無人島に次ではいる、と思う。
この学校では、夏休みにクルーズ旅行があるらしい。
レストラン、映画館、カジノ、プール。凡そのレジャー施設を全て内蔵した、まさしく浮かぶ豪邸。
高校生なのにこんなの味わってしまって良いのだろうか。まぁ良いか。どうせこれも税金だ。国営万歳。
Dクラスはそれなりの人数で集まってプールで遊ぼうという話になり、俺もそれに参加している。以外にも啓誠も参加している。長谷部と佐倉に引っ張られたらしい。
最近、山内の殺意の対象が増えた。まぁ、Dクラスどころか学年上位の巨乳兼美少女二人と仲が良いとか、あいつからしたら殺したい対象だろうな。
池と須藤も流石に嫉妬心を隠せないらしい。まぁ、気持ちは分かるが。俺が同調するのはあまりにもブーメランなので。
「………清隆、暑くないのか……?」
「ん?まぁ、海の上だしな」
「………日差しも強い。……日陰もない。………なぜお前はラッシュガードきても平気なんだ……」
「生憎鍛え方が違うのでな」
暑さにやられてグロッキーの啓誠は、恨みすら感じる声を俺にぶつけてきた。まぁ、ブートキャンプをあと一、二年継続すれば耐えられるだろう。
「おーい、きよぽん、ゆきむー!こっちこっちー!」
「ゆ、幸村くん!綾小路くん!おはよう、ございます!」
長谷部は大きく手を振っていた。
左右に振られる腕に合わせて、胸も躍動している。あたりの男子たちは全員そこに視線を向けている。まぁ、仕方ないな。俺もそうする。
佐倉はもっと目立っている。プールに入るから、眼鏡を外したのだろう。元々雑誌の表紙を飾るぐらいには可愛い顔と、長谷部に勝るとも劣らない胸。水着は着慣れているのか、或いは
男子も女子も、視線のほとんどを掻っ攫っていく。ちょっと、強すぎないか……?
「……長谷部に佐倉か………生憎俺は動けそうにない。清隆を連れていけ………」
「はっはぁーん。さては暑さでやられてるなぁ?よーし飛び込もう!水の中ならマシになるよ!」
「そ、そうですね!行きましょう、幸村くん!」
「ちょっぉ、やめ、引っ張るな!」
「いってらっしゃーい」
「いって、きまーす!」
「きまーす……!」
「いってらっしゃいじゃない止めろ清隆ぁぁぁ!」
グロッキーな啓誠の左手を長谷部が、右手を佐倉が引っ張ってプールサイドまで走り出した。啓誠は殆ど引きずられている。いと哀れ。
派手な音を立てて、水飛沫を撒き散らしながら佐倉と長谷部と啓誠はプールに飛び込んだ。
なるほど、これが青春ってやつか。眩しいな。
「お待たせ!清隆!」
「少し遅くなってしまったわね。ごめんなさい」
「いや、別に気にして────」
目の前の二人の姿を目にして、思考が停止した。
健康的で、無邪気で、どこか妖艶な雰囲気を漂わせる赤い水着姿の櫛田桔梗。
爽やかで、鮮やかな、可憐さと美しさを両立した白い水着姿の堀北鈴音。
「前に言ったでしょう?
「どうかな?似合ってる、でしょ?」
言葉を返そうとするが、視線があちこちに飛んでしまうのが分かる。赤いビキニに覆われた桔梗の胸は、こぼれ落ちそうなほどたわわだった。鈴音の足は、美しく引き締まりつつも、艶やかな曲線を描いていた。二人とも、体のラインが驚くほど綺麗だった。
「…………ま、ぁ、その、似合ってる、んじゃないか?」
にっこり笑う鈴音と桔梗。
獲物を見つけた、と顔に書いてある。同時に、ラッシュガードに隠れた俺の肉体に、邪な視線を向けてるのがわかる。
いつかのプールのように、俺をいじり倒そうとして、瞬間、笛の音が響いた。
無駄に洗練された無駄のない無駄な動きで、軽井沢の指示のもと、篠原、松下、佐藤が瞬時に二人を抑えた。
凄いな。E組でもここまで動けるやついたか?
