今更ですが干支試験のグループ名直しました。
二日目の話し合い。
僕と一之瀬さんからしたら敗戦処理。
浅野くんにとっては、綾小路くんとカルマとの勝負。つまり、どちらが先に、一之瀬さんが優待者であるという証拠を掴むか。
だけど、僕たち二人が知らないうちに。
勝負はすでに、決まっていた。
「今回は、前回の反省を活かして全員が楽しめるように、UNOを持ってきたんだ。これなら、嘘をつく必要はないだろう?」
僕の一人勝ちで終わってしまったダウトに比べて、UNOにそういう要素は殆どない。
知略以上に、運が物を言うゲームだ。
十四人いるので、山札を二つ組み合わせて、一人当たり七枚でスタートだ。
前回と同じ並びだとつまらないので、クラスごちゃ混ぜで席替えをしている。
以前と同じように、幸村くんから始まって、現在二巡目。
「悪いな綾小路。またスキップだ」
「………おい浅野、俺今のところ一枚も出せていないんだが?」
「運がないねぇ綾小路」
「黙れカルマ。さっきプラス4食らったくせに」
「……その、出せるのがこれしか無かったのよ。悪かったとは、思ってるわ」
「いやまぁうん。サポートするとか言ってたくせにいきなり裏切ったのは流石にびっくりしたけど」
……なんか、割と仲良く進んでいる?
さて、僕の番かと思っていたら、直前の幸村くんがリバース使ってきた。
「……ねぇ幸村くん?さっきはプラス2だったよね?僕一枚も出してないのに手札が増えてるの。早く減らしたいんだけど?」
「まぁ、運が無かったと諦めておけ」
僕と綾小路くんは、三巡目になっても一枚も出せなかった。
緑の手札がスキップしかなかったらしい森下さんが、凄く楽しそうにスキップ出してきた。
綾小路くんに至っては、プラス4の二連打を食らっていた。かわいそうに。
「危なかった〜〜綾小路くんがプラス4持ってたら十二枚引くとこだったよ〜」
リバースの結果、綾小路くんの次になった一之瀬さんはそんな呑気なことを言いながら、出せる手札が無かったのか、一枚引いていた。
そしたらたまたま同じ数字だったらしく、手札を一気に二枚減らしていた。
………まぁ、グループ分けから運が無かったから、少しぐらいは、ね。
四巡目、五巡目は問題なく進んでいった。
僕も合わせて三枚手札を減らせたけど、一之瀬さんがすごい。もうあと一枚。
「やった!UNO!」
そして、一之瀬さんの隣の外村くんが、プラス4を出した。
その隣は、藪さんだ。
「赤でござる!」
「4枚引くのかぁ。じゃあもう一声!」
わぁ、藪さんも持ってたのか。プラス4。
「色は緑!」
八枚引くのは、神室さんか。
「じゃあ、青で」
とか思ってたら神室さんも持ってたらしい。プラス4を出した。
次の人は十二枚だ。
「……うわぁ。大人数でUNOやるとこう言うことあるよね」
「そうだね。引く人が可哀想なことになるやつだ」
次の人は森下さんだ。
かわいそうに。
とか思ってたら、とっても楽しそうな波長だったので、凄く嫌な予感がした。
「ふふふ。さぁ、十六枚引くのです潮田渚!色は赤で!」
ウッソでしょ。
「哀れだな。潮田」
煽りやがって、幸村くんめ。昨日の仕返しのつもりか?だったら追加でドン!だ!
「こっちのセリフだよ!幸村くん!色は青だよ!」
さらにプラス4。二十枚だ。これは致命傷だろう!
「───フッ」
「死を覚悟した笑みってやつだな。俺まで来なくて良かったぜ」
「───いいや違うさ。お前への哀れみだよ別府。色は緑にしておこう」
………わぁ。幸村くんも持ってたのかぁ。
プラス二十四枚。オーバーキルにも程があるね。
「………まぁじかぁ」
「……危なかったぁ」
別府くんの次の軽井沢さんは、心から安心していた。でも、別府くんの波長が凄く楽しそうに揺れている。
「───なぁんてな!残念だったな軽井沢!二十八枚引くが良い!ちなみに色は赤な」
「───はぁぁぁぁぁ⁉︎」
うっわぁ。軽井沢さん可哀想。
「さぁさぁ早く二十八枚引きなさいよ。ほらほら」
………楽しそうだなぁ、真鍋さん。
項垂れて絶望している軽井沢さんは、諦めたように山札に手を伸ばし──引かずに手札を一枚選び取る。
………まじか。
「残念。引くのはあんたよ!色は黄色!」
プラス三十二枚。
ここまでプラス4が重なるのは初めて見たかも。
「なっあっ……」
「ふっふっふっ。騙されたね真鍋」
わっるい顔だなぁ軽井沢さん。
でも、真鍋さんは隣のカルマに、とても申し訳なさそうな顔を向けた。
「ごめんねカルマくん!でも私負けたくないの!色は赤で!」
まさかまさかのプラス三十六枚。
こんなの一発ゲームセットだね。
「んじゃ、ごめんね伊吹さん。色は赤で」
………うわぁ。グロイ。プラス四十枚の大台に乗っちゃった。
これ人間が持てるの?
「……………はぁ。その。悪いとは、思ってるわ」
さらにさらにさらにさらに追加のプラス4。
浅野くんも流石に頰が引きつっている。
プラス四十四枚、かぁ。
「………その、色はアンタが決めて良いわよ」
せめてもの情けを掛けようとする伊吹さん。
でも浅野くん、誰でも分かるぐらいに満面の笑みだった。
「────その必要はないよ。伊吹さん。色を決めるのは、お前だ、綾小路」
さらにさらにさらにさらにさらに追加のプラス4。
プラス四十八枚。
でも、浅野くんの次は綾小路くんなんだ。
プラス八枚を食らって、手札が豊富な綾小路くんなんだ。
「───あ、綾小路、くん?」
あと少しだった。あと少しだったんだ。
UNOまで手札を減らしたし、もう少しで一抜けだったんだ。
「──う、嘘だよね。そんな酷いことしないよね……?」
綾小路くんは、手札から、一枚ずつ、カードを選んでいく。
「──待っ、待ってよ。だ、駄目だよ、そんなの。私の手が壊れちゃうよ」
一枚目、二枚目、そして、三枚目。
「───や、やめて。お願いやめて!綾小路くん!」
「───悪いな一之瀬。せめてもの情けだ。………色は、お前が決めろ」
追加で、三枚のプラス4。
合計、プラス六十枚。
「───嘘だぁぁぁぁぁぁ‼︎」
一之瀬帆波、敗北決定。
その後、手札というより山札を抱えた一之瀬さんが、当然のように最下位で。
一位は、順当に手札を減らしていった伊吹さんだった。
でも誰も、そんなことよりも、奇跡のプラス六十枚の方が印象に残ったみたい。
「………その、お祓いでもいったらどうだ?」
慰めるようにそんなアドバイスを送る幸村くん。
「…‥どこでお祓いするの……?」
うん。僕たちは、この学校からは基本的に出られないからね。
浅野くんは記憶を掘り返しているのか少し考え込んだ後、思い出したのか。
「一応、敷地内にも神社があったはず、だ。………まぁ、これほどの悪運を祓い切れるとは思えないけどね」
まぁ、二十数年程度の神社だもんなぁ。
このレベルの悪運は、できれば千年は欲しいんじゃないかな。
「ぎゃ、逆に捉えてみようよ一之瀬さん!ここでこんなに運が悪かったんだし、後はきっと良いことたくさんあるって!」
軽井沢さんのそんな慰めも、現状よりにもよってなグループで優待者をやらされている、既に運が悪い一之瀬さんには、むしろ追い討ちだった。
まぁ、これを完全に覆すとしたら、宝くじ一等でも当たらないとね。
と思ってたら、チャイムが鳴った。
二日目の話し合い。その一回目が、終わったらしい。
二回目の話し合いは、確か二十時からだっけ?
