殺せんせーの教え子たち   作:宇津木 沙坂

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 暗殺教室はメタネタのイメージ。


一年生と船上パーティ

 プールでは現在、水泳大会一年生男子の部決勝戦が行われていた。

 先程まで行われていた女子の部では、僅差で小野寺の優勝である。準優勝は惜しくも鈴音だった。

 以前のリベンジと言っていいだろう。

 

 さて、この決勝戦。俺と須藤と高円寺、それからカルマと浅野、Bクラスからは柴田、の計6人が決勝進出者(ファイナリスト)だ。

 どうやらDクラスには身体能力的に実力者が多いらしい。特に俺と鈴音は何故Dクラスなんだ?みたいな視線を向けられている。勉強できて運動もできてるのになんで、というような疑問だ。

 高円寺はみんな納得してた。あの性格ならそうなるわな。

 

「ふふふふふ。なかなかの実力者が揃っているようだねぇ。ぜひ私の輝きを強めてくれたまえ」

 

 相変わらずだなこいつ。

 浅野も柴田も、何言ってんだこいつ、と言った感じで取り合おうとはしない。

 普段なら俺もそちら側なのだが、夏らしく浮かれているので乗ってやるとしよう。

 

「───俺たちをスポットライト扱いするつもりか?それもいいだろう。だが気をつけろよ。お前がスポットライトになるかもしれないぞ」

「綾小路の言う通りだね。ぜひとも俺の引き立て役になってよ、高円寺くん。君にピッタリな配役でしょ?」

「今回は俺が勝つ!」

 

 煽り倒す俺とカルマ。

 凄くシンプルに闘志を燃やす須藤。

 巻き込むな、とでも言いたげな浅野と柴田。

 

 さぁ、勝負だ……!

 

 笛の音と共に俺たちは飛び込む、というより潜り込むように水の中に入っていく。

 須藤ですらそこそこ綺麗な飛び込みだ。

 

「ほぇーみんな綺麗な飛び込みだね」

 

 水飛沫が殆ど上がらない。水泳部の顧問が欲しがりそうな人材がこんなにも。

 生徒会な浅野くんと、既にバスケ部の須藤くん、サッカー部の柴田くんはともかく、他は勧誘しておかなければ。あぁ、堀北さんが生徒会じゃなければなぁ。

 

「おっ、なかなかやるねぇ須藤くん」

 

 中盤トップは須藤健。

 勢いだけでなく、見様見真似でこそあるが、綾小路のフォームを真似していた。持ち前の運動センスで六割程度は再現できている。

 素の身体能力だけなら綾小路、高円寺に匹敵する。それがちゃんとした効率的なフォームで泳ぐのだ。相当なスピードを出せるものだろう。

 だが。

 

「やはり慣れていないな、ああいう泳ぎ方。崩れてきている」

 

 啓誠は冷静に分析する。勢いだけで泳ぐよりも、体力を消費する。当然だ。殆ど呼吸できない水中の中で、全身の動きを制御しつつ、全力で動かなければならないのだから。

 当然、体力消費も普通よりも大きい。中盤以降、須藤は僅かにスピードが落ちる。

 僅かだが、それが致命的だ。

 他の5人はその僅かな隙を逃さない。

 

「頑張れ〜〜清隆〜〜!」

「頑張って、清隆くん!」

 

 以前と同じように、二人の応援を受けて、清隆はさらに加速する。負けじと高円寺も並んでいく。二人が僅かに前に出た。

 

「頑張って下さい!カルマくん!」

「カ、カルマくん!頑張れ〜!」

 

 椎名と奥田の応援を受け、カルマはさらに伸びた。殆ど三人横並び。結果は───。

 

「優勝は、赤羽くん!」

 

 審判平田の判定に、甲板プールに集まった一年全体が沸いた。

 

「さぁ、優勝した赤羽選手、具体的に勝因はなんだったでしょうか」

 

 タオルを巻きマイクの真似事をして、Aクラスの橋本を含めた数人が勝利者インタビューをやっていく。

 カッコつけてカルマはそれに答えていった。

 

「そうですね。序盤は殆ど全員横並びで、中盤こそ須藤くんが一瞬前に出ましたが、体力的に厳しかったのでしょうね、僅かにスピードが落ちたタイミングを逃さず前に出れたのは大きな要因でしょうね」

