Sword Art Online ― 灰月の剣潭 ― 作:アキ1113
それでは、どうぞご覧ください。
光に包まれたサツキが次に目を開けると……
「何で最初の場所に……」
ログインした時に来た転移門広場へと、強制的に転移されていたのだ。さらに、転移されていたのはサツキだけではなく、現在SAOにログインしている全プレイヤーが強制転移させられているようだ。サツキは広場の端の方に移動し、プレイヤーたちが最も集まっている場所から少し離れた方で動きがあるのを待った。
「あっ、上……」
一人のプレイヤーが発したその言葉につられ、全プレイヤーが空に目を向けた。視線の先には『WARNING』という文字が赤く点滅しながら空の一部分に浮かんでいた。それは、一瞬のうちに空全体へと広がっていき……
「な、何だ、あれは……!?」
その隙間から血のように赤い液体が流れ出てきたのだ。その液体は、宙で何かを形作っていき……
「ゲームマスター?」
「何で顔がないんだ?」
「怖いよ……!」
それは赤いローブと白い手袋をしたアバターになったのだが、何故か顔が見えないようになっていた。プレイヤーたちが戸惑いの声を上げていると……
『プレイヤー諸君、ようこそ私の世界へ』
「……?」
『私の名は茅場晶彦……今やこの世界をコントロールできる唯一の人間だ』
『っ!?』
赤いローブのアバターがそう名乗ったのだ。茅場晶彦はSAOとナーヴギアの開発者であり、量子物理学者にして天才ゲームデザイナーと呼ばれている人物だ。サツキは茅場のことを詳しく知っているわけではなかったが、テレビやインターネットの記事などで見たことがあった。
「本物……!?」
「随分と手ぇ込んでんな……」
ゲームマスターの登場に、プレイヤーたちのほとんどが驚愕していた。
『プレイヤー諸君は、既にメインメニューからログアウトボタンが消滅していることに気付いていると思う』
その言葉を聞き、ここにいる大多数のプレイヤーがそれに関する説明がされると思っていた……が、
『しかしこれはゲームの不具合ではない。繰り返す。ゲームの不具合ではなく、SAO本来の仕様である』
その期待は裏切られ、茅場は淡々とログアウトボタンが消滅していることが、バグではないことを告げる。
『諸君は自発的にログアウトすることはできない。また、外部の人間によるナーヴギアの停止、あるいは解除も有り得ない。もしそれが試みられた場合、ナーヴギアの信号素子が発する高出力のマイクロウェーブが……
諸君らの生命活動を停止させる』
「ど、どういうこと!?」
「盛り上げるための演出だよな……?」
茅場の言葉を信じられないプレイヤーが、驚愕や困惑といった反応を見せていた。だが……
『……残念ながら、現時点でプレイヤーの家族、友人らが警告を無視し、ナーヴギアの解除を試みた結果……
213名のプレイヤーが、この世界たる浮遊城アインクラッド及び現実世界から永久に退場している』
『……!?』
『多数の死者が出たことを含め、この状況をあらゆるメディアが報道している』
その言葉と同時に、現実世界で報道されているニュースが映し出される……そのニュースはナーヴギアによって死亡者が出たというもので、プレイヤーの家族であろう人が泣いている様子も映っていた。
『よって、既にナーヴギアが強制的に解除される危険は低くなっているといえよう。諸君は安心して、ゲーム攻略に励んでほしい』
『……』
茅場の言葉に、ほとんどのプレイヤーたちは現実を受け入れきれずに黙り込み、その場に静寂が流れる。
『しかし、十分に留意してもらいたい。今後ゲームにおいて、あらゆる蘇生手段は存在しない。HPが0になった瞬間、諸君のアバターは永久に消滅し、同時に―――
諸君の脳は、ナーヴギアによって破壊される』
『諸君が解放される条件はただ一つ……このゲームをクリアすればよい。現在君たちがいるのは、アインクラッドの最下層―――第一層である。各フロアの迷宮区を攻略し、フロアボスを倒せば次の層に進める。そして、第百層にいる最終ボスを倒せばクリアだ』
「百層、だと……ベータじゃろくに上がれなかったってのに、できるわけねぇだろ!?」
厳しすぎるゲームクリアの条件に、誰かがは茅場に向かって怒鳴り声を上げた。呆然とするプレイヤーたちを余所に……
『……それでは最後に、私からのプレゼントだ』
その言葉の直後、全プレイヤーの手元に鏡が現れる。
