Fate/hollow adaptation――異戒の華は冬木に咲く​   作:りー037

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【第十一章:剥がれ落ちる偽装と未確定の異界、斬刑の白光、唯一の輝ける者へと】

【記録:■■■■年■月■日 ■■時■■分 / 場所:■■■■■■・未確定領域】

 

 

 絶望という概念が、もしも物理的な質量を持ってこの世界に顕現したのならば、それは間違いなく現在のこの空間そのものを指すだろう。

 

 全てを焼き尽くす対軍宝具の直撃を受け、身体の半分と霊核を完全に消し飛ばされながらも、瞬時にして万全の状態へと回帰した白き巨人――八握剣異戒神将・魔虚羅。

 

 

 その絶対的な絶望が支配するクレーターの底で、英霊たるクー・フーリンは、自身の霊基が崩壊しかけている満身創痍の肉体を引き摺りながら、ただ静かに、声のした上空へと視線を向けていた。

 

 

「――もう、終わりにしましょう」

 

 

 

 崩れ落ち、鉄筋が剥き出しになった残骸の屋上の縁。

 

 冬木の夜空に浮かぶ、ひどく冷たく青白い月明かりを背に受けて、一人の少女が立っていた。

 

 

 間桐桜。

 

 その少女から放たれる空気は、数時間前に路地裏で言葉を交わした時のものとは、決定的に、そして根源的に異なっていた。

 

 

 ランサーの深紅の瞳が、少女の瞳を真っ直ぐに射抜く。

 

 

 そして、直感した。

 

(……バケモノめ)

 

 

 ランサーは、内心でひどく忌々しそうに、だが確かな戦慄と敬意を込めてそう吐き捨てた。

 

 それは、眼下で立ち上がった怪物に対してだけではない。その規格外の怪物を完全に使役し、鎖で繋ぎ、悠然と見下ろしているあの少女に対しても向けられた言葉だった。

 

 彼女の瞳。紫水晶のように透き通ったその双眸には、勝利への歓喜も、強敵を打ち倒した達成感も、あるいは自身のサーヴァントが傷つけられたことへの怒りや憎悪といった、人間としての『感情の色』が一切写っていなかった。

 

 

 ただ極限まで冷徹で、無機質で、人間味が完全に切除されたような、底知れぬ虚無の深淵。

 

 「あなたの底はすでに掴みました。これ以上は、何をしようが無駄なのだ」と、言葉を発することなく、その存在感だけで冷徹に告げている。

 

 

 

 ああ、間違いなく、こいつは『本物』だ。

 

 魔術師という狂気の業を極め、己の目的のためならば、どのような非道も、どのような殺戮も、呼吸をするのと同じ自然さで遂行できる、完成された怪物。

 

 ランサーの英雄としての魂が、目の前の少女が自分たちと同じ、血塗られた殺し合いの螺旋に立つに相応しい絶対的な捕食者であると、心の底まで理解させられていた。

 

「少し、お話ししましょうか」

 

 

 桜は、屋上の縁から冷徹に見下ろしたまま、ひどく透き通った声でそう告げた。

 

 彼女が白魚のような細い指を軽く動かすと、今にもランサーの首を刎ね飛ばそうと大上段に退魔の剣を振りかぶっていた魔虚羅が、ピタリと、文字通り彫像のようにその動きを停止した。

 

 圧倒的な暴力の権化が、少女の指先一つの指示で完璧に制御されている。その異常な光景が、さらにランサーの警戒心を跳ね上げさせる。

 

「……何のつもりだ?」

 

 

 ランサーは、槍を下ろすことなく、血塗れの顔で彼女を睨み上げた。

 

「いえ、お気になさらず」

 

 

 まるで世間話でもするかのように、淡々と首を横に振る。

 

 そして、一切の感情を感じさせない瞳で、奇妙な問いを投げかけた。

 

「それよりも……逃げないんですか? 今なら、逃げられるかもしれませんよ?」

 

「あァ……?」

 

 

 ランサーは、その意図のわからない問いに、思わず怪訝な声を漏らした。

 

 自身を嘲笑い、上から叩き潰し、這いつくばる姿を見て快楽に浸る。もし相手がそういう類の三流の悪党であれば、今の言葉はただの挑発だと受け取れる。

 

 

 だが、目の前の少女は違う。彼女の瞳には、弱者をいたぶるような嗜虐心は全く存在していない。ただ、事象の確認を行っているだけだ。

 

 ランサーは、口の中に溜まった血をペッと吐き捨て、皮肉げな笑みを浮かべて返した。

 

「なんだ? 今ここで俺が背を向けて逃げたら、てめえらを撒けるってか?」

 

「いえ、不可能でしょう」

 

 

 桜は、間髪を入れずに、冷徹な事実だけを叩きつけた。

 

「バーサーカーとの純粋な速度の差や、あなたが負っているダメージの差。そういった物理的な要因で逃げ切れないというわけではありません。……文字通り、『不可能』」

 

「……どういうことだ?」

 

「もしもマスターが、安全圏からこの戦場を観測できていたとしても。そして、令呪を用いてあなたを強制的に空間転移で引き上げようとしたとしても……もはや、それすらも不可能なのです。令呪による空間転移など、私が許しませんから」

 

 

 

 その言葉を聞いた瞬間。

 

 ランサーの脳裏に、先ほどからずっと彼の無意識下で感じていた、強烈な『違和感』が鮮明に蘇ってきた。

 

 大気中の魔力(マナ)が、ひどく重く、泥のように粘り気を持っていること。

 

 燃え盛るクレーターも、崩れ落ちた廃ビルも、全てがピントの狂ったレンズ越しに見ているかのようにブレており、現実感が決定的に欠落していること。

 

 世界そのものが透けて見えるような、この異常な虚脱感。

 

 

 桜は、ランサーのその疑問と警戒に答えるように、ゆっくりと口を開いた。

 

「どうせ、これがあなたの最期ですし。種明かしをして差し上げます」

 

 

 夜風が止んだ。

 

 少女の澄んだ声だけが、崩壊した街に不気味に響き渡る。

 

「私の魔術属性は『虚』。……すなわち、虚数位相への接続と、その空間の操作こそが、私のメインの術式群です」

 

 

 桜は、まるで教師が黒板の数式を解説するかのような、淡々とした口調で語り始めた。

 

「ここら一帯の空間は、少し前から、すでに現実のものではありません。ここは私の領域の中。……この世界は、現実の冬木市とは全く異なる深度を持っている、徹底的に外界から閉ざされた領域なのです」

 

「……虚数空間、だと?」

 

 

 魔術の知識においてはキャスタークラスにも引けを取らない彼であれば、その言葉が意味する『異常性』がどれほどのものか、即座に理解できた。

 

「虚数深層領域の底の、さらに底。現実世界とは異なる、切り取られた位相の領域です」

 

「……冗談キツいぜ。固有結界の展開ならともかく、現実の空間そのものを虚数に沈めたってのか? しかも、俺に全く悟られずに……」

 

「ええ。固有結界のように、現実に異なる位相を一時的に入れ替えて上書きするのとは、根本的に原理が異なります。私は、現実の実数空間そのものを、丸ごと虚数の位相へと叩き込んだ。つまり、あなたが現実の空間内だと思って激闘を繰り広げていたこの場所は、とうの昔に『虚数内部の深層』へと移行していたのですよ」

 

 

 戦闘の最中。互いに神速で駆け回り、廃ビルを粉砕し、地形を変えるほどの激闘を行っていた、その裏側で。

 

 この少女は、いつの間にか世界そのものを切り離し、虚数の底へと彼を幽閉していたというのか。

 

 

 だとしたら、なぜ今まで気づかなかった? なぜ、彼ほどの魔術的直感を持つ英雄が、世界がすり替えられたことに、今の今まで全く気づけなかったのだ?

 

「……であれば、今あなたの周囲に見えているこの崩壊したビルや、フェンス、ひしゃげた車……それ以外の『物質』は一体何なのか、という話になりますよね?」

 

 

 彼女の指先が、再び微かに動く。

 

「あらゆる可能性を内包する、虚数の内海。それはつまり、『何が観測されてもおかしくはない』ということを意味します。ですから、私はこの虚数空間に、一つの方向性を与えたのです。……それは、現実の冬木市新都をそのまま映し出した、『鏡写しの現実』」

 

 

 

 ジジッ、ジジジジジッ。

 

 

 突如として、ランサーの周囲の世界に、強烈なノイズが走った。

 

 燃え盛るクレーターも、崩れ落ちたコンクリートの瓦礫も、ひしゃげた大型トラックの残骸も、全てが激しく点滅し、モザイク状にブレ始める。

 

「私の魔術の最奥。……先ほどまであなたが激戦を繰り広げていた、この周辺の複数の廃ビルや、錆びれたフェンス、アスファルトなど、世界に存在していたように見えていた物質の全ては。……完全なる『偽装』です」

 

「……偽装、だと……!?」

 

「ええ。ここら一帯の現実空間を虚数の位相に沈めたという事実を、あなたという鋭敏な英霊に悟らせないために用意した、精巧なフェイク。いわば、現実世界のレイヤーをそのまま切り取ってコピペした、『もう一つの現実(テクスチャ)』のハリボテだったというわけです」

 

 

 

 

 自身の神速のインファイトで砕いた柱も。落下する隙を突くために崩落させた駐車場の床も。

 

 全てが、虚数空間の特性を利用して『観測』させられていた、ただの偽物のデータだったというのか。

 

 彼女は、この途方もない規模の領域の術式を、ランサーに一切の魔力行使を悟られないよう、足元にいるバーサーカーの『内側』で隠蔽しながら編み上げていた。

 

 

 領域を認識させずに閉じる。

 

 それが、間桐桜という魔術師の真骨頂であった。

 

「ですが、領域が完全に発動し、あなたをこの虚数の位相の最深部へと完全に落とし切った今。……この偽装情報(フェイク)は、もはや不要ですね」

 

 

 桜の瞳が、絶対零度の光を放った。

 

「データ容量を削減するため、私は周囲の偽装データをキャッシュごと『削除』します。……それでは、お見せしましょう。この領域の、本来の姿を」

 

 

 その宣告が下された瞬間。

 

 

 

 パリィィィィィィィィィィィンッ!!!!

