この一分で勝負を決める。
まずは、桃井緋音が勢いよく突撃する。
秒間四連撃。振り下ろし、切り上げ、袈裟、突き。
金石博はそれら全てを躱しきって、反撃の鞭のように唸る足が桃井の頭を撃ち抜いた。
衝撃で一瞬桃井の動きが止まる。
その瞬間、落ちてきたペイント弾が直撃しそうになった。
しかし、唐突に現れた潮田がナイフを盾に防いだ。
「あら、居たのね」
黄乃は瞬時に潮田の背後に回って、刈り取るような延髄蹴りで落とそうとして。
飛び込んできた雪村の蹴りで迎撃させる。
その瞬間には、潮田は既に金石と黄乃、二人の視界から外れていた。
全員が絶え間なく動き続ける。
一瞬でも足を止めれば、その瞬間に人力誘導弾かミサイルで殺されるかもしれないから。
当たり前のようにリミッターを解除した高円寺と龍園が、背後から金石を狙い攻める。
宙返りしながら躱して、龍園の肩を足場に更に後方まで飛び退く。
足場にされた龍園は僅かにつんのめって動きが止まる。すぐさま高円寺は龍園の肩を掴んでその場から動かした。ついさっきまで龍園がいた場所に弾丸が落ちてくる。
「わり、助かっ───」
「お前ら邪魔っ!」
赤羽の叫びで弾かれたように二人は横に飛び退いて。
射線が通ったので、金石目掛け突撃しながら数発打ち込んでいく。
視線、銃口、指の動き。
それら全てから予測して、弾丸が当たらないように躱しながら接近していく。
当たらないことを察知した赤羽は、ハンドガンを空中に置くように捨てて、ダッシュの勢いを乗せたストレートで顔面を打ち抜く。
しかし、金石も同じようにダッシュの勢いを乗せたストレートで、完全なクロスカウンター。
お互いにたたらを踏んで、一瞬止まる。
飛び込んで来た浅野が、赤羽の頭上に降ってきた弾丸をハンドガンを盾に防ぐ。防ぎながらの射撃で金石を狙うが、運良く外れてしまった。
黄乃もまた、飛び込んでハンドガンを盾に防いだ。
だがそれにより、黄乃は隙を晒してしまった。
一之瀬が背中を狙ってナイフを突き込む。
左足を軸足に回転して受け流す。
受け流した直後の黄乃を狙って、雪村と綾小路が同時に襲いかかる。
完全な挟み撃ち。
軸足で軽く飛び上がると同時に、金石は掬い上げるように蹴り上げて、より高い位置までジャンプさせる。
空中で身を翻して、直下の一之瀬雪村綾小路を狙い、射撃。
三人はすぐさま飛び退いて躱す。
そして、空中に躍り出た黄乃に、卜部の狙撃が着撃した。
(───空中に跳び上がるように動かされた。やられたわね)
二年Aクラス。10クラスポイント追加。
現在1,324クラスポイント。
飛び退いた一之瀬雪村綾小路の三人は、着地と同時に走り出そうとした。
しかし、運良く石に躓いてしまった一之瀬は転んで。
落ちてきた弾丸に撃ち抜かれた。
三年Bクラス。10クラスポイント追加。
現在3,123クラスポイント。
「──ごめん!あと頼んだ!」
「「頼まれた!」」
雪村と姿を一瞬現した潮田の近接連係。
同時に迫り来るナイフを躱し切ったところで、綾小路の蹴り下ろしを左手を盾に防ぐ。
左手で弾きながら大きく飛び退く金石と、追いすがる綾小路。
飛び退く金石に、高円寺が背後から踊り迫る。
右から赤羽。左から浅野。
退避するとしたら、空中へ跳ぶしかない。
そして、身動きの出来ない空中に跳んだら、降ってくる射撃で殺される。
かといって、跳ばなければこのまま誰かに殺される。
即ち、完全な詰みである。
(───よし、賭けるか)
敢えて空中に跳び上がった金石は。
重力も加わって、影すら分からないペイント弾を防ぐために。
適当に右手に握ったナイフを振って。
「──ちっ、めちゃくちゃだなぁ!」
着地した瞬間を狙って飛び込んで来た龍園は、運良く木の根に躓いて、決定的な隙を晒す。
その隙を突く形で、振り下ろされたかかと落としで、龍園の意識を刈り取ろうとした。
しかし、直撃してもなお、一瞬たりとも怯まずに組みついた。
金石博の動きが止まる。
桃井と高円寺と雪村が、瞬時かつ同時に襲いかかった。
今度こそ、完全な詰みだ。