「な、急に何するのよ!」
「そ、そうだよ!今回はまだ何もしてないでしょ!」
「まだって時点で語るに落ちてるんだよ櫛田ちゃん」
二人の抗議をバッサリ切って捨てる松下に、頼もしさすら感じる。
嫌では、ないのだが。その、世間体が、悪いので。
ここは一応、他のクラスも使うし。
「やれやれ。まさか洋介くんが言ってた通りになるとはね」
「な、彼は何を……!」
「『どうせ暴走するだろうから、他のクラスに醜態晒す前に抑えておいて』だって。まぁ、あたしも薄っすらそう思ってたけど」
「……くっ、平田くんめ、余計な真似を……!」
「ていうか堀北さん一応生徒会役員だよね。こんなことして良いの?」
「……、それとこれとは話が別よ」
「いや全然関係あるでしょ」
「とりあえず、二人には頭を冷やしてもらいまーす」
軽井沢が再び笛を鳴らして合図する。
軽井沢と佐藤が桔梗を、篠原と松下と、それから小野寺が鈴音を捕まえて、持ち上げた。
「お、小野寺さん⁉︎貴方まで……!」
「はっはっはっはっ。このまま競走と行こうよ堀北さん」
「はーい、いっせーのでいくよ」
軽井沢が両腕を、佐藤が両足を掴んでいた。鈴音の方は、小野寺が両足を、篠原松下は二人ががりで両腕を捕まえていた。
前に後ろにリズムを合わせて揺らしながら、プールに人がいないかの最終確認をする軽井沢。
問題なし、と判断したらしい。号令をかける。
「ちょっ、やめ」
「いっせーの、せっ!」
「「きゃぁぁぉぁぁあ!」」
アトラクションよろしく二人はプールに文字通り放り込まれた。これもまた、青春なのだろうな。
そんなことを考えていると、肩に大きな手が置かれた。
振り返ってみると、須藤がいた。池と山内もいる。全員なんか、その、ちょっと怖い笑みを浮かべていた。
「──ど、どうしたんだ?三人とも」
「いやぁ、何というか、なぁ?」
「分かりきっていたことだけど、なぁ?」
「ぶっちゃけ死ぬほど羨ましい!」
………なるほど。タイプの違う水着姿の美少女に迫られているのを見て、思わず怒りを抱いてしまった、ということか。
「そんなわけで、今から俺たち三人の特製アトラクションにご招待だ。付き合ってもらうぞ」
「……ふっ、だが断る!」
「あっ、ちょ待てよ!」
須藤の手を振り払い、プールサイドを全力疾走。悪いな。俺は鈴音や桔梗ほど甘くはないぞ。
同級生、椅子、机、パラソルその他諸々。多種多様な障害物を避け、足場にして、最短最効率で逃げる。E組で習ったフリーランニング最高活用だ。
「────ほう、パルクールすら熟すか。実に多才だな、綾小路ボーイ」
「げっ」
並走するのは高円寺。やっぱりついて来れるのか。だが、何故?そう思いうしろを振り向くと。
『頼む!何でもするから!』
『しょうがないなぁ。高い貸しだよ?』
『長谷部、佐倉、頼む。清隆にも痛い目を見せたいんだ』
『ははははは!それすっごく楽しそう!』
『は、はい!なんだか、とても楽しそうです!』
池の懇願を受けた篠原。
啓誠に頼み込まれた長谷部と佐倉。
それから他のDクラス女子複数名。
彼女らは、せーの、で呼吸を合わせて。
『高円寺くんの、かっこいいとこ見てみたーい!』
と、完全に煽てていた。
こんなのに乗るなよこいつ……!
「おま、お前!あんな雑なのに乗せられたのかよ……!」
「ふふふふふっ。私とて高校生。少しぐらい遊んだとしても、不思議ではないだろう?」
「……まぁ、そうだが!」
クソっ!高円寺から逃げ切れるか……?
ちょうどその時、目の前に完璧なタイミングでカルマと浅野が現れた。
最高のスケープゴートだ………!
