私は人よりもきっと、恵まれていました。
人よりも出来ることは多かったですし、人よりも綺麗な顔をしていました。
よく言われました。『顔だけで生きていけるから、人生楽だよね』と。
それはそうかもしれないな、と考えていました。
なので、誰かに頼られるのも、しつこいストーキングも、納得して諦めていました。
人よりも恵まれて生まれたから。
人よりも不平等に生まれたから。
全ては仕方のないことなのだと。
それでも納得の出来ないことが、一つだけ。
『良いよね。金織は。夢だって簡単に叶うんだし』
服を作ること。それを仕事にしたいと考えたのは、中学二年生の頃でした。
それまでは趣味の延長線上だったんですが、実際に作った服を初めてバザーで売った時、とても嬉しそうに買う子供を見て。
私はこれで生きたいと考えたのです。
そうして、教室の一角で、ファッション誌を読んでいた時に、同じ夢を抱いていた同級生に声をかけられて、同じように同級生と服を作りました。
ミシンで指を怪我することもありました。
刺繍で失敗して、変な模様になることもありました。
裁断に失敗して、使い物にならないただの布を作ってしまったりもしました。
お互いに教え合いながら放課後の被服室で笑い合いながら作った服は、きっと、出来栄えに大きな差はなかった。
それでもバザーに出品した時、私が作った服の方が高く評価されました。より多く売れました。売り切れました。
きっと、売り子が私だったから。
それに腹を立てたあの子は、あのような言葉を言い捨てました。
私が叶える夢なんて、簡単なものでしかないのだと。
だから、証明しようとしました。
今度は違う人に売り子を頼んで売りました。
こんな付与が無ければ、どうせ売れないんだから、と。
…………売り切れでした。
────売り切れてしまいました。
…………私は夢を一度諦めました。
なんのために作っているのか分からないのです。
喜ぶ顔が見たかったのに、それに価値を見出せないのです。
指先にたくさん貼ってある絆創膏が、滑稽に思えて仕方ありませんでした。
鏡に映る私の顔が、醜く思えて仕方ありませんでした。
みんなに憧れられる私が、気持ち悪くて堪りませんでした。
私の作った服が、大したこともないものに思えて堪りませんでした。
『本当、ずるいよね〜金織は。顔だけで生きていけるくせに、なんでも出来て、夢だって簡っ単に叶えられる。ほんっと、ずるくてずるくて、やになっちゃう。
…………なんで、アンタと同じ夢なんて、抱いちゃったんだろうなぁ。
…………なんで、私は、アンタに………』
…………えぇ。その通りですね、本当に、私は。
────ずるいくらいに、不平等です。
────私たちはきっと、出逢うべきではなかった。
高育に来たのは、逃げるためでした。
同級生の、夢を諦めたあの子から。
そうして私は、不平等な天才たちに出逢いました。
出逢えました。
メメは私よりもずっと頭が良かったんです。
翔子は私よりもずっと強かった。
学は私よりもずっとリーダーでした。
嬉しかったんです。本当に心から。
私は特別なんかじゃないんだって、教えてくれたから。
『生徒会の広報を務めてくれ。退学制度を無くすためには、三年は継続して生徒会長をやりたいからな』
『………申し訳ありませんが、私など、大した力にはなりませんよ?』
『そんなことないよ!美浪は凄いんだから!』
なんの屈託もなく。
なんの偽りもなく。
茜は真正面から言ってくれました。
茜は断る私に何度も声を掛けてきました。
根負けして、学に改めてどうして私を誘うのか、聞いたことがあります。
『金織の力は間違いなく必要だからな。出来れば入って欲しいんだが』
『………正直、その、この顔を仕事に使うのは………申し訳ないと言いますか』
『?何故だ?持って生まれたものは、使いたいように使えばいいだろう?』
『………それはそれで……』
『お前がもしその顔で人から金品を巻き上げたりしていたら、流石に止めるがな』
『………意外とデリカシーないですね』
学は自分の力を使いたいように使っていました。
メメも、翔子も、みんな。
なので、私も。
『………良いでしょう。その件、承りました』
そうして、高育新生徒会は動き出します。
『流石に無茶じゃないかな学。どうやって商業施設に食いこむつもりなんだい?』
『学生でしかない私達では、経営管理など任されるはずもないです』
学は頭おかしいですね。本当に。
『そうだな。だからまずは、実績を作る。再来月に閉園が決まった遊園地あるだろう?まずは、あそこを立て直す』
