殺せんせーの教え子たち   作:宇津木 沙坂

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Cクラスとサバイバル試験

 

 無人島試験、二日目。

 他クラスの偵察には、俺は行けない。

 寛治と競争を続けて、高円寺の興味を引き続けないといけないので。

 

「───ほう、もうそこまで行くか、キャンプボーイ」

 

 釣り針を落としてからおおよそ八秒で、寛治は一匹釣り上げた。

 

「────読めたぜ清隆!お前は水温、水流、配置、群れ、気温、ありとあらゆる要素で魚が釣れるだろうポイントを予測している!

 完璧に捉えるのが難しくても、大まかな感覚さえわかれば……!」

 

 今度はさっきよりも短い。七秒で釣り上げていた。

 アウトドア関連に関しては、寛治には中々の才能があるらしい。来年再来年も似た様な試験がある可能性を考えると、この試験中にできるところまで仕上げておけば、かなり有利になるだろうな。

 

「──ふっ、見事だ寛治。

 川での勝負はもういいだろう。海に行くぞ」

 

 海での難易度は今までよりも跳ね上がる。

 水の勢いも魚の量まで何もかもが多くなるからな。

 

「──ふっ、望むところだ!」

「さぁ、もっと私を楽しませてくれたまえ」

 

 海釣りを始めようとしたところ、近くの浜辺での偵察を終えたのか、啓誠と長谷部、それから三宅と遭遇した。

 

「お疲れ様、三人とも。どうだった。Cクラスは」

 

 山内が拾ってきた伊吹から聞いた情報によると、龍園はかなり馬鹿げたことをしているらしいが。

 確認のために、須藤の次に喧嘩が強いであろう三宅を護衛に、啓誠と補助の為に長谷部を添えて偵察に行ってもらったのだが。

 

「あぁ。意味がわからん。俺たち以上に遊んでいるし、龍園に勝つ気があるとは思えない」

 

 三宅は呆れ果てた様子で。

 

「ねぇー。アイツら何考えてるんだろう?馬鹿じゃないの?」

 

 長谷部は凄い切れ味で。

 

「……………恐らくは、そういうこと、か………?」

 

 啓誠は、何かを考え込んだ様子でいた。

 

「────何かに気付いた様だな、啓誠」

「あぁ。龍園は、おそらく───」

 

 時は、少し遡る。

 

 綾小路の指示の元、啓誠たちはCクラスが拠点としているビーチに訪れていた。

 そこで見た光景に、三宅は眉を顰め、長谷部は呆れ果て、啓誠は考え込んでいた。

 三人の視線の先では、遊び惚けているCクラスがいた。明らかに高い買い物だろう、水上バイクやらソフトドリンクやらビーチチェアやらを買って、試験など考えず、ただただ遊んでいた。

 遊んでいる、という点ではDクラスも大差は無いが、あまりにも質が違う。殆どポイントを使わずに遊んでいるコチラとは違い、ポイントを使い果たす勢いであり、もはや自殺行為である。

 

『Cクラスは何を考えている?正気なのか?』

『何も考えてないんじゃ無い?ここまで馬鹿な奴らよりも低い評価だったってのは、私の一生において最も耐え難い屈辱かも』

 

 プライドが高い訳では無い長谷部でも、流石にこのレベルの馬鹿どもよりも低い評価というのは我慢ならない様だった。

 正直三宅は同意していたが、啓誠は少し違った。

 

(あの清隆が、龍園という男に()()()()()()()()()()()

 その時点で、警戒してもし過ぎるということはないだろう。それほどの男が、無策でこんなことをするとは思えない。必ず何か裏がある、筈だ)

 

 綾小路清隆という男の能力に、絶大な信頼を置いているからこその警戒。

 そんな風に考え込む啓誠と呆れ果てる長谷部と三宅の元に、一人の男子生徒がやって来た。

 啓誠と三宅は、長谷部を庇うように前に立つ。

 

『何か用か?』

 

 三宅は無愛想なので、ただの質問でもかなりの威圧感がある。

 啓誠も、烏間式ブートキャンプにより、それなりに肉体が引き締まり出して来たので、普通に怖い。

 

『あ、あぁ。龍園さんがお呼びです』

 

 一瞬怯えを見せながらも、その生徒はそう告げて来た。

 クラスメイトを伝言係に使うとは。何というか。

 

『……なんか、感じ悪いね、龍園とかいうやつ』

 