「ん?」
「おっ、浅野くんジャーン。可愛い女の子侍らせて、王様気分ですかぁ?」
「カルマくんカルマくん。
「そ、そんな……!椎名さんはともかく、私は、別に、可愛くは……!」
「いいえ。奥田さんは可愛いです。ね?」
「………うん。まぁ、愛美さんは、その、なん、ていうか。かわ、いいんじゃない?」
「そ、うですか?………えへへへへ。なんだか嬉しいです」
煽ったと思ったら味方に背中から撃たれて、追い打ちを喰らった。なんだか哀れですらある。顔真っ赤だカルマのやつ。
煽られたと思ったら味方に弄り倒されたカルマを見て、浅野と神室はとても微妙な顔をしていた。
「ねぇ、私らは何を見せられているの?」
「………知るか」
そんなやり取りをしているところに、全速力で突っ込んでくる筋骨隆々の男が2人いた。
というか俺と高円寺だった。
「────高円寺!コイツら俺と同じぐらいには強いぞ!」
「………ほう。それは少し、興味が出てきたねぇ」
高円寺が急ブレーキをかけ立ち止まり、浅野とカルマを観察する。
浅野は苦々しい顔で走り去っていく綾小路の背中を睨んでいた。
「………あいつ、押し付けてきやがったな」
学年一の変人にして、確かな実力者。
高円寺六助の名は、浅野の耳にも入っている。当然、カルマにも。
「……で、綾小路追いかけなくていいの?」
「……あぁ。君たちが、私の相手足り得るのか、見極めておくのも悪くない」
顎を引きながらも、カルマは凄絶な笑みを浮かべた。
その笑みを見た奥田は、椎名の手を引き、後ろに下がった。何度か見たことがある。あれは、良くないことを考えている顔だ。
「…………ふーん?まぁ、
「………巻き込むな。赤羽」
「もうどうしようもないでしょ。コイツは勝手に巻き込んでくるよ?」
親指で高円寺を指しながら、カルマは微笑みを浮かべながらそんなことを言った。高円寺は肯定するように楽しそうな笑みを深めていく。額に青筋を浮かべながら、深く、深い溜め息を吐く。
「───ならば、競走とか、どうだ?
例えば、今逃げた綾小路を、先に捕まえた方の勝ち、とかで」
アイツとしては、俺たちをスケープゴートにするつもりだったのだろうが。
狼が増えたとなれば、どれだけ驚くのだろうな………?
少し離れたところのビーチチェアに優雅に腰掛けながら、今さっき注文したトロピカルジュースを飲み、サービスで貰った花の輪を首に下げる。
俺は今、凄く、夏を満喫している。
「あとはこのサングラスがあれば完璧じゃない?」
そう言って、背後に立ってきた渚は、俺の顔に星型サングラスをかけてきた。懐かしさすら感じるなこのサングラス。いや、それよりも。
「……あの、なぁ。気配を殺して背後に立つのやめてくれ。反射で手が出そうになる」
サングラスをかけさせられて初めて気付いた。足音も気配も殆どない。殺意はもちろん敵意すらも一切ない。
もはや才能の無駄遣いだろう。
「なんかごめんね」
「まぁ、このサングラスは気に入った。許す」
まぁ、その、なんだ。
殺せんせーとお揃い、ってところが、中々に、その、な。
「綾小路、みぃ〜つけた」
そこに、とても楽しそうな笑みのカルマがやって来た。
………………なるほど。そうなったか。
「……………浅野あたりか」
「大当たりぃ。ま、今回は、俺の勝ちってことで」
「それはどうかな?」
優雅にトロピカルジュースをサイドテーブルに置く。
おもむろに、右手をラッシュガードのポケットに入れて、煙玉を取り出す。
まぁ、これぐらいなら俺でも作れるし。
辺りを白い煙が覆う。煙の中に姿を隠し、完璧に姿をくらました。
「……まじで。ここまでやる?」
「………はっちゃけてるなぁ、綾小路くん」
正直に言おう。今俺は浮かれている。
夏だぞ?海だぞ?豪華客船だぞ?テンション上がるに決まってるだろう。
今なら殺せんせーの気持ちが痛いほどわかる。あぁ、俺もマッハ20だったらなぁ。
「見つけたぞ、綾小路」
「今度は浅野か」
なんか、こう、鬼ごっこみたいでワクワクする。
満面の笑みの俺に毒気を抜かれたのか、浅野は呆れた顔でバカを見る目を向ける。
……確かに、俺は今馬鹿になっているな。
「……………………はぁ。めんどくさいが、やると言った手前、捕まえるぞ」
「おう、やってみろ」
ボクシングよろしくステップを踏みながら、いつでも逃げられるように構えを取る。
浅野は体重移動を駆使して凄まじい勢いで接近して来た。
武道における縮地と呼ばれる技術だな。流石だ浅野。だが、甘い!
気分はプロサッカー選手。完璧な足捌きと体重移動で浅野を翻弄し抜き去る。やばい、楽しい。
「ふふふっ、私との決着がまだだろう?綾小路ボーイ!」
浅野を抜き去った直後、高円寺が突進してくる。逃げきれない。どうしようもないな。
ならば、正面からねじ伏せる!