 

 

 

 世界が、音を立てて砕け散る。

 

 比喩ではない。物理法則も、色彩も、上下の概念も、全てが文字通りガラス細工のようにひび割れ、粉々に崩壊していったのだ。

 

 

 燃え盛っていた炎の色が失われ、無機質なモノクロームへと変貌する。

 

 足元にあったはずのアスファルトのクレーターが、デジタルデータのバグのように四角いピクセルとなってバラバラに分解され、虚無の底へと落下していく。

 

 空に浮かんでいた月も、廃ビルも、全てが「ただの絵」が剥がれ落ちるようにして無惨に崩れ去り、その裏側に隠されていた『真実の世界』が、圧倒的な異物感をもってランサーの網膜を強制的に蹂躙した。

 

「……な、んだ……ここは……」

 

 

 

 彼の眼前に広がっていたのは、冬木の街並みなどではなかった。

 

 

 無限に続く、「数式と結晶で構築された異次元空間」。

 

 現実の物理法則が一切通用しない、概念的な世界の内側(ソースコード)を直接覗き込んでいるような、嘔吐感を催すほどの情報量の奔流。

 

 上下左右の概念は消失し、透明から半透明に輝くガラス質、水晶質の巨大なブロック群が、重力を完全に無視してあらゆる方向へと無作為に積み重なっている。

 

 その水晶の壁面には、無数の難解な数式や幾何学的な記号が、青白い光を帯びて絶え間なく流動し、刻み込まれていた。それはただの空間の壁ではなく、空間を構築する「情報そのもの」が物理的な構造体となって顕現しているかのようだった。

 

 

 空間の至る所に、大小さまざまな真珠のような光沢を放つ球体が浮遊している。

 

 それは単なる装飾ではなく、この異常な空間の魔力を繋ぐ「ノード(節点)」のような役割を果たしているように見えた。特にランサーから見て左上の遥か上空には、まるで一つの小さな惑星のような質量と質感を持った、巨大な真珠の球体が鎮座している。

 

 

 そして、その狂気の幾何学空間全体を貫くようにして、青と緑の二色のプラズマ状のエネルギーが、巨大な双竜のように渦を巻いて流動していた。

 

 青と緑。それは、相反する二つの原理の対立と、同時に共鳴し合う生命の息吹を表現しているかのようであり、見る者の精神を深く、深く惑わす。

 

 

 空間の構造は、中央奥に向かって無限の消失点が存在しており、まるで果てのない『回廊』が続いているかのようだ。

 

 上下も左右も対称に近く、全てが鏡面反射的に連鎖する、フラクタル構造の万華鏡の内部。

 

 

「術式名――『未確定証明圏(アンサートゥン・イマジナリス)』」

 

 

 無限の結晶回廊の上空、虚空に浮かぶ水晶のブロックの上に立つ桜が、冷徹にその領域の名を口にした。

 

「ここでは、存在することは……まだ、何も決まっていない。展開されたこの空間内では、存在の有無、物理法則の適用、そして因果律の発生そのものに至るまで、全てが『未確定状態』に置かれます。私が観測し、許可を与えない限り、何事も決定しない。……この領域において、確定した存在として機能できるのは、術者である私自身と、私に接続されたバーサーカーのみ」

 

 

 固有結界が「術者の内面世界による現実の強制的な上書き」であるのに対し、この未確定証明圏は、全く異なる次元の原理を持っている。

 

 現実の法則を一時的に書き換えるのではなく、法則そのものが存在しない虚数(ゼロ)の底へ対象を引きずり込み、術者が世界の全てのルールの決定権(エディタ権限)を掌握する、完全なる神の箱庭。

 

 ランサーは、その異質で、冷酷なまでに美しい空間を見渡し、自身が抱え続けていた違和感の正体を、はっきりと理解した。

 

 

 やはり、ここは現実ではなかった。

 

 ノイズが完全に晴れ、本来の虚数の世界が浮き彫りになったことで、この絶望的な構造が嫌というほど理解できたのだ。

 

「……つまり。俺は、あのバケモノとやり合っている最中に、すでにこの鳥籠の中にブチ込まれてたってわけか」

 

「そういうことです」

 

 

 桜は、氷のような無表情で首肯した。

 