「他にはどのようなものが?」

 

 今度はAクラスのまた別の生徒、確か吉田だったか?がインタビューしてきた。

 

「そうですね。終盤では綾小路と高円寺が想定以上の伸びを見せましたが、うまく対応できてよかったです」

「恐らく知り合いと思われる少女二人に応援された瞬間からやけに伸びたように見えましたが、そのあたりどうでしょう?」

 

 ぶっ込んできたなインタビュアー。誰だ?女子みたいだな。じゃあ渚か。よし、乗るとするか。

 

「どうなんだカルマー!やけに気合い入ってたよなあの瞬間!」

 

 俺自身のことは考えないこととする。

 

「ふふふふふふふ。まさか君もそれ程までに単純だったとはね。類は友を呼ぶというやつかな?」

 

 高円寺、負けはしたが余裕を見せながら揶揄い始める。

 

「やれやれ。どっちの応援が嬉しかったのかとか聞きに行かないのか?」

 

 よくないことを考えるなぁ浅野。いや、素晴らしいことを考えるなぁ浅野。

 さぁ、池。行ってこい。

 アイコンタクトで池に指示を出す。池は俺にサムズアップしながら突撃していった。

 

「───赤羽選手!応援してくれた女子は二人ほどいましたが、正直どちらが嬉しかったのでしょうか⁉︎」

「うん。君たち全員沈めるね」

 

 インタビュアーのAクラス男子と池、それから逃げきれなかった渚がカルマの手でプールに放り込まれていく。情け無いなインタビュアー達。もっと根掘り葉掘りいけよ。

 

「この程度のことしか聞けないなんてつまらんな。もっと自クラスを仕込んでおけよ浅野」

「無茶言うな」

「……………あの赤羽を弄り倒せるなんて、Aクラスやべぇな」

「そう言う問題か?これ」

 

 特別棟で起きた惨劇に居合わせた須藤としては、カルマは恐怖の対象でしかないのだが。

 その辺りを知らない柴田としては、その評価は違和感しか感じないのだ。

 

「さて、いじり倒すとするか」

「良いだろう。僕も手を貸す」

「全く、こんなに面白そうなもの、見過ごすわけにはいかないねぇ」

 

 さぁ、行くぞ。

 俺たち三人はタオルを翻しながら、突撃インタビューに向かっていった。

 

 その後、俺たち三人を沈めようとするカルマを抑え、俺たち三人はカルマを弄り倒した。

 

 

 その後、ビーチボールやら何やらで各クラスごちゃ混ぜで遊び始めていった。

 桔梗、一之瀬、長谷部に囲まれた茅野は血涙を流していた。何というか、可哀想だな。

 やはり『永遠の0』か。

 

「綾小路くん、パフェ追加」

「イエス・マイ・ロード」

 

 何故わかるのか、とかの理解は放棄している。分かるものは分かるのだ。そういうものなのだ。

 

「かや、じゃなかった、雪村さん、こっちで休憩するのはどうかしら」

 

 鈴音を筆頭とした、普通サイズの胸の集まり、というか、たまたま集まっただけというか。が、ビーチパラソルの元で穏やかなティーパーティーのようなものを行なっていた。

 見兼ねた鈴音は誘ったが、それに茅野は血涙を流しながら否を突きつけた。

 

「…………………嫌だ」

「な、何故?」

「………みんな、普通にあるじゃん」

「……えっ」

「そっちにいるのもラノベのキャラばっかりなんだから!みんな普通に胸あるじゃん!よう実絶壁ほとんどいないじゃん!私ぐらいじゃん!だったら巨乳に囲まれた方がマシなんだよ!逆の意味で目立つから!周りがでかいだけって言い訳できるから!」

「い、いきなりメタいわ雪村さん。確かに暗殺教室はそういうギャグやっていたけれど」

「うるさいうるさいうるさい!堀北さんに私の気持ちが分かるもんか!いかにも貧乳キャラです。みたいな顔しといて貧乳とは程遠い堀北さんに!大体よう実の方が年齢層高めだからかみんなそこそこ胸あるの何なの⁉︎ジャンプは年齢層に配慮して控えめなの!もっとこっちを見習って!」

「いや一番人気のワンピースは巨乳率高いけれど」

「ぬがぁぁぁ!ちくしょう!確かに!」

 

 荒れてるなぁ、茅野。

 まぁ、あの状態(巨乳憎し)の茅野は放置するに限る、らしい。矢田がそんなこと言ってた。

 まぁ、ラノベは体感貧乳率低めなのは分かるが、ジャンプ漫画は割と巨乳率高くないか?

