日本のM県S市は所謂ベッドタウンだ。観光地としてもちょっとした有名なこの町では奇妙な事に全国平均の5倍以上の行方不明者数を誇っていた。

そんな町に務める一人の何の変哲もない男がいた。


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ジョジョを読んでいたら思いついた短編です。


吉良吉影…転勤?!

 

 

「赴任…ですか?」

 

ここはM県S市杜王町のカメユーチェーンだ。そんな何処にでもある会社に、一人の男がいた。金髪の男は上司から辞令を貰っていた。

 

「そうだよ。吉良さん。君には、少しばかり東京の本社の方に赴任してもらいたい。な〜に、1年あるかないかだ」

「はぁ…しかし、私がそのような大役が務まるとは思えませんが…」

「いやいや、もう少し自分の評価を改めるべきだよ。君は充分にやってくれている。大丈夫さ」

 

一見すれば、上司に認められ、さらなる出世が見込めるチャンスだと普通の者は思うだろう。だが、この男…吉良吉影は違った!

 

(冗談じゃぁないぞ。私はこの杜王町が好きなんだ。それなのに、空気が薄汚い東京に行くなんて…断じて認められん)

 

「部長。そのお話は嬉しいですが…」

「大丈夫。もう支社の上層部が決めちゃったからね。本社の方も歓迎されてたから、君なら上手くやれるよ」

 

(何…だと?!こう言うのは普通、当事者に話を通すっていうのが筋なんじゃぁないか?!)

 

その後、吉良吉影は必死になって赴任を取り下げてもらうべく説得した。しかし、その願いは叶わず、吉良吉影の赴任が決まった。

 

 

 

 

ー吉良邸ー

 

「親父、話がある」

「なんだ?吉影。改まって?」

 

吉良吉影は自分の父親である吉良吉廣(きらよしひろ)に話し掛けた。彼は吉良吉影が21歳の時に癌で病死している。しかし、彼…いや、吉良親子には秘密があった。それは、世間一般では『超能力』…所謂『スタンド』と呼ばれるものだ。だが、彼らは『超能力』が『スタンド』と呼ばれることは知らず、単に特殊能力などと呼んでいる。吉良吉廣(きらよしひろ)はその『スタンド』によって幽霊として吉良吉影を見守っていた。

 

「今日、会社から赴任を言い渡されてね…近い内に東京に行かなくちゃぁならないんだ」

「いいのか?吉影。お前はこの杜王町が好きだった筈…」

「もちろん取り下げてもらうように言ったさ。だが、覆せなかった。暫くの間この屋敷を留守にしなくてはならない。そこでだ。留守を頼みたいんだ」

「分かった。この家に侵入する者は誰であろうと殺す!」

「頼んだよ。親父」

 

そうして、吉良吉影が荷造りを始めた。赴任先に行くまで後数日あるが、早めにやっておくのが良いだろうと言うのが彼の判断だった。

 

翌日、彼は日課の爪切りをしていた。爪の伸びは短い。彼は数日後に東京に行かなくてはならない事を憂鬱にしていたが、会社では至って普通の勤務態度であった。

 

そして赴任の前日、彼は新幹線で東京へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

杜王町から数時間、新幹線から普通線に乗り換えて吉良吉影は荷物を持って東京の米花町と呼ばれる地域に来ていた。彼は駅のホームで休息を取りながら先程の乗客の態度を思案していた。

 

「何なのだあれは?『ここで降りるんじゃぁない』だとか、『正気か?』とか言ってくる奴もいたな…この町は何かあるのか?」

 

彼は知らない。ここ米花町が殺人が横行する…と言うか、殺人動機の沸点が低い連中が住む町だと言うことを。その点では行方不明者数が全国平均の5倍の杜王町より酷いのかも知れない。

 

そんな事を知らない吉良吉影は早速バスを使って赴任先となる本社に出向き、顔合わせを終えると、既に昼過ぎになっていた。彼はその後、会社から与えられた社宅に来ていた。

 

「まったく。この吉良吉影がこんな狭っ苦しい部屋に1年近くいる事になるとは…」

 

彼は不満を垂れる。ちょっとした豪邸に住む彼からすればそう思うのも無理はない。

 

「そう言えば、彼女はコッチに来る前に処分したんだっけ。今朝見た時に爪が少し伸びていたな…新しい彼女を作らないと…」

 

彼は荷物をあらかた整理し終えると、服を整え、近くの喫茶店で夕食をとることにした。

 

彼が向かったのは、米花町にあるちょっとした有名店である喫茶ポアロだ。本来なら高級寿司でも良かったのだが、彼女作りの時間を確保して、夜八時までには帰宅したい彼はすぐに食べられる料理を求めていた。

 

彼は喫茶ポアロに入店すると一番奥のカウンター席に座った。

 

「いらっしゃいませ」

 

吉良吉影に話しかけてきたのは、この店に勤務する従業員『榎本梓』だ。

 

「すみません。これを1つ」

「分かりました。少々お待ちください」

 

そう言って、従業員は注文を吉良吉影の目の前にいる金髪美男子に注文票を渡すと料理を作り始めた。吉良吉影の後ろのテーブル席では色黒の関西弁を喋る男と、眼鏡をかけた聡明そうな男の子がいた。

 

吉良吉影は彼らの視線が、何かコチラを探っているような…嫌な物を感じ取った。また、彼から一番遠い…つまり窓側の席に怪しげな男が座っていた。

 

彼が料理を待っていると、団体客が入店した。団体客…と言っても三人程だったが。

 

彼らは予約席を取っていたらしく、その席に座った。そのうちの一人がお腹を壊していると告げ、トイレにこもってしまった。吉良吉影は他人の話に聞き耳を立てるつもりはないが、体調管理がなってないと思った。

 

その数分後、団体客の最後の一人が来店した。最後の一人は席に座るとパソコンを立ち上げ、少年2人と吉良吉影に迷惑になることを告げてビデオを流し始めた。吉良吉影はそんな事はどうでもいいと、運ばれた料理を丁寧な所作で口にしていた。

 

最後の来店客がパソコンのプラグを差し込むと、停電が起きてしまった。吉良吉影は内心この店の電気事情を馬鹿にしつつ、食事を再開しようとした時だった。

 

突如として叫び声が響き、ブレーカーを上げると男が一人、血を流して倒れていた。その傍らには血の付いた刺身包丁が捨てられていた。

 

この光景を見て、吉良吉影は素直に高級寿司に行くべきだったと後悔した。

 

 

 

 

 

 

 

その後、斬りつけられた男は緊急搬送され、警視庁から目暮警部、高井刑事と名乗る刑事がやって来た。吉良吉影としては、彼らより血を見ても平然としていた子供2人組は良くないと彼の勘が告げていた。

 

「では、皆さん。一人ずつ名前とご職業をお願いします」

 

目暮警部の言葉で店に来ていた来客が一人ずつ自分のプロフィールを述べる。

 

「では、最後にあなたは?」

「警察に協力するため、1市民として答えよう。私の名は吉良吉影。年齢33歳。M県S市杜王町カメユーチェーン店に勤務し、今日赴任してきた。結婚はしていない。煙草は吸わない。酒はたしなむ程度…」

 

以下、自分のナイトルーティンを語る吉良に一同は変な視線を向けた。その後、持ち物検査が行われ、吉良吉影は安堵した。彼女を持っていたら処分しなければならないと考えていたからだ。

 

そう、この男。ただの男ではない。前述したように彼は『スタンド』を持っている。彼は『キラークイーン』と呼んでいる。能力は触れたものを何でも爆弾に変える能力。そして、彼は簡単に言うと女性の手フェチであり殺人衝動を併せ持つ危険人物でもあるのだ。彼が最初に殺人を犯したのは18歳の時だ。その後、スタンド『キラークイーン』を発現し15年もの間証拠を爆破隠蔽し暮らしている。

 

その手を自分の懐に入れて持ち運ぶ異常者であるからだ。

 

その後、外部の犯行であると主張するものがいたが、和田進一と名乗る医療関係者によってそれは否定された。吉良吉影は自分の不幸を呪いながらも早く解放されることを願った。それに加えて、彼の来ていた高級ブランドのスーツに血が付き、クリーニング不可避になってしまった。吉良吉影は犯人を殺す!と内心思ったが、警察のいる手前そんな事は出来なかった。

 

その後、服部平次と名乗る西の高校生探偵と呼ばれる男と妙に頭が切れる江戸川コナンと名乗る二人によって事件は解決した。吉良吉影は警察からの事情聴取をさっさと終わらせて8時ギリギリに帰宅するのだった。

 

 

 

 

 

 

「なあ、工藤。あの吉良吉影っちゅう男、どう思う?」

 

服部平次は江戸川コナンに深刻そうな雰囲気で話し掛けた。江戸川コナンは服部平次が工藤と告げた事に何の疑問も抱かない。そう、彼は東の高校生探偵と呼ばれた工藤新一だからだ。彼は怪しげな黒の組織と呼ばれる組織によって毒薬を飲まされ、身体が縮んでしまったのだ。

 

「ああ。一見すると金を持ってるエリート風のサラリーマン。だけど、血を流して倒れる人を見て何一つうめき声も上げなかった怪しいやつだ」

「せやなぁ…ここ米花町ならそんな奴いてもおかしゅうないが、外部から来たもんならそれなりに驚いてもええはずなのになぁ」

「ああ。吉良吉影と和田進一って奴には盗聴器を仕掛けといた。和田進一と吉良吉影、両方の盗聴器が壊れてやがる」

 

服部平次と江戸川コナン…いや、工藤新一は得体のしれない二人の人物に興味が湧いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

安室透は考える。あの吉良吉影と名乗る人物は何なのだと。彼は探偵を生業とし、現在は喫茶ポアロで働きつつ、世界に名を馳せる名探偵、毛利小五郎…世間では眠りの小五郎に弟子入りをしている。そんな彼は他の顔も持っている。1つは警察庁公安を束ねるゼロと呼ばれる組織に所属する警察官。そして、黒の組織と呼ばれる組織に公安警察としてバーボンと言うコードネームで潜入捜査をする一面がある。そして、安室透という名も偽名である。本名を降谷零と言う。

 

そんな彼は吉良吉影に強い興味と違和感を抱いた。彼の性格や態度も気になるが、何より気になるのは警察を目の前にしての態度だ。

 

普通、自分が疑われたら動揺する。それが普通なのだ。しかも、彼はスーツの背中に血が飛び散り、最も疑われやすい。だが、彼は全くと言っていいほど動揺していなかった。これはつまり、血に慣れている、絶対に自分は安全だと分かっているかの二択だ。

 

前者ならば実は殺人をしたことがあって血を見るのが得意なのか、単に血を見ても何とも思わない性格なのか、それとも、自分以外に興味がないのか。疑問は尽きない。後者だとしても、その自信の表れは何処から来ているのか、それが気になった。

 

安室透…いや降谷零は行動を開始する。

 

 

 

 

 

 

 

 

吉良吉影は寝る前のストレッチをしながら考える。自分を疑ってかかってきた警察を馬鹿にしつつも、脅威となると考えていないからだ。だが、この東京…それも米花町には杜王町とは違うナニカがある。

 

彼はそう思った。吉良吉影は何事もない、自由で平穏な暮らしを実現させる為に、彼は今日も生活を開始するのだった。

 

 

 

 




お気に入り登録、高評価宜しくお願いします!書くのメッチャ大変でした。各キャラの口調とか合ってたら幸いです。

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