 長谷部の言う通り、龍園という男の傲慢さというか、独裁っぷりがよく分かる。

 Dクラスの首脳陣は、そもそも四人体制というのもあるが、全員が傲慢とも独裁とも程遠いので、龍園とは似ても似つかない。

 まぁ啓誠からしたら、堀北鈴音と綾小路清隆の人使いの荒さというか、コチラの限界ギリギリの仕事(中間テスト対策小テスト作成)を振ってくる辺りは、ある意味で龍園以上なのでは、とか考えるが。

 

『───まぁ、あちらのご招待だ。話だけでも聞いておいてやろう』

 

 ───現時点では、Cクラスの方が上でこそある、が。

 正直三人とも、Cクラスには負ける気がしていない。

 だからこそ、三宅は敢えて上から目線で行くことにした。精神的にコチラが上だと示しておくことは、龍園の様な不良に効くだろうことを、よく知っているので。

 

『───よう、Dクラスの雑魚ども。貧乏生活ご苦労さん』

 

 予想通り、想像通りの粗暴な振る舞いと言動。

 三宅と長谷部は、もはや呆れてまともに取り合うつもりもない様だが、啓誠は、敢えてその挑発に乗った。

 

『あぁ。心配するな。───こっちには優秀な生徒が揃っているからな。こんなに無駄にポイントを使わなくても、良い生活ができているさ』

 

 化け物じみた万能性の綾小路清隆と、アウトドア関連において、完全に予想外の才能を見せた池寛治。

 堀北鈴音と櫛田桔梗も、高いアウトドア能力を備えているし、王美雨もまた、高い調理スキルを見せた。

 だからこそ言える。Cクラスは、無駄なポイントの使い方をしている、と。

 事実だからこそ、その煽りは、よく効いた。龍園に仕える生徒たちは、瞬時に怒りを露わにする。

 三宅と啓誠は、自然に身構える。啓誠からしたら、あのストーカーに比べて狂気が足らないので、Cクラスの不良に恐怖を感じてはいない。

 しかし、龍園が片手を上げるだけで、その不良たちは大人しくなった。高い統率力、いや、独裁力、と言うべきか。

 

『───はっ、アイツらにおんぶに抱っこの不良品どもがよく吠えるぜ。あの四人以外の雑魚どもが何を言おうと、遠吠えにもなりゃしない』

『──何故その四人が一人も来なかったと思う?お前たち程度、その()()()だけで十分だと、そう判断されたことを自覚したらどうだ?』

 

 わざわざ首脳陣が出張るほどの脅威だとは微塵も思われていないぞ、と。

 さっきよりも痛烈に、啓誠は煽り返した。

 煽り返しながらも、龍園の様子と、クラスメイトの様子を瞬時に観察する。

 

(──なるほどな)

『それに、離反者を出す様なリーダーが何を言ったところで、まともに取り合う価値もない。

 馬の耳にも念仏、という諺があるだろう?その具体例として、辞書に載せてやりたいぐらいだ。小学生でもよく理解できるだろうさ』

 

 龍園は、さらに笑みを深めた。その瞳に、啓誠を見下す様な、そんな感情が垣間見えた。

 他のクラスメイトも、明らかに笑いを堪えている様だった。

 

『あぁ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

『まぁな。俺たちはお前と比べて()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ()()()()()()()

 龍園としては、口を滑らした愚か者だと思っているのだろうが。

 

『───ハッ。その余裕がいつまで持つのか、見ものだな』

 

 龍園がその台詞を言い終えると殆ど同時に、啓誠は身を翻した。

 

『これ以上ここに用はない。帰るぞ、二人とも』

 

 そうして三人は、そのビーチから立ち去った。

 

「スパイを利用した、クラスリーダー当てが目的と見て良いだろう」

 

 啓誠は、龍園の狙いを看破した。

 

「何故そう考えた?」

「龍園は手元にトランシーバーを置いていた。

 おそらく、ヒントのつもりだったんだろうな。或いは俺たちをそこまで見くびっていたのか。伊吹も、他のクラスにいるだろうCクラスの生徒も、トランシーバーを隠し持ってると見て間違いない」

 

 まずは一つ、その推理に至った材料を話す啓誠。

 

「なるほど。しかし、それだけだと弱いぞ」

「無論、他に理由はある。

 第一に、他のクラスメイトの様子がおかしかった。リーダーに反発する様なクラスメイトが出たなら、もっと動揺しているだろうが、そんな様子はかけらも無かった。ならば、予定調和だったと見て間違いない。

 第二に、俺が伊吹を受け入れた旨を話した瞬間、明らかに龍園の様子が変わった。それまで以上に、俺を見下していた。

 まぁ、俺のことを口を滑らせた雑魚だとでも思ったのだろうな」

 

