殺せんせーの教え子たち   作:宇津木 沙坂

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 まだ伸びる。


三年AクラスVS一年生連合(中編)

 

 6─6。

 

 再び、飛騨先輩のサーブ。

 超高高度のサーブトスからの、クラウチングスタートでダッシュ。エンドラインギリギリで踏み切り、異次元の速度で、スパイクサーブ。

 

「……………っぐ!」

 

 しかし浅野が、完璧に上げて見せた。

 

『再び捉えた浅野くんっ!落下点にいるのは、赤羽くんですっ!』

『彼も器用ね。セットアップも出来るなんて』

 

 俺と高円寺、鈴音は殆ど同時に飛んだ。

 マイナステンポも見切られた。なら、シンクロ攻撃で、少しでも負荷を!

 

 しかし、トスは上がらず、相手コートに落ちた。

 

『今のは何ですか!占藤先輩っ!』

『セッターがトスの振りをして相手コートに落とす、ツーアタックと呼ばれる技術よ』

『なるほど!上手かったですね赤羽くん』

『確かに上手いけれど、ツーアタックは本来、こんな序盤に切るべき手札じゃないわ』

『何故ですか?』

『高い得点率を誇る反面、スパイカーがジャンプしているから、万が一、ツーアタックを読まれた時、簡単にブロックされて点を取られるの』

『────確かに!拾える人いませんもんね!』

『それは赤羽くんも分かっているはず。それでもツーアタックを狙ったってことは、何か理由があるんでしょうけど』

 

 カルマは、深刻そうな目で浅野を見ていた。

 見れば分かる。浅野の腕は、目を背けたくなるほど赤くなって震えていた。………たった二発で、これか。

 

「────下がりたまえ、浅野ボーイ。その腕では、まともなプレイは出来まい」

「…………っっっ。ぐっっ、…………あぁ。認めるしかあるまい。…………サーブを切ってくれて助かった。感謝する。赤羽」

「………別に良いけど。確か俺たちは、交代制限無しだったよね」

「あぁ。だが、浅野に並ぶプレイヤーがいるか?」

 

 そう。

 今この場にいる一年生で、浅野と同等の動きが出来る選手など。

 

「────何だか面白いことしてんじゃねーか」

 

 その声は。

 俺たちが声のする方に向くと、そこにいたのは。

 黒髪ロン毛で、悪どい笑みの、現一年Cクラスの暴君。

 

 龍園翔。

 

「手ェ貸してやるよ」

「いやお前そんなレベルかよ」

「ふっ、まぁな。確かに、俺に浅野の代わりが務まると思っちゃいねぇ。ていうか一年で、そいつの代わりができる奴なんていねぇ」

 

 カルマの冷たい指摘に、しかし龍園は笑みを崩さず答えた。

 

「───だから、シンプルな暴力(フィジカル)で埋める」

 

 龍園が指を鳴らすと、いつの間にか傍に、山田アルベルト(体格最強)がいた。

 

「こいつなら、十分な駒だろ?」

 

 成程。それは良い案だ。

 

 

 6─7。

 

『おおっと!ここで一年生チームメンバー交代!浅野くんに変わって入って来たのは!一年Cクラス!山田アルベルト!』

『凄まじい体躯ね。なるほど。浅野くんの穴を、シンプルなフィジカルで埋めるつもりかしら』

 

 チラッと浅野の様子を見てみると、真澄を筆頭とした一年Aクラス女子に、湿布やら包帯やらの応急処置を受けていた。

 取り敢えずは大丈夫だろう。占藤はホッと息を吐いた。

 

『───ま、流石にはしゃぎすぎね』

『?何の話ですか?』

『個人的な話よ。気にしないで』

 

 それを聞いた飛騨翔子は、背筋の震えが止まらなかった。

 全身を天敵に出会った小動物よろしく震えさせる。

 飛騨翔子に占藤メメの、絶対零度の視線が、突き刺さる。

 

「………や、やり過ぎちゃった?」

「………まぁ、彼はメメのお気に入りですし、お叱りは来るでしょうね」

「………メメのお叱り、かなりキツいのよね」

 

 怒らせたら怖そうな三年生女子ランキング一位。占藤メメ。実際死ぬほど怖い。

 

「───気を引き締めろ。サーブが来るぞ」

 

 堀北学の号令の元、全員が集中した。

 

『さぁ、一年生チーム!サーブを打つのは鈴音さん!』

『高い身体能力の持ち主よ。サーブもまた、強烈なものと見て良いわ』

 