「鏡……?」
「何でこんなもの―――」
茅場からのプレゼントに、全員が疑問を覚えていると……
「うわっ!?」
「何だ!?」
サツキを含めた全てのプレイヤーたちが例外なく、次々と光に包まれていったのだ。そして、その光が収まると……
「あれ……!?何で俺の顔が……」
「アバターはどうなったんだ!?」
なんとプレイヤー全員の容姿が初めに作ったアバターではなく、現実の容姿へとなっていたのだ。自身の容姿が現実世界のものになっていることに、驚愕しているプレイヤーたちもいる一方……
「アンタ男だったの!?」
「17って噓かよ!?」
「VRでネカマすんなよ!」
「う、うるせぇよ!」
性別や年齢を変えてプレイしていたのか、そのように言い争っているプレイヤーもいた。
「……」
サツキも例外なく自身で作成したアバターから現実の姿に――――というわけではなく、SAOにログインした時と同じ姿でいた……サツキは最初から現実の姿でログインしており、今の事態で何の異変も起きなかったのだ。
『諸君は今何故?と思っているだろう。何故、SAO及びナーヴギアの開発者の茅場晶彦はこんなことをしたのかと……実際、私の目的は既に達成されている。この世界を創り出し干渉するためにのみ、私はSAOを作った。そして今、全ては達成せしめられた』
「……」
『以上でSAO正式サービスのチュートリアルを終了する。諸君の健闘を祈る……
これはゲームであっても遊びではない』
茅場がそう言い残すと、赤いローブのアバターは消えていき、空も夕焼けへと戻っていった。残されたプレイヤーたちは、数秒間沈黙していたが……
「……いや……いやあああああ!!」
1人のプレイヤーの悲鳴を皮切りに、周りはパニックに陥ってしまった。
「まじかよ……」
「ふざけんなよ!!」
「ここから出せよ!!」
「こんなの……こんなのって……!」
誰もがこの状況を受け入れられない中……
「……」
サツキは茅場の言葉を聞いても落ち着いて――――いや、異常なまでに静かだった………そして、サツキはここにいる意味はないと判断したのか、すぐさまフィールドに向かおうとしたのだが……
「お、おい!」
「……何?」
「お前、どこに行くんだよ?」
周りにいたプレイヤーに声をかけられたのだ。
「……次の街。ここにいても仕方ないから」
サツキはなんてことないようにそう返す。
「な、何でなんだよ……HPが0になったら本当に――――」
「それが?」
『!?』
サツキに声をかけたプレイヤーや周りのプレイヤーたちは、死ぬことに恐怖心を感じている様子だったが、サツキは違うようですぐさまそう言い放ったのだ。
「……」
周りのプレイヤーたちが黙り込んだのを見て、サツキは広場を後にしてフィールドへと進んで行った。そんなサツキを目にして……
「何で……そんなに平気なんだよ……?」
1人のプレイヤーがそう呟いたが、その言葉がサツキに届くことはなかった……。
◇
広場を後にしたサツキは、プレイヤーたちに宣言した通りに次の街に向かっていた……が、今通っている道はモンスターが多く出る道で、サツキはモンスターとの戦闘を続けながらも、足を止めずに進み続けていた。その戦闘はというと……
「しっ!」
『『GyA!?』』
攻撃が来る前に得意の速さで敵を斬るというものだった。さらには抜刀術のように曲刀を扱うという技で、サツキは順調に次の街に進んでいるように見えた……だが、その戦い方は敵の攻撃に被弾するリスクも高く、実際にサツキは被弾もしておりHPも減っていたが、それを気にする素振り一つ見せていなかったのだ。
そうしてサツキは、被弾しながらも無事に最初のはじまりの街の次の街に辿り着いた……その次の日、サツキはレベル上げのためにモンスターの群れと戦っていた。
「っ!」
『!?』
その戦い方は昨日と変わらず、HPが減ってもお構いなしのスタイルで、何かの拍子にHPが0になって死ぬ可能性があった………その時、
「下がれ!!」
「!」
「はぁっ!!」
黒髪で背中に片手剣を背負ったプレイヤーが現れ、サツキの背後から襲いかかろうとしたモンスターを倒したのだった……。
読んでくださり、ありがとうございます!
今回の最後で、SAOのあのキャラと出会いました。果たしてサツキは、そのキャラとどんな関係になっていくのか……。
それでは、次回の話もどうぞよろしくお願いします。