(────まだだ)
右脚での膝蹴りからの前蹴りの二連撃で、組み付いた龍園を振り払う。
衝撃で一瞬動きを止めて、その隙に降ってきた射撃に撃ち抜かれた。
三年Bクラス。10クラスポイント追加。
現在3,133クラスポイント。
だが、既に金石は三方向から狙われている。
空いた右足で、高円寺の飛び蹴りと蹴り合う。
左腕で雪村の手首を捕まえて取り押さえた。
そして、振り下ろしてくる桃井の木刀。
距離の関係で手首を掴んで抑えることは出来なくて。
振り下ろすスピードが速すぎて、白刃取りなんて不可能だ。
それでも諦めずに直感に従って、ナイフを握った右拳の裏拳を放つ。
半分程度は狙い通り。半分程度は幸運にも。
裏拳は振り下ろされる途中の木刀の側面を、殴り折った。
「───は?」
桃井は声を漏らした。
高円寺も目を剥いた。
しかし、雪村はすぐさま自身の手首を抑えている左腕に飛び付き固めた。
金石は片足で立ちながらも左腕に掛かる女子生徒一人分の重さに耐えて、腰から捻って、雪村を武器にして桃井を殴る。
桃井は咄嗟に飛び退いて躱した。防いでカウンターもできたが、それでは雪村を傷つけてしまうので。
右手のナイフが煌いて高円寺の喉を狙う。
高円寺も咄嗟に飛び退き躱して。
足元もよく見ていなかったので、運良く突き出ていた石に躓いて、瞬時に片手ハンドスプリングで、転ばないようにして、一瞬跳び上がってしまった瞬間に、落ちてきた弾丸に撃ち抜かれた。
振り抜いたナイフは掠めるだけだった。
三年Bクラス。10クラスポイント追加。
現在3,143クラスポイント。
包囲が崩れ余裕が生まれたので、右手のナイフを逆手に持ち替えて、左腕に組み付く雪村を刺し殺そうとした。
その、トドメの瞬間。
ここで潮田渚が来ると読んでいた。
「こんにちは」
最初からずっと潜み続けていた櫛田桔梗にいきなり挨拶されて、金石は固まって。
そこに、
音の爆弾が爆発する。
意識が一撃で粉砕される。
何が起こったのか分からなかった。
「────がっ」
そうして、足が止まったその瞬間に。
降ってきた綾小路清隆の弾丸に撃ち抜かれた。
一年Bクラス。10クラスポイント追加。
現在1,397クラスポイント。
「…………やられたよ。君もまた、暗殺者だったのか」
「貰いましたよ。金石せん───」
その瞬間に飛び込んで来た綾小路清隆は櫛田桔梗を押し倒して。
ついさっきまで立っていた場所に、弾丸が落ちていた。
「……あーあ、完全敗北、か」
これは流石に悔しい。
「…………あ、あっぶなー」
「一旦ここから離れるぞ」
桔梗を姫抱きして、その場から瞬時に離脱する。
先輩の十二発中、四十六秒で落ちてきたのは、八発。
残り四発をやり過ごしてからじゃないと。
約十四秒後。オレの人力誘導弾と卜部先輩の人力ミサイルも含めた全ての弾丸が落ち切ったのを確認して。
その場を離れ始めたところ。
そこで、通信が入ってくる。
『ごめん!完全にやられた。南雲以外全滅。今堀北先輩が単身で防御陣形に向かってる!急いで!』
一分前。
初手から全力。花咲ほむらはそう決めていた。
だからこそ。
「───ハルくん!
「───分かった!信じろ!」
「うん!」
この一分で必ず勝つために。
花咲ほむらは自身の大技を切った。
「───秘技!『七変化の術』!」
自身を封印した同時七人展開。
森悠政は見失いそうな自身を必ず見つけ出すと信じて。
この一分、ほむらはほむら以外の七人となる。
「───勝負よ!兄さん!」
先ずは堀北鈴音。
空手の動きで蹴り込むが、見切られ躱される。
「せめて兄弟子と──」
「余所見してる──」
「───場合か!」
桐山の射撃と鬼龍院の蹴りが同時に打ち込まれる。
射撃は見切り、蹴りは手刀で撃墜した。
僅かに身体を揺らして、降ってきた一発目の弾丸を躱す。
それを。
完全にここに降ってくると分かり切っているとしか思えないその動きを見て。
南雲雅と星穹恒は完全に理解した。
即ち。
(───俺たちの動きからどこに弾丸が落ちてくるのか、瞬時に予測している!)