 長谷部と三宅は関心していた。啓誠は、ただ煽っていた訳ではなく、出来る限りの情報を引き出していたのだと理解したから。

 俺の側でその話を聞いていた寛治も、啓誠の観察眼に驚いている様子だった。

 木の上で、啓誠の推理を聞く高円寺は、楽しそうな笑みを深めていた。

 

「なるほど。だが、確定された証拠はないぞ?」

「まぁな。しかしそれは、簡単に見つけ出せるだろう。

 伊吹の指先には、不自然な土汚れがあった。恐らく、あの木のそばに、トランシーバーを埋めていたのだろうな」

 

 満点だ。啓誠。想像以上の成長だな。

 

「───じゃあさ、伊吹さん追い出しちゃう?」

「それが良いんじゃないか?わざわざスパイをそばに置いておく必要はないだろう?」

「だよな。連れて来た春樹には悪いけど、追い出すのが正解だろ」

 

 あぁ。素晴らしい成長ぶりだ。

 完璧な答えだな、三人とも。だが───。

 

「────どうせ、お前はそうしないんだろう?清隆」

「あぁ。三日で終わらせる、と言っただろう?今となっては、伊吹は最高の武器だ」

 

 長谷部たちは、よくわからない、と言いたげな顔をしていた。

 高円寺は、さっき以上に楽しげだった。

 啓誠は、軽く溜息を吐いていた。

 

「さて、海釣りに行くぞ、寛治」

「えっ、あっ、あぁ。俺は、別に良いけどよ」

「安心しろ、池。こっちは俺たちでやっておく」

「任せたぞ、啓誠」

 

 ──もう、俺がやることは、殆どないだろう。

 恐らく明日のうちには、全ての決着がつく。

 

 そうして啓誠たちが、拠点に戻ったところ。

 

「お、戻って来たか。どうだった、うちのクラス。あの馬鹿ロン毛含めて、馬鹿しかいなかったでしょ?」

 

 爽やかな笑みを浮かべる、赤髪の優男が、そこに居た。

 男は自分で取ってきたのだろうスイカを切り分け、自分も無作為にそれを食べながらも、Dクラスの生徒にスイカを分けていた。

 

(───うちのクラス、ということは、Cクラスの生徒。

 赤い髪の優男。恐らくは龍園と敵対に近い関係にあるだろう発言。なるほど、こいつが赤羽業か)

「まぁな。そういう赤羽は、何故ここに?」

 

 啓誠は、赤羽に渡されたスイカを食べずに、そう聞き返す。

 まぁ、本人も食べている以上、毒が入っていることは無いだろうが。念の為。

 長谷部と三宅は、普通にスイカを食べていた。

 堀北や櫛田も食べていたのもあるだろうな。まぁ、そんなリスクのあることをするはずがない、という結論だろうが。正直、啓誠としても完全に同意だが。

 

「あぁ。伊吹さん、いるでしょ?あの馬鹿ロン毛のせいで追い出されちゃったからさ、保護してくれたお礼ってやつ。

 他のクラスも、これから回る予定だよ。ちなみにこれはお詫びの品ね」

 

(───龍園のスパイ作戦には、関わっていないということか?)

 

 まぁ、殆ど敵対状態だと言うのなら、これもおかしいことではないだろう。

 

「……げっ、何の用?赤羽」

「ひっどいなぁ。俺だって、クラスメイトを心配したりするんだよ?伊吹さんも食べる?」

「…………まぁ、一応、貰っとく」

 

 素直に受け取り、切り分けられたスイカを頬張る。

 そんな伊吹に、山内は話しかけにいった。

 

「なぁなぁ伊吹ちゃん。塩使う?やっぱスイカは塩振ったほうが美味いよな?」

「………はいはい。分かったわよ」

 

 正直、啓誠としては溜息を吐きたかった。寛治がこの場にいたなら、きっと目を逸らしていただろう。

 まぁ、騙すほうが悪いのはそうなのだが、騙される方もどうなんだろうか。クラスメイトをわざわざ殴ってまでスパイにするとは思えないのは仕方ないのだが。

 少しは警戒するべきでは。

 

(────他クラスのいじめを受けた女子を助ける自分に酔っている、としか見えんな)

 

 ………堀北や櫛田が、もはや何も言わないのは、呆れ果てているからなのだろうな。

 少しは成長したと思ったら、これだもの。

 

 伊吹がスパイであるという結論を踏まえれば、啓誠、長谷部、三宅からは完全に哀れまれているし、何の警戒心もなく他クラスを迎え入れた山内に対して、他の生徒も呆れている。

 そんなことに気付いていない山内が、もはや哀れですらある。

 

「…………ふぅん。なるほどねぇ」

 