「あなたはすでに、この未確定の領域に完全に囚われています。故に、物理的な距離に意味はなく、ここから外へ逃げ出すことは絶対に不可能。外界からのいかなる観測も、干渉も、この虚数の壁を通り抜けることはできません。……ですから、あなたのマスターからの令呪による支援や撤退も、絶対に期待できないのです」

 

 

 逃げることができないというのは、そういうこと。

 

 速度が足りないからではない。敵が強いからではない。

 

 『逃げるための世界(ルート)』そのものが、最初から用意されていなかったのだ。

 

 

「……なるほどな。そりゃあ、確かに逃げ道はねえわな」

 

 

 

 ランサーは、ただ残された僅かな時間の中で、自身の死を美しく迎えるための準備をするように、静かに深呼吸をした。

 

 

 この無限の結晶と数式の回廊で。

 

 間桐桜という完成された魔術師と、全てを適応する神将の前に、神代の英雄の命の灯火は、今まさに吹き消されようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

【記録:■■■■年■月■日 ■■時■■分 / 場所:未確定証明圏(アンサートゥン・イマジナリス)】

 

 

 現実の物理法則が完全に崩壊し、数式と水晶のブロックが重力を無視して無限に連なる狂気の異次元空間――『未確定証明圏』。

 

 

 上下左右の概念すら曖昧な、青と緑のプラズマが渦巻く回廊の底。

 

 クー・フーリンは、自身の霊基が半透明に透け、光の粒子となって今にも霧散しそうになっている己の肉体を、槍を杖代わりにして辛うじて支えていた。

 

 対軍宝具『突き穿つ死翔の槍』を放つために、自身の存在そのものを燃料として燃やし尽くした代償。それに加え、未確定の虚数空間という、生者の存在を根本から拒絶する深淵に放り込まれていることによる、絶え間ない自己定義の崩壊。

 

 

 血を流すことすらとうに止まり、彼の命の灯火は、吹き荒れる暴風の中の蝋燭のように、ただ最期の瞬間を待つばかりとなっていた。

 

 そんな瀕死の英雄を見下ろすようにして、透明な水晶のブロックの上に立つ桜は、一切の感情を交えない、氷のように冷徹な瞳で彼を観察し続けていた。

 

 

「……ハッ。なるほどな」

 

 

 ランサーは、荒い息を吐きながら、血に濡れた口元を歪めて低く笑った。

 

 自身の死が完全に確定したこの絶望の底にあってなお、彼の瞳に宿る戦士としての反骨心だけは、決して折れることはない。

 

 

 彼は、遥か上空で見下ろす冷酷な支配者へ向けて、最後の皮肉を投げかける。

 

「この絶望的な鳥籠の種明かし……ご丁寧なこった。俺にこの領域の概要を説明するために、わざわざ長話をしてくれるとは。……随分とお優しいことじゃねえか、お嬢様?」

 

 

 敵を完全に罠にはめ、勝利を確定させた悪党が、自身の完全犯罪や能力のタネをペラペラと誇らしげに語り出す。それは、三流の悪党が必ず陥る「慢心」と「自己顕示欲」の典型的な悪癖だ。

 

 だが、ランサーの直感は、目の前のこの底知れぬ少女が、そのような安い優越感に浸るために無駄口を叩くような手合いではないことを、とうの昔に理解している。

 

 

 何かある。この長話には、ただの種明かし以上の、致命的な『毒』が仕込まれている。

 

 その警戒と皮肉を込めたランサーの言葉に対し、桜は表情一つ変えることなく、ひどく事務的なトーンで応じた。

 

「いえいえ。これも、完璧を期するために必要なプロセスですから」

 

 

 桜は、まるで予定されたタスクをこなすように、淡々と言葉を紡ぐ。

 

「さて、そろそろ終わらせますね。……この領域、他者を引き込んだ上で維持し続けるのは、魔力消費が馬鹿にならないのですよ」

 

 

 桜は、軽く息を吐き、自身の疲労をわずかに滲ませた。

 

「固有結界のように『世界からの修正力』を直接受けるわけではないのですが……あなたのような、極めて情報密度の高い英霊(異物)をこの虚数の底に長時間入れておくと、空間そのものの自己矛盾が肥大化し、領域の維持が非常に難しくなるのです」

 

 

 彼女の言葉通り、この未確定の空間を維持するためには、途方もない演算能力と魔力リソースが要求される。

 

 ましてや、クー・フーリンという神霊の血を引く最高純度の英霊を、完全に外界から切り離して閉じ込めておくなど、本来であれば数分で術者の脳髄が焼き切れてもおかしくないほどの絶大な負荷がかかっていた。

 

 

 桜の額にも、うっすらと冷や汗が浮かんでいる。

 

「これでも、結構限界なんですよ」

 

 

 桜は、小さく首を傾げ、さも当然の権利を行使するかのように冷徹に告げた。

 