(───つまり、人力ミサイルじゃ殺せない!)
鬼龍院楓花。桐山生叶。朝比奈なずな。星穹恒。影乃蓮。須知萌香。南雲雅。森悠政。花咲ほむら。
この全員の動きを瞬時に把握して、自身を留めさせようとしているポイントを逆算。
それによって、人力ミサイルを躱し切っている。
結論。堀北学は。
『神の領域』に入ったまま、リミッターも解除して、ゾーン状態を維持している。
カットしているのは、嗅覚と味覚のみ。
本来これらを同時使用出来るのは二つまで。
一年生との戦いでも、金石博はリミッター解除とゾーン状態の併用までしか出来なかった。
至極単純、処理能力の限界は本来そこまでなのだ。
三つ同時に使用出来るのは、現状堀北学のみである。
「占藤」
『もうやってるわ』
ありとあらゆる角度からドローンが撮った映像を共有することで、一時的に死角を完全になくしている。
今、堀北学は戦場全てを瞬時に把握して理解して共感して予測して、二秒先の未来を脳内でシュミレートし続けている。
結論から言えば、実質的な未来視である。
「なら次は
教科書通りの愚直で丁寧で完璧なナイフ術。
(───この動き、一之瀬か)
故に、七つの人格をくるくると入れ替えながら近接戦闘を行うことで、予測を狂わせる。
それしかないと理解した二年生たちは、橘茜を牽制しながら、花咲ほむらを通すために動き始めた。
「使って!」
須知萌香は走りながらの片手射撃で橘茜を牽制して、サイドアームのハンドガンを投げ渡す。
それを受け取った誰かは、瞬時に誰かに切り替わる。
「───今度は
射撃に高い才能を持つ両沢眞子の人格に切り替えて、高精度のラン&ガン。
堀北学は桐山と森の十字砲火を躱しながら、
射撃では援護にもならないことを察知した二人はナイフを抜いて近接連係。
朝比奈と須知は常に橘を挟んで援護に向かわせないようにして。
桐山、鬼龍院、星穹、森、南雲の近接連係で攻め立てる。
そうして、
堀北学は全てを見抜いた。
桐山の刺突は腕を突き出すよりも速く間合いを詰めて、超至近距離でのコンパクトパンチで顎を揺らした。
鬼龍院楓花のナイフ二刀流は、突き込む寸前の片手を掴んで引っ張って体勢を崩して、片手のみで投げ飛ばす。
星穹恒の薙刀は、振り下ろさせる途中の薙刀を、足刀で側面を狙って蹴り折って。二撃目の蹴りは柄でギリギリ受け止めたが、代わりに薙刀は完全にへし折られた。
森悠政と南雲雅のナイフ二刀流近接連係すらも、自身の立ち位置を僅かに調整することで、降ってきた弾丸を躱しつつ、必要最低限の力のみで放った貫手で太腿を狙い、南雲雅のバランスを崩して接触させて転倒させて。
薙刀で攻撃をなんとか防ぎ切ったから、咄嗟にその場を離れられた星穹恒と、もう片方の手に握ったナイフを反射で天に掲げた鬼龍院楓花と、咄嗟に森悠政が覆い被さり庇った南雲雅以外に。
ほぼ同時に弾丸が降り注いで、撃破される。
三年Aクラス。20クラスポイント追加。
現在3,672クラスポイント。
「全員纏めて倒すつもりだったんだがな」
「──
一年女子近接戦闘トップクラスの伊吹澪に切り替えて飛び膝蹴りを打ち込むが、柔術でそらされ流される。
(───ふむ。この動きは伊吹澪か。
となると次は──)
着地の瞬間に瞬時に切り替え。
一気に懐まで飛び込む、身軽で鋭い、雪村あかりの体捌き。
複数回の近接攻撃を防がれ、反撃の一撃が飛んで来た瞬間に切り替える。
合気道を高いレベルで修めている神室真澄に。
反撃の掌底を合気で流しながら投げ飛ばそうとして、
(───は?読まれた?
七人全員を見せた卜部藤乃とは違う。
まだ五人までしか見せていなかった。
残りの二人を、予測するなんて出来ないはずで。
「───女子限定だろう?自身と身体能力の近い、な」
そう。堀北学に見抜かれた通り。
戦闘に限定した『七変化の術』には。
異性では身体のつくりが違う。
身体能力に差があり過ぎれば操作に戸惑う。
だから制限はある、が。
それでも、自身と近い身体能力の女子など幾らでも。
「───後一人は、山村美紀だろう?」
「近接格闘と見せかけて、最後の最後で暗殺という戦術だろう」
「誰で暗殺するのかさえ分かれば、反応できる」
そう。ここまで全て、この瞬間の布石。
読まれる可能性なんて想定済み。だからこそ、最後の一人を隠し続けた。
最後の一人は
山村美紀ではできない
他のメンタルトレースの持ち主たちは、潮田渚や櫛田桔梗をトレースしても、意識の波長は見えないが。
この一撃で決定的に崩して。
その隙に、潜み続けていた影乃が決める。
「───っくそがっ!」
あっさり躱されて、瞬時に
それもあっさり躱されて、
それでもダメなら
負けることはわかり切っているので、捕まった瞬間に
一瞬未満の刹那だけ、僅かを超えた微小だけ崩れたので、その瞬間に
反撃の一撃を奇跡的に躱して、懐に飛び込んだ瞬間に。
目の前で
そう。
一瞬、真っ白になった。
その一瞬で殺された。
三年Aクラス。10クラスポイント追加。
現在3,682クラスポイント。
「───え」
「別に驚くことじゃないだろう。猫騙しそれ自体はありふれた技だ。まぁ、俺では到底必殺の一撃にはならないぞ?一瞬意識を漂白させるぐらいしかできん」
ただ相手の思考を完全に予測して把握して共感して、この瞬間には僅かに隙ができると判断しただけ。
その僅かな隙に、ピンポイントで
擬似未満のただの小技でしかない。
それでも、こうして必殺のための繋ぎになっていた。
「───ほむら!」
森悠政の声で、
だからこそ、やるべきことをやることにした。
「………どんな気持ち。兄弟子さ──」
「悪いが、時間稼ぎには付き合わん」
そうして、堀北学が一度答えたその瞬間に。
影乃蓮が飛び込んで来た。
瞬時に掴まれ、取り押さえられた。
そして、上から降ってきた弾丸を、軽く頭を傾けるだけで躱しながら、ナイフで突き殺した。
三年Aクラス。10クラスポイント追加。
現在3,692クラスポイント。
「そして、ここでお前だろう?」
読まれている。
影乃の暗殺を隠れ蓑にした、
この瞬間まで隠し続けていたはずの、南雲雅の新しい刃。
それを、堀北学は読み切っていた。
「翡翠先生はお前の才能に金石麗さんの影を見た。
そして、金石麗さんの才能は人の懐に入り込み、油断させて殺す。
そういう才能の持ち主だったと」
そう。つまりは、
「ならば、翡翠先生が見出したお前にも、その才能があるだろうと思っていた」
二年生の
暗殺者、南雲雅で。
それを、堀北学は見抜いていた。
「───っの、化物………!」
「離れろ雅っ!」
瞬時に、南雲雅を生かすために丸腰で飛び込んで来た星穹恒。
ゾーン状態とリミッター解除の併用。
この瞬間、星穹恒は確かに高育最高峰の一角に名を連ね。
秒間三連撃で攻め立てるが。
十五発の拳と蹴りと諸々を完全に捌き切られた。
そうして、五秒で喉を切られて敗北した。
三年Aクラス。10クラスポイント追加。
現在3,702クラスポイント。
星穹恒が稼いだ五秒で戦場を離脱して、南雲雅は防御陣形へと戻る。
この一分は自分たちの敗北。
だが、あちらの一分は綾小路たちの勝利。
だからこそ、防御陣形で合流して反撃するべきだと判断した。
その判断は鬼龍院楓花も同じだ。
だから彼女は、降り落ちる弾丸をナイフで防いだ次の瞬間には、朝比奈と須知が二人がかりで抑えている橘茜を狙った。
瞬時にその狙いを理解した朝比奈と須知の援護の元、橘茜を撃破。
二年Aクラス。10クラスポイント追加。
現在1,334クラスポイント。