 割と茅野は珍しい寄りだと思うんだが。

 

「綾小路くん!パフェ追加!」

「一応出すがそんなに食べると太るぞ」

 

 あれって量も多かったしな。しばらくはフルマラソン級の走り込みが必須だぞ?

 

「良いの!これで胸に栄養がいけば…………!」

「…………今までそうじゃなかったから、今貧乳、というか絶壁じゃないのか?」

 

 まぁ、現実を見ようぜ。

 

「…………………堀北さん!櫛田さん!綾小路くん帆波ちゃんの水着にデレデレしてました!」

「ちょっ、茅野、おまっ」

「ライン超えだよ綾小路くん!」

 

 約束は⁉︎

 

「…………ふぅん。そうなんだぁ」

「………ねぇ、清隆くん。ちょっと、あそこの物陰に行きましょうか」

 

 鈴音が示す先には、ちょうど良いことに甲板プールからは死角となる物陰である。

 桔梗も満面の笑みなのに怖い。

 あの、色々大事なものを無くしそうなのですが。

 

「か、軽井沢!これは、アウトじゃないか⁉︎」

「えっ、何ぃ?知らなぁーい」

「うんうん。堀北さん、櫛田さん、やっちゃえ」

 

 軽井沢⁉︎佐藤⁉︎何で⁉︎

 さっきは止めてくれたのに⁉︎

 

「そりゃぁな。あの二人以外にそういう目を向けるとか、普通にダメだろ」

「二人の時点でだいぶダメなのに」

「それ以外とか許されんぞ」

 

 須藤、池、山内。

 成長したな。こんなところで感じたくは無かったが。

 

「ほらほら。行くよ清隆」

「他の人に目を奪われるとどうなるのか。貴方にちゃんと教えてあげるわ(ディープキスの刑)

「ちょっ、お、やめっ、むぐぅ、………ぁ………、ん………」

 

 物陰に連れ込まれておおよそ30秒後。

 二人がかりの徹底的な蹂躙(二人合わせて120hit)を受けて、目を回しながら気絶する綾小路清隆がいた。

 

 

『まもなく甲板から目的地の無人島が見せるようになります。意義のある景色が見えることでしょう』

 

 そんなアナウンスが船内に響き渡った。

 各クラスの首脳陣は真剣な表情に変わり、無人島の景色を目に焼き付けていった。

 

 Aクラスの葛城と浅野は、無人島の景色を見ながら、()()()()()()()()()()

 

「なるほど。いくらか、人の手が入っているな」

「あぁ、無人島の時点で何となく予想はしていたが、人の手も入っているのを踏まえると、やはりサバイバル試験、といったところだろうな」

「坂柳が来れなかったのもその辺りが理由か」

「まぁ、船上だけならともかく、無人島はな」

 

 今現在、暇を持て余してボードゲーム部に入り浸っているだろう坂柳有栖を思いながら、浅野学秀は今度先輩達にお礼の品でも贈らなければ、と考えていた。遊んでくれてありがとう。

 扱いが完全に女児である。

 

「初めて見たが、彼らが、お前に勝ったという男達か」

「あぁ。綾小路、赤羽、堀北さんの3人。お前から見てどうだった?」

「………お前に勝っただけはある。中間のあの最終問題を解いたこと。期末でも全教科満点だったこと。甲板のプール大会で見せた身体能力。あらゆる要素が実力の高さを示している。…………一番の脅威は、Dクラスかもしれんな」

 

 やはり優秀だ。この男を味方にできたことは、中々に得難い幸運と言えるだろう。

 

「この特別試験。勝ちに行くぞ」

「あぁ。負ける気はしないが、決して油断もしない」

 

 現一年最強のクラスは兎を狩るのにも全力を尽くすものだ。特に兎が、狡兎になり得るならば、なおさら。

 

 

 Bクラス首脳陣は、四人揃って無人島を眺めていた。

 