 赤羽は、そんな山内を見て、一人納得していた。

 

「んじゃ、残りは勝手に食べなよ。俺は他のクラスも回ってくからさ」

「あら、なら、お裾分けとして、何個かフルーツあげるから持っていったら?どうせ食べ切れないし」

「うんうん賛成。スイカ美味しかったし。みんなはどう?」

 

 そんな鈴音と桔梗の提案に、他の生徒たちも概ね賛成だった。

 まぁ、Cクラスの良心、みたいに思っているのだろうな。追い出されたクラスメイトを思って行動している辺りで。

 須藤あたりは、納得いかない顔しているが。

 一応、鈴音と桔梗からしたら、一年間、あのクラスで過ごした仲間な訳なので。

 

「───ありがとう。せっかくだし受け取っておくね」

 

 そうして、かなり大きめの籠を背負った赤羽は、Bクラスの拠点に向かった。

 

 

 道中で、赤羽はちょっと申し訳ない顔をしていた。

 ま、良いか。

 そう独り言を溢したカルマは、Bクラスの拠点に顔を出した。

 

「おっ、茅、じゃ無かった雪村ちゃんじゃん。久しぶり〜」

「───カルマくん。久しぶり」

 

 Bクラスに激震走る。

 まさか、クラスの二大女神の一角が、こんな怪しい男と知り合いだと……?

 しかしこの男、顔は良いので、女子たちは盛り上がった。

 

「雪村さん!このお方とはどのようなご関係なのですか!」

「中学のクラスメイトだよ」

 

 二人の関係を問いただす女子生徒。

 

「ぶっちゃけ渚くんとどっちが本命なの⁉︎」

「どっちもただの友達だよ」

(本命は渚くんでしょ)

(本命は渚でしょ)

 

 どっちが本命なのか問いただす女子生徒を躱すあかり。

 まぁ一之瀬とカルマからしたら答えは分かりきっているが。

 

「──あれ?渚は?」

「あぁ、うん。金田くんを見張ってるよ」

「………そっか」

 

 哀れなり、金田。

 渚の目を盗んでリーダーカードを盗むは無理だろう。

 多分金田は、監視されていることにも気付かないだろうな。そして、隙が出来たと思って動き出したら、いつの間にか意識を失って、船に戻っていることだろう。

 

「で、何で来たの?」

「ま、金田を保護してくれたお礼だよ。色んなフルーツ持ってきた。包丁とまな板あったら貸して。今切るから」

「………ま、いっか。はいこれ」

「あんがと」

 

 手早くスイカを切って、オレンジを切って、メロンを切って、果物盛り合わせを作る。実に鮮やかな包丁、いやナイフ捌きである。

 やるじゃないか。茅野は何故か上から目線でそんな評価を下した。

 

「ありがとね!赤羽くん!」

「こちらこそお礼を言いたいぐらいだよ、一之瀬さん」

「あれ、カルマ来てたんだ」

「ヤッホー渚。金田のお礼も兼ねて、ね」

「………ふぅん。そっか」

 

 嘘の波長は見えなかったので、ひとまずカルマを信じることにした。

 切り分けながらもカルマはスイカを食べていたので、毒が盛られていたりすることは無いだろう。

 

「…………………赤羽氏、何故ここに」

「礼だよ。お前を保護してくれたBクラスへの。ほら、お前も食う?」

「…………頂きます」

 

 カルマが金田を見るその視線には、深い憐れみがあった。

 知らぬ間に死刑台に立っている罪人を見る目である。

 

「じゃ、次はAクラスのとこ行ってくるわ」

「いってらっしゃーい」

「足元気をつけてね」

「舐めんな」

 

 渚と軽口を叩き合いながら、カルマはその場を後にした。

 

「───なんか、渚くん赤羽くんと仲良いの?」

「(あー、確か同じクラスだったって、茅野言っちゃってたか)うん。初日のバスが一緒だったからさ、そこで意気投合したんだよね」

 

 まぁ、全部が全部嘘では無い。

 初日のバスが同じだったあたりは、本当である。

 茅野はやっべやらかした、と言った顔である。ありがとう渚。

 

「なるほどねぇ」

 

 明らかに一之瀬は怪しんでいたが、それ以上追求はしなかった。

 まぁ、二人が距離を演出しているのと関係しているのだろうな。割と他の女子生徒にバレているような気もするが。

 ま、極少数だろう。

 

「おーい、浅野くーん。

 果物のお届けでーす」

 

 そんなふざけた声がけが、洞窟にかけられた。

 

