どっちを取るべきなんだ……!

 俺は一人、デートは二つ……!物理的に同時に二つを見ることは、不可能……!しかし、こんなに面白いものを、片時も見過ごすわけには……っっ!)

 

 ……いるじゃないか。ここに二人。

 

「ひよりさん。愛美さん。ちょっと時間ある?」

「……まぁ、今日の用事はあらかた済みましたが」

「は、はい。時間は、ありますけど」

 

 ならば話は早い。

 

「報酬は後で言い値で払う。綾小路と櫛田さんのデートを尾行して、写真を撮ってきてほしい………!」

 

 姿勢を正した赤羽業は、丁寧に二人に頭を下げながら、真剣な様子でそんなことを頼んだ。

 内容は限りなく下世話だった。

 

「え、えぇぇぇぇ。椎名さん、どうしましょう?」

「良いんじゃないですか?ちょっと面白そうですし」

 

 ちなみに、椎名は割とノリがいい。

 

「し、椎名さん?」

「後で書店巡りに付き合ってくださいね。ついでにオススメします」

「はいはい。数冊ぐらいは俺が払うよ」

「あら、それは重畳です」

「ちょう、じょう……?」

「この上なく喜ばしいとか、そんな意味の単語だね。重なる畳で、重畳(ちょうじょう)だよ」

「へ、へぇーー、椎名さんもカルマくんも凄いですね」

「ふふ。ありがとうございます」

「うん。ありがとうね」

 

 悪魔の元に、悪魔がまた一人。哀れな小動物は逃げることもできず、二人の悪魔の悪戯に付き合わされた。

 

 

 さて、ターゲットとなった綾小路たちを尾行する椎名と奥田。

 櫛田のファッションショーとでも言うべきだろうか。着せ替えしながら、綾小路に着替えた自分を見せつけていく櫛田。

 所々で照れながらも褒める綾小路。微笑みながら、その称賛を受け止める櫛田。

 今度は、そろそろ夏になるからだろうか、水着売り場に引っ張り込む櫛田。綾小路は諦観を滲ませながら付き合っていた。

 様々な水着に着替えながら見せつけるようにファッションショーのようなものを行う櫛田。

 普通に恥ずかしいのか櫛田自身も赤くなっていた。

 綾小路は燃えそうなぐらい真っ赤だった。

 

 椎名にとってはフィーバータイムである。

 凄まじい勢いで写真が増えていく。

 ちなみに、カルマの方も同じくらいの勢いで写真が増えていった。

 ある意味でこの二人は似ているのかもしれない。奥田はそんなことを考えていた。

 

「おや、出ますね」

「は、はい。水着はもう買えたんでしょうか」

 

 綾小路と櫛田は店を出た。

 二人を追いかけてみると、何故か路地裏へと姿を消した。

 

「……あの、椎名さん。ここまでにしておきませんか」

「何をいっているんですか奥田さん。路地裏ですよ路地裏。絶対面白いことするつもりですよ」

「あの、多分、そう言う意図はないと思います」

 

 ノリノリのウキウキで路地裏に踏み込んだ椎名は、しかし、そこに二人ともいないことに目を瞬かせた。

 

「あ、あれ?ど、どこに?」

「あっははは。ずうっとつけてきてると思ってたら、椎名さんだったんだ〜」

 

 後ろから突然現れた櫛田は、抱き付くように腕を首に回した。

 すぐさま首を絞められる体制である。殺意が高い。

 

「あ、あのあの櫛田さん!」

「どうした奥田。何をそんなに慌てている?別にやましい写真なんて、無いんだろう?」

「あ、綾小路くん。………は、はいそうですね。やましい写真は、その、消します、ので」

 

 渋々端末を出した椎名は、そこで撮った写真を、二人の目の前で消した。

 

「さて。お前たち二人は尾行が見つかったわけだ」

「失敗した暗殺者には、お手入れしないとね」

「お、お手柔らかに………」

「……主犯は私です。奥田さんは巻き込まないでください」

「し、椎名さん⁉︎」

 

 潔く罪を認めて、奥田だけでも逃さんとする、が。

 

「だ〜め。こういうのは連帯責任だからね」

「……くっ……!」

「安心しろ。肉体的に苦痛なことはしない」

「せ、精神的にはその限りでは無いと」

「へぇ。読解力育ってるね奥田さん」

「は、はい!椎名さんおすすめの図書のお陰です!」

「へぇ。二人ってそんなに仲良かったんだぁ」

 

 怖い笑みを浮かべる櫛田。何をされてしまうのだろうか。

 

「ちょっとさぁ、リサーチしておこうと思ってたお店とメニューがあるんだよねぇ」

「……わかりました。感想を写真付きで送ればいいんでしょう?」

 

 諦観を露わに、手っ取り早く受け入れる椎名。何となく、何をやらされるか察したのだろうか。

 

「……うっふふふふ。話が早いと楽だなぁ」

 

 解放された椎名の端末に、店名、位置情報、メニューの名前が送られてきた。

 予想通りのその内容に、椎名は深いため息を吐いた。

 

「俺からの手入れは、それで撮った写真をカルマに送ることだ」

「………そんなことで、良いんですか?」

 

 奥田としては、もっと精神を抉られるようなお手入れを想像していたのだが。

 だが、綾小路は、その写真を見るカルマが、どんな思いを抱くのか楽しみで仕方がない、と言いたげな笑みを浮かべた。

 ………椎名は、カルマに哀れみを抱いた。

 

 それから数時間後。

 

 二人のデートを終わりまで尾行して、二人をまとめて弄り倒せる最高の写真をたくさん確保できてホクホクだったカルマに、椎名から、ある写真が届いた。

 

 さては綾小路たちの写真だな、と思ったカルマは、その写真を開き、そして。

 

「─────………………はっ?」

 

 お互いに真っ赤になりながら、いかにもなお店で、ハートのストローで、明らかにカップル専用メニューを飲む、椎名と奥田の写真を見て。

 

 脳が壊れる感覚を、実感付きで理解した。

 





 次回、ストーカー事件の顛末。
 3日以内に、出来たら、良いなぁ。
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