「外れて欲しかったが、まさか学校で、無人島サバイバル試験とはな」

「一部の企業ではやってるとこもあるみたいだし、それの真似かもね」

「これまでとは大分毛色が違うね。知力はもちろん、身体能力と団結力が重要な試験、みたいだね」

「なら、私達が勝つよ。知力、身体能力でも勿論、団結力で他のクラスに負ける訳がないからね!」

 

 自信、いや、この一学期で積み重ねてきた自負だろう。

 一之瀬の言葉に、神崎も渚も茅野も、力強く頷いた。

 

「………………ところであかりちゃん」

「…‥何かな?」

「ちょっと距離を感じるというか、ちょっと敵意というか、殺意みたいなものを感じるんですけど」

「………………………………気のせいじゃない?」

 

 そんなことを宣う茅野の視線は、一之瀬の巨乳に固定されていた。多分、視線に鋭さがあったのなら、潜水艦すらも貫通するだろう。

 

「あっははははは……………」

「……速くも団結力の危機、だな」

 

 先行き不安である。

 

 

 Cクラスの龍園とその取り巻き達は、島の景色を眺めながら、悪どいことを考えていた。

 

「無人島、か。良いじゃねぇか楽しめそうな舞台でよ」

「恐らくはサバイバル試験でしょうね。龍園氏、取り敢えずの方針は?」

「いつも通りだ。()()()()()使()()()()()()()()

 

 金田の質問に答えた龍園は、凶悪な風貌をより吊り上げて、無人島を睨んでいた。

 

「さぁて、これで準備OKかな」

「おや、ここで何かを仕掛けるのですか、カルマくん」

 

 必要な仕込みを終えたカルマは、声を掛けてくる椎名に向き直って、笑う。窓から差す光が逆光となって、目を隠したが、それでもその瞳が悪戯な光を湛えているであろうことを、椎名は予測していた。

 

「まぁね。今回の試験、楽しくなるよ」

 

 船が動き、窓から差す光がズレる。

 明らかになった赤羽の顔は、悪魔が人の姿をしたらこんな顔をするだろうな、と思うような顔だった。

 

 

 Dクラス首脳陣は、島の景色を眺めながら、意見を交換していく。ちなみに綾小路はまだ復活していない。

 

「ま、多分無人島サバイバル試験、といったところかな」

「知力、身体能力、何よりも団結力が求められる試験ね。…………まぁ、正直、私達が不利じゃないかしら」

「………まぁ、ね。どうしても他の生徒で差が出る。Cはともかく、AとBに勝てるかどうか」

 

 確かに勝率は低い。だがそんなもの、諦める理由になりはしない。

 

「それでも、勝つのは私たちよ」

「すまない、待たせたな」

 

 そんなことを言ってくるのは、復活した綾小路清隆。

 振り返った三人の目には。

 

「…………その、服装は」

「ふっ、見てわからんか平田。夏を楽しむ玄人の着る服さ」

 

 アロハシャツに短パン。麦わら帽子に花の首飾り。肩には浮き輪、腕にはフィンがかかっている。

 完全に、ガチ装備だ。

 

「えっと、その、綾小路くん。その、これから行われるのは、パーティとかじゃなくて」

 

 と、そこでAクラス担任真鳴からのアナウンス。

 

『無人島に到着した。各クラス毎にビーチに集合しろ』

 

 さぁ、無人島バカンスの始まりだ。

 

「悪いな、先に行く」

「…………うん。行っておいで」

「…………行ってらっしゃい。清隆くん」

 

 無人島バカンス一番乗り。皆に先んじて、場所取りをしておこう。あぁ、楽しみだなぁ。

 

「……………話さなくて、良いの?」

「……貴方は、あれだけ楽しそうにしている清隆くんに、そんな酷いことが言えるかしら」

「………ごめんね」

 

 沈痛な雰囲気が漂うDクラス首脳陣であった。

 

『それではこれより、無人島特別試験を始める』

 

 砂浜に両膝をつき項垂れる、アロハシャツに短パン。浮き輪とシュノーケルとフィンとビーチボール、そして花の首飾りを着けた、完全装備の男子生徒の姿があった。

 というか俺だった。

 

 俺の無人島バカンスは⁉︎





 そんなものはない。
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