さて、茅野たちのグループは、どんな感じだろう。
龍グループでは、案の定空気が凍り付いていた。
多分この部屋だけ冷房とか要らない。
「ねぇ龍園くん?昨日からずうっと、やけに大人しいのね。そんなに山内くんに負けたのか堪えたのかしら」
「────はっ、俺が、その程度で諦める雑魚だと思ってんのかよ鈴音ぇ?」
「それやめてって言ったでしょ」
「別に良いだろ減るもんじゃねぇし」
「減るわよ私の精神的なものが。あなたの穢らわしい口から父さんたちが考えてくれた素晴らしい名前が聞こえてくるたびに臓腑が煮えくりたつの。ちょうど良いから言っておくけれど、私が名前呼びを許すのは家族と親友だけよ」
「…………その理論だと綾小路くん家族になるんじゃないかな堀北さん」
それまで極寒だった部屋に、温い風のようなものが吹いてきた気がしたので、平田は思わずそう言ってしまった。
「………口が滑ったわ忘れて頂戴」
「ハッお熱いねぇ。あんな二股野郎のどこが良いんだか」
「彼が二股かけてるのではなく私たちが勝手にやってるだけよ」
「うんうん。清隆は必ず答えを出すって言ってるし」
心からそう思っているような。呆れ果てた龍園の言葉に、鈴音と桔梗はすぐさま訂正と擁護をした。
だが、平田としても、丁度いいタイミングだと思ったのか、抱え込んでいたのだろう質問を口にした。
「………その、正直疑問だったんだけど、二人っていつ頃告白したの?」
「私は二月頭かしら」
「私はちょうどバレンタインの頃かな?」
「………もう半年は経つんだね」
半年間答えを出さずになぁなぁなのはかなり駄目じゃないかなぁ。
平田洋介はそう思った。
なんだったら龍グループの殆ど全員もそう思った。
「………なぁ、俺たちは今、優待者を探る為の話し合いをしているんだよな?」
葛城は、困惑を隠さずにそう言った。
なんというか、真面目で常識的な辺り、あの二人に割と振り回されていそうだな、と鈴音は勝手に思った。
それは割と、当たってはいた。
「まぁ、こんな風に雑談しながらの方が、優待者もボロを出すかもよ?」
「うんうんそうだねあかりちゃん。これが試験だと思わせないぐらいの方が、優待者も口を滑りやすくなるはず!」
(第一候補が何言ってるんだか)
櫛田桔梗は、意識の波長が読み取れる。
暗殺の才能そのものは間違いなく渚が上だが、意識の波長を読み取る観察眼に関しては、桔梗に軍杯が上がる。
そんな桔梗が、積極的に優待者を探りにいっていない以上、候補は自ずと、現Cクラスの誰かになる。
そこまでは分かって、そこから先が難しい。
(候補は三人。でも、三人とも変わった様子は無い)
動揺も、嘘をついた様子も無い。見せない。
嫌になるくらい、全員優秀だ。
(ていうか龍園くんがもっと引っ掻き回すと思ってたんだけど。初日よりは動いてこそいるけど)
龍園に引っ掻き回されて隙が出るのを待っている茅野としては、本当にやり辛い。
(………やっぱり、無人島試験での一人負けがそんなに堪えたのかなぁ)
まぁ、龍園翔も人の子なのだろう。
「ただの雑談だけだと、優待者を探るのは難しいだろう?何か、試験に関連したテーマを決めるのはどうだ?」
「……そうだね!じゃあさ、一年生の戦況を、みんなはどう思うのかとかどう?
丁度ここには、それぞれのクラスの首脳陣が集まっているわけだしさ!」
明るく地獄のような議題を振ってきたな。
話を振った神崎も、他の生徒たちも半分呆れていた。
「───じゃあ、私から言っていくね!
無人島試験での勝利は相当嬉しいんだけど、それ以上に、幸村くんも言ってたけど、私たちが殆ど何もしなくても皆が自分たちで考えて動いた結果なのが何よりも嬉しいんだよね。
どう?私たちのクラスは凄いでしょ?って感じで」
それは正直、認めざるを得ない、
彼らは、首脳陣の力をほとんど借りずに龍園率いる元Cクラスを完璧に打ち倒して見せた。
まず間違いなく、成長性という意味では、一年生トップのクラスなのは疑いようが無い。
「──ならば、次は俺だな。
無人島試験では結果こそあまり振るわなかったが、全員の協力もあって、パンデミックの際の対応も正確だったからな。十分に及第点と言っていい。
二人のリーダーの指揮もあって、最も安定したクラスなのは疑いようが無いだろう」
茅野としても同意見だった。
全員の成長も感じられたし、帆波と自分の二人体制があるからこそ、安定性に関しては一年生トップのクラスなのだろう。
「俺としては、無人島試験での結果も十分以上だったし、パンデミックの際に、浅野もようやく、俺に頼ってくれるようになってきたしな。浅野の活躍が大きいのは事実だし、あいつの元で動けるからこそ、初月でポイントを増やすことができたが、しかしこのままだとあいつにだけ負担がかかり過ぎるからな、この調子で、俺たちにも色々と仕事を振ってきて欲しいところだ。
まぁ、長々と話したが、最も強いのは、俺たちのクラスで間違いないだろう」
葛城の言葉に他のAクラスの生徒は頷いた。
浅野という最高クラスの指揮官の元、高い団結力と優秀な人材が集まっているからこそ、一年生最強のクラスというのは、否定できない。
「んで俺かよ。
敗者に何を語れってんだか。ただまぁ、今回の試験では、俺たちの予想外っぷりがよく分かったんじゃねぇか?
