かなり短め。
Aクラスの様子。
気付いたらUA十万超えてました。ピースピース。
諸々の説明を受けたAクラスは、葛城が目星をつけていた場所に向かう。
「洞窟か。完璧だ、流石は葛城」
「お褒めに預かり恐悦至極、と言っておこう。それでどうする。リーダーを当てるのか、当てないのか」
浅野としては、この場所を抑えた時点で、やるべきことは決まっている。
「───いや、基本的に、リーダー当ては行わない。契約を結べた場合は、話が別だがな」
「契約、とは」
「あぁ、2クラス、あるいは3クラスで示し合わせて、一つのクラスを集中攻撃する場合、だな」
「何故だ?確かに、リーダー当ては確率の低い賭けだ。40分の1だからな。だが、実際に40分の1になることはないだろう。首脳陣、あるいはそれに近しい人物を除外していけば、必然半分近くは除外できる。俺たちも、そう言う経緯でリーダーを選んだしな。そこからさらに絞り込むことも容易だ。特に、Dクラスにとってはな」
堀北、綾小路、浅野と同等かそれ以上の実力者が二人いる。その時点で、Dクラスの有利は揺るがない。
生徒間個人でどれだけ差があったとしても関係ない。浅野ならば、一人で1クラスを潰すことなど容易だろうし、それは同等の赤羽堀北綾小路にも言えること。
このリーダー当ては、3人にとってボーナスと言っても過言ではないだろう。だが、それは浅野にとっても同じこと。
「お前ならば、如何様にでもリーダーを把握できるんじゃないか?」
「否定はしないさ。やりようはいくらでもある。スパイを送り込むのも手の一つだし、ボロを出す瞬間まで後をつけてもいいし、あるいはもっと単純に、推理で片付けることもできる」
「ならば、何故?またプライドか?」
それ以上に、実利を取った結果、の判断だ。
「まず現状、僕たちは大幅なリードを取っている」
「…………あぁ、確かにな」
「だからこそ、これ以上離し過ぎれば、他クラスが同盟を組む可能性が出てくる」
「そうなれば、俺たちも同盟を───いや、そうか」
「そう、同盟を組む理由がAクラスに勝つためである以上、その同盟になる理由にはなっても、対立する理由にはならない。────結果として、他の全クラスと対立することになるのは問題ないが、こちらから他の全クラスと対立するのは、まずい。他のクラスが、有象無象ならともかく、な」
「……………赤羽はCクラスだし、Bクラスも、侮っていい相手では決してない。飛び抜けた天才こそいないが、それを補ってあまりあるほど、全体の団結力が高すぎる。現状、どのクラスも
そう。クラスポイントにおいては、確かにAクラスが一番のリードを取っている、が。
単純な実力それ自体において、
それが、浅野の認識であり、葛城も今はいないが有栖も、全面的に同意するだろう。
殆ど同程度の実力のクラスが、2、3クラスがかりで集中攻撃してくれば、当然対処などできないだろう。
その可能性を減らすためには。
「大幅な勝利と引き換えに敵意を向けられるだろうリーダー当ては、今回の試験で勝つことだけに注力するならともかく、これから先も見据えるのなら、避けるべきだ」
膠着状態であり続ければ、Aクラスの優位は揺るがない。
安全策も奇策も必要ない。
ただ、当たり前のことを当たり前に。それだけで、問題なく勝てる。
「さぁ、勝ちに行くぞ」
浅野と葛城の指示の元、Aクラスは行動を開始した。
「浅野学秀は時々つまらないのです」
「何てこと言うの森下ちゃん」
どうやら不平不満が溜まっているAクラスの生徒もいるようである。
「もっとガツガツいっても面白いのです。坂柳有栖ならもっと面白いことをしてくれたのです」
森下藍はいっそのことAクラス対BCDクラスでも構わない様である。自信家というか、何というか。
「私は嫌よ。なんで船上、無人島であんな奴の世話焼かなきゃいけないのよ」
「姫様いないからって好き放題言い過ぎじゃないかな神室ちゃん」
普段からこき使われている不満が出ている神室真澄。やはり
「なんだったら三国志してくれてもよかったのです。坂柳有栖対葛城康平対浅野学秀とか絶対面白かったのです」