『??????』
『??????』
『分かりました。私たちは何をすれば?』
どうして茜は納得できるんでしょうかね。
まずは、その、私が宣伝しつつ、元が噂を流します。
基本的に高育生しか入園しないので。
デートスポットとして、売り出すつもりだったんだしょう。
人手がどうしても必要だったので、Aクラスのみんなで、遊園地中のベンチやら屋台やらも動かしました。
数日で恋愛心理学を完全に身に付けた学による、カップルが完璧にイチャつける空間作りとのことです。なんかこう、思い切りが良すぎますね。
ヨウ先生も手伝ってくれましたね。ありがたかったです。
『マスコットキャラクター、ですか。それを私に?』
『うん。美浪なら作れるはずだって』
ベンチを動かしながら、茜は学からの指示を伝達しました。
マスコットキャラクターですか。
あまり、デザイン関係の仕事は、その。
………いえ、嫌とか言っている場合では、ありませんでしたね。
メインの観覧車をタテガミに見立てて、ライオンとうまく組み合わせてデフォルメしたマスコットキャラクター。
取り敢えず、草案をみんなに見せました。
『へぇ、可愛いじゃない。なんて名前なの?』
『…………そうですね。高育遊園地のマスコットなので、こういくんとか?』
『ダサすぎ却下』
メメ、そんな冷たい目で見ながら却下しないでください。そんなにダサくないと思います。
『ネーミングセンスは絶望的だね』
そこまで言いますか元。
『山で生きてきた私よりも酷いのは流石にどうかと思うわ』
私のネーミングセンス山育ち以下ですか?
『えー、私好きだよ。こういくん。ちょっと響き可愛いし。ダサいけど』
茜。ダサいは余計です。可愛いだけにしてください。
『かんらいおんならどうだ?観覧車+ライオンで、かんらいおん』
ふっ、幾ら学といえど、やはりネーミングセンスまでは──。
『………まぁ、こういくんよりは圧倒的にマシね』
嘘でしょう。私のネーミングセンス完全否定ですか?
『確かに。こういくんよりは分かりやすい』
『かんらいおんはかんらいおんで普通にダサいわよ』
『チーバくんとかくまモンみたいで良いだろう?』
『カンライオーとかでも良いと思うぞ。勇者ロボカンライオーだ』
『趣味を全面に押し出さないでください、ヨウ先生』
『ロボ要素皆無ですけど………?』
…………あぁ。そうでした。
こうやって、言い合って、直して、作る。
そうして出来たものが、みんなを喜ばせる。
それが嬉しくて楽しくて、私は。
私は───。
『…………そ、そのごめん美浪。だ、ダサいダサい言い過ぎたわ。な、泣くほどだとは……』
『一番最初に言ったのは占藤だからね。一番悪いのも占藤だよ』
『いや、アンタも大分酷いこと言ってたじゃない』
『ワードチョイスの切れ味は神田くんがぶっちぎりだったね』
『そうだぞ元。事実でも言って良いことと悪いことがある』
『うーん、その、あれだな。学、もうちょっとこう、デリカシーという奴をだな』
ここでは、私はただのクラスメイトでしかありません。
みんなの友達でしかありません。
それが、どこまでも嬉しかったんです。
ねぇ。学。
あなたは寄り添うことなんて出来なかったって、そう言ってますが。
不器用でも、確かにあなたは寄り添っていました。
寄り添えていました。
私も茜もメメも元も翔子も、あなたが居てくれたから、この三年間を楽しく過ごせたんです。
全部、あなたがこのクラスにいてくれたからだったんです。
だから、覚えておいてください。自覚してください。理解してください。忘れないでください。
あなたは確かに、私たちに寄り添えていたのだということを。
「そろそろ攻めてくるだろうね。学が敵陣地の最奥に突っ込んでいった。最悪を考えれば、今攻めてくるしかない」
「狙撃が来たら、私が
「うっし、俺らは防衛に専念、だな」
さぁ、最後まで一番前を走り続けて、終わらせましょう。
この三年間を。
平田洋介は攻撃部隊を配置に付かせて待機させながら、狙撃手、星穹三七に指示を飛ばす。
「まずは狙撃で一人削って欲しい。出来る?」
『…………二人、削れると思う』
「…………信じるよ」
『うん』
樹上で膝立ちしながら照準を合わせて、狙撃。
狙撃は、一番端で警戒していた生徒の側頭部を撃ち抜いた。
一年Aクラス。10クラスポイント追加。
現在1,607クラスポイント。
瞬時に金織は狙撃ポイントを把握して、
それが直撃する寸前に。
星穹三七は樹上から飛び降りていた。
逆さまで落ちながら。
(────美紀ちゃんも、あんなに頑張ってるんだし!
あたしだって、これくらいやらないとね!)
落下しながらスコープを覗いて、自身の落下速度も考慮に入れて、偏差狙撃。
狙撃は命中したが、数メートルの高さから背中から勢いよく落下して、息が詰まった。
一年Aクラス。10クラスポイント追加。
現在1,617クラスポイント。
起き上がりながら咳き込んで、そこで背中を撃ち抜かれた。
「………、容赦ないなぁ」
三年Aクラス。10クラスポイント追加。
現在3,742クラスポイント。
「………飛び降りながら狙撃ですか。打ちどころが悪ければ死んでましたよ」
金織は後輩に呆れていた。
「───最高の仕事だ!榎中くん!」
「オッケ‼︎」
立体機動も組み合わせて、最高速でスイング到達点から飛び出してきた榎中は、弾幕が貼られるよりも一瞬速く陣形に飛び込んだ。
単身迎え撃った神田に組みつかれて、それ以上荒らすことは出来なかった。
「───あんたは強いっすけど、今の俺を、どこまで抑えられますかね⁉︎」
「そうだね。私にリミッター解除はない。単身で君を抑えるにしても、大体二分ってところかな」
拳と脚を捌き流しながら、自身が殺される時間も理解している。
だが、二分あれば、攻撃部隊を全滅させられるはずだと、信じていた。
「一気に決めるよ!」
「承かしこま仕りっ!」
「ちょっ、三七大丈夫怪我ない⁉︎」
「そこは一度置いておきましょう」
『あたしは大丈夫だから気にしないで!』
神室真澄、森下藍、西川亮子、白石飛鳥が、残り七人の防御陣形に突っ込んでいく。
その四人を、単身で金織は迎え撃った。
神室が先頭で飛び出して、右手を拘束してみせた。
「───流石に四対一は、無謀って奴じゃないですか⁉︎」
瞬時に残り三人が、包囲して近接連係を仕掛けようとした。
「えぇ。これまでの私ならそうでしょうね」
この一ヶ月で。
金織は限界を乗り越えている。
右手に組み付いている神室真澄を、軽々と振り回して投げ飛ばしてみせた。
「っ、この、パワーっ!」
「なるほど、リミッター解除までは身に付けてますか。ふざけんなです」
「こーいうときはっ!」
「距離をとって、包囲戦ですね」
四人の判断は早く的確。
瞬時に距離をとって、射撃でジワジワと削っていこうとする。
藤巻筆頭の三年Aクラス残り六人が、四人の包囲を横から攻撃して崩そうとしたところで。
平田と神崎が、さらにその側面から攻め立てる。
「一人当たり三人、いや、俺が四人引き受ける!」
「助かる!」
神崎は二丁拳銃で四人を連続射撃で牽制する。
平田もまた、二人を牽制して、榎中か坂柳有栖親衛隊が動けるまでの時間稼ぎを開始する。
それを把握した金織は、速攻で決めることにした。
「藤巻!盾を!」
「はいはい!」
藤巻は、全身の筋肉を連動させて重さ数キロの盾を金織に投げ渡す。
片手で受け取り、左手に装備。そのまま左手の盾を背後に回して、四方向のうち背後からの射撃を完全に防御。
両側面からの射撃を躱しながら、一番弱い西川目掛けて突貫する。
「っ、美紀お願いっ!」
(────来る)
瞬時にゾーン状態に。
殺気を感知して、反撃できるようにして、西川への警戒が損なわれた。
「───すいません。嘘です」
その隙をついて、西川は。
隠し持っていたガススプレーを。
瞬間、金織の両足から力が抜け、滑り転びながら崩れ落ちる。
(………毒を持っているとしたら。
同じクラスの榎中だと思っていました)
事実、攻め込む寸前までは、榎中が持っていた。
『榎中。それ、亮子に渡しといて』
『………なんで?』
『私たちの連係は、もう警戒されてる。
だから、分断して一対一で確実に勝てる実力者、つまり、あの三人の誰かをぶつけて、一人一人を潰してくる可能性が高い。
分断して各個撃破を狙われたとき、一番最初に狙われるとしたら、一番弱い亮子が狙われるはず。
だから───』
神室真澄の策は通った。
(今となっては、私が坂柳有栖親衛隊最弱。
三七や美紀みたいな特殊スキルもない。
飛鳥や藍みたいな万能性もない。
真澄みたいな指揮能力もない。
───でも、弱さは強さに変わり得るっ!)
「貰いましたっ!」
ナイフを構えて、崩れ落ちた金織に突撃した。
毒で倒れそうになりながらも、金織の鋭いナイフの刺突が喉を貫いていた。
三年Aクラス。10クラスポイント追加。
現在3,752クラスポイント。
「………その毒、虎くらいなら
「っふ、虎程度、素手で殺してやりますよ」
「なら、僕は虎より強いですね」
神室森下白石と瞬時に役割を交代した平田の射撃が、金織の背中を撃ち抜いた。
体力の限界が近い平田では、これ以上二人を抑えるのは難しかったから。
一年Bクラス。10クラスポイント追加。
現在1,407クラスポイント。
「───成程。あちらに毒があったのなら、当然こちらに、君がいるんだろう?山村美紀」
「───さぁ、どーでしょうかっ!」
そう。
神田元は、山村美紀が来ることは完全に読めていた。
だから暗殺に備えていた。
榎中と距離を取って、僅かに間が生まれた。
この一瞬で山村が来ると予想した。
予想通りに山村は来た。
だが、気付けなかった。
「………は?」
「───貰いました」
基本的に、分かったところでどうしようもない。
それが暗殺者である。
一年Aクラス。10クラスポイント追加。
現在1,627クラスポイント。
「隙あり」
暗殺直後の山村を、藤巻は普通に撃ち殺した。
三年Aクラス。10クラスポイント追加。
現在3,762クラスポイント。
金織と神田、二大戦力が落とされた直後であっても尚、藤巻匠は普通だった。
藤巻匠は普通に指揮を引き継いで、普通に防戦を開始する。
藤巻匠は揺るがない。
藤巻匠は普通である。
藤巻匠は普通を極めている。
だから、何があろうと、普通なのだ。
(見誤ってた!私達は見誤ってた!一番警戒しなくちゃいけないのは、美紀と毒を切らなきゃいけなかったのは、藤巻先輩だった!)
神室真澄は理解する。防御側一番の強敵は、藤巻匠であったのだと。
狙撃手、暗殺者、毒。
奇策はもはや使い尽くした。
頼りはもう、榎中のリミッター解除。
だが。
これ以上のリミッター解除の継続は、怪我のリスクが───。
「んなもん恐れて勝てるかってーのっ!」
右腕から骨が軋むような音がした。
それでもなお、平然と榎中は残り六人の防御側に突っ込んだ。
両手で地面を叩きつけて、間欠泉のように砂を巻き上げさせた。
それを目眩しに、防御側の隙間を抜けて、神崎と森下がフラッグへ。
そして、その二人に注意が向いた隙に。
榎中は瞬時に三人を吹き飛ばした。
平田は吹き飛んだ三人が戻ることはないよう、冷静に仕留めた。
一年Bクラス。30クラスポイント追加。
現在1,437クラスポイント。
(………あー、こりゃフラッグ守るの無理だな。仕方ない)
藤巻匠は普通に諦めて。
三人を吹き飛ばして限界を迎えたのか、右手を抑えてうずくまる榎中を、普通に撃ち殺した。
三年Aクラス。10クラスポイント追加。
現在3,772クラスポイント。
そして、神崎と森下のフラッグ奪取を止めようとする残りの三年Aクラスの二人を、一対一で抑えようとする神室と白石を、側面から攻撃した。
白石は退避が間に合わなかったが、神室はなんとか退避できた。
三年Aクラス。10クラスポイント追加。
現在3,782クラスポイント。
神室は一旦自身を放置して、フラッグを奪取しようとする二人に向かうと予想した。
だから、警戒しつつも一度リロードしようとした。
だが、その予想を完全に裏切り。
「──神室を落とす!」
「オッケ」
「了解っ!」
「──はっ⁉︎」
三人で包囲しての連係射撃で、神室真澄は撃ち殺された。
そう、フラッグに向かう神崎と森下を、完全に無視していた。
三年Aクラス。10クラスポイント。
現在3,792クラスポイント。
「ま、他の奴らなら、フラッグ守りながらお前ら全滅させようとするんだろうが」
爪一つ分だけ早く、神崎隆二がフラッグを奪取した。
一年Dクラス。300クラスポイント追加。
現在1,505クラスポイント。
その背中を狙おうとして、平田の射撃で妨害された。
(───藤巻先輩の狙いは、僕らを全滅させること。どこまでも
そう。フラッグ奪取によるペナルティは無い。
水中戦で、普通に考えて剣城海が負けるようなことはない。
普通に考えれば、堀北学がフラッグを奪い取る方が速いので。
万が一に備えて、クラスの勝利のために、少しでもポイントを稼ぐ為に。
「
「男の例えで羊は変だろ」
三対三でのぶつかり合い。
能力に大きな差はない。唯一差があるのは、連係の練度。
三年間同じクラスの三年Aクラス側の方が、連係の質は上だった。
だから、酷くあっさりと森下は撃ち殺された。
三年Aクラス。10クラスポイント追加。
現在3,802クラスポイント。
他の生徒達なら、フラッグも守り切っての完全勝利を求めるだろう。
藤巻匠は完全勝利など求めない。
普通に勝てるなら、それでいい。
「うし、あと20ポイント稼がせてもらうぜ」
三対二で、連係で殺しきろうとした。
まずは、限界寸前の平田洋介から撃破しようとしたところで。
神崎隆二が射撃で一瞬、他の二人の足を止めて。
「───舐め、るな!」
その一瞬の隙をついて、限界寸前でありながらも、走りよった平田洋介は藤巻匠に組み付いて。
お互いにゼロ距離で撃ち合って、相討ちに終わった。
三年Aクラス。10クラスポイント追加。
現在3,812クラスポイント。
一年Bクラス。10クラスポイント追加。
現在1,447クラスポイント。
二対一で弾切れ。弾倉も残っていない。
この状況は、完全な詰み。
普通に考えたなら、片方を殺すことに集中して、せめて10クラスポイントだけを稼ごうとするだろう。
既にフラッグは奪えたのだから、そこまでやる必要はない。
だが。
神崎隆二は、普通で収まるつもりはない。
右手に握ったハンドガンを、一人の生徒の顔面に投げつけて。
怯んだその隙にナイフを抜きつつ、もう一人の懐へ。
逆手持ちのナイフで瞬時に首を掻き切った。
一年Dクラス。10クラスポイント追加。
現在1,515クラスポイント。
そして、その生徒の身体を盾にして、もう一人に突っ込んだ。
「───先輩の身体盾にするとか人の心ねぇのかよ⁉︎」
「申し訳ないとは思ってますよっ!」
先輩の身体をぶつけて、生き残りの先輩を押し倒して。
盾にした先輩の脇の下からナイフを突き立てて殺した。
一年Dクラス。10クラスポイント追加。
現在1,525クラスポイント。
一人生き残った神崎隆二は。
許可を取るのも面倒臭いので、気絶している平田洋介から、弾倉を無断で拝借。
装備を整えたのち、防御陣形に向かって走り出した。
「………あー、なるほど。
きついぞー神崎。普通が身の丈のやつが、特別な生き方を目指すなんてさ」
藤巻匠は神崎隆二の目指す先をなんとなく理解した。
その道が、酷く険しく辛いことも理解して尚進んでいることも理解して。
これから先も、頑張って欲しいと思った。
「網倉。防御側の状況は?」
『ギリギリの綱渡り。どうにか、渚くん達を通す隙さえ出来たら………』
「………俺は間に合うか?」
『………多分、間に合わない』
全力疾走で15分程度は掛かる。
それでは到底間に合わない。
そこで、木の影に寄りかかって休憩している星穹三七を見つけた。
「星穹。ライフルを借りるぞ」
返事も待たずにライフルを半ば強引に借りて、少しでも近い狙撃ポイントに向かって走り出した。
「………なんか、思い切り良すぎない?」
悩む時間など無駄でしかない。
もし、勝つ為にできることが一つでもあるのなら。
それを愚直に続けるだけ。
未だ未熟な自分自身が、それでも。
それでも、特別な潮田渚の隣で戦うには、それしかないのだ。
網倉麻子も同じ意見だった。
『マップにピン刺した。多分、ここが一番ベストな狙撃ポイント』
「ありがとう。網倉」
狙撃の練習など、僅かにしたことがある程度。
当たる確率よりも、当たらない確率の方が遥かに高い。
─────それがなんだという。
「聞こえるか、渚。狙撃で必ず隙を作る」
『分かった。信じるよ。
ただそれだけで。
神崎隆二は、人生で一番