まぁ、それで負けちまってんなら話になんねぇがな」
龍園の言葉はどこか投げやりであった。
だが、スパイ作戦、そしてこの場の生徒が既に気付いているように、パンデミックといった予想外を見せたことは、記憶に新しい。
一年生の中で最も予測不能なクラスと言っていいだろう。
だからこそ。殆ど誰も、彼らが取った手に気付かなかった。
龍園率いる、現1年Cクラスは。
最も予測不能なクラスなのだ。
二日目の夜。
これまでとは打って変わって、僕らは真面目に討論することになった。
「さて、議長は僕が勤めよう。異論は無いかい?」
「僕としては、異論は無いかな」
「私も無いよ」
「んじゃ、俺も賛成で」
「俺も同じく、だな」
浅野くんが議長を務める形で、議論が始まっていく。
議題は、優待者の選定基準について。
まぁ、凄く、荒れそうなテーマだな。ていうか絶対僕ら狙ってるでしょ浅野くん。
運んできたホワイトボードに、神室さんが議題を書いている。書記は神室さんみたいだ。
「完全ランダムじゃないの?教師が裏でくじ引いてるとか、そんな感じで」
軽井沢さんのあっさりとした言葉は、しかし一定の信憑性があった。確かに、人狼とかでも完全ランダムだし、類似したこの試験もその可能性が高い。
でも。
「この学校が、そんな単純な試験をやると思うか?浅野は、なんらかの基準があると思ったから、この議題を上げたんだろう?
それがどのような基準かは、分かっていないようだがな」
波長に乱れは無い。
でも、揺さぶる価値はある。
「その言い方だと、君は分かったのかな?幸村くん」
ここで嘘をついたなら、そこから詰めていける。
「まさか。
………嘘は、ついていない。
でも、わざわざ俺は、なんてつけているのなら。
「────綾小路くんは、何か分かったの?」
嘘がわかる僕が、こうして聞いているということは、僕が二人を探っているのだと軽井沢さんと外村くんは気付いたみたい。
不安を感じている。そんな波長の乱れ方だ。
「
………嘘、じゃない。
でも、隠し事は、ある。
「分からなかったなりに、何らかの手掛かりは、掴んでいるんじゃない?」
さぁ、どう答える。
「それに関しては、素直に認めよう」
「あぁ。報告されたうちのクラスの優待者の共通点を探ってみたが、一切見つけられなかった。
浅野が言うように基準があるのなら、それは優待者個人には無い。
そこまでが、俺と清隆で至った結論。
ただ、その先には一向に進められなかったな」
………嘘は無い。隠し事も、無い。
じゃあ、二人は規則性までは解き明かせていない、みたい。
「その辺でいいだろう。潮田。
───さて、お前たちのクラスはどうだ。赤羽」
浅野くんは今度は矛先をカルマに向けた。
カルマの波長を読み取るのに集中する。
「ご期待に沿えなくて申し訳ないけど、
「……そうね。完全にお手上げだったわ。……その二人と同じように、優待者個人に共通点がないことまでは、分かったけどね」
二人の言葉に嘘は無い。
……でも、何らかの隠し事はある、のか?
