殺せんせーの教え子たち   作:宇津木 沙坂

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 言い訳をさせてください。
 最近書き始めたFateとワールドトリガーのクロス小説に浮気してしまいました。
 本当にごめんなさい。

 これからは、頑張って二股していきます。

 まぁ、その、どっちも頑張って毎日投稿します。


選挙の時間
一年Cクラスの選択


 十月半ばから、選挙期間が始まった。

 僕たち一年Cクラスは、色々な意見が飛び交ってるんだけど。

 クラスリーダーの片割れで、現生徒会庶務の一之瀬さんは、机に突っ伏して唸っていた。

 

「ほーら帆波ちゃん。疲れた頭には甘いものだよ〜?」

 

 茅野は、超激甘のカフェラテを差し出してくいる。

 

「どんな時でも甘いもの勧めてくるじゃんあかりちゃん。甘いものは好きだけど限度があるよ」

 

 茅野曰く、『疲れた時は甘いもの。悩んだ時も甘いもの。怒ったときも甘いもの。嬉しいときも甘いもの。甘いものはいついかなるときも心を癒してくれる。

 甘いものを崇めよ。讃えよ。祈りを捧げるのです』らしい。

 

「で、何でそんなに悩んでるの?」

「聞いてよあかりちゃん‼︎実はね───」

 

 まずは三日前。

 

『少し良いかな。一之瀬さん』

『全然良いよ‼︎でも珍しいね。浅野くんが生徒会活動の後すぐにテーブルゲーム部行かないなんて』

 

 生徒会活動後、浅野くんと、最近入った卜部先輩は、基本的にすぐテーブルゲーム部まで行って、門限少し前ぐらいまで遊んでから寮に戻るらしい。

 なので、生徒会活動後に、こうして話しかけてくるのは少し珍しい。

 

『生徒会選挙。僕も立候補したのは知ってるだろう?』

『そうだね。今期は、過去最多の立候補じゃ数らしいねぇ。堀北さんと、浅野くんと、卜部先輩と南雲先輩の四人だもんねぇ』

 

 何だかその、凄いことになりそうな生徒会選挙だ。

 

『それで何だが、僕が生徒会長になった時には、一之瀬さんには会長秘書をやって欲しいんだ』

『会長秘書って言うと、橘先輩がやってるあれ?』

『あぁ。一之瀬さんには、僕を手伝って欲しい』

『そっかぁ』

『今すぐじゃなくても良いから、考えておいてくれ』

『うん!分かった‼︎』

 

 次に、二日前。

 

『一之瀬さん。少し良いかしら』

『うわぉ、堀北さんも?』

『………先を越されてしまったようね。もう答えは出したのかしら?』

『うぅん。まだだよ』

『そうなの。なら、話は早いわね。私が生徒会長になったら、一之瀬さんには広報を務めて欲しいのだけれど』

『いやー、でも今の広報金織先輩だよ?私に後釜務まるかなぁ?』

『何の問題も無いわ。一之瀬さんしかいないとすら思うもの』

『そ、そう?にゃ、にゃはは………。照れるなぁ』

『すぐにとは言わないから、考えておいてちょうだい』

『う、うん。分かった』

 

 そして、嫌な予感を感じていた、昨日。

 

『少し良いか、帆波』

『またですかっ‼︎』

『お、おうどうした?』

『いえ何でも無いです。それで、南雲先輩は、生徒会長になったら、私に何になって欲しいんですか⁉︎』

『お、おう。もう浅野か堀北に話を持ち掛けられたのか?』

『両方から持ち掛けられましたっ‼︎』

『…………そっか、じゃぁ、俺からも良いか?』

『はいどうぞ‼︎』

『俺が生徒会長になったら、副会長になって欲しいんだ。出来れば、早めに結論を出して欲しい』

『分かりましたっ‼︎』

 

 そして、今日。

 

「もうさ、私、どうしたら良いのか分かんないよ………」

 

 一之瀬さんは、煤けていた。

 人気者は大変だね。

 

