果たして綾小路くんの理性は持つのか!
まず、部屋に三人で帰った後。
桔梗と鈴音と俺で、晩御飯を作った。
夏なので、それにたくさん動いたし、ということで、疲労回復に強いとされる蕎麦を茹でて、美味しく頂いた。
殆ど薬味を使わない派の鈴音に対し、ガンガン味変していく派の桔梗は一瞬だけ対立したが、試しにお互いの食べ方をやってみた結果、普通に美味しかったらしく仲直りした。
そして、それぞれシャワーを浴びて、歯を磨いて、完全に寝る準備が整ったところで。
「今日の試合、よく頑張ったわね清隆くん」
「こんなに疲れてるのに、ソファで寝るのは良くないよね。私たちも疲れたし、三人でベッドで寝ようか」
断らなければならないと、理性が全力で告げていた。
しかし、夏だから、と、露骨に薄着の二人が、咄嗟に逃げようとする俺の両腕に抱きついてきて。耳元で、甘く囁いて来た。
「よく頑張ったわね。清隆くん。これは、貴方へのご褒美でもあるのよ?」
「そうだよ。清隆。貴方は、今日、たくさん頑張りましたので、私たち二人で、癒しの時間をプレゼントします」
やめてくれ。
本当にやめてくれ。
俺の理性に、二人が全力で
挙げ句の果てに、両腕に、二人の胸の感触が走ってくる。
桔梗の、デカくて柔らかくて包み込まれるような感触と、鈴音の、普通ぐらいの大きさだが、ハリがあって気持ちいい弾力を感じる感触が、同時に襲いかかって来て。
俺の理性は、焼き切れる寸前だった。
「…………わ、分かった」
焼き切れる寸前の理性は、ブレーキとしての機能を殆ど果たせず。
俺の意思とは関係なく、勝手にそんな言葉を話してしまった。
照明が消えて、優しい月光が入り込む。エアコンの冷房と、シーツが捲れる音と、俺たち三人の息遣いだけが、部屋中に響く。
ベッドに沈み込むように、俺たち三人は横になった。
殆ど無臭だった俺のベッドに、鈴音の、清潔で爽やかで、されど女性らしい柔らかくて甘い香りと、桔梗の、艶やかで華やかな、甘くて蕩けるような香りが、染み込んでいく。
俺の右腕に抱きついてくる、鈴音の、鍛えられた、されど柔らかい感触と。
左腕に抱きついてくる、桔梗の、丹念に手入れされた、沈み込むように柔らかい感触を、味わってしまって。
俺の理性は、千切れる寸前だった。
そして、二人は一切の容赦なく、俺の理性に、
「今日も、カッコよかったわよ。清隆くん」
「うん。本当に、よく頑張ったね。偉いよ、清隆」
態と、吐息を、耳に吹き掛けながら。
二人は、甘やかし攻撃をして来た。
俺の理性は、俺を悲しませまいと攻撃を堪えた。
なんとか、そう何とか口を開いて、会話で気を紛らわせようとした。
「そ、そんなこと言っても、鈴音と桔梗も、頑張ってたし、皆、頑張ってた、ぞ」
俺の攻撃。
効果は今ひとつのようだ。
「そうね。でも、私たちは、貴方を、貴方にご褒美をあげたいと思ったのよ。だって、貴方は、私たちの特別だもの」
「うん。他のみんなだって、確かに、頑張っていたけど、私たちの特別は、貴方だから」
鈴音と桔梗の『貴方は特別』攻撃。
効果は抜群だ。
俺の理性は俺を悲しませまいと持ち堪えた。
「、そ、そう、か。お、俺にとっても、二人は特別、だぞ」
俺のカウンター攻撃。
効果は抜群だ。
二人は一瞬怯んだ。
この隙に一気に仕掛けようとして。
鈴音は、そっと、俺の胸に指先を添えた。
「嬉しいわ。清隆くん」
たったそれだけなのに、時間が止まったような気がした。
俺と、鈴音だけが、世界にいるようで。鈴音の指先だけが、俺たちを繋げている。
鈴音に吸い込まれそうになる中で、唐突に、掌に柔らかくて温かい感覚が走る。
桔梗は、指を絡めながら、手を握り込んでいた。そこから、世界が広がるような感覚を抱いた。
いつからか、俺は、一人になれなくなった。
それは、多分弱さで。でも、きっと。良い弱さ、何だろう。
「…………ねぇ、清隆。私たちは、そばにいるよ」
鼓動は嘗てないぐらいに走り、呼吸は自然と荒くなる。
理性は、殆ど焼き切れて。それでも。
答えは、まだ出せない。
出しては、いけない。
「別に、答えを出せなくても良いのよ」
「この一晩は、夢だと思っても、良いから」