「それじゃあ、潰しますが。……問題ありませんね?」

 

 

 同意を求めるような口調でありながら、そこには一切の拒否権は存在しない。

 

 

 ただの死の宣告。事務的な、ゴミの処分通知。

 

 ランサーは、そのあまりにも傲慢で、しかし理にかなった言葉に、再び皮肉げな笑みを深めた。限界だと言いながらも、その手綱を握る指先には微塵の震えもない。

 

 

「……ですが」

 

 

 桜は、そこで一度言葉を区切り、その紫水晶の瞳の奥に、不吉な呪術の光を宿した。

 

「ついでですので、もう一つだけ、追加でお話ししておきます」

 

「……あ?」

 

「バーサーカーの纏っているエネルギー。……『魔力』とは本質的に異なる、あのドス黒い『呪い』についてです」

 

 

 桜の視線が、ランサーから、自身の足元の遥か下――クレーターの底で静かに佇む白き巨人へと向けられた。

 

 魔虚羅は、主の言葉をただ静かに待つ忠実な騎士のように、退魔の剣を下ろしたまま、ピクリとも動かずに直立している。

 

「この呪いには、特殊な性質がありましてね。……いえ、どちらかというと、呪いを纏う存在そのものが持つ『理(システム)』に近いような気もしますが」

 

 

 桜は、まるで研究成果を発表する学者のように、冷徹な分析を語り始めた。

 

「魔術においても『等価交換』は基本ですが、呪いの世界においては、さらに強烈な法則が存在します。それは、何らかの『自身に不利に働くような条件』を己に課すことによって、その見返りとして、能力や出力を爆発的に向上させるという、等価交換の極致とも言えるシステム。……いわゆる、『縛り(誓約)』と呼ばれるものです」

 

「縛り……だと?」

 

 

 ランサーの目が、限界まで見開かれた。

 

 その言葉を聞いた瞬間、彼のケルトの英雄としての血が、凄まじい警鐘を鳴らしたのだ。

 

 

 彼には、その概念が痛いほどよく理解できた。いや、理解できすぎたのだ。

 

 ケルトの戦士たちが己に課す、絶対の禁忌と誓約――『ゲッシュ』。

 

 「犬の肉を食わない」「自分より身分の低い者の誘いを断らない」といった、自らを不自由に縛り付ける誓約を守り続けることで、世界から強大な加護と奇跡を引き出すという、契約の理。

 

 

 それが『縛り』という概念だ。

 

「ええ。そのための、『能力の詳細の開示』です」

 

 

 桜の言葉が、氷の刃となってランサーの鼓膜を貫いた。

 

「わざわざ、あなたにこの領域のタネを明かしたこと。そして、バーサーカーの能力や呪いのシステムについて語ったこと。……それは、ただの親切心や慢心などではありません。私自身の術式の手の内を、敵であるあなたに全て『開示』するという行為自体が、私自身に極めて不利な状況を作り出す『制約』として機能するのです」

 

「……ッ!! てめえ……!!」

 

「……念のため。ふふ、ダメ押しです!」

 

 

 この少女は、己の優位を誇示するために長話をしていたのではない。

 

 この状況下において、自身の手札を敵に晒すという「リスク」を自ら背負い込むことで、世界システムに対して「不利な条件を飲んだ」という『契約』を成立させ、そのリターンとして、次の一撃の威力を底上げするための『儀式』を執り行っていたのだ。

 

「まあ、これに関しては、私自身も全てを完全に理解しているわけではないのですが」

 

 

 桜は、足元の影を揺らめかせながら、淡々と続けた。

 

「私がこのシステムに気づいたのは、ごく最近のことですし。……バーサーカーのステータスやスキル一覧の中にも、それらしい項目は存在しません。ですが、私の『虚数』を通じて彼と接続し、彼の内にある理を解析した結果……この呪術的な法則が、彼とパスを繋いでいる『私自身』にも適用可能であることがわかったのです」

 

 

 

 

 不意に。

 

 それまで、一切の感情を排した機械的な冷徹さで語っていた少女の声色が、唐突に、ひどく甘く、柔らかいものへと変化した。

 

「それに……彼は見ての通り、言葉が話せませんので」

 

 

 

 上空で見下ろしている桜の瞳。先ほどまで、人間味の一切を切除したような虚無を宿していたその紫水晶の双眸が。

 

 眼下に佇む白き怪物を、見つめた瞬間、まるで愛おしい我が子を、もしくは唯一無二の伴侶を見つめるかのような、極限まで熱を帯びた『狂おしいほどの慈愛』へと、完全に融解した。

 

「ああ……本当に、そこが愛おしい」

 

 

 彼女は、魔虚羅が言葉を持たないこと、知性による対話が不可能であることを、一切の苦だと思っていない。

 

 むしろ、それこそが最高に美しいのだと。己の意思を持たず、ただ世界に適応し、自身のためだけに絶対的な暴力を振るってくれるこの異形の神を、彼女は心の底から、全身全霊で愛し、狂信していた。

 

 

 言葉を持たない神のために。

 

 私が代わりに、能力を開示して差し上げる。

 

 自身が彼の口となり、彼の『縛り』を代行し、彼をさらに高い次元の存在へと押し上げてみせる。

 

 

 その歪みきった、しかしあまりにも純粋な愛情の吐露。

 

「…………ッ。本物の、イカレ女だぜ……」

 

 

 ランサーは、その狂気と愛情を抱えている少女の姿に、真の戦慄を覚えた。

 

 

 魔術師の冷徹さではない。これは、信仰だ。

 

 だが、その狂気に満ちた慈愛の時間は、ほんの数秒しか続かなかった。

 

 

 

 次の瞬間には。

 

 桜がランサーへと視線を戻した時、彼女の瞳は再び、全ての熱を奪い去った絶対零度の『虚無』へと、完璧なまでに切り替わっていた。

 

「……というわけで」

 

 

 桜の冷たい声が、死刑執行の合図のように、無限の結晶回廊に響き渡った。

 

「あなたを、次の一撃で『確実に』潰すため。……そのための、能力向上を目的とした開示行為(プロセス)でした」

 

 

 その、無慈悲な種明かしの宣告が下された直後。

 

 

 

 

 

 ズズズズズズズズッ……!!

 

 

 桜の言葉と呼応するように。

 

 彼女の足元に広がる、黒く濁った『虚数の影』が、ドロリと奇妙な膨張を始めた。

 

 それは、空間を這うようにして下層へと伸びていき、巨大な漆黒の『触手』となって、魔虚羅の足元の影へと、完全に、そして強固に『接続』された。

 

 

 術者である間桐桜と、従者である魔虚羅。

 

 二つの存在が、影という絶対的なバイパスを通じて、呪術的な『縛り』の契約を完全に共有した瞬間であった。

 

 

 

 

 

 

 ――ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!!

 

 

「なっ……!?」

 

 ランサーは、眼下の怪物から放たれた、文字通り『次元の違う』異常なプレッシャーに、思わず数歩後ずさる。

 

 

 目の前の白き巨人――魔虚羅の全身から。

 

 先ほどまでの比ではない、圧倒的で、世界そのものを黒く塗り潰すかのような、超高密度のドス黒い呪力(エネルギー)が爆発的に膨れ上がったのだ。

 

 

 空間を貫く青と緑のプラズマが、魔虚羅の呪力に喰われ、不吉な赤黒い雷へと変質していく。

 

 数式が刻まれた水晶のブロックが、そのあまりにも強大な質量の奔流に耐えきれず、メキメキと音を立ててひび割れ始めている。

 

 

 能力を開示するという『縛り』。

 

 その対価として得た、一時的かつ爆発的な『呪力の向上』と、『攻撃対象の変更』。

 

 次の一撃で、英霊の霊核はおろか、その魂すらも、確実に世界ごと消し去るという、絶対の破壊意志の具現化。

 

 

 

 ジリ、ジリジリジリッ。

 

 

 ただ立っているだけで、魔虚羅から放たれる呪力の風圧が、ランサーの崩壊しかけた霊基を紙ヤスリのように削り取っていく。

 

 これほどのエネルギーを圧縮した一撃を放たれれば、この空間ごと、ランサーという存在は完全に跡形もなく消滅するだろう。

 

 

 その、世界そのものが圧死しそうなほどの暴風の中心で。

 

 英霊、クー・フーリンは、全てを出し尽くし、逃げ場のない死の淵に立たされてなお、決して自身の膝を折ることはなかった。

 

 

 深紅の魔槍はすでに光を失い、自身の霊基は半透明に透け、指先から光の粒子となって崩壊を始めている。

 

 それでも、彼の背筋は鋼のようにピンと伸び、その深紅の瞳には、死への恐怖ではなく、自身の命を完全に刈り取ろうとしている美しくも恐ろしい『影の女王』への、純粋な戦士としての賞賛が宿っていた。

 

 

 最期の、称賛の言葉を紡いだ。

 

「……ハッ。とんだ女王様だ。見事な采配だったぜ」

 

 

 その言葉は、強がりでも皮肉でもなく、己をここまで完璧に罠にはめ、計算し尽くした絶望へと追い込んだ間桐桜という魔術師への、最大限の敬意であった。

 

 

 だが、その英雄の最期の言葉に対しても。

 

 遥か上空の水晶の縁から彼を見下ろしている桜の表情は、ピクリとも動かなかった。

 

 

 彼女の紫水晶の瞳には、敵将への敬意も、勝利の優越感も、いかなる感情の揺らぎも存在しない。

 

 ただ、自らの愛する神を傷つけたという『絶対的な罪』に対する、無慈悲で機械的な判決だけが、凍てつくような冷たさでそこにあった。

 