「ねぇあかりちゃん。私、誰につけば良いのかなぁ?」

「えぇ?それ聞く?個人的には堀北さんなんだけど………」

 

 んん?何で嘘ついたんだろう。

 

「堀北さんかぁ。全然アリなんだけど、ちょっと人使い荒いところあるんだよなぁ」

「E組の頃から、そこはあまり変わってないよね」

「うん。無茶振りはしないんだけどね」

 

 割と容赦無く限界ギリギリの仕事を振ってくる。

 堀北さんにはそう言うところがある。

 自分も限界ギリギリのところまでやるから、文句は言えないけど。

 

「じゃあ浅野くんは?」

「悪くないというか、個人的にはアリなんだよ。凄く合理的で無駄がないから」

「浅野理事長の息子らしいね」

「でも、その、ちょっと着いて行くのが大変なときもあるからなぁ」

「そういうところもらしいよね」

 

 単純な能力なら、三人中間違いなくトップ。

 だからこそ、本人的にはジョギングのつもりで、周りが着いていくために全力ダッシュしなくちゃいけない時もある。

 まぁ、割と気遣ってくれるだろうけど。

 

「ふむ。南雲先輩は?」

「うーん。これといった欠点はないし、全然アリなんだけど、その、最近、ちょっと心配になるというか」

「あぁー、体育祭の時のリレーのあれ、凄かったもんねぇ」

「うん。凄い優秀なんだけどね」

 

 そう。能力的には、全然生徒会長でも何の問題も無いんだけど、その、多分精神に深い傷を負っているだろう人に、生徒会長やらせるのはどうなの?みたいな。

 その、心配になってしまう、というか。

 

「…………じゃあ、その、卜部先輩は?声掛けられては無いんだよね?」

 

 そう、そこが意外だ。

 今回の生徒会選挙は、実質一之瀬さん争奪戦だ。

 一年生どころか、他学年でもトップクラスの人気を誇る一之瀬さんなら、味方につけられるだけで、選挙戦で相当に有利になる。

 何せ、一之瀬さんがついた側には、必然的に茅野もつく。

 一年生女子の人気ツートップで、片方は元国民的天才子役。

 まぁ、その、殆ど勝ち確みたいなものだ。

 

 そう言えば、前にランキング見た時に、茅野少し不機嫌だったな。

 

 『胸か?結局胸なのか?』とか言ってた。うーん。まぁ、そこは明確に、一之瀬さんの方が強いもんなぁ。

 普段は余りこういうの気にしないんだけどね。

 

「うーん。余り知らないからなぁ。いや、優秀なのは、何となく分かるんだけど」

 

 でも、そっか。

 茅野は、そうしたいんだ。

 卜部先輩は、そうだもんね。

 

「茅野はさ、卜部先輩を応援したいの?」

「…………やっぱ、渚には隠せないかぁ」

「え?あかりちゃん、卜部先輩の知り合いなの?」

「うん。お姉ちゃん繋がりでね」

 

 雪村あぐり先生。

 殺せんせーの恩人で、たった一月だけだけど、僕らの担任でもあった人。

 そして、卜部先輩の、恩師。

 

「ふーん。どういう繋がりなの?」

 

 一之瀬さんなら、そういうことを聞くとは、思っていたんだけど。

 ちょっと、ここで話を振るのは、良くなかったな。

 

「お姉ちゃんの教え子さんなんだよね。卜部先輩は」

「へぇ。あかりちゃんのお姉さん、先生なんだ」

「うん。そうだったよ」

 

 ……………本当にごめん。二人とも。

 過去形の時点で、一之瀬さんは、色々と察したみたいだ。

 ごめん。僕が話を広げなければ。

 

「…………そ、の。お姉さんが、今どうしてるのか、とかは、あんまり、聞かないほうがいいよね。ごめん」

「あぁ、うん。あんま気にしないで。もう、吹っ切れたから」

「…………そう。なら、良いんだけど………。でも、そっか」

 

 一之瀬さんは、少し、考えて。

 