 サーブトス、高め。

 助走距離長め。

 跳躍、高め。

 シンプルで、飾り気の無い、超強力な、スパイクサーブ。

 

「…………やるねっ!」

 

 完璧に拾い上げて見せた神田先輩。

 橘先輩のセットアップから、堀北先輩のアタック。だが。

 

「─── Now()っ!」

「………やるな」

You too(貴方こそ)

 

 カルマの指示で飛んだアルベルトが、完璧に止めて見せた。

 

『おおおっと!途中参加のアルベルトくんっ!完っ璧なブロック‼︎』

『アルベルトくんも見事だけれど、完璧な指示を出した赤羽くんも見事ね』

 

 

 6─8。

 

 再び鈴音の超強力なスパイクサーブ。

 狙いは飛騨先輩。

 敢えて飛騨先輩は、高くレシーブを上げた。

 

『飛騨先輩のレシーブ!凄い高いです!』

『────成程、真向勝負ね』

 

 エンドラインギリギリまで下がった飛騨先輩は、クラウチングスタートの姿勢からダッシュして、コートの中心の辺りで、勢いよく飛び上がった。

 

「────茜っ!」

「──分かった!」

 

 橘先輩のトスは、かなり強めの勢いで。

 飛騨先輩の最高到達点に、ボールを収めた。

 

「───Now(今っ)!」

「────ッ‼︎」

 

 飛騨先輩の、超高高度からの、強烈なバックアタック。

 アルベルトの高さよりも、更に上から。

 

 ───なんて、化物!

 

 ボールは、地面に勢い良く突き刺さる。

 

『うわぁぁぁぁぁ!飛騨先輩凄い!凄いですっ!』

『バックアタックでこの高さ。もう呆れるほかないわね。なんて化物』

 

 7─8。

 

 サーブは藤巻先輩。

 

「あっはははははは。俺はあいつらみたいに凄いサーブは出来んが。まぁ、程々に頑張るわ!」

 

 いや。もう。信じられんわ。

 

『とか言っていますが実際のところはどうなんでしょう占藤先輩』

『藤巻くんは普通に優秀よ。体格も優れているし、ちゃんと動けるもの。普通に強いわ』

 

 程々の高さのサーブトス。

 背筋も生かして、全力の、スパイクサーブ。

 

「────ッ‼︎」

「ま、知ってたけど」

 

 俺はアウトラインスレスレを狙うサーブを、完璧に上げた。

 

『綾小路くん!完璧なレシーブ!』

『お見事ね。トスを上げるのは……赤羽くんのようね』

 

 カルマは、敢えて大きく、高く、オープントスを上げた。

 

「───Hit it Albert(打てっ、アルベルト)!」

「───Roger(了解)!」

 

 超ドシンプルに、体格と、高さで、上から叩き潰す。

 大砲のような轟音で、アルベルトの一撃は、地面を抉る───その寸前で、飛騨先輩に拾われた。

 

『おぉああああぁぁぁ!拾った!拾いました飛騨先輩!』

『全く。あの威力のスパイクを拾うなんて』

 

 ネット際に待機していた橘先輩は、マイナステンポでは無く、大きく高いトスを選択した。

 

「リベンジですよねっ!学くんっ!」

「完璧だっ、橘っ」

 

 エンドラインギリギリまで助走距離を取って、ダッシュからの、全力の踏込みと、大ジャンプ。

 さっきの飛騨先輩に、勝るとも劣らない高さ。

 もはや呆れる他ない。

 

「───Now(今っ)!」

 

 アルベルトのブロックの、更に上から、叩き潰すようなスパイク。

 ボールは、勢いよく地面を抉った。

 

『うっわぁぁぁぁ!堀北会長!やば過ぎ!飛騨先輩とどっちが高いんでしょうか⁉︎』

『学くんは生徒会に入っているから部活をしていないだけで、もし部活動をしていたなら、全国優勝は狙える身体能力よ。その上で、基本的に何でもこなせる万能性。まぁ、どっちもどっち、と言ったところかしら?』

 

 

 観戦していた伊吹は、思わず龍園に噛み付いた。

 

「全っ然駄目じゃない!シンプルフィジカル勝負であの二人に勝てる訳ないじゃない!」

 

 その場の全員が、なんとなく思っていたことを、叫んだ。

 それはそう。

 

「はっ、だから技術に任せてマイナステンポで攻めまくれってか?馬鹿か。あんな神経使う技何度もやってたら、後半ばててまともにプレイできなくなる」

 

 ────そう。

 マイナステンポの消耗は、決して馬鹿にならない。

 これを3セット、あるいは5セットマッチでやってのけるのは、化物でしかない。

 

「だから、消耗を少しでも抑える為に、フィジカルでの勝負が成立するアルベルトを入れて、少しでもゲームを伸ばす必要がある」

 

 もし、浅野がまだ居たなら、マイナステンポでの攻撃を繰り返すのも選択肢の一つだが。

 浅野は一旦ゲームから抜けてしまった。

 いつ帰ってくるかは、分からない。

 ………だが。浅野ならば、強引にでも戻ってくるだろう。

 その時までは。

 

「ゲームを伸ばし続ける為に、アルベルトが必要なんだよ」

 

 

 8─8。

 

 再び、藤巻先輩のサーブ。

 

『さぁ!普通に強力な藤巻先輩のサーブですっ‼︎』

「普通言うなっ!」

 

 ナイスツッコミです。藤巻先輩。

 

「───っ!」

「かーーーっ!一年生すご過ぎて笑っちゃうぜ」

 

 藤巻先輩のスパイクサーブを、今度は鈴音が上げる。

 

『拾ったーー!鈴音さん!見事です!』

『さぁ、セットアップが誰なのか、気になるところね』

 

 落下点にいるのは、桔梗。

 俺に集中している堀北先輩なら、マイナステンポにも着いてくる。

 なら、物理的に、引き剥がす。

 

 前では無く、横に走り出す。

 

 コートの横幅、目一杯───!

 

 大きく横に流れながら、飛ぶ───!

 

 桔梗のトスは、完璧だった。

 堀北先輩は、爪一つ分、間に合わなかった。

 飛び込んできた金織先輩も拾い切れず、ボールは地に落ちる。

 

『───決まったぁぁぁぁ!と言うか今のは何ですか⁉︎』

『ブロードと呼ばれる、縦では無く横に走って、ブロックを引き剥がしながら打つスパイクよ。当然、身体は横に流れながら打つ必要があるわけで、体幹が相当に鍛えられていないとまともに打てないわ。

 何より、あの動きに合わせられるトスが必須よ』

『成程!セッターとスパイカー両方が優れているからこそできる大技ですね!』

『当然体力の消費も激しいし、何度もできる技じゃ無いわ』

 

 8─9。

 

 サーブを打つのは、俺。

 ボールを回して、砂を飛ばす。

 ターゲットは、藤巻先輩だ。

 

『さぁ!マイナステンポでのスパイクとトスを完璧にこなす綾小路くん!一体サーブは如何程か!』

『ちょっと、いえかなり期待しちゃうわね』

 

 ────さて、この人たちなら、正真正銘の本気で行くべきだろう。

 一度、深呼吸。

 

 サーブトス、完璧。

 助走、完璧。

 踏込み、完璧。

 スパイク、完璧。

 

 狙い、完璧。

 

 俺のスパイクサーブは地面を抉り、コートの隅を的確に打ち抜いた。

 

『おおおおおおおお!えっと、確か、ノータッチエース!見事なノータッチエースです!』

『藤巻くんのいる隅を、的確に打ち抜いて来たわね。余りにも完璧な、お手本通りのスパイクサーブ。

 ほんと、圧倒されちゃうわ』

 

 8─10。

 

『さぁ、サーブは再び綾小路くん!ついに10点台に乗りました一年生連合!三年Aクラスとは2点差!このまま押し切れるか!』

『うーーん。自クラスを応援したいけれど、一年生連合にも肩入れしちゃうわね。悩ましいわ』

 

 もう一度、藤巻先輩。

 深呼吸。

 

 サーブトス、完璧。

 助走、完璧。

 踏込み、完璧。

 スパイク、完璧。

 

 狙い、完璧。

 

 俺のスパイクサーブはしかし、いつの間にか立ち位置を変えていた飛騨先輩に拾われた。

 

『うおぇぇえええぇええ!飛騨先輩いつの間に⁉︎』

『綾小路くんがサーブトスした瞬間に入れ替わっていたわ。また藤巻くんを狙ってくることを読んだ学くんの指示ね』

『頭も良いのか堀北会長‼︎知ってたけど‼︎』

 

 ボールの落下点には、橘先輩。

 

 ────マイナステンポ!

 

 全員の脳裏にそれが走り、しかしカルマは、落ち着いて橘先輩を観察していた。

 

(視線は会長。普通に考えたらマイナステンポでの速攻。でも、()()()()()()()()()()()()。当然橘先輩も普通じゃない。この人が視線で狙いがバレるようなミスはしない。必然会長は無し。だとしたら)

 

 金織先輩───と見せかけて神田先輩!

 

「───Now(今っ)!」

「───Roger(了解)!」

 

 二枚ブロックで完璧に、神田先輩をドシャットした。

 

『うぉぉぉぉ、ドシャットぉぉぉ!読み切った!赤羽くん読み切った!』

『素晴らしいわね赤羽くん。学くんの囮に一切引っ掛からなかった。見事な理性と知性よ。はっきり言って脱帽だわ』

 

 8─11。

 

『うぉぉぉぉぉぉ!一年生連合!三年Aクラス相手に三点差!行けっ!行け行け行け〜〜!』

『もう少し公平性を…………聞いてないわね』

 

 今度の狙いは橘先輩。

 

 サーブトス、完璧。

 助走、完璧。

 踏込み、完璧。

 スパイク、完璧。

 

 狙い、完璧。

 

「───たぁっ‼︎」

 

 しかし、橘先輩は完璧に捉えて見せた。

 

『うがぁぁぁぁぁ!ノータッチエース二回目ならずぅ!拾ったのは橘先輩っ!これが愛の女神の力かぁ!』

『えぇ!茜ちゃんは凄いのよ‼︎』

 

 セットアップは、堀北先輩か。

 カルマは瞬時にその視線を探る。

 

『さぁ、堀北会長は誰に出すのでしょうか!』

『ここで読み切りたいところね』

 

(視線の先は神田先輩。でも会長がそんな分かりやすいことするわけない。さっき止められてたし。可能性が高いのは金織先輩だけど、それよりもあり得るのは───)

 

 勢い良く踏み込んで、金織先輩と神田先輩と、飛騨先輩が飛び上がる。

 

(────飛騨先輩っ!)

 

 カルマはブロックには飛ばず、数歩後ろに飛び退いた。

 

「───Now()!」

「───Roger(了解)!」

 

(アルベルトのお陰でルートがわかる!飛騨先輩の好みは真向勝負!アルベルトの上からぶち抜いてくる!必然!アルベルトの裏で構えてれば取れる!)

 

 ───だが、そんなカルマを嘲笑うように。

 

『───打ったのは神田先輩だぁっ!』

 

 アタックしたのは、神田先輩だった。

 

「───はぁっ⁉︎」

 

 鈴音が咄嗟に飛び込んだが、拾い切れなかった。

 カルマは思わず、ネット越しの堀北先輩を睨んだ。

 

「───お前が視線を大きな判断材料としていることは分かっていた。だから、敢えて元に視線を向けた」

「───…………はっ、俺が読むことを読んでたんですか、会長」

「───お前はある意味で、分かりやすいな」

 

 悔しげなカルマの顔を尻目に、堀北先輩はサーブに向かった。

 

 

 9─11。

 

 サーブは再び、堀北先輩。

 狙ってくるとしたら、俺。

 確実に、取る。

 

 そこで堀北先輩は、全員の予想外となる行動を取った。

 

『さぁ、堀北会長のサーブ────これはまさかっ⁉︎』

『───流石に大人気ないわよ。学くん』

 

 十メートルは離れた助走。

 これは、つまり──。

 

『浅野くんを粉砕した飛騨先輩のサーブを、堀北会長も打つ気ですか⁉︎』

『学くんなら出来るでしょうけど、余りに容赦が無さすぎるわ。───……この程度の壁、超えて見せろ、ということかしら?』

 

 …………不味い。

 浅野がああなったんだ。そしてまず間違いなく、単純な腕力は堀北先輩の方が上。

 一発で、腕が死ぬ。

 

 アウトになる可能性に賭けるか。だが、この人がそんなミスを犯すとは。

 

『あぁぁぁぁっと!やっぱり超高高度のサーブトス!』

『絶体絶命、と言ったところかしら』

 

 サーブトスの瞬間、俺の身体は引っ張られた。

 気づいた時には、いつの間にか、俺と鈴音が入れ替わっていた。

 

「鈴───!」

 

 全速力でダッシュした堀北先輩は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()、異次元のスパイクサーブを打ち込んだ。

 

 鈴音は、完璧に拾って見せながらも、勢い良く後ろに吹き飛んだ。

 

「鈴音!」

「前っ‼︎‼︎」

 

 ひっ叩かれるように声を叩きつけられて、すぐさま前を向く。

 落下点に、桔梗がいた。

 

 すぐさま踏込み、スパイクの体勢。

 

 このサーブは、ここで切るっ!

 

 完璧な、マイナステンポのバックアタック。

 堀北先輩なら止められたが、サーブを打ったばかりで、まだブロックには飛べない。

 これなら、決まる。

 

『うぇぇぇぇ嘘ぉ‼︎堀北会長飛び込んで拾ったぁぁぁ!』

『拾われた瞬間から、こうなることを読んでたわね』

 

 ───やられた。

 きっと堀北先輩は、俺と鈴音が入れ替わることまで予想済みで。

 

 拾われたボールを、橘先輩が、オープントスで高く上げる。 

 

『容赦無い!三年Aクラス!打つのは当然!飛騨先輩だぁぁぁ!』

 

 草食獣を狩る狼のように。

 飛騨先輩は、残酷に笑った。

 

「──Now(今っ)‼︎‼︎‼︎」

「────‼︎‼︎‼︎」

 

 ブロックに飛んだ、アルベルトの上から、強烈なバックアタックを叩き込んで。

 アルベルトの裏に飛び込んでいた、桔梗が拾った。

 

「────っ‼︎」

 

 先程のサーブに匹敵する威力のスパイクを、完璧に上げて、桔梗は膝をついた。

 

「今っ‼︎‼︎」

 

 桔梗の声に弾かれるように、俺と高円寺は同時に飛び出した。

 高円寺なら、俺が分かる。

 そして俺なら、高円寺が分かる。

 

「打てっ‼︎‼︎」

「上げたまえっ‼︎‼︎」

 

 俺のトスと、高円寺のスパイクはほぼ同時。

 

『同じセッターと同じスパイカーのマイナステンポなら、簡単に捉えられる』

 

 だがこれは──初見だろう!

 

 高円寺のスパイクは、ブロックもレシーブも置き去りにして、地面を抉った。

 

『うぉぉぉぉぉぉ‼︎‼︎絶体絶命を覆して見せた!一年生連合〜〜!』

『素晴らしいわね。サーブトスの瞬間に立ち位置を入れ替えることで、綾小路くんのマイナステンポでサーブを切ろうとした鈴音さんを、完全に読んでいた学くんが覆そうとして、赤羽くんの見抜いた攻略法を実践して、アルベルトくんの裏に飛び込んだ櫛田さんと、完全初見の綾小路くん高円寺くんのマイナステンポで、さらに覆した。実に見事な連携よ。

 ただ───その代償は、大きい』

 

 鈴音も桔梗も、腕が目も当てられないぐらいに赤くなって震えていた。

 ………俺は、何故、痛々しい二人の姿を見て、こんなにも、苦しい。

 

「鈴音、桔梗───」

「何泣きそうな顔してんのよ。別に死ぬわけじゃないんだし」

「桔梗さんの言う通りよ。これは、私たちの選択の結果。あなたが悲しむことはないわ」

「っ、だが──」

「この試合、勝つには貴方が、絶対に必要よ」

「私たちには、代わりがいるしね」

 

 桔梗の視線の先に、唯一、一年生で参加していないクラスの姿があった。

 

 

「───チームの名前は、一年生連合なんでしょ?だったら、私たちもいないとねっ!」

 

 一年Bクラス。一之瀬帆波。

 

「───お待たせ、皆。ここからは、私たちも戦うよ」

 

 一年Bクラス。雪村あかり。

 

「さぁ、綾小路くん、カルマ。───勝ちに行くよ(殺しに行くよ)

 

 一年Bクラス。潮田渚。

 

 

 役者は揃った。

 本当の戦いは、ここからだ。

 

 

 9─12。

 

『さぁ!一年生連合!鈴音さんと櫛田さんに代わって、潮田くんと雪村さんが入りました!ABCD全クラス揃い踏み!打ち倒せるか!三年Aクラス!』

 

 ────例え、鈴音の家族だとしても。

 鈴音を傷付けた貴方を、許しはしない。

 

「───貴方に勝ちます(殺します)。堀北先輩」

「───勝つ(殺す)のは俺だ。綾小路」





 次回。三年AクラスVS一年生連合(後編)
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