茶柱の言葉が、甘さで痺れた脳をよぎる。
『────イカロスは、自由を求めただけなのに』
俺は、あの時。
卒業式を終えて、しばらく経った頃。
自由を、求めた。
そして───。
『………こんなことしたら、アンタの人生は、めちゃくちゃにされるぞ。アンタだけじゃない、アンタの息子も、きっと』
『それでも構いません。自由を求める子供に、自分で歩こうとしている子供に手を差し伸べなくて、大人を名乗れますか。…………息子には、悪いことをしましたが』
『………これから、どうするつもりだ』
『そうですなぁ。旦那様は、本当に、残酷なお方ですので。まぁ、指の数本でも詰めれば、ケジメになるでしょう、かなぁ?』
『………アイツは、そんなんじゃ許さないぞ』
『ううむ。そうなると困りますなぁ。それ以外で私に差し出せるものがあるとしたら、この身ぐらいなのですが』
『………息子を、差し出せとか、言ってくるかもしれないぞ』
『それはダメですなぁ。例えこの身がどうなろうとも、息子だけは守らなければ』
『…………アンタは、良い父親なんだな』
『はははははは。貴方にそんなことを言われるとは。執事冥利につきます』
『…………防衛省の、烏間惟臣という男を頼れ。綾小路清隆に言われて来たと言えば、手を尽くしてくれる。アンタも息子も、顔も名前も、変えなければならないだろうが、それでも』
『…………貴方に、この上ない感謝を。清隆様』
『…………それは、俺の台詞だ。松雄』
『───………貴方の人生に、幸があらんことを』
『………さよならだ、松雄。きっと、もう、会うことはないだろう』
───俺は、自由の代償に、ある親子の人生を、めちゃくちゃにした。
俺が望まなければ、それで済んだんだ。
俺が、あの一年を、大切に、心の中に閉まって。
あの男の道具として、生きていれば。
それでも、俺はどうしても、自由が欲しかった。
みんなに、茅野カエデに、潮田渚に、奥田愛美に、赤羽業に。
堀北鈴音と、櫛田桔梗に、会いたかった。
『────新しい学校で、また会いましょう』
『────春は、出会いと、別れの季節なんだから』
別れがあれば、出会いもある。
俺は、松雄と。
あの一年間、一緒に住んでいた、あの人と、別れた。
俺は、俺は───。
太陽に、燃やされない為に。
羽根ではなく、皮で作られた翼で、飛び立った。
俺が、あの家から出る為には。
同じ家にいた、松雄の手を、借りなければならなかった。
その果てに、松雄とその息子は、それまでの人生を捨てて。
顔も名前も家も、何もかもを捨てなければならなかった。
こんなこと、誰にも言えない。言えるわけがない。
だって。きっと。
こんなこと知られたら、嫌われる。
そんな、自分本位な俺に、腹が立つ。
「───鈴音、桔梗、俺は」
言え。言うな。言え。言うな。言え。言え。言え───。
「───三日前。烏間先生の伝手で、松雄さんと、連絡を取ったわ」
鈴音は、話す。
「顔も名前も変えたし、思い出の品も、捨てたけれど。
息子共々、楽しく、生きているって。
そう伝えてくれって」
桔梗も、話す。
「息子さんね。今、高卒認定取る為に、たくさん勉強してるんだって。
そうして、いつか、良い大学に入って、良い会社に入って。
ちゃんと、生きるんだって。
お父さんに、恩返しするんだって」
二人は、もう。
そのことを知っていた。
「…………軽蔑、しただろう」
…………あぁ。苦しい。
二人に、みんなに、嫌われることが、こんなにも。
「…………分かって、いたんだ。
監視も、ずっと、強くなっていたから。松雄の手を。屋敷の、最高責任者、だったから。
分かって、いたのに。
俺は、俺は───」
俺の、我儘の、為に。
「軽蔑なんて、しない」
「だってこれは、私たちも背負わなきゃいけないものだから」
違う。違うんだ。
二人が、背負う必要なんてないのに。
「貴方が、私を、私達を、求めたように」
「私も、私達も、清隆を求めた」
「これは、その結果」
「私たちの望みの為に、失われたものがあった」
「その、罪は」
「その、重さは」
「「私達も、背負うべきものなの」」
暗闇の中で、視界が滲む。
二人はいつの間にか、俺を覗き込んでいた。