ラグビーのスクラムよろしく、俺と高円寺は組み合った。単純な身体能力ではやつの方が上。分かりきっていたことだ。
だが、身体能力が全てではない。
テコの原理を応用し、高円寺を投げ飛ばす。
夏の俺は無敵だ。全ステータス1.2倍ぐらいのバフがついてる。追い付いたカルマと浅野を同時に相手する。だが、負ける気はしない。
今の俺は、最強だ!
「何をしてるのかな?綾小路くん?」
「すいません平田さん。ふざけ過ぎました」
こんなに怒った平田は初めて見たかもしれん。怖すぎる。笑っているのが何より怖い。何故満面の笑みなのにこんなに怖いんだ。
「はしゃぐのは全然良いよ?でもさ、他の生徒も巻き込むのは違うよね?」
「おっしゃる通りでございます」
「高円寺くんも、乗せられたのにしてもやり過ぎだよ。浅野くんたちに謝って」
「ふっ。この私に頭を下げろ、と?それはあまりにもナンセンス───」
「謝って」
高円寺の傲慢な言動をぶった斬る平田。声だけが低くて、顔はこれ以上ないくらいに良い笑顔。
だからこそより怖い。
「ふ、ふっ。私が頭を下げることなど───」
「───謝って」
頬を引き攣らせながらしかし、なおも拒否の姿勢を示そうとして、再びぶった斬ってくる。
「ん、ぐぅ」
「高円寺。ちゃんと謝罪すれば多分大丈夫だ」
「………………まぁ、その。すまなかったな。浅野ボーイ。赤羽ボーイ」
謝った高円寺に、浅野とカルマはコイツは誰だ?とでも言いたげな視線を向ける。取り敢えず、偽物の類ではない、と判断したのか。二人は素直に受け取った。
「気にするな。提案したのは僕だし」
「うんうん。悪いのは綾小路だから」
和解の瞬間を見届けた平田は、今度こそちゃんとした笑みと怖くない声になった。安心感が凄い。
「うん。仲直りできて良かったよ。それじゃあ僕たちはこの辺で」
帰ろうとしたところで、渚が声をかけてくる。
「綾小路くん。トロピカルジュース残ってるけど、どうする?」
「あっ、そうだ忘れてた。助かる」
パラソルまで戻ってサイドテーブルに置きっぱなしのトロピカルジュースを取る。
夏の綾小路清隆、完全装備だ。
「おーい渚くーん!」
「こっちだよ、渚くん」
装備を装着し終わったタイミングで、一之瀬と茅野が声をかけてきた。人がいるからだろう。茅野は渚と少し距離を演出している。
二人とも水着姿だが、その、余りにも、格差が。
やはり『永遠の0』は伊達ではない。
「綾小路くん変なこと考えてない?」
「いや全くそんなことないぞ」
「…………ふーーーーーーーん?」
「ほんとに全く全然変なことなんて考えていないぞ」
「後で堀北さんたちに言いつけちゃお。水着姿の帆波ちゃんにデレデレしてたって」
「ちょっお、あかりちゃん⁉︎」
「本当にごめんなさい。スイーツなんでも奢りますのでそれだけは勘弁してください」
別に嫉妬したりはしないが、それはそれとして猛アタックを仕掛けてくるのが分かりきっている。事情が事情なので、軽井沢たちも止めないだろう。奴らはどっちも応援するスタイルなので。
「よし、船上レストランの超絶品プリンパフェ、奢ってね」
「……はい」
あれ7000ポイントはしたよなぁ。
高いなぁ。
「あっ、浅野くんもいる!」
「やぁ一之瀬さん。それ、とても似合ってるよ」
「えへへへへ。ありがとう!」
「流石イケメン。褒めるときもそつがないね」
「うるさい黙れ揶揄うな」
「…………………私褒められてないんですけど」
おっと。おそらく浅野のクラスメイトの女子がなんだかとても可愛らしいことをおっしゃったぞ。
俺とカルマの目がキランと光る。ターゲット補足。やるぞカルマ。
「やれやれ。他クラスの女子を先に褒めるなんて、良くないぞ浅野」
「そうそう。まずはちゃんと自クラスの女子を褒めないと。例えば、その子とか」
全く浅野も隅に置けないな。こんなに可愛い女子を落とすなんて。友達として、援護してやらなければな。
別にくっつけていじり倒したいとかではないぞ。ほんとだぞ。
「黙れ馬鹿ども。……神室。確かに似合っている。可愛いと思う。………が、揶揄うためにそんなことを言ったんだろう?」
「……さぁて、どうでしょう?」
小悪魔だ。小悪魔がいる。やばい。面白い………!