返す刀で朝比奈と須知を引き連れて、堀北学を足留めする。
「───ほう、お前が殿か。鬼龍院」
「実に腹立たしいがな……っ!この私が敗北を前提とした戦闘などっ!」
鬼龍院楓花も、ゾーン状態とリミッター解除の併用。
この瞬間、彼女も高育最高峰の一角に名を連ねた。
そこに加えて、リミッターを解除した朝比奈なずなとの近接連係。
これらを持ってしても、稼げた時間は七秒程度だ。
「───こっちにも、意地ってもんがあるんですよっ!」
彼女は所詮凡人でしかない。
リミッター解除もゾーン状態も持たない、ただ人よりも少しだけ器用な生徒というだけ。
それでも彼女のクラスメイトは。二人の親友は。学年最高峰の天才と学校最強の怪物は、諦めていないから。
だから、彼女だって諦めない。
例え、足留めらしい足留めも出来なくとも、必ず勝つ。
そうして。
ただの凡人、須知萌香は単独で二秒だけ抑えた。
三年Aクラス。30クラスポイント追加。
現在3,732クラスポイント。
南雲雅以外の二年生は全員、五十六秒で全滅した。
「ここまでありがとう、茜」
「礼はいいです。速く行ってください」
「あぁ」
防御陣形まで全力で向かう南雲雅を追う形で、堀北学も走り出した。
一年生と桃井がフラッグに戻るまでには、奪い取りたいので。
「…………やっぱり、私じゃ最後までついていけないや。
後はお願い。メメちゃん」
『…………えぇ。頼まれたわ』
三年生側ドローン十九機全ての操縦を、占藤メメは引き受ける。
堀北学に最後までついて行くために。
「────堀北先輩が来る!」
「────射撃開始!」
南雲雅の後ろから走り込んでくる堀北学目掛けて、葛城の指示の元の一切射。
だが、先行していた占藤のドローンから送られた映像で、全員の視線と銃口の向きを把握。
僅かに身体を揺らしながら走り続ける。
弾丸は掠めることすらなく、堀北学は減速することもなく、盾を構える防御陣形に突入していた。
構えられている盾を足場に大跳躍。
防御陣形を完全に跳び越えて、フラッグの元まで。
姫野ユキが、葛城康平が、最終防衛ラインの生徒たちが、反応すら出来ない超高速で。
フラッグを二つまとめて奪い取ろうとした。
「───飛ばすよっ!清隆っ!」
「───頼んだ。緋音」
全力で振り抜いた木刀を踏み台に。
一直線に飛び込んで来た綾小路清隆に空中で組みつかれて、バランスを僅かに崩しながらも、空中で振り払う。
着地した堀北学と綾小路清隆は、静かに向かい合った。
この一手でフラッグを取ることは出来なかった。
後一秒遅ければ、完全に敗北していた。
学年屈指の天才、星穹恒が稼いだ五秒では足りなかった。
学年屈指の天才、鬼龍院楓花と学年屈指の秀才、朝比奈なずなが稼いだ七秒でも足りず。
ただ人より少しだけ器用なだけの凡人、須知萌香の稼いだ二秒があったから、なんとか間に合った。
「………須知萌香、中々優秀だな。ふっ、どうやら俺の後輩たちは、どいつもこいつも予想以上だ」
「───えぇ。あなたの予想も超えて、
一分のラストバトルは終わって。
ここから先は、リベンジマッチ。
綾小路清隆、赤羽業、浅野学秀、潮田渚、雪村あかり、櫛田桔梗、南雲雅。
そして、この場に集う全ての生徒で。
「───勝つのは俺たちだ、
「───いいえ、勝つのはオレたちです、学義兄さん」
金石博戦では、初手で渚が姿を現すことで、他の暗殺者はこの場にいないと思わせました。
なので、櫛田さんがガン刺さりしたので勝てました。
堀北学戦では、初手でほむらが切り札を切ったので、他の切り札はあるとしたら影乃だけだと思わせて、その隙を南雲につかせようとしたんですが、南雲にも暗殺の才能ってあるよな、てなった堀北学に防がれました。
ほむらは無自覚で波長を捉えています。クラスメイトが気付けなかった占藤の恋心に、告白前の体育祭時点で唯一気付けたのはほむらだけです。卜部は告白後の違和感でようやく気付けました。
南雲は結構自覚的に波長を捉えています。なので、波長の隙を突き続けて卜部を騙してました。