「巻き込まれる俺らからしたらたまったもんじゃないけど。なぁ橋本。お前もそう思うだろ?」
「あぁ良かった吉田いて。話通じて助かるわ」
穏健派の吉田健太としては、同じクラスでの内乱などごめん被りたいものである。
他のクラスとの競争ですらこんなにもめんどくさいのに。
「まるで私が話通じない奴みたいね。腹立たしいわ」
「神室真澄の言う通りなのです。橋本正義。撤回を求めるのです」
「……………助けて吉田」
「はははっ、ごめん無理だわ」
「裏切り者ーーっ!」
橋本正義は女子2人からの制裁を受けた。いと哀れ。
「葛城さん。テントの設営、完了しました」
「よし。報告感謝する弥彦」
葛城康平を信奉する戸塚弥彦は、何やら物言いだがな目線と様子で、葛城の顔色を窺っていた。
「………どうした弥彦?」
「……俺には納得できません。何故葛城さんほどの人がサブに甘んじているんですか。あなたなら、坂柳にも、浅野にも……!」
葛城は苦笑する。弥彦の評価はありがたいが、それは些か過大評価だ。
「俺にはあの二人を上回ることなどできんさ。できることといったら、あの二人の手が周りきらないところを、補助するぐらいだ」
「ですが……!」
「それでいいんだ弥彦。俺と浅野でクラス内の安定と団結を維持し、浅野と坂柳が、他クラスへの攻撃を担当する。この体制が、一番Aクラスを強くする体制だ」
「………っぐ、でも……!」
なおも引き下がる弥彦。しかし譲らない葛城。夕陽がさす中そんなやり取りをする二人の元に、釣竿と魚で満杯のバケツを五杯、他の男子生徒に運ばせている浅野がやってきた。
「葛城、テントの方は?」
「問題ない。設営完了だ。そちらこそ、食糧調達は、……………終わった、よう、だな」
何というか、魚釣りって、こんな漁みたいことになるものだったか?バケツ五杯は多すぎないか?
「あぁ、流石に持ち運びきれなかったからな、もう七杯は見張りをつけて釣り場に置いてある。これをテントまで運んだら、また戻るさ」
「殆ど浅野が釣ったんだよな。意味わかんなかったぜ」
「釣り針落として五秒で釣れんの。運がいいにも程があんだろ」
「おいおい、運任せじゃないと言っただろう?群れの位置、一匹一匹の配置、動き、水温の変化、波の動き、それらの要素を瞬時に計算して、必ず食いつくだろう場所に投げ込んだだけさ」
「そっちの方がより怖いわ」
この男にできないことはあるのだろうか。
戸塚は絶句した。葛城は呆れた。
「初日ということだし、焼き魚パーティと行くか」
まぁこの量だし、パーティぐらいはしても良いだろう。
どうせ明日も同じぐらい釣ってくるだろうし。
葛城はもはや諦観すらも滲ませながらそう提案した。
初日の夜、Aクラスの拠点では。
浅野が釣って、浅野が下処理して、浅野が味付けして、浅野が串打ちした魚を、浅野が起こした焚き火で焼きながら、幾つかのグループで分かれて、Aクラスは穏やかに語り合っていた。
「お前は魚の釣り方やら下処理やら火の起こし方やら味付けやらをいつ身につけたんだ?」
「あぁ、無人島試験があるだろうと予測がついていたからな。船に乗る前日に本で読んだ」
「…………………それでここまでできるものか?」
「まぁ、できるのは僕ぐらいだろうさ」
そんな浅野を、吉田は素直に称賛した。
「器用万能って奴だな。同じクラスで助かったぜ」
橋本正義としては、もはや呆れる他にない。
「もはや全能だろ。お前出来ないことあんのかよ」
「人間だからいつか死ぬさ」
「………そういやそうだったな」
あまりにも完璧すぎて、同じ人類とは思えなかった。
焚き火を見つめながら、どことなく憂いを帯びた顔と声で、浅野は語る。
「………それに、僕じゃなくて父さんなら、きっと猪でも見つけ出して狩って捌いて、ミシュラン三つ星クラスの猪肉ステーキでも作ってくるさ」
「……………まぁ、お前の親父ってだけで納得だわ」
写真でしか見たことが無い浅野学秀の父、浅野學峯。
しかし橋本の脳裏には、猪を見つけ出して狩って捌いて最高級のステーキを振る舞ってくる浅野學峯が容易くイメージできた。