浅野くんは、眉を顰めていた。
何か、違和感を感じている顔だ。僕の方に、こっそり視線を向けている。多分、嘘をついているのかどうかを確認したいんだろうな。
嘘はついていないことを示すように、首を横に振った。
「…………しかし、意外だな。お前たちが二人ともお手上げとは」
「いやいや。浅野くんは俺たちを買い被りすぎだよ。綾小路はともかく」
「………まぁ、もうあと一人か二人分かれば、解き明かせた気がするがな」
「───ふぅん。つまり綾小路くんには、ある程度の仮説があるんだね」
そう。ある程度の仮説があるからこそ、それを裏付けるだけの証拠を、求めていた。
綾小路くんの波長は、殆ど嘘がなかったから。必然的に、そうなる。
「聞かせて欲しいな。どんな仮説を立てていたのか」
「……まぁ、これは仮説でしか無いことを、念頭に置いてくれ」
綾小路くんは、立ち上がって、浅野くんに隣に並び立つ。
神室さんにマジックペンを要求して、受け取った。
ホワイトボードに、それぞれのグループ名が書かれていく。
鼠から始まって、猪まで。
「まず、俺はなぜグループ分けが数字でもアルファベットでもなく干支なのか、疑問に思った」
「えっ、あっ、そうじゃん。これ干支じゃん」
多分、軽井沢さんはここで初めてそれに気付いたんだろう。
まぁ正直、割と気付いた人は多いと思う。
でも、……言われてみれば、このグループ分けの名称が、干支である必要性は、無い。
「でもそんなの、丁度十二グループだったから適当に干支にしただけじゃない。あんたの考えすぎだと思うけど」
真鍋さんの言うことも一理ある。
干支であることは、疑わしい情報であっても、あくまで疑わしいだけ。丁度十二グループになったからたまたま当てはめた。
そう言われても納得できる。
「まぁ、その可能性も十分にあるが。
ならば何故、数字にしなかった?適当に決めるなら、番号で振った方が分かりやすくないか?」
そう、かなぁ。
「確かに番号の方が分かりやすいかもしれません。真鍋志保の言うように適当に決めたのなら、と言う前提ですが」
「つまりあんたは何が言いたいのよ」
「簡単な話ですよ神室真澄。グループ分けが適当ならば、一つのグループに優秀な生徒が集まり過ぎている、ということです。
この兎グループには、浅野学秀、赤羽業、綾小路清隆という、中間期末共に同率一位の生徒が三人集まっています。そして、一位でこそありませんが、中間期末どちらでもトップ10に名を連ねている一之瀬帆波と潮田渚。期末で同率一位に名を連ねた幸村輝彦もいます。
これを、ただの偶然というのは出来すぎているでしょう」
森下さんの言う通りだ。
このグループには、成績優秀者が集まり過ぎている。
十二グループもあるんだ。トップ10の成績の生徒たちは、全員バラバラでも、何もおかしくはない。
でも、兎グループと龍グループに、トップ10が集まり過ぎている。
「森下の言う通り、俺たちが同じグループと言うのは、偶然にしては出来過ぎだ。
グループ分けが意図されたものなら、名称も意図されたものの可能性が高い」
「意図されたものって、どの辺りがだよ」
別府くんは、綾小路くんのその可能性に具体性を求めた。
「わざわざ干支を使ったことだ。
数字ではなく干支を使ったと言うことは、数字のままだと何か不味いことがあったんじゃないか?」
そこまで話したところで、浅野くんは気付いたらしい。
「───なるほど、そういうことか」
納得する浅野くんを尻目に、綾小路くんは推理を続ける。
「数字のままだと何が不味いと思う、神室」
「…‥、私?
まぁ、そうね。不味いことがあるとしたら、………グループを決めた順番が分かること、とか?」
神室さんのその発言を聞いて、一之瀬さんも、気付いたみたい。
「───そういうこと、だったんだ」
綾小路くんは、干支に数字を振っていく。
鼠に1、そして、猪に12。
そして、4を振った兎グループに、僕たち十四人の名前をクラス毎に書いていく。
「もう一つ疑問だったのは、何故この試験が、全クラス合同だったのか、ということだ」
………確かに、何でわざわざ、各クラスから数人ずつ集めたりしたんだろう。
「いやそんなの、競争のために決まってるでしょ?」
「まぁ、普通に考えたらそうなんだが。最初の説明の時に、先生が言っていただろう。クラスの垣根を越えて考えろと。その垣根を越えて名簿を並び替えたとき、ある可能性に気付いたんだ」
名簿を、並び替える。
………!つまり、そういうこと、か?
綾小路くんは、五十音順に、僕たちの名前を並び替える。
すると───。
「兎は、四番目。
そしてこのグループの名前を、クラス関係なくまとめて五十音順にした時、四番目は一之瀬だ。
───つまり、干支の順番に対応した生徒が、優待者なんじゃないか、というのが、俺の仮説だ」
……………多分、合っている、と思う。
───でも、だからこそ。
どうして今、それを披露した?
「…………私を吊し上げて、何が目的なのかな、綾小路くん」
「別に吊し上げたつもりはない。俺はただ、仮説を話しただけだ。───だがその反応を見る限り、俺の推理は当たっていたようだな」
もしかして。
確証を得るために、この推理を披露したのか?