「………何のようだ、赤羽」

「ひよりさん保護してくれたお礼だよ。色んな果物持ってきたの。スイカもあるよ」

「………………まぁ、良いだろう。まな板と包丁は好きに使え」

「ん、オッケー」

 

 取り敢えず。そう取り敢えず、浅野はカルマの行動に納得した。

 スパイの椎名とは、仲が良いので、まぁ、心配して様子を見にきても不思議では無いだろう。

 

「良いのか浅野?」

「安心しな。俺も食うから」

「…………まぁ、それなら良いだろう」

 

 葛城は、取り敢えずそれで納得した。

 鮮やかな手腕でカービングすらもこなすカルマに対抗心を燃やしたのか、浅野も割り込んできてカービングを始めた。

 Aクラスの生徒たちは二人のカービング対決に熱中している。

 と、そこで椎名がやってきた。

 

「あら、カルマくん。一日ぶりですね」

「ヤッホーひよりさん。元気、みたいだね」

「えぇ。A()()()()()()()()()()()

 

 兎を抱き抱えながら、ひよりはそんなことを宣った。

 椎名ひより、スパイ活動よりも兎を愛でる方に熱中している。まぁそもそも、神室筆頭に女性陣から最低一人が常に一緒なので何もできないのだが。

 そもそもするつもりが無いのは秘密である。

 

「おや、随分と沢山持ってきましたね」

「まぁお礼の品だしね。ひよりさんも食べる?」

 

 カルマは兎のカタチに切ったリンゴを差し出しながら、そう言った。

 

「兎を食べながら兎を愛でるとは。実に冒涜的ですね」

「でしょ」

 

 二人は笑い合いながら、フルーツパーティーを楽しんでいた。

 

「──ところでカルマくん。どうやら他のクラスにも行ってきたようですが」

「……うん。まぁね」

「ふふふ、毒味でスイカを食べ過ぎないで下さいね。今更ですが」

「……ま、そうだね」

 

 戸塚は足元に擦り寄ってきた兎に、食べているスイカを分けようとして。

 ひよりがそれを制止した。

 

「戸塚くん。兎にあげる果物は、種がないものが望ましいですよ。スイカはやめておいたほうがいいかと」

「……そうなのか、浅野?」

「まぁ、椎名さんの言う通りだな。リンゴとかなら大丈夫だぞ。あぁ、皮とかは避けておけ」

「そっか」

 

 納得した戸塚は、切り分けられた兎リンゴを兎に与えた。皮のない後ろの方を手でちぎって小さくしてから与えている。

 それを見ていた生徒たちの内心は完全に一致した。

 

(((共食いだ)))、と。

 

「んじゃ、俺は拠点に戻るね」

「分かった、途中まで見送ろう」

 

 浅野は、他のクラスメイトには聞こえないように、ある程度拠点から離れてから、提案した。

 

「………なぁ、赤羽」

「ん?」

「お前さえ良ければ、うちのクラスに来ないか?」

 

 まさかのヘッドハンティングに、カルマは心から驚いた。

 

「───どう言うつもりかな?」

「──お前は、今龍園と対立しているのだろう?なら、いつまでもそんなところにいないで、とっととポイントを貯めてうちのクラスに来い。こっちの方が、お前にとってもいい話だろ」

 

 カルマは、一瞬考え込んだが、しかしすぐに呆れたように笑った。

 

「──悪い。それは無理だわ」

「………そうか。まぁ、覚えるだけ覚えておけ。いつでも良いぞ」

「………オッケ」

 

 そうして、赤羽業は、拠点に戻った。

 

「あっ、お帰りなさい。カルマくん。椎名さんはどうでしたか?」

「うん。特に問題は無さそうだったよ。兎と戯れて楽しんでた」

 

 何だったらこのクラスの誰よりも楽しんでいる疑惑すらもある。

 

「ふふっ、それは何よりです。………だいぶ残りましたね、スイカ」

「うん。クラスメイトにも配り回ってくるわ」

「分かりました。手伝います!」

「はっはっはっ。愛美さんが包丁使うのは怖いから良いや」

「何おう⁉︎わ、私だって、ナイフの使い方は、心得てますよ⁉︎」

「んじゃ、他のフルーツやっといて」

 

 Dクラスのお裾分けのフルーツも、まだまだ残っている。

 

「はい!勿論です!完璧な兎リンゴやら何やらを作って、私のナイフ術を見せつけてあげます!」

「楽しみにしてる」

 

 二人は隣り合って、果物を切り分けていった。

 カルマはスイカを、奥田はリンゴを筆頭とした他の果物を、食べながら配り回っていた。

 

 龍園もまた、呆れながらスイカを口にした。

 

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