さて、三日目の今日。
カルマは良い気分で目を覚ました。
何せ今日はお手入れを受けるのは自分だけ。
一日目と二日目のような地獄は無いのだ。
そんな安心は、一瞬でぶち壊された。
主に嘘みたいな量のタスクによって。
生徒会室にて、カルマは死ぬほどこき使われていた。
「おい赤羽、この資料会議に使うから人数分コピーしてこい」
浅野の命令でそれなりの数の資料を用意し。
「赤羽くん。このデータ、グラフにしてまとめておいて頂戴」
鈴音の命令で、各部の予算などを視覚的に分かりやすいように棒グラフにして。
「赤羽、それぞれの大会の実績を纏めておけ」
南雲の命令で、それぞれの部活動の大会での実績を纏めて。
「赤羽くん。会議室の準備を手伝って下さい」
「私も手伝うよ!」
橘、一之瀬と一緒に、生徒総会に向けた会議の準備をしていった。
命令でも無く手伝いを頼む辺りに、人格の差が垣間見える。カルマとしては、こき使ってくる三人と比べて、余りにも癒しであった。
「………ふっ、中々に使える人材を引っ張ってきたようだな。浅野」
パソコンに向かい合って生徒総会用の資料を作成しながら、浅野にそう声をかける学。
外野からの助っ人であり、情報を漏らすことは絶対にないというお墨付きだったから、まぁ、橘の負担を減らす為に入れてみたが、これがどうも、中々に役に立つ。
三人に使いっ走りにされながらも、かなりの難度と量を的確にこなしていく。
まぁ、本人が生徒会に入ることはないだろうが、出来れば今日以降も使っていきたい。
枠はまぁ、会計監査とか良いかもしれない。
「えぇ。素晴らしい奴隷でしょう?今日一日だけですが、学会長も、存分に使い倒して下さい」
「誰が奴隷だ!」
「つっても、報酬も出ないんなら実質奴隷だろ?」
「うっさいっすよ南雲先輩!」
………ただ。南雲と少々親しいのが、後々を考えると良くないかもしれない。
浅野が全力で守るだろうから、一之瀬は生徒会に入れたし、今の鈴音と浅野ならば、南雲に飲まれることはないだろうと判断したから、生徒会に入れた。
見たところ、赤羽と南雲はあくまで取引相手、或いは仲の良い先輩後輩といった関係のようだ。取り込まれることはないだろう。
お互いに、ある程度の利用価値を認めているからこその関係、といったところだな。
「そろそろ時間です。学くん」
「───……そのようだな。よし、資料を纏めて、会議室に向かうぞ。赤羽。
「ついでに全員分のお茶も買ってこい」
「…………後でお茶代は出しておく」
流石に、現生徒会九人と先生一人分の合計十人分は多いので。
写真代でポイントがヤバいカルマとしては、とても有り難かった。堀北学と橘茜へのリスペクトが凄まじい勢いで上昇していく。
堀北鈴音と浅野学秀と南雲雅?会長と橘先輩に比べればカスである。
「私も手伝うよ、赤羽くん!」
一之瀬帆波は天使である。
夏休みであろうと、職員室は忙しい。
授業準備、事務作業、成績、それから各クラス評価並びに、体育祭の準備など。
どの学校も、その辺りは変わらない。
「失礼します!生徒会庶務の一之瀬帆波です!
「失礼、真嶋先生、
現一年Aクラスの真嶋と、現二年Aクラスの
「すまない。少し待たせてしまったか?」
「いえ!こちらこそお話中のところ失礼しました」
星穹は、眼鏡を直しながら一之瀬の傍らに立つ十人分のお茶を抱える赤羽を見やる。
…‥成程。彼が。
「今日は手伝ってくれて感謝する。赤羽くん」
「………いえ、浅野くんとの約束なので」
「十人分は重いだろう。半分待とう」
止める間もなく半分奪われた。
『歴代最高のAクラス』は、担任の人格すらも優れているのか………?