まぁ、多分お互いにそういう感情は持っていないっぽいがな。
「なるほどなるほど。良いことをおっしゃいますね、カルマくん。しかしその理論だと真っ先にあなたが褒めなければいけない女子が二人いると思うのですがそこのところどうでしょうカルマくん?」
「そ、そこのところどうでしょう?」
椎名と奥田の波状攻撃。カルマは狼狽えている。
今度は俺と浅野の目が光った。ターゲット変更。
「やれやれ。こんなに可愛い女子を二人も侍らせているとはな、赤羽。流石だ。悪い男は違うな」
「ちゃんと褒めてやれよカルマ。ちゃんとだぞ。ちゃんと」
二人侍らせている云々は俺が言えたことではないので。浅野、かわりに言ってくれてありがとう。
「……お前ら後で沈めるから。……………まぁ、その、なんていうか、うん。二人とも、とても似合ってるよ」
「あ、ありがとうございます!」
「ふふ。ありがとうございます。具体的にどのあたりが似合っているのでしょう?」
「………えっ」
おっと、徹底的にやるつもりか椎名。良いぞ椎名。やっちまえ椎名。
固まったカルマの右隣に俺。左隣に浅野。後ろには高円寺。考えることは一緒らしい。三人でアイコンタクトを取る。
「そうだぞカルマ。具体的にどの辺りが似合ってるんだカルマ」
「ちゃんと答えろよ赤羽。全体的に、とか雰囲気が、とかはダメだぞ。具体的にだからな赤羽」
「女子に恥をかかせてはいけないよ赤羽ボーイ。おねだりをちゃんと叶えてやるのも男の甲斐性というやつだぞ赤羽ボーイ」
そんな俺たち四人見て。渚は呟いた。
「……………みんな、ゲスイね」
いと哀れなり。赤羽業。
「その、あれだ。
ひよりさんは、肌も白くて綺麗だし、黒い水着がよく映えるよね。コントラストというか、対照的で、輪郭がよく分かるのが、存在感というか、いつもよりも綺麗だし、意外性があって、こう、色っぽい、と思う。でも、それだけじゃなくて、大人らしさを感じさせつつ、そこまで背伸びしてはいないデザインの水着で、ひよりさんの立ち振る舞いに凄く似合っているというか、妖精みたいに不思議な印象を受ける、というか、大人っぽい、色っぽい中に可愛らしさを感じる姿、だと思います。
愛美さんも、髪下ろしてるのもあって、普段よりもずっと大人っぽい。すごく、綺麗でかっこいい、し、水色なのが、夏っぽさを感じられるし、明るさと賢さを感じる、というか。フリルもすごく可愛らしいし、だけど、可愛いだけじゃない、というか。その、凄く、とにかく綺麗で、でも、愛美さんの持つ可愛らしさも表現してて、とても似合っている、と思う………。これで、いい?」
「………は、はい。ありがとう、ございます……」
「ありがとうございます。カルマくんも、髪色に合わせたのでしょうか、その赤い水着、とてもかっこいいですよ」
真っ赤になりながらも語彙力を尽くして褒め称えるカルマ。
思ったよりも恥ずかしかったのか赤くなる椎名。
素直に受け取って満面の笑みで褒め返す奥田。
もしかしたらCクラスが一番青春してるかもしれない。
「そうだ!全クラス揃ったことだし、一年全体で遊ばない?」
「うん。クラス競争も、一旦忘れてさ」
Bクラストップ二人の提案を受けて、浅野は人の良い笑顔で同意した。
「そうだね。たまの休暇ぐらいは、そういうのも悪くない」
カルマもまた、いつもの悪どい笑みではなく、普通の少年らしい笑みで答えた。
「Cにも声掛けておくよ。希望するやつは来る感じで」
と、なると。
俺は平田と目を合わせた。考えることは同じようだな。
「あぁ、俺たちもそれで良いぞ」
「今甲板上のプールでDクラスで集まっているんだ。広いし、そこで集合でいいかな?」
そんなこんなで、一年合同船上プールパーティが開幕した。
この後の無人島リゾートでのパーティも楽しみだ。
浮かれポンチ綾小路くん状態なので、無人島で特別試験があることに気付いていません。