 

「我が神の半身を消し飛ばした。その罪――」

 

 

 桜が、ゆっくりと、断頭台の刃を落とすように右手を振り下ろす。

 

 それに呼応し、地上の魔虚羅が、不吉な呪力を限界まで纏い、黒く脈打つ『退魔の剣』を、大上段へと無慈悲に振りかぶった。

 

 縛りによって極大化された呪力が、剣の刀身に圧縮され、空間の理そのものを切り裂く『断罪の刃』へと変貌する。

 

 

「斬刑に処す」

 

 

 全てを見下ろす神の視座。

 

 神将の刃が、音速を遥かに超えて振り下ろされ。

 

 

 

 カッ!!!!!!!!

 

 

 その剣閃が放たれた瞬間、未確定証明圏。狂気の空間は、全てを消し去る絶対的な『純白の光』に飲み込まれ、完全に無散していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――ヒュゥゥゥゥゥゥッ……。

 

 冬の冷たく、乾燥した夜風が、頬を撫でた。

 

 遠くで聞こえる、深夜の幹線道路を走るトラックの排気音。

 

 どこかの路地裏で鳴く、野良猫の微かな声。

 

 

 

 周囲を見渡せば、そこにはクレーターなど存在しない。

 

 ランサーとの凄惨なインファイトで砕け散ったはずの柱も、ひしゃげた大型トラックも、対軍宝具の直撃によって融解したはずの赤茶けた大地も、何一つとして存在していない。

 

 

 無傷のアスファルト。ただ静かに月明かりに照らされる、ありふれた廃ビル群の風景。

 

 あの規格外の破壊の嵐は、『虚数の位相の底』で行われた出来事。

 

 現実の世界には、傷一つ、焦げ跡一つ残してはいない。

 

 

「……はぁっ……、……はぁっ……」

 

 

 

 現実へと帰還した瞬間。

 

 桜の身体から不意に力が抜け、彼女はコンクリートの床に、ガクンと力なく膝を突いた。

 

 

 そのまま両手を床につき、肩を激しく上下させながら、深く、荒々しい深呼吸を繰り返す。

 

 額からは滝のような冷や汗が流れ落ち、上質なコートの背中も、じっとりと汗で濡れそぼっていた。

 

 

(……疲れた……っ。さすがに、魔力を消費しすぎました……)

 

 

 桜は、自身の胸元をギュッと握り締めながら、内心で独りごつ。

 

 神代の英雄たるランサーを完全に外界から隔離し、その絶大な宝具の概念を虚数空間内で受け止め、さらに『領域』という自身に強烈な負荷をかける術式までをも並行して維持し続けたのだ。

 

 

 彼女の保有する魔力量をもってしても、今の彼女の魔術回路は悲鳴を上げ、ほとんど空に近い状態まで枯渇しかけていた。

 

 

 かなりの強敵だった。

 

 もし、魔虚羅の適応が遅れていれば。もし、領域の展開をランサーに悟られていれば。

 

 

 あの因果逆転の一撃か、もしくは対軍宝具の直撃によって、敗北していたのは自分たちの方だったかもしれない。

 

 それほどまでに、クー・フーリンという英霊の戦闘センスと、死の淵に立たされてなお燃え上がる執念は、桜の想定する論理の枠を越えるほどの恐るべきものであった。

 

 

 

 だが。

 

 桜は、荒い呼吸を落ち着かせながら、ゆっくりと顔を上げた。

 

 その紫水晶の瞳の奥には、疲労感を完全に上書きするほどの、圧倒的な『熱量』と『歓喜』の炎が、ドロドロと渦を巻いて燃え上がっていた。

 

(……ええ。彼を確実に仕留めるため、バーサーカーを『英霊の神秘』へ深く適応させることを優先した結果……思った以上に消耗してしまいました。けれど、これでいい。いえ、これ以上の結果はありません)

 

 

 桜は、自身の足元――色濃く伸びる漆黒の影を見つめた。

 

 その影の底深くで、現在、魔虚羅の霊基は凄まじい熱量を発しながら、新たなる『情報』の咀嚼と再構築(アップデート)を行っている。

 

 

 この戦いは、ただ単純にランサーという一騎のサーヴァントを打倒し、適応するためだけのものではない。

 

 聖杯戦争の開幕直後、セイバーとアーチャーとの初戦で得た、騎士王の不可視の剣と、弓兵の矢のデータ。

 

 

 そして今回、ランサーとの死闘で得た、神霊の血を引く英雄の神業の槍術、ルーン魔術の神秘、そして何より――世界そのものの因果を捻じ曲げる『宝具』という絶大なる現象のルール。

 

 これによって、英霊の『神秘の格』というものが、どれほどの階層構造になっているのか、完全に測ることができた。

 

 現代の魔術師たちから得てきた適応の経験。その延長線上には決して収まらないほどの、途方もないスケールの情報の密度。

 