会議室へと向かいながら、星穹は一之瀬に話題を振った。
「一之瀬さん、この夏休みはどうだった?」
「無人島はビックリしましたけど、学びもありましたし楽しかったです!……ただ、最後のパンデミックが、ちょっと」
「……………」
カルマは、気まずげに目を逸らした。
星穹はとても楽しそうに笑った。
「真嶋先生も仰ってたよ。『今年の一年生はレベルが高すぎて、もはやただのアウトドアだった』って」
「………それってつまり、毎年夏休みは、無人島で試験があるってことですか?」
「あぁ。その通りだ赤羽くん。無論、内容は毎年変わるが、舞台は基本的に無人島だ」
その後、一之瀬は少しだけ沈んだ顔になる。
「ただ、船上試験は赤羽くんたちにしてやられました。来学期からはCクラスとして、頑張っていこうと思います!」
明るさは微塵も損なわれない。だからこそ、生徒たちの中心にいるのだろう。
「そうだな。是非頑張ってくれ。一之瀬さんなら彼らが相手でも、きっと大丈夫だろう」
「………先生からしても、今年の元Dクラスは、特別なんですか?」
カルマは、名実共に最高のクラスの教師に、そう問いかけた。
「そうだ、今年の元Dクラスは凄い、と、職員室でも話題になっていたぞ。一年生の一学期でクラスの序列が入れ替わるだけでも珍しいのに、それがDクラス。その上で、二つ抜かしてBクラスにまでなったんだ。これは前代未聞、歴代初の成果だからな」
(………まぁ、絶対Dクラスじゃないだろ。みたいなメンバーが多すぎるし)
綾小路清隆。堀北鈴音。櫛田桔梗。平田洋介。高円寺六助。
この辺りは、本来ならAかBが妥当な生徒だろう。起こしてしまったのだろう事件が相当なものだったと考える。
(………多分俺Dの方が妥当じゃない?)
………まぁ、カルマまでDにいたりしたら。他のクラスに勝ち目が殆どない。戦力の開きが酷すぎる。
素行不良である点、相当に優秀である点、それから、学年全体の戦力バランスを踏まえて、カルマはCクラスに配置されたのだろう。
「クラスの入れ替えって、一年の一学期じゃ殆ど起こらないんですか?」
「そうだな。これまでこの学校で二十数年やってきたが、数えるほどしかない」
「二十数年…………えっ、もしかして星穹先生って、この学校が出来た頃から先生をやっているんですか⁉︎」
「そうだぞ。俺ももう六十近いからな」
確かに顔に皺もあるが。
背筋は伸びてるし、顔も整っているし、肌も綺麗なので。正直なところ。
「………三十歳くらいだと思ってました」
「ははははははは。嬉しいことを言ってくれるな、一之瀬さん」
(…………いや若々しすぎるでしょ)
少し老け顔の二十代でも通じるぞ。
「もう二十数年この学校にいて、一学期でのクラスの入れ替えが連続したのは初めてだ。やはりこの学校の教師は、飽きないな」
全国から選りすぐりの生徒たちが集まってくるからこそ、この学校には想像も付かない生徒が数多くやってくる。
そういった生徒をどのように育て導くかを考えるのも、とても楽しい仕事だ。
ただ、学を筆頭とした、現三年Aクラスを担任できたことは、教員人生一番の幸福かもしれない。
さて、会議室に到着して。
「少し待たせてしまったか、学?」
「いえ。時間通りですよ、ヨウ先生」
………『ヨウ』?『かなめ』ではなく?
