Sword Art Online ― 灰月の剣潭 ― 作:アキ1113
それでは、どうぞご覧ください。
「しっ!」
SAOがデスゲームに変わった翌日、黒髪の片手剣使いのプレイヤー――――キリトは、レベルを上げるためにフィールドで狩りをしていた。すると……
「!なんだ、この音……」
近くから戦闘音らしきものが聞こえてきたため、キリトは音がした方向に駆け出した。そして、音がした場所へと辿り着いたのだが……
「なんだ、あのプレイヤー……」
そこには、曲刀を手にモンスターの群れと戦っている1人のプレイヤー――――サツキがいたのだ……が、そのHPはすでに半分以上減っており、誰がどう見ても無茶な戦い方をしていた。
「まずいな……!」
キリトは危ないと判断したのか、サツキを背後から襲おうとしていたモンスターを……
「下がれ!!」
「!」
「はぁっ!!」
ソードスキルを放ち、一撃で倒したのだ。
「大丈夫か?」
キリトはサツキと背中合わせになりながらも、そう訊いたのだが……
「っ!」
「なっ!?」
なんとサツキはキリトの言葉に何かを返すことなく、そのままモンスターの群れへと突っ込んでいく。
「待て!自分のHP見えてるのか!?」
キリトはサツキをここから離脱させようと追いかけたが……
「死んでないから問題ない」
「っ!?」
予想外の答えが返ってきたのだ。その間にも、サツキはモンスターの攻撃を避けながらも確実に攻撃を当て、数を減らしていっていた。キリトもサツキを援護しようとするが……
「うおっ!?」
「っ……!」
初対面というのもあるのだろうが、サツキが1人で戦う前提の動きをするため、なかなか連携が取れずにいた。それから何度もキリトは援護しようとしたが、サツキは変わらず1人で戦い続けていた。そこでキリトは……
「しっ!」
サツキの前に出ると、目の前の敵の攻撃を弾いたのだ。
「スイッチ!」
「!」
サツキはキリトの言った言葉の意味は分からなかったが、意図を読み取って入れ替わるように曲刀を抜き放ち、モンスターのHPを削り切った。その抜刀術のような動きを見たキリトは……
(速い……!)
サツキの強さに驚いた表情を見せていた。だが、それはキリトだけでなく……
「……」
(今、合わせられた……この人、強いな……)
今まで1人で戦う動きをしていた自分の動きに合わせてきたことに、表情には出ていないものの少なからず驚いていた。それからはキリトが敵の攻撃を弾き、サツキがとどめを刺すという動きで何とか連携を取り……
「これで全部か……」
全てのモンスターを倒し切ることに成功した。そして、剣を背中の鞘に納めたキリトは、曲刀を腰の鞘に納めたサツキの方を向くと……
「これ、使ってくれ」
「……」
「……?」
サツキのHPを回復させるために、回復ポーションを渡そうとした。だが、サツキはそれを見つめるだけで、一向に受け取る気配がない。その様子をキリトが疑問に思っていると……
「……別にいい」
「は……?」
「それに、勿体無いから」
「……!」
サツキはそう言い、ポーションを受け取るのを断ってしまった……その言葉から、キリトはサツキが自分の命を軽く見ていることを察した。すると……
「……でも、死んだら終わりだ」
「……」
キリトは少し強めにそう言うと、サツキにポーションを押し付けた。サツキは少し間黙り込んでいたが……
「……」
断ることは不可能だと思い受け取ると、黙ったまま自身の体力を回復させた。そして、サツキもキリトも体力を回復すると……
「自己紹介がまだだったな……俺はキリトだ」
「……サツキ」
互いに短く自己紹介を済ませた。
「サツキ……なぁ、サツキはこれからどうするんだ?」
「……聞いてどうするの?」
「!……いや、ただの興味だよ」
キリトがそう訊いたのは、サツキを放っておいたら死にそうな雰囲気を出していたのと、その強さを見込んでコンビを組めるかもしれないと思ったからだ。だが……
「……1人で戦い続けるよ」
「……そうか………けど戦うにしても、次からはもう少しマシな戦い方をしてくれよ?」
「……努力はするよ」
「努力って……」
(絶対しないなこいつ……)
キリトはサツキの返答に、そんなことを思いながらため息をついた。
「じゃあ、僕は行くから」
「あ、おい―――――――」
そう言い残したサツキは、レベリングを続けるために別のフィールドに向かっていき、キリトはそのまま街に戻って行くのだった……。
◇
「しっ!」
キリトと出会ってから何日か経ち、サツキはレベリングのために狩りを続けていた。そのおかげで、サツキのレベルは現時点でのSAOでもトップになるまでに上がっていた……が、その自分の身を顧みない戦い方は相変わらずのものだった。
「あ、ありがとう!」
「助かったわ……!」
そんなサツキは現在、狩場の近くにいたモンスターに襲われているプレイヤーたちを助けていた。サツキはレベリングをする際にフィールドで襲われているプレイヤーを見つけたら、すかさず助けに入るようにしていた……その結果、サツキの今の格好の灰色のフードのついたマントから『灰の剣士』という二つ名が早くも広まっている。ちなみにサツキ本人は、ほとんどの時間をフィールドで過ごしているためか、街で広まっているそのことを知らずにいる。
「……」
「あっ……」
サツキは2人プレイヤーの無事を確認すると曲刀を鞘に納め、黙ったままその場を後にした。サツキは誰に対してもこうした振る舞いをしているためか、灰の剣士の噂として主立っているのが『強すぎる』、『出会えれば必ず助けてくれる』という良いものから『静か過ぎて怖い』、『何だか不気味』といった悪いものまで様々だったのだ……本人はただ、自然にしているだけらしいのだが………。
そんなサツキは、再び自身のレベリングに戻ろうとした……その時、
「!」
突然、近くの森の方から破裂音のような音が聞こえてきたのだ。
「あっちは確か――――」
その森にいるのはリトルネペントという植物型のモンスターで、基本的には通常の個体、花がついている個体、そして実がついている個体がいる。その中の実つきの個体の実に攻撃を当ててしまうと、仲間を集める煙を出され、プレイヤーをすぐさま囲んでしまうのだ。
今の音は、誰かが実を攻撃してしまった音だと判断したサツキは、すぐさまその方向へと駆け出した。そうして辿り着くと……
『GyAAAAAAAAA!!』
そこにはこのフィールドのボスモンスターと、襲われそうになっている栗色の髪をした女性プレイヤーがいたのだ。
「っ!」
サツキはそのスピードを活かして駆け出すと……
「ふっ!」
『GyAAAAAAAAA!?』
「えっ……!?」
一瞬でモンスターのところに辿り着くと、弱点を正確に狙ってソードスキルを放ったのだ。その攻撃によってボスモンスターは怯み、一時的にだが地面へと倒れた。
「下がってて」
「!え、えっと……」
栗色の髪のプレイヤーのところに下がったサツキは、一言そういうと再びボスモンスターへと向かっていく。すると……
「君、大丈夫か――――って、あれは……!」
さっきの音を聞いていたキリトが到着し、栗色の髪のプレイヤーの無事を確かめる――――と同時に、ボスモンスターと戦っているサツキを見つけたのだ。
「え、えぇ――――!それよりもミトを!」
「ミト……?もしかして君の友達か?」
「トラップで崖下に落ちちゃって――――」
「分かった!俺が行くから、君は下がっててくれ」
(任せたぞ、サツキ……!)
キリトは栗色の髪のプレイヤーの頼みを聞き入れると、すぐに崖下へと向かった。その間にも、サツキはボスモンスターの攻撃をギリギリのところで避けながらも、確実にダメージを与えることで圧倒しており……
「……終わりだ」
『GyAAAAAAAAA!?』
そのままボスモンスターとすれ違う瞬間にソードスキルを発動させ、あっという間に倒してしまった。ボスモンスターを倒したサツキは、栗色の髪のプレイヤーのところに行くと回復ポーションを取り出し、黙ってそれを渡した。
「あ、ありがとう……」
栗色の髪のプレイヤーは、黙り込んでいるサツキに戸惑いながらもそれを受け取り、自身の体力を回復した。すると……
「アスナ!!」
「ミト!!」
崖下に落ちていた紫色の髪のプレイヤー――――ミトが、サツキが助け出した栗色の髪のプレイヤー――――アスナのところに走って来ている姿が見えたのだ。その姿を見たアスナも、自然とミトへ駆け出していた。
「ごめんアスナ!私、あなたを守るって約束したのに……!」
「ううん!いいんだよ……本当に良かった!ミトが無事で……!」
そうして、無事を確かめるように抱き合う2人の姿をサツキが見ていると……
「久し振りだな、サツキ」
「キリト……」
「戦い方は……見た限り相変わらずだな?」
「……」
キリトがそう話しかけてきたのだった……。
読んでくださり、ありがとうございます!
今回でサツキが、キリト、アスナ、ミトと出会うことになりました。果たしてサツキはここから、どのように関係を築くことになるのか……。
それでは、次回の話もどうぞよろしくお願いします。