鈴音は、俺の目を、そっと拭って、桔梗は、俺の頭を、そっと撫でた。
「理由が増えただけよ。あの人に、
「清隆が、自由に生きる為に。松雄さん達の、人生を取り戻すために」
俺の、
二人の手で、
「好きよ。清隆くん」
鈴音が、口付けする。
「好きだよ。清隆」
桔梗が、口付けする。
頭の中がぐちゃぐちゃだ。
嬉しくて、恥ずかしくて、泣きそうで、悲しくて、愛おしくて。
いつの間にか俺は、二人まとめて、押し倒していた。
月の優しい光が照らす部屋の中。それはまるで、罪を包み込んで、癒してくれるようで、その光に浮かび上がる二人の身体は、女神のような神聖さを醸し出していて。
鈴音の、赤い瞳が、熱を帯びていて。
桔梗の、桃色の瞳が、艶めいていた。
完全に壊れた俺の理性は。
このまま結論を出すのは流石にダメだ。と告げていて。
じゃあどうするんだ、という俺の問いに、完全に完璧に間違った答えを出した。
即ち、一旦
そっと、鈴音の後頭部に手を添えて。
一旦、
深い口付けを交わした。
「………ん、んぅ」
最初のうちは、鈴音も精密かつ大胆な舌技で、俺を受け入れていたが。
「…………んぅ………?………んっ⁉︎」
俺の舌が、完全に失神させるための動きをしているのに気付いて、慌て出した。
「………んぁっ、ちょっ、んぅぅ、だ、めぇ……」
いつもは俺が攻められる側なので、完全に予想外らしい。
俺だって、いつまでも負けっぱなしではないからな。
咄嗟に逃げようとする舌を捕まえて、一旦離れようとする頭を、左手で後頭部を掴んで抑えつけて。
思わず力が入ってしまった俺の首筋に回した鈴音の右腕が、掌が、指先が、丸まって。俺の首筋に、薄い引っ掻き傷をつける。
…………この痛みすらも、愛おしいとすら、思ってしまう。
愛おしさと、使命感に突き動かされて。
鈴音の口内を、徹底的に蹂躙する。
美しく凛々しい燕が、大きく恐ろしい蜘蛛の巣に捕まって、その毒牙を突き立てられていた。
鈴音の足が、シーツを掻き回し、丸まった足の指先が、シーツを掴んで。必死に、何とか反撃しようとするが。反撃しようとする舌技を、真正面から叩き潰して、捻じ伏せて、支配して。
その度に、悲鳴のような嬌声が、俺の口内に吸い込まれて。
それを飲み下しながら、鈴音の舌を、歯茎を、上顎を、徹底的になぞり、弄り、突いて。
鈴音の左腕は、最初の数秒は、俺の胸を叩いていたが。今は、縋り付くように、俺のシャツを掴んでいて。俺はその手を掴んで、指を絡めながら抑えつけた。
鈴音の指が、中途半端に開かれたり閉じたりして、殆ど入っていない力の限り、振り解こうとして。それを咎めるように、より深く舌を入れる。俺の口内に、鈴音の吐息が入り込むのを、味わうように。俺の吐息を、鈴音の体内に注ぎ込むように。
鈴音の瞳は、濡れながら、揺れていた。その瞳に、吸い込まれたくなって、より深く舌を入れながら、近付いていく。
ここまで来ると、鈴音は反撃すらできなくなった。思考がぼやけているのか、迎え入れるように舌を動かし始めて、俺はさらに容赦無く、その舌を捕まえて、イジメ倒した。
凡そ数十秒経った頃。
鈴音は、完全に失神した。
89hitで、俺の勝ち。
唇を離すと、透明な糸が伸びて、切れる。
一息つきながら、唇を拭ったところ。
桔梗は、上手く体重を移動させて、俺をひっくり返して、馬乗りになった。
「ふぅん?そういうことするんだ?しちゃうんだ?じゃあさ、勝負しようよ」
鈴音の反撃は、何とか初動で潰したが、普通に
「………おう。どっちが先に、
それでも、俺はそれに乗った。
「────へぇ。良い度胸だね。キステクランキング同率一位の私に、勝てると思ってるのかな?」
殺意を滲ませて、桔梗は酷薄に笑う。
これで、俺が負けて仕舞えば。
間違いなく、美味しく頂かれるだろう。
絶対に負けられない戦いが、ここにある。
「………俺だって、いつまでも負けっぱなしじゃないぞ」
俺の啖呵を受け止めた桔梗は、頬を赤く染め上げながら、艶めいた笑みを浮かべて、薄いTシャツを、脱いだ。
黒のブラジャーに包まれた、E組最胸の果実を、俺の胸に押し付けながら。
「───いただきまーす」