首を傾げる赤羽に、橘がコッソリと教えてくれた。
「私たち三年Aクラスは、要先生のこと、ヨウ先生って呼んでるんです。渾名みたいなものですよ」
………なるほど。
「それでは会議を始める、前に、赤羽」
唐突に名前を呼ばれて顔を上げると、カルマはペットボトルのお茶を投げ渡された。
振りかぶったわけでも無いのに、風を切る音が聞こえた。片手で上手くキャッチする。
………少しながらスピードが速すぎるように思うが。
「あ、ありがとうございます」
「気にするな。手伝ってくれている礼だ。それでは、改めて、『生徒総会事前対策会議』を始める。浅野」
「はい。生徒会副会長として、今回の会議の司会進行を務めます。まずは、お手元の資料をご確認下さい」
現生徒会副会長。一年Aクラス『浅野学秀』。
「一枚目は、堀北さんと桐生先輩が作成した、来年度の各部予算案です」
現生徒会会計。一年Dクラス『堀北鈴音』。
現生徒会書記。二年Bクラス『桐生叶十』。
「二枚目は、南雲副会長が作成した、各部の実績になります」
現生徒会副会長。二年Aクラス『南雲雅』。
「それから三枚目。一之瀬さんと橘先輩、
現生徒会庶務。一年Bクラス『一之瀬帆波』。
現生徒会書記兼会長秘書。三年Aクラス『橘茜』。
現生徒会広報。三年Aクラス『
「最後に四枚目。修繕予定の施設と、それにかかる予算案です。作成したのは学会長と神田先輩です」
現生徒会会計監査。三年Aクラス『
現生徒会会長。三年Aクラス『堀北学』。
以上九名が、現高度育成高等学校生徒会である。
「それぞれの予算案、要望について、質問点、疑問点を受付、作成者からの補足説明を求めます。堀北さん、桐生先輩、お願いします」
「はい」
「分かった」
メモ帳とペンを用意する鈴音と桐生。
橘は学の隣で議事録を作成していた。
「───質問よろしいでしょうか」
「
「各部活の予算案は、直近の大会、コンクールの成績も参照する、と書かれていますが、具体的にどのように参照したのですか?」
その質問に、鈴音がすぐさま答えた。桐生は鈴音に任せる方針なのだろう。
「はい。まず、運動部は表彰台、つまりは優勝、準優勝、三位までの成績を残した部活動。文化部はコンクールでの受賞、金賞、銀賞、銅賞の成績を残した部活動には特別ボーナスを設けています。そしてボーナスは、大会の規模によって増額します。
今回の例で言うと、陸上部が全国高等学校陸上競技対校選手権大会、女子百メートルの部で個人優勝。団体リレーで銅メダル。個人にボーナスで十五万ポイント。団体で五万ポイント。サッカー部が春季部活動都大会準優勝。ボーナスとして三万ポイント。バスケ部が同じく都大会優勝。ボーナス五万ポイント。水泳部も同じく優勝。こちらも同じく五万ポイントです。
書道部は春季部活動関東書道コンクール金賞受賞。大会の規模はこちらの方が大きいのでボーナス七万ポイント。美術部は春季関東絵画コンクールで同じく金賞受賞。こちらも規模は大きいのでボーナス七万ポイント。
それ以外の部活にも、定額のボーナスに加えて、それぞれの大会でのベスト4、ベスト8までの実績を踏まえたボーナスを加えています。
それから、これらのボーナスは、それぞれのレギュラー並びに受賞者にもPPとして支給します」
「………成程。ありがとうございます」
一年生で言うと、平田洋介、須藤健、小野寺かや乃、それから神室真澄がボーナス獲得者である。
「他に質問のある方はいらっしゃいますか」
「───質問、いいか?」
「学会長、どうぞ」
「予算案の特記事項枠とはなんだ」
「はい。直接的な大会結果に繋がる訳ではありませんが、大会の中で獲得した賞に応じて付与されるボーナスのことです。
例えば弓道部ですと、ベスト8止まりではありますが、技能優秀賞を獲得しています。この賞は本来、優勝した学校に付与されるものですが、技能的には我が校の方が優れていると判断された為に、我が校に付与されました。
美術部、柔道部、吹奏楽部も同じように、ベスト8だったり奨励賞だったりしますが、賞を獲得したので、それに応じて一律一万ポイントのボーナスとしています」
「……成程な。感謝する」
一年生だと、三宅明人、神田悟、白浜千尋が対象者なる。
(………なんか、今年の部活動やけにレベル高くない?)