「────ねぇ、あかりちゃん。卜部先輩と、少し話したいんだけど、繋いでくれる?」

「えっと、別に、いいけど。………その、なんで?」

「あかりちゃんのお姉さんの教え子さんなら、話を聞いてみようかなって。ほら!他三人の公約とかは知ってるけど、卜部先輩のはよく知らないし」

 

 四人は全員、全く異なる公約を掲げている。

 

 例えば南雲先輩は、『全体主義ではなく個人主義』。

 ようは、クラス関係なく、一定の実力の持ち主に、Aクラスチケットを与えたり、本来は優秀な生徒を、上に引き上げる政策。

 これは、個人主義の生徒にウケが良い。

 

 で、浅野くんは、『学生の本分を全うする』。

 つまり、特別試験の頻度を減らした上で、難度を引き下げて、学生の本分たる勉強による、実力勝負をメインにする政策。

 これは、初期Aクラスや初期Bクラスにウケが良い。

 

 そして堀北さんは、『やり直す機会を平等に』。

 赤点を取ったり、様々な要因で退学になる訳だけど、その査定に生徒会を噛ませることで、退学処分の出やすさを防止する政策。

 これは、初期Cクラスや初期Dクラスにウケが良い。

 

 で、確か卜部先輩は、『より秩序だった試験を』。

 無人島試験などの特別試験の監督を、他(・)学(・)年(・)の(・)教(・)師(・)に(・)し(・)て(・)も(・)ら(・)う(・)こ(・)と(・)で(・)、よ(・)り(・)ル(・)ー(・)ル(・)に(・)厳(・)格(・)な(・)試(・)験(・)が(・)行(・)わ(・)れ(・)る(・)よ(・)う(・)に(・)す(・)る(・)政(・)策(・)。

 これは、正々堂々と試験に挑むようなクラス、及び生徒にウケが良い。

 

 つまり、うちのクラスとの相性だけなら、卜部先輩の政策は四人中最高と言っていい。

 

 赤点を取るほど勉強ができない訳じゃなく、学力だけでAクラスに勝てるほどじゃないから、特別試験は出来るだけやって欲しくて、でも、あくまでルールに則った戦い方をするうちのクラスにとって、この政策は、渡りに船なんだけど。

 肝心要の卜部先輩と、一之瀬さんは、知り合って日も浅いから。

 

「分かった。ちょっと、連絡してみるね」

 

 茅野は端末を取り出して、卜部先輩に連絡した。

 

 『卜部先輩』

 『帆波ちゃんが、個人的に話してみたいそうです』

 

 『今日の放課後に、このお店で』

 『代金は、私が持つわ』

 『予定があったら、別日で』

 

 『分かりました』

 

 茅野は、端末から顔を上げた。

 

「今日の放課後空いてる?帆波ちゃん?」

「うん。今日は久しぶりに空いてるよ」

「分かった。お店、送っとくね。代金は卜部先輩持ちだって」

「了解ですっ‼︎」

 

 ──────────あれ?

 これって、もしかして。

 茅野の波長に、嘘の乱れはない。

 だから、多分、気のせい、のはず。

 

 でも、凄く、気になったから。

 僕は放課後、気配を消して、こっそりと、二人の会話を盗み聞きしていた。

 

「今日は時間を取ってくれてありがとう。一之瀬さん」

「いえ、こちらこそ、今日はご馳走様です」

「気にしないで。あなたは後輩だもの」

 

 運ばれてきたのは、アイスティーと、ブラックコーヒー。

 そっと口をつけて、卜部先輩から、切り出した。

 

「────それで、私に何を聞きたいのかしら」

「そうですね。どうして先輩が、ああいう公約を掲げたのか、気になりまして」

「あぁ、あれね。一年前、私のクラスで起きた事件は、知ってるかしら?」

「まぁ、はい。概要は」

 

 そっと、手に持っていたコーヒーカップを、ソーサーに置いて。

 卜部先輩は、続けた。

 

「私が生徒会長になると決めたとき、まずやらなければならないのは、ああいう事件が起きないように、対策を練ることだと考えたの」

 

 嘘はない。いや、隠してることはあるんだけど。

 ていうかそういうのって、学校側がやるものじゃ?