 

 それを、魔虚羅は今、余すことなく自身の肉体へとインストールし、解析を進めている。

 

(ああ……素晴らしい。本当に、素晴らしい贅沢です)

 

 

 桜の身体の奥底から、疲労を忘却させるほどの、甘く、痺れるような陶酔感が込み上げてくる。

 

 これほどの圧倒的な密度を持った情報を、これほど早い段階で収集できたことは、完全なるイレギュラーにして、最高の幸運であった。

 

 

 

 この経験を糧として。

 

 私の愛する神は、人々の想像を絶する、果てしない高みへと登っていくのだろう。

 

 あらゆる魔術を、あらゆる物理を、あらゆる神代の神秘をも適応し、無効化し、全てを凌駕する絶対の存在へ。

 

 傷つくことも、敗北することもあり得ない、完全なる地点への到達。

 

 

(圧倒的で、絶対的な……唯一の輝ける者として、世界に君臨する。……ええ。もう、誰にも止めることなどできません)

 

 

 そんな、進化の果てに立つ魔虚羅の完璧な姿を想像しただけで、桜の身体は、子宮の奥から込み上げるようなドロリとした熱情に焼かれ、じわりと熱くなった。

 

 

 

 狂信。愛情。自己投影。

 

 その全てがないまぜになった彼女の精神は、自らの神が完成の域へと至るそのプロセスこそに、至上の快楽を見出していた。

 

「……ふぅ。帰りましょうか」

 

 

 熱い思いを胸の奥にしまい込み、桜はゆっくりと立ち上がった。

 

 コンクリートの汚れを払うように、コートの裾を軽くはたく。

 

 自身の影に向けて魔力を流し、実数空間の表面に残っていた魔虚羅の気配を、完全に虚数の底へと収納し、ロックをかける。

 

 

 時計を見れば、まだ夜の十時を回ったところだった。

 

 体感時間では、何日もぶっ続けで死闘を繰り広げていたような錯覚に陥っていたが、実際には、家を出てからほんの数時間しか経過していない。

 

 

 あまりにも濃密すぎる戦闘が、彼女の感覚を麻痺させる。

 

(早く帰らないと。……お夕飯の残りのシチュー、温め直して食べようかしら。それに、お風呂ももう一度入り直したいですし)

 

 

 先ほどまで、一人の英雄を絶対的な絶望の底に突き落とし、残酷な宣告を下していた『怪物』の顔は、すでにそこにはなかった。

 

 今ここに立っているのは、ただ少し夜更かしをしてしまった、どこにでもいる普通の、家庭的な女子高生としての間桐桜。

 

 狂気と日常を、呼吸をするように切り替える。その精神の断絶こそが、彼女の最大の異常性といえるだろう。

 

 

 桜は、冷たい冬風に紫の髪をなびかせながら、廃ビルの階段を軽やかな足取りで下り始めた。

 

 

 

 ランサーの脱落。

 

 聖杯戦争の開幕を告げるファンファーレとしては、これ以上ないほどの大戦果だ。

 

 

 だが、まだ七騎の英霊のうち、二騎が欠けたに過ぎない。

 

 騎士王、弓兵、狂戦士、そして、まだ見ぬ未知の英霊たち。彼女の神をさらに高みへと至らせるための『極上の供物』は、まだこの冬木の街に多数潜んでいる。

 

 

 戦いは、未だ始まったばかりだ。

 

 間桐桜は、深い虚数の闇をその足元に従えながら、静かに眠る冬木の街の夜へと、一人歩み去っていった。

 

 

 




【虚数深層領域・未確定証明圏(アンサートゥン・イマジナリス)】

【基本概要】
 対象空間を実数領域から虚数領域へと沈下させ、外界との物理的・魔術的な干渉を完全に遮断する大魔術。

 しかし、その真の恐ろしさは空間の隔離ではなく、内部における「事象の未確定状態の強制維持」にある。

 何者でもない空間(虚数)であるからこそ、何者にでもなれる無限の可能性を秘めており、術者の思考という「一定の方向性」を与えることで、無数にある可能性の中から都合の良い事象だけを手繰り寄せ、一時的に表面化させることができる。


【観測の拒絶と可能性の並行】

 通常、世界において事象は「観測」され「結果」が出た時点で一つの現実へと『確定』し、他の可能性は切り捨てられる。
しかし、この領域内では「確定させる(一つの結果に至らせる)」という行為そのものを拒絶する。

 確定していないということは、「それがどのような現象・結果であっても矛盾として世界から弾かれない」ことを意味し、無限の可能性が同時に重なり合った状態、量子力学における重ね合わせを維持し続ける。


【挿絵表示】



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五条先生の赫とFateの対軍宝具って、どちらが威力上だろうか。何となくで投票してほしいです。

  • 術式反転・赫
  • 対軍宝具
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