報告を聞いているだけでも、相当なレベルだ。特に女子百メートルで個人優勝した生徒についてはすごく興味がある。ちなみにこの生徒も三年Aクラスである。
「それでは、他に質問がある生徒は?」
今回は誰の手も上がらなかった。
「では、続いて南雲副会長にお願いします」
「分かった分かった」
南雲は軽い調子で答えた。
「質問良いかな?」
「どうぞ、
「実績とはいうが、去年できたばかりの部活動もある、そういった部活動も実績無しで一纏めにするのは、些か不適切じゃないかな」
「まぁ、それに関しては同意しますよ。実績無しの中でも、映画部、文芸部、テーブルゲーム部を筆頭とした幾つかの部活動は、去年できたばかりですし。
ただまぁ個人の意見としては、実力主義のこの学校で、こんな遊びを見過ごして良いのか、とは思いますね」
…………おっと、少し空気が悪くなってきたな。
赤羽業はそんなことを思った。
「茶道部が全国高等学校総合文化祭に出場したように、あるいは料理部がコンクールに出場したように、去年できたばかりの部活動も、来年からそういった実績を積み上げていくだろう。
遊びとは、少し違うんじゃ無いかな」
三年Aクラスの生徒が有志となって作り上げた、学校のシステムについて来れなくなってしまった生徒への受け皿としての部活動。
───南雲からしたら、酷く気に入らないだろうな。
浅野と赤羽は、殆ど同じことを考えていた。
「いやこんなの遊びでしょう。
大会にもコンクールにも出場すらできない部活動に、わざわざ学校の予算を出す必要はないんじゃないですか?」
「決めつけは良くないんじゃないか。
彼らはただ遊んでいるだけではないだろう?」
「そこは今は置いておくべきでしょう。今重要なのは、去年出来たばかりの部活を、実績なしでひとまとめにするのはどうなのか、という話では」
脱線しかけた話を、鈴音はそういって修正した。
「堀北会計の言う通りだ。元、南雲、少し落ち着け」
「学の言う通り、少し熱くなっていたようだ。すまないね、雅」
「…………いえ、こちらの方こそ。関係無い話を始めてすいませんでした」
堀北学の言葉に、神田元は即座に、南雲雅は渋々と矛を収めた。
「……ま、生徒総会の際には、実績無しではなく、去年設立につき参考記録無し、というふうに直しておきます」
「ああ。それが良い」
「さて、他に何か質問のある人は」
いない、らしい。
(………あ〜これもしかして、生徒会内部でちょっとバチってる感じ?南雲先輩と神田先輩で。
………確かに、南雲先輩と神田先輩、殆ど話してなかったな。会長とか橘先輩とか金織先輩とは話していたのに)
…………まぁ、南雲が何かしたんだろうなぁ。
赤羽は普段の言動から素直にそう思った。
「それでは、生徒からの要望について、一之瀬さん、頼みます」
「分かりました!」
こっちも桐生先輩と同じく、前に出るのは一年生の一之瀬さんらしい。
「質問のある生徒はお願いします」
「少し良いか」
「桐生先輩、お願いします」
「この化学薬品の種類についての要望だが」
カルマはすぐに察した。
(愛美さんだな)
「……こんなに増やす必要はあるのか?教科書に載っている範囲の薬品があれば十分だし、わざわざ種類を増やす必要はないんじゃないか?」
「はい。ただ、その要望を出してきた生徒さんは、化学分野に関して言えば、既に大学生を上回ると言いますか、ともすれば大学教授とも言えるレベルと言いますか。
化学担当の先生にも話を聞いてみたんですけど、彼女はいずれノーベル賞ものの発見というか、開発をするほどの才能があるから、できる限りの便宜を図ってほしい、と言われまして。
それなら生徒会を通じて、学校である程度負担した方がいいと判断した次第です。
個人かつ未成年では買えない薬品とかもありますし」
………いやまぁ。
相当なレベルなんだろうなとは思っていたが、この学校の化学教師が、国内トップの国立校の教師が、本人も相当な化学者の教師が、いずれノーベル賞取るレベルとかそんな褒め方するのか。
奥田愛美、やばいな。
「………成程。それなら納得だ」
誰も何も言わない。言えない。
ちょっと、想像以上に凄すぎるので。
「……やはりこの学校の生徒は面白いな。後で会いに行ってみるか」
………このレベルの生徒を面白いで片付けるのかこの先生。
赤羽業はちょっと引いた。
「さっきの質問に関連して、私からも良いか」
「神田先輩、どうぞ」
「それほどの生徒なら、化学部を設立して部費として予算を取るのでもいいんじゃないか?」
「はい。私もそれを提案したんですけど、化学の先生が言うにはですね、部活動にして仕舞えば彼女が他の生徒に指導するだけの部活動になる。彼女には研究の時間を可能な限りとって欲しい、部活動という形で動くのは、世界の損失になりかねない、とのことです」
「そ、そうか。私からは以上だ」
………そこまでかぁ。
生徒が生徒に指導するだけの活動になっちゃうのかぁ。
(…………まぁ、着いていけるの竹林ぐらいなんだろうなぁ)
後に血液型関係なしの人工血液の開発でノーベル賞取る二人である。
その後も、生徒の要望についての質疑応答は進んでいった。
量的には、この辺りが一番多いし大変なのかもしれない。それだけ一之瀬さんが期待されているってことかな?
