ハスターなオリ主とドラゴンボール   作:ラムセス_

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孫悟空少年編
小さな人外、大きな人外


 

 俺は旧支配者ハスター。

 

 正確に言えば、気づいたらハスターに転生していた一般人Aである。

 経緯はよくわからないが、ともかく目が覚めたら名状しがたい巨大な触手状の生き物になっていた。

 

 外宇宙は摩訶不思議だ。

 巨大な深海生物みたいなのもたくさんいるし。

 

 ちなみにハスターとは創作神話「クトゥルフ神話」における風の神だ。

 悍ましき人に狂気をもたらすもの。

 容易く人類文明を滅ぼしうる、極大の災いである。

 

 できれば人間に生まれたかったよね……。

 自分の姿見て自分でSAN値チェックする愉快な触手になんてなりたくなかった……。

 

 

 

 ともかく。

 そんな俺が今いるのは、正真正銘の「外宇宙」である。

 

 そこは地球によく似た青の星であった。

 水資源が豊富で、多様な生き物が住み、知的生命体人間っぽいのが多い。

 

 だが俺のよく知る地球とは違うところも結構あった。

 

「うお、でっけ……」

 

 目の前でノシノシと歩く巨大なトカゲに、俺は思わず感嘆の声を上げていた。

 それ即ち恐竜、太古の生き物であるはずの地球の覇者だ。

 もう絶滅して久しいそれが、生きてジャングルの中を縦横無尽に闊歩している。

 

 ちょっとした感動である。

 いや、俺結構転生して年月経ってるから恐竜もちゃんと地球で生で見たけどさ。

 

恐竜は俺を見て、しおしおと尻尾を丸めて地面に縮こまっている。

この個体はこの辺りのヌシのようで、戦闘経験が豊富だ。

きっと俺の真の姿を透かし見てしまったのだろう。

今の俺は人間の姿だ。

「黄衣の王」と呼ばれる人間に似た姿を羽織っている。

人間からすれば、色白で触手色の髪をしたイケメンに見えるはずだろう。

 ことを荒立てないように姿隠しをしていたのだが、これでは完全に隠せているか怪しいものだ。

 

 実のