魔法少女育成計画ReBirth ―ラ・ピュセル生存記録 2nd Story―   作:神谷萌

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第11話

「うーん……」

「こんなところに来たと思ったら、何を悩んでるぽん? ラズリーヌ」

 電波塔のキャットウォーク。

 ラピス・ラズリーヌII(2)ndは、キャットウォークに胡座をかき、腕を組んで、()()()()()()()()()()()()唸り声を出していた。

 ラズリーヌIIのマジカルフォンから、ネクが姿をあらわす。

「あ、ラピュっちにはまだ秘密……ってわけでもないけど、ちょっとデリケートに扱って欲しいんすよねー」

 ラズリーヌIIは、難しい顔をしたまま言いにくそうに言う。

「デリケートかぽん? ラズリーヌが作りたいのはバリケードかと思ったぽん」

「どういう意味っすか?」

 ネクの言葉に、ラズリーヌIIは一瞬、ジト目をネクに向ける。

「いや、ちょっと資料見ていて気になったんすけど、アカネの事件、今まで完全ランダムだと思ってたんすけどね」

「ぽん?」

「少なくとも1件目と2件目、これラピュっち絡みの場所じゃないっすか?」

「ぽんっ!?」

 ラズリーヌIIの言葉に、ネクが驚いたような声を出す。

「1件目の現場って……」

「そうだぽん! ラ・ピュセルの母校だぽん」

 ラズリーヌIIが言いかけると、先を制してネクが言った。

「で、2件目の現場……」

 ラズリーヌIIが言う。

「確かに近い時間帯に、近い場所にいたぽん」

 バンドマン殺害現場は宇水也(うみなり)東だが、その頃ラ・ピュセル達は、ラズリーヌIIに呼び出されて近くの宇水也町のメガソーラー発電所跡にいた。どちらも宇水成駅からは徒歩20分圏内だ。

「でもそれは狙ってやったって言うとちょーっと厳しいものがあるぽん。殺害現場とメガソーラー跡地とはちょっと離れすぎてるぽん。アカネが徘徊したことで離れたにしては、ちょっと時間がタイトだぽん」

「私も最初は、そう思ってたんすけどね、もうひとつここにラピュっち絡みの場所があるんすよ」

「ぽん? …………」

 ラズリーヌIIの言葉を聞き、一瞬遅れて、ネクが、目を見開いたようになりつつ一瞬膨らんで震え、驚きを表現した。

「そうだぽん! ここにはラ・ピュセルがクラムベリーを呼び出した廃工場があるぽん!! なんで今まで気づかなかったんだぽん!!」

「いやまぁ、私は、推理は得意な方じゃないっすし……」

 ラズリーヌIIは、苦笑して後頭部を掻く仕種をする。

「ラ・ピュセル達も、それどころじゃなかったぽん……」

 ネクも、しょげたように身体を下に傾かせる。

「で、3件目なんっすけど、ちょっと時間がズレてるっすよね?」

「確かに、2件目までは日没後だったケド、3件目は日中だったぽん」

「で、音楽教室の前の県道を()()で見ると……」

「…………名深駅と中宿のほぼ中間地点だぽん。中宿を通る下高波(しもたかなみ)バスセンターとのバスもここ走ってるぽん」

 ラズリーヌIIに言われて、ネクはそのことを認識し、溜息をつくような声でそう言った。

「このあたりは自動車移動がほとんどぽん。アカネが誰とも出くわさないまま徘徊した結果って言われればわからなくもないぽん」

 そこまで、低い声で言ったネクだったが、

「でも、それなら4件目はどう説明するぽん? 中宿からも倶辺ヶ台からもちょっと離れすぎてるぽん」

「それが引っかかってるんすよ」

 そう言って、ラズリーヌIIはまた、「う~ん」と唸ってしまう。

「やっぱり関係がなさすぎるぽん?」

 ネクが言うと、ラズリーヌIIの表情が、一気に引き締まったものになった。

「ミクセリクサー」

「…………」

「私は、ここであの子を観察するように言われてたっす。4件目はラピュっちを直接じゃないんだとしたら、あの子が狙われたんじゃないんすか?」

「推理に向いてないだなんて謙遜もいいところだぽん。鋭いにも程があるぽん」

 ラズリーヌIIの視線に気圧されたかのように、ネクはまた、俯いたように身体を下へ傾けた。

「やっぱり、あの子にはなんかあるっすね?」

「それはまだ言えないぽん」

 ラズリーヌIIに詰められ、ネクは落ち込んだような声で言う。

「…………」

「で、でも、誓って言うぽん。ネクは実際に()()()()()()()()なんて知らなかったぽん! これは本当だぽん! ましてあの子自身はなんにも知らないはずだぽん!!」

 さらにラズリーヌIIが視線で詰めると、ネクは、慌てたようにラズリーヌIIを見上げ、左右に激しく振れながら、言った。

「今のうちは信じるっす」

 ラズリーヌIIはそう言って、表情の険を解いた。

 立ち上がりかけながら、ネクが出現に使っている自分のマジカルフォンを手に取ろうとする。

「ネクは ────」

「ん?」

「ネクは、望んでラ・ピュセルのもとに来たぽん。ウラがあるのは否定しないぽん。でも、ラ・ピュセルならきっと ────」

 

 

 ─☆──☆──☆──☆─

 

『正常運行に戻ったところで、ちょっと早いけどアイテムを売り出すぽん』

 マジカルフォンの選抜試験アプリに、ネクのメッセージとともに販売メニューのタップを促す指アイコンが表示された。

 それをタップすると、名深の4人組の中で、その時入院中だったラ・ピュセルだけが見ていない、パステル調のファンシーなメニュー ──── ではなく

 白基調、青い帯、星。魔法少女でもどっかの白い悪魔のそれを思わせる、爽やかさを感じさせつつもどこかかっこよさ、それにシステマティックさを感じさせるものになっている。

「ここで深夜系は悪意を感じるんだけど」

「そうかぽん?」

 苦笑と言うか、(おど)け混じりの憤りが入った表情と口調で颯太が言うと、ネクは、逆に意外そうな声を返した。

「っていうか、このイメージ誰が思いついたの?」

「最初にラ・ピュセルに任せるって時点ですんなり決まったぽん。1人だけ最後まで反対してたケド、そいつはデスマでそれどころじゃなくなったぽん」

「ちょっと待て」

 問いかけにネクがすんなり答えると、颯太はマスター用マジカルフォンを手に取って、画面を凝視するかのようにする。

「ボクってこんなイメージなわけ?」

「白基調、青の帯、金の星、黒い線。ほら、ラ・ピュセルのイメージだぽん」

 問い質すような言葉に、ネクがそう答えると、颯太は前につんのめるようなリアクションをした。

『アイテムの購入にはマジカルキャンディーを消費することになるぽん』

 画面の中では、ネクが文字で候補生向けに説明している。

『その分マジカルキャンディーは一旦減ることになるぽん。だから購入前には、それを使って効率良く人助けができるか、その効率が消費するマジカルキャンディーを上回るかよく考える必要があるぽん。ただし、アイテムの在庫には限りがあることも考えるぽん』

 ラインアップしている品物は ────

 

四次元ポーチlight

『容量内で大きさを問わずいろんなものが入れられるポーチだぽん。最大容量は140lだぽん』

金竜の鱗

『大怪我してしまいそうな打撃を受けたときにキャンセルするお守りだぽん。ただし発動率が100%じゃないことには気をつけるぽん』

魔法のマジックハンド

『痒いところに手が届くマジックハンドだぽん。高所作業には向いてるかもだぽん』

元気が出るキャンディー(3個入)

『魔法少女のテンションをMAXにしてくれる飴だぽん。ただし、疲労を先送りするものだということと、ケガや病気を治してくれるものじゃないこととには注意だぽん』

武器

『最近の魔法少女の定番アイテムだぽん。魔法少女が扱っても壊れにくいケド、攻撃力はあくまで候補生向けだぽん(ラ・ピュセルの剣やリップルの刀には勝てない)。レイピア、ロングメイス、クロスボウを用意したぽん。武器は人を傷つけるためだけのものじゃないってことをよく考えるぽん』

 

『次の入荷は未定だぽん。今回買わないことにしてもこまめに覗くぽん』

「…………」

 ラインアップを見て、颯太は、また、苦いと言うか、なんとも言えない表情になった。

「…………この『金竜の鱗』って……」

「もちろんラ・ピュセルをイメージしたぽん」

「ボクそこまで固くないよ!」

「ラズリーヌじゃないケド、クラムベリーと2回タイマンやって生き残ってるやつが何言ってるぽん」

「っていうか! 黙ってボクをイメージやアイテムデザインに使わないでくれよ!」

「アニオタのラ・ピュセルなら喜ぶと思ったのに、意外だったぽん」

「キャラグッズを買って喜ぶのと自分のキャラグッズがつくられることとは別だよ!!」

「そうかぽん? ラ・ピュセルは『魔法少女になってるか魔法少女のコスプレして盆暮れの有明にいるかの違い』と言われたぽん」

「誰がそんなこと!」

「スノーホワイト」

 颯太は、崩れ落ちるようなリアクションをした。

「あ、四次元ポーチlightが売れたぽんね」

「誰が買った?」

 ネクの言葉に、颯太が訊き返す。

「ミクセリクサーぽん」

「あー……────」

 

『荷物が全部入りますー! 便利ですー!』

 

「多分こんな感じでよく考えないで買った気がする」

「それでも余裕の2位なんだから大したもんだぽん」

 苦笑しながら言う颯太に、ネクは、同意しつつも感心した声を出した。

「金竜の鱗お買い上げぽん。マイカホワイト」

「わかるような、わからないような」

 そこまでは、たまに颯太が苦い表情をしつつも、どこか和気あいあいとした様子で会話していたネクと颯太だったが、

「! 武器がひとつ売れたぽん」

「え、ホントに?」

 と、ネクの報告に、颯太が、軽く驚いたようにしつつ、意外そうな顔になった。

「今回のルールじゃ、武器はあまりありがたくないと思ったんだけどな……いや、アカネの件があったから、自衛しようって考えたのかな?」

 颯太は、呟くようにそう言って、小首を傾げると、

「買ったのは誰?」

 と、ネクに視線を向け直して、訊き返した。

「それが……ブルーコメット、つまり、ラズリーヌだぽん」

「え」

 ネクがどこか気まずそうに答えると、颯太はまず、目を点にした。

「候補生扱いになってるから購入するのは自由だぽん」

「それでも意外だな。あの人、自分のスタイルに拘ってると思ったから」

 険しいと言うか、眉間に皺を寄せつつ、顎に手を当てて、颯太は呟くように言った。

「2年前のラ・ピュセルみたいにかぽん?」

「ヒトの黒歴史抉るのやめて」

 ネクに言われ、颯太の表情から一気に緊張感がなくなる。

「なんで買ったのかはだいたい想像つくぽん」

「まぁね」

 ネクが声を低くして言うと、颯太は同意の言葉を出した。

「自分1人でもアカネみたいな相手に対処できるようになるってこと考えたんだろ」

「向上心はあるんだぽん。まぁ、候補生用の武器なんかラズリーヌじゃすぐに物足りなくなると思うケド」

 颯太の言葉を受けつつ、ネクは糸目になってそう言った。

「で、なにを買った?」

「レイピアぽん」

「あー……なんか、想像つく」

「美学は美学で大切にしてるぽんね」

 

【挿絵表示】

 

 

 

「へくしっ」

 くしゃみをした時、ラズリーヌIIは電波塔のキャットウォークにいた。

「夜風にあたるのもここまでにしとくっす」

 そう言って、ラズリーヌIIは電波塔から地面に降り立った。

 しばらく歩いていると、

「なして、こい置いでね!?」

 という、怒鳴り声が聞こえてきた。

「キャンプもんだば、あってあだりめぇのやづだべ」

「ですから……落ち着いてください! もっとゆっくりお願いします」

 ラズリーヌIIがその現場に出くわしたのは、ファミリーマート名深大室川店。ちなみに大室川という地名だが、そんな川があるわけではない。

 この裏手に颯太と小雪の通っていた小学校があるが、それはラズリーヌIIの預かり知らぬことだった。

「なんか、困りごとっすか?」

 店内で大声の応酬になってひとまず連れ出されたのだろう、興奮した様子の女性と、店員が言い争っているところへ、ラズリーヌIIが仲裁するように声をかけた。

「それが、なにかお求めの商品がおいてない、と言うことみたいなのですが」

 店員はそう言ってきた。

 ラズリーヌIIは、視線を店員から、黒い服を着た女性に移す。

 すると、女性の方もラズリーヌIIに問いかけてきた。

「おーでー缶のガスボンベ置いでねぇっつうはんで、そご聞いでらんだ」

「ふんふん」

 女性の言葉は、凄まじい訛りがかかっていた。実際の声は、抑揚も標準語から大きく外れていて、文字で読む以上に、標準語話者には聞き取り困難だった。このあたりの訛り方ともまた違う。

 ラズリーヌIIは、まるで聞き取れているかのように、うんうんと頷く。

「コンビニだべ? 何でも揃ってであだりめぇでねぇのが」

「うーん……」

 ラズリーヌIIは、難しい顔をする。

「解り、ますか?」

 店員が、縋るように訊いてくる。

「完全にではないっすけど……キャンピング用のガスボンベ探してるみたいっす」

「んだ」

「ただ……OD缶のガスボンベはコンビニにはちょっと置いてないっすよ」

 ラズリーヌIIはそう言いつつ、苦笑しながら肩を竦めた。

「OD缶、ですか」

「ちょっとズングリしてるやつっす。普通のカセットコンロ用とかのはCB缶」

 ラズリーヌIIが説明するが、店員はいまいち解っていないようだった。

「そいぁ困るべな!」

 女性は、切羽詰まったように声を出す。

「今日の晩げのまま支度、でぎねぇでねが!」

「そうは言ってもっすね……」

 ラズリーヌIIは、周囲を見渡すようにキョロキョロとしてから、

「確か、南のJRの駅のちょっと近くに、デカくて黒いホームセンターがあったっすよね?」

「あ、確かにあそこなら置いてあるかと」

「まんず、まごどが!?」

 ラズリーヌIIと店員の言葉に、女性は身を乗り出すかのようにして言う。

「あ、でも、8時で閉まっちゃいますよ」

 店員が言う。時刻はすでに19時を過ぎている。

「そごさ行ぐにゃ、どっちさ行げばいいんだ?」

 女性が訊ねてくる。

「ここからだと、こっちの方向だった……はずっすよね?」

 ラズリーヌIIは、指をさして言いつつ、店員に確認した。

「ええ、方角は合ってますが……」

 店員がそう答えると、

「ありがどな。めんどかげだ。すまね」

 女性は、ラズリーヌIIに感謝、店員に謝罪の言葉をかけて、

「んだば、失礼すっぺな」

 と、そう言って、ホームセンターのある方角へ歩いて向かい始めた。

「クルマでもないのか……間に合うかな」

 店員が言う。

「…………」

 

 

 ─☆──☆──☆──☆─

 

 差出人: 漂白者<[email protected]>

 宛先: 魔法少女な子<[email protected]>

 件名: ゲームの開始だ

 本文:

  ゲームをしましょう、お嬢さんたち。

  楽しい楽しいゲームを……

 





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