まぁ、わざわざ育成担当の三年生を二人もつけるくらいだしな。
「さて、それでは最後の施設の修繕についての質疑応答に移りたいと思います。何か質問がある人は」
ただ、誰も手を挙げなかった。
星穹先生の手元の資料をちらっとみた感じ、見やすいだけでなく無駄なスペースも一切なく、必要な情報だけを過不足なく完璧に報告している。
何故この施設の修繕が必要なのか。
修繕にかかる費用はどのくらいか。
何故それだけの費用がかかるのか。
修繕工事の期間はどのくらいか。
期間が伸びる可能性はどのくらいか。
などなどなど。
この手の資料に対して挙げたい質問への回答が、ほぼ全て完璧に資料に書いてある。
流石に、ちょっと、引いた。
(………多分これ会社のプレゼンとかで使うような資料じゃ無い?)
少なくとも高校生でこのレベルは、ちょっと………。
「ふぅむ。生徒では無いが、俺からも質問良いか?」
「どうぞ」
「俺の知る限りだと、この手の工事に関連した会社なら、A社よりもB社の方が、期間、費用の両面において優れていると思うんだが。何故敢えてA社を選んだんだ?」
「はい。ヨウ先生の挙げられたB社は、確かに期間も短く、費用も安く済むのですが、耐用年数の側面でA社の方が優れており、今後数十年を見据えた時に、A社の方が費用対効果が優れていると考えた次第です」
「成程。それに関する資料はあるか?」
「はい。四枚目の裏の備考の欄に、それぞれの会社の耐用年数を比較したグラフを載せています」
「……成程このグラフはそれかぁ。見落としていたな。すまない、時間を取らせた」
「いえ、こちらもグラフの意図が分かりづらい書き方をしてしまいましたね。生徒総会までには直します」
「うん。俺からは以上だ。浅野くん、続きを」
「は、はい。他に質問のある生徒は」
いやぁ、まぁ、うん。
(………多分生徒総会でそこまで気にする生徒はいないんじゃ無い?)
何故この教師はこの人がそこまで調べている前提の質問をしてきたんだ。
普通に考えてそこまで調べがついていない可能性もあるだろう。
そしてなんでこの会長はその会社のこともちゃんと知ってたんだ。
どうして同業他社の耐用年数の比較のデータなんて生徒総会で使う資料に載せてるんだ。
赤羽は、この二人がちょっと怖くなった。
(というか生徒会の仕事多すぎない?まぁだからこそ報酬とか特典が多いんだろうけど)
次の生徒会はどうなるんだろう。
(順当に行けば南雲先輩。でも、一年で副会長を任せられている浅野くんも、十分に候補の一人。
………多分、この二人の一騎打ち)
さて、そうなったときは。
(…………どっちにつこっかな〜〜)
赤羽業は、楽しげに笑っていた。
「以上を持ちまして、生徒総会事前対策会議を終了します。学会長」
「あぁ。今回の会議で分かった修正箇所を生徒総会までには直しておくように」
さて、三日間のお仕置きも、これで終了だ。
清々しい気分で、カルマは会議室を後にした。
「今日は手伝ってくれて助かったぞ、赤羽」
「気にしないでください会長」
「赤羽さえ良ければ、生徒会に入るつもりはないか?」
「……兄さん。彼はやめておいた方がいいわ」
「……業腹ですが堀北さんの言った通りです。学先輩。赤羽を生徒会に入れるべきではないです」
どうやら同級生から酷い攻撃を受けているようだ。
「そうか?コイツが生徒会とか面白そうだが」
どうやら南雲先輩は味方らしい。
「まぁ、前向きに検討しておきます」
「……そうか。兎にも角にも、今日はありがとう」
そうして、学は他の三年Aクラスの生徒たちと共にその場を後にした。
「さて赤羽。お前にはまだやって欲しいことがある」
「……えぇ〜〜。やっと終わったと思ったのに」
「文句言うな。付き合え」
逃げようとする赤羽の首根っこを捕まえて、テーブルゲーム部の部室まで引き摺って行った。
満足するまで付き合ってもらおう。
赤羽業が完全に解放されたのは、日が登り始めた頃であった。