そう、勝利を宣言した。
桔梗の舌技は、あのビッチ先生をして、レベルが違うと言わしめた程。その上で、意識の波長を読み取ることで、的確かつ効率的に攻め立ててくる。
つまり、普通は、俺に勝ち目は全くない。
そもそも、鈴音の反撃でそれなりにダメージを受けた状態で、桔梗の攻撃を受ければ、まず間違いなく負ける。
「………ん、ぅ、………はぁ、んぅ………」
それは分かっているから、万が一が無いように、反撃の目を徹底的に潰しながら、俺の口内を蹂躙してくる。
「………ん、んぅぅ、…………んっ、………」
既に70hitといったところ。後30hitも喰らえば負ける。
だが、下着姿になったのは、失敗だったな、桔梗。
指先でそっと、羽のように軽く、桔梗の背筋をさする。
「───んぅ⁉︎」
背筋を一瞬痙攣させて、舌技が乱れた隙を逃さず、一気に攻め立てる。
腹筋で強引に起き上がりながら、桔梗の後頭部に左手を添えて、逃走を防止する。
反撃しようとする桔梗だが、その瞬間には、俺の右手が背筋だったり横腹だったりをさすって、一瞬動きが止まってしまう。思わず吐かれた桔梗の吐息は、どことなく甘かった。
だが、ビッチ先生の最高傑作は伊達じゃない。
耐久力も適応力も尋常じゃない。瞬く間にフェザータッチに対応して、反撃してくる。
だから、ここで、手を変える。
フェザータッチで背筋や横腹をなぞっていた指を、桔梗の下腹部に添える。
目を見開いた桔梗は、肩や背中を叩いて、俺の動きを止めようとした。
だが、俺は、止まらなかった。
中指と薬指で、ゆっくりと、下腹部を押し込む。
「────んぅ〜〜〜〜‼︎⁉︎」
悲鳴は俺の口内に吸い込まれた。
桔梗は全身を痙攣させて、それでも何とか反撃しようとする。
俺は身体を反転させて、鈴音の隣に桔梗を押し倒した。
この好機を逃さず、仕留め切る。
艶やかな羽と、猛毒の鱗粉を持つ蝶は、しかし、蜘蛛の毒にしてやられて、瞬く間に糸で覆われ、逃げられなくなる。もがくたびに、より強く毒を打ち込まれ、蝶は体を震わせる。
指で下腹部をノックするように叩いたり、押し込んだり、撫でたり、押し込みながら円を描いたりして、胎内に衝撃を与えながら、容赦なく口内を蹂躙していく。
桔梗の身体は、持ち主の意思に反して、痙攣していた。顔は真っ赤に染まり、唇の端から涎が溢れ落ち、瞳は揺れて、涙は溢れ、全身の力が入ったり抜けたり忙しない。
足の指が丸まって、敷かれたシーツを掴んでいた。俺の背中を叩いていた左手は、震えながらシャツを掴んでいた。右手はシーツを掴んで、必死に何かを逃がそうとしているようだった。
俺はその右手を捕まえて、指を絡めて、摺り寄せたりしながら、リズムよく右手の指先で下腹部を叩いた。仰け反って持ち上がる桔梗の体を、体重をかけて無理矢理押さえ込む。押さえ込みながら、指先で攪拌するように、時計回りに数回、逆時計回りに数回、少しだけ強めに押し込みながら回す。弾け飛びそうになる桔梗の身体を、閉じ込めるように抱きしめた。
桔梗の艶かしい悲鳴を飲み下しながら、一切の容赦無く口内を蹂躙する。同時に、今度は指先で押し込みながら撫でるように動かす。桔梗の痙攣は更に強まり、全身が火照っていく。許しを乞うように、潤んだ瞳を向けてくるが、ここで手を緩めたら絶対にやり返してくるので、それを無視して、今度は数回撫でてから叩くのを繰り返す。撫でる度に吐き出される吐息と、叩く度に響く濡れた悲鳴を纏めて飲み干す。
簡単に失神しないからこそ、桔梗への責苦は長く続いた。そろそろ終わらせるために、指先ではなく、掌全体をそっと下腹部に這わせる。目を見開いた桔梗は殆ど力の入らない身体で、それでも必死に抵抗するが、止められなかった。俺は掌で、下腹部を押し込んだ。
嬌声染みた悲鳴は、俺の口内に完全に飲み込まれて。濡れる瞳には、隠せない快楽の色が見えていた。
そして、勝負開始から数十秒。
桔梗は、完全に失神した。
諸々合わせて、117hitで、俺の勝ち。
何とか、勝ちはしたが。
合計94hitを食らった俺は、試合の疲れも相まって、二人に覆い被さるように倒れ込み。
そのまま、気絶した。
一線は超えなかったので綾小路くんの勝ち!