 

「それで、ふと思ったのよね。どうして、自クラスの生徒がバラバラになったのに、Dクラスの先生は、何もしなかったんだろうって。

 だって、それで生徒が遭難したり、森で転んで大怪我を負ったりしたらどうするの?」

「それは、確かに」

「そう考えたとき、あることに気付いたのよね。この学校は、教師が自クラスの動きに、介入しづらいように、いえ、介(・)入(・)す(・)る(・)こ(・)と(・)が(・)デ(・)メ(・)リ(・)ッ(・)ト(・)だ(・)と(・)思(・)わ(・)せ(・)よ(・)う(・)と(・)し(・)て(・)い(・)る(・)ん(・)じ(・)ゃ(・)っ(・)て(・)」

 

 …………そう、かも知れない。

 

「あんな事件が起きた訳だけど、試験の結果は覆ったりはしなかった。

 つまり、この学校では、実力とは結果。

 勝利という結果を得られれば、過程はある程度目をつぶる、という校風よ」

 

 うん。そこは、そうなんだろう。

 例えば、無人島試験のパンデミックで、カルマは敗北を限りなく0にする為にああいうことをしちゃった訳だけど。

 もしあの時の混乱に乗じて、リーダーカードを盗み見たりして、リーダー当てを実行したとして。

 それは、問題なく、加算されていたと思う。

 

「何故、そういう校風が認められているのかを考えたとき、それは、教(・)師(・)と(・)ク(・)ラ(・)ス(・)の(・)評(・)価(・)が(・)、一(・)致(・)し(・)て(・)い(・)る(・)か(・)ら(・)だ(・)と(・)考(・)え(・)た(・)」

 

 卜部先輩の人差し指が、カップの縁を軽く叩いた。

 

「教師は介入出来ないんじゃない。し(・)た(・)く(・)な(・)い(・)の(・)よ(・)。だって、それで自クラスが勝てたら、それが自身の評価に繋がるから」

「…………だから、他学年の先生に、監督させるんですね」

 

 一之瀬さんは、納得していた。

 僕も納得していた。確かに、それは効果的な手だと思う。

 

「えぇ。これなら、教師陣は、試験に常に目を光らせる必要性が生まれるわ。だって、そこで問題が起きたら、それは、監(・)督(・)し(・)て(・)い(・)る(・)自(・)身(・)に(・)マ(・)イ(・)ナ(・)ス(・)の(・)評(・)価(・)が(・)入(・)る(・)も(・)の(・)。問題が起きないように、監視の目は間違いなく強まる。だって、マ(・)イ(・)ナ(・)ス(・)を(・)打(・)ち(・)消(・)す(・)プ(・)ラ(・)ス(・)の(・)評(・)価(・)は(・)、絶(・)対(・)に(・)入(・)ら(・)な(・)い(・)か(・)ら(・)」

 

 他学年の他クラスで問題が起きれば、たとえそのクラスが試験に勝利したとしても、自身のプラス評価には、絶対に繋がらない。

 だって、普段から指導しているクラスじゃないから、プラスの評価に繋げようがない。

 

「…………つまり、他学年の教師なら、中(・)立(・)の(・)審(・)判(・)に(・)な(・)れ(・)る(・)ということですか」

「その通りよ。自身の監督するクラスが、ルールの穴を突こうとしても、止めるしかない。監督するクラスがそんなことをしているなんて知らなかったも許されない。監督者とは、本来そういうものよ。

 だって、それで大きな問題が起きたら、自身の評価に響くもの」

 

 それでも尚、ルールの穴を突こうとするのなら。

 

「…………他学年の教師を、買収するしかない」

「えぇそうね。そこは、教師のモラルに期待するしかないわ。私が生徒会長として出来るのは、ここまでが限界」

「でも、十分だと思います。一時のポイント欲しさに、マイナスの評価を受け入れるような教師、流石にいないでしょう」

 

 …………うん。そんな教師流石にいない。

 いない、はず。

 いない、よね?