蛙の子は蛙。支配者の子は支配者。天才の子は天才である。
「つっても、今俺たちのクラスメイトは浅野だし、この魚釣ってくれたのも浅野だし、料理してくれたのも浅野な訳で。
俺としては、浅野の親父さんよりも、浅野の方が凄いし好きだがな」
なんでもないように、実際本人にとってはなんでもないことなのだろうが。吉田はそう言った。
浅野は、虚を突かれた顔を一瞬浮かべ、しかしすぐに微笑で覆い隠した。
「嬉しいことを言ってくれるな吉田。よし、次は兎でも狩ってくるとしよう」
「えっまじ?ここ兎いるの?」
「あぁ。痕跡を見つけた。捌き方も本で読んだから出来る」
「今兎を捌くと言いましたか浅野学秀」
突如として割り込んでくる森下藍。
その目には強い怒りの炎が浮かんでいる。
「あぁ。兎の肉は煮込んだりすると美味しいんだ。フランスや中国ではよく食べられていて───」
「そんなことはどうでも良いのです浅野学秀」
いやどうでも良くは無いだろう。
浅野含めた男性陣はそんなことを思ったが、どうやら森下筆頭に女性陣は違うらしい。
「兎ですよ?ぴょんぴょん跳んでポリポリお野菜を食べる可愛い可愛い兎ちゃんですよ?それを狩る?捌く?あまつさえ煮て食べる?あなたに人の心は無いのですか浅野学秀!」
森下藍は心から。
「そうよそうよ。ただでさえ一週間の無人島試験。癒しなんて殆どない。そんな中に兎とかいう最高の愛玩動物がいるのよ?そんなの捕まえて餌付けして撫でくりまわすのが筋でしょうが!」
神室真澄は怒りを露わに。
「は、はい。兎を狩って捌いて煮て食べるなんて、野蛮です。そ、そんなことよりも、可愛がった方がコストパフォーマンスが良いはずです」
山村美紀は賢しらに。
「皆さんこう言っていますし、明日は兎を狩るのではなく捕獲するのはどうでしょう。ストレスは可能な限り減らした方が良いはずです。そうでしょう?」
「はい!俺もそう思います白石さん!」
「乗るな吉田!戻れ!」
白石飛鳥は穏やかに。
Aクラス女性陣は、可愛い可愛い兎ちゃんを狩って捌いて煮て食べる何て論外だ。
捕獲して餌付けしてお世話して撫で回すのが筋であると主張した。
となると、男性陣は一切に浅野に視線を向けた。
その視線が雄弁に語っている。(どうする──?)と。
このサバイバル試験において、兎は貴重なタンパク質だ。しかし、飼うとなると掃除やら餌やらその他諸々やらで間違いなく手間が増える。
というかそんなものもはや遊びだ。
真面目な葛城筆頭に、(試験で遊んで良いのか?)などと考えていた。
さて、浅野学秀の出した結論は───?
Aクラスに、前代未聞の緊張が走る。
「分かった分かった。明日は兎を捕まえてくるから、みんなで飼うとしよう」
女性陣、歓喜の大爆発。
巻き起こる感謝の浅野コール。
『あ・さ・の!あ・さ・の!A・S・A・N・O!A・S・A・N・O!』
男性陣、諦観のため息。
葛城は大困惑である。
「良いのか?試験でこんなことして良いのか⁉︎」
「どうせ教師もいないんだ。別に良いだろう」
「それで良いのか浅野⁉︎」
良いんです。それで全然良いんです!
女性陣の中からそんな叫び声が響いてきた。
「というか浅野、飼い方とか分かるのか?」
戸塚の当たり前の質問に、
「大体四年前に本で読んだ。どうとでもなるさ」
普通の人間だったら疑うところだが、言ったのは浅野なのだ。
本で読んだだけで漁みたいな量の魚を釣り上げて、ベテランの釣り人も料理人もびっくりな見事な手腕で捌き、味付けし、ベテランキャンパーが教えを乞うレベルの火付けを見せつけた浅野学秀なのだ。
どうせ出来るのだろう。出来てしまうのだろう。
普通に引いた男性陣の中で、吉田だけは素直に
「浅野すげー!」
と称賛していた。
他の男性陣としては、頼むから弱みを見せてくれ、と言ったところである。
せめて本命の女子相手にはたじたじになるとかそんな弱点があってくれ。
浅野学秀が本命女子に奥手なのかどうかは、まだ分からない。
ちょっとした小動物ぐらいはいると思ってください。
理事長が見つけるだろう猪は、学校の管理外で入り込んでしまった猪です。
本編には出て来ません。