「───うん。認めるよ。優待者は私。でも、綾小路くんが披露したこれが正しいなら、君たちのクラスの優待者だって、すぐに指名できる」
………そう。
筋は通ってるし、証拠も揃った。
だから、もし綾小路くんたちが動いているのなら、自分たちの優待者を除く9グループを、即座に終わらせることができる。
でも、昨日の夜は一グループも終わっていなかった。
……一体、何の為に。
「綾小路。お前は何が狙いだ。何をしようとしている」
浅野くんは、険しい顔で綾小路くんを睨んでいた。
これは、もはや脅迫だ。首元にナイフを突きつけられているに等しい。
「───強いていうなら、この状況だ。お前たちが、この試験にどういう姿勢で望んでいたのか。
────おかしい。
真鍋さんと藪さんには、動揺の波長が見えているのに。
カルマと伊吹さんに、それが見えない───!
「───どうだ、啓誠。何か、気付きはあったか?」
「──そうだな。潮田と一之瀬は、やけにAクラスに意識を向けていた。おそらく、同盟を結ぼうとしていたんじゃないか?
だが、浅野が直接的に二人を助けなかった以上、それは破綻したとみていい」
幸村くんにも、動揺はない。
つまり、これは──。まさか………、今日の最初から、ずっと……!
「──……お前たちは、
浅野学秀と、潮田渚は、殆ど同じタイミングで、全てに気付いた。
この一日は、綾小路清隆が用意した、幸村輝彦の為の、練習場……!
勝利はもう、確定しているから……!
「───実地で十分に学べただろう?嘘を付かずに騙す方法と、人の些細な動きから、考えを読み取ることを」
「───まぁ、いきなり難問すぎるとは思ったがな」
浅野も渚も、納得がいっていない。
少なくとも、この二クラスが
「────俺たちが組んだのは、同盟じゃないよ。渚、浅野くん」
立ち上がりながら、カルマは綾小路くんの隣に並んだ。
「──龍園の提案だ。俺たちCクラスは、Dクラスの軍門に降る。椎名さんが見抜いた『優待者の法則』を手土産に、今後、裏切った場合の罰は全て、Cクラスが受けるっていう、そういう契約でね」
そう。同盟を結ぶ利点は、ほぼ全てのクラスに無い、けど。
裏切りのリスクを、一方的に押し付けられるから。
「────やって、くれたな、龍園翔……!僕たちと、現Dクラスを、戦わせるつもりか……!」
浅野学秀は、青筋すら立てながら、握っていたペンをへし折った。
「まぁ、こっちとしても好都合だ。実質的に二クラスで、お前たちと戦える」
「──そして、この戦略はお前たちには取れない。何せ、わざわざ
そう。現状、
「───………勝利を、諦めた訳じゃない。
どんな形であれ、最後には勝つ為……その為に、降参するっていうの」
龍グループでは、全ての種明かしが行われて、茅野は、動揺を抑えられなかった。
「───……狂っている……、龍園翔……!搾取されることを前提にした作戦など……!」
葛城の目は、信じられないものを見る目だった。
どれだけの不利益を被るのか、考えるだけでも恐ろしい。
「まぁな。浅野と葛城は甘いが、坂柳はそうなった時、徹底的に反乱の目を潰すだろうよ。
Bクラスも同様だ。一之瀬がどれだけ甘い対応を取ろうと、雪村は絶対に、徹底的にやってくる。
だが、このクラスに関しては、話が別だ。何せ俺たちは、
「………それ、ここで話すのはダメじゃないかな」
「……別に良いわよ平田くん。どうせそんなことだろうと思っていたもの。契約はもう結ばれたし、私も清隆くんも、後で裏切るつもりで話を持ち掛けていることぐらいは、察していたわ」
それでも。
そこで、試験終了のチャイムがなり。
同時に。Dクラスの八名の生徒と、Cクラスの四名の生徒が、一斉に答えを送信する。
この瞬間。全ての試験は、終了した。
「───この試験で、
Bクラスは、1268ポイント。
それに対してDクラスは、現在906ポイント。
三名の優待者の指名により、Bクラスは1118ポイント。
そして、Cクラスに譲った一名と、Cクラスに指名させた自クラスの三名のペナルティを除いた、五名の優待者を指名することで、1156ポイント。
つまり。
「───
頂点まで、後一歩。
浅野たちの危惧していた通り。
明日明後日の話は初日の夜の舞台裏です。