 うちの担任は、どう、だろう。

 やらない、はず。

 いやでもなぁ。

 

「さて、私の公約の詳細は、こんなところだけど」

「…………そ、の。えっと」

 

 一之瀬さんは、凄く悩んでいるけど。

 でも、どちらかというと、こっちに着きたいっていう波長の乱れ方だった。

 それはそうだ。さっきも言ったけど、この公約とうちのクラスの相性は絶対に良い。

 抜け道を探るつもりの無い僕たちに取って、こんなにありがたい政策はない。

 真っ向からの総合力勝負に強制的にさせて仕舞えば、ウチのクラスは、間違いなく学年最強クラス。

 団結力、平均値、バランス、その全てが高水準の僕らCクラスにとって、最高の相性だ。

 一之瀬さんも、それは元々分かっていて。

 具体的にどのように進めるのかで、より、惹きつけられた。

 

「別に、強制はしないわ。────でも、あなたと私の最終的な目的は近い」

「そう、ですね」

 

 元々一之瀬さんは、卜部先輩のことをよく知らなかった。

 だけど、今は、親友の姉の教え子っていう、遠いけれど、確かな繋がりを持っている。

 そして、その親友は、茅野は、卜部先輩を応援したいと思っている。

 その卜部先輩の政策は、間違いなく一年Cクラスの利益になる。

 

 こうなれば、当然。

 

「……………その、他に人たちは、広報とか、会長秘書とか、副会長とか、色々なポストを約束してくれたんですけど………。その」

「あぁ、それね。私も、広報を頼もうかなと、そう考えているわ。出(・)来(・)れ(・)ば(・)雪(・)村(・)さ(・)ん(・)と(・)一(・)緒(・)に(・)」

「あ、あかりちゃんも、ですか?」

「えぇ。あなたとしても、同じクラスの友達がいた方が、やり易いんじゃないかと思ってね」

「それは、………………そうですね」

「話は、私の方からつけておくわ」

「………そう、ですね。はい。その、決めました」

 

 私は、卜部先輩に着きます。

 

 

 初戦にして本戦。

 『一之瀬帆波争奪戦』は、卜部藤乃先輩の勝利になった、訳だけど。

 

 僕はどうしても、確かめたいことがあったから。

 卜部先輩を、こっそり尾行して、話をしようとしてたら。

 

「─────それで、私に何かようかしら」

 

 ………………気付かれた。

 仕方ない。

 

「──────初めまして。一年Cクラスの、潮田渚です」

「知ってるわ。去年の三年E組の卒業生でしょ」

「まぁ、はい。………それで、幾つか聞きたいことがあって」

「えぇ、同じ中学の先輩として、ちゃんと答えるわ」

「まずは、その、────」

 

 どこまで、狙い通りだったんですか?

 

「まず大前提として、これは、策とも呼べない博打だと言うことは、理解して頂戴」

 

 私に実績はない。まぁ、一年の一学期くらいしか活動していないから当然ね。

 それから、私に信頼もない。これも、同じ理由で。

 そして、私は、心配されている。まぁ、体育祭で吐いちゃったものね。

 だから、生徒会長選挙で勝利するには、大前提として、一(・)之(・)瀬(・)帆(・)波(・)と(・)雪(・)村(・)あ(・)か(・)り(・)を味方につける必要があった。

 金織先輩の次に、宣伝効果がある訳だし。

 その三(・)年(・)A(・)ク(・)ラ(・)ス(・)は(・)、今(・)回(・)の(・)選(・)挙(・)、絶(・)対(・)中(・)立(・)を(・)宣(・)言(・)し(・)て(・)い(・)る(・)わ(・)け(・)で(・)、必然、この二人の争奪戦が始まる。

 浅野も、南雲くんも、堀北さん、───だとややこしいわね。鈴音さんも、ま(・)ず(・)は(・)一(・)之(・)瀬(・)さ(・)ん(・)を(・)味(・)方(・)に(・)つ(・)け(・)よ(・)う(・)と(・)し(・)た(・)。

 まぁ、雪村さんは生徒会には入っていないもの。

 

 この二人の片方を味方につけられたら、それだけで、相当な有利に立てる。

 個人主義でもなく、学力が低いわけでもなく、学力だけで勝負できるほどではなく、試験を正々堂々戦えることに越したことはないけれど、その為に投票するほどでもない。

 その候補者を応援している人や、その候補者自身を気に入ったから、投票する、という、所詮浮(・)い(・)た(・)票(・)を(・)ど(・)れ(・)だ(・)け(・)取(・)り(・)込(・)め(・)る(・)か(・)の(・)勝(・)負(・)に(・)な(・)る(・)わ(・)け(・)で(・)、その勝負を有利に進めるには、一之瀬さんを味(・)方(・)に(・)つ(・)け(・)る(・)必(・)要(・)が(・)あ(・)る(・)わ(・)け(・)で(・)、────でも、もっと有利に進める方法が、あるわよね?

 

「一(・)之(・)瀬(・)さ(・)ん(・)か(・)ら(・)、味(・)方(・)に(・)な(・)っ(・)て(・)も(・)ら(・)う(・)こ(・)と(・)」

 

 その通り。

 他三人に比べて、大きく出遅れている私が、同じ土俵に上がるには、一(・)之(・)瀬(・)さ(・)ん(・)を(・)味(・)方(・)に(・)す(・)る(・)の(・)で(・)は(・)な(・)く(・)、一(・)之(・)瀬(・)さ(・)ん(・)か(・)ら(・)味(・)方(・)に(・)な(・)っ(・)て(・)も(・)ら(・)う(・)必(・)要(・)が(・)あ(・)っ(・)た(・)。

 

 でも一之瀬さんは、誰か一人に肩入れするような人じゃない。短い間、生徒会活動を共にする中で、よく分かったわ。

 

 だからまず、雪(・)村(・)さ(・)ん(・)か(・)ら(・)落(・)と(・)す(・)こ(・)と(・)に(・)し(・)た(・)。と言っても、私が何かしなくても、お姉さん、雪村あぐり先生との繋がりがあるから、味方になってくれる可能性は高かった。

 

 でも、雪村さんは、積極的に、クラスを動かす人では無い。

 

 クラスリーダーの片割れでこそあるけれど、役割としてはサポート寄り。一之瀬さんを、積極的にこちらに引き入れてくれることは、無いと思っていた。

 

「まぁ、茅野は、そういうところありますから」

(E組でもそんな感じだったな。演技とか言ってたけど、割と素だと思う)

 

 だから、他(・)三(・)人(・)に(・)一(・)之(・)瀬(・)さ(・)ん(・)を(・)勧(・)誘(・)さ(・)せ(・)て(・)、一(・)之(・)瀬(・)さ(・)ん(・)が(・)雪(・)村(・)さ(・)ん(・)に(・)相(・)談(・)す(・)る(・)よ(・)う(・)に(・)誘(・)導(・)し(・)た(・)。

 

「えっと、どうやって?」

 

 浅野にそれとなく聞いたのよ。一之瀬さんの好物。

 

「………あぁ、なるほど」

 

 何か裏があるのでは、と思っても、動かないわけにはいかないわ。

 だって、一之瀬さんにとって、私の掲げる公約は、相性抜群だったもの。

 

「だから、先に勧誘して、候補から自然と除外させるつもりだった」

 

 えぇ。浅野が勧誘すれば、自然と鈴音さんと南雲くんも勧誘する。

 そしてそうなれば、私が勧誘したとしても、無意識のうちに除外される。政策関係なくね。

 まぁ、付き合いが薄いもの。仕方ないわ。

 だから、私は、動かなかった。

 

 でも、雪村さんを介して、話(・)を(・)聞(・)き(・)に(・)来(・)た(・)の(・)な(・)ら(・)、全(・)て(・)は(・)ひ(・)っ(・)く(・)り(・)返(・)る(・)。

 だって、自分から、興味を持って動いて来たわけだもの。当然、政策が自クラスとの相性が良いことにも気付くわ。

 それに気付きさえすれば、彼女の中で、私が自然と第一候補になる。

 

 ここが賭けね。

 でも、分が悪い賭けじゃない。

 

 生徒会の先輩は、全員三(・)年(・)A(・)ク(・)ラ(・)ス(・)。

 絶対中立の彼らに相談することは出来ない。

 必然、一年Cクラスの誰かになる訳で、一之瀬さんが、相談できる相手がいるとしたら、雪村さんか、あなた。

 

「…………ぼ、僕ですか?」

 

 えぇ。だから、この二分の一にさえ勝てれば良いの。

 

 この二分の一さえ勝てれば、一之瀬さんは、間違いなくこちら側につく。

 一(・)之(・)瀬(・)さ(・)ん(・)を(・)味(・)方(・)に(・)す(・)る(・)の(・)で(・)は(・)な(・)く(・)、一(・)之(・)瀬(・)さ(・)ん(・)か(・)ら(・)味(・)方(・)に(・)な(・)っ(・)た(・)と(・)い(・)う(・)事(・)実(・)が(・)生(・)ま(・)れ(・)る(・)。

 

「…………実績も信頼もない。全校生徒から心配されている先輩だとしても、勝負の土俵に上がることができる」

 

 これだけで浮いた票を全て持ってこれるとは、思っていない。持ってこれても全体の二割程度。

 それでもこれで、私の公約は、聞(・)く(・)価(・)値(・)の(・)あ(・)る(・)も(・)の(・)に(・)な(・)っ(・)た(・)。

 

「後は、実力勝負ね。誰が一番、生徒を味方につけられるのか。まぁ、やることは、まだまだ沢山あるけれど」

 

 ────なるほど。

 

「…………運も実力のうちってことですか。茅野は、味方になるように勧誘を受けていた訳じゃなかった」

「えぇ。そこも賭けね。彼女が、あの三人よりも私を選ぶことに賭けて、一之瀬さんが、あなたじゃなくて雪村さんに相談することに賭けた」

 

 賭けには勝った。ようやく私にも、ツキが巡って来たってところかしら。

 

「…………ここまでやって、ようやく互角です。ここから、勝てますか?」

 

 そう。最強クラスの手札を手に入れて、ようやく互角。

 それだけ、一年以上の療養期間のマイナスは、でかい。

 それでも、卜部先輩は、堂々と。

 

「────勝つわ」

 

 勝利を、宣言した。





 個人主義の生徒は南雲先輩派。
 学力重視の生徒は浅野学秀派。
 下剋上狙いの生徒と下剋上したけどまだ学力が追いつききってないよな生徒は堀北鈴音派。
 試験はルールを守って正々堂々とだよねな生徒は卜部藤乃派。

 なのでカルマは三年Bクラス(旧Dクラス)と三年Dクラス(現Dクラス)を味方につけました。この二クラスにとっては堀北鈴音政策が1番得なので。

 で、どの派閥にも属さない、公約とかはあんまり興味ないけど、この候補者好きだからorこの候補者を応援している人が好きだから投票しよっかなの所謂浮いた票を稼ぐ為に、一之瀬さんと茅野という、学年人気ツートップで、他学年にも人気な生徒を味方につけようとしてました。

 そこで卜部藤乃は、味方につけるのではなく味方になってもらおうと考えて、その為に、それとなく浅野に一之瀬さんの好物聞いて、勧誘に動くよう誘導したって感じです。

 その後はまぁ、本文に書いてある通り、一之瀬さんが茅野と渚のうち茅野を選ぶ二分の一と、茅野が四人の中から自分を選ぶ四分の一に全ベットして、見事勝利した感じです。

 まぁ、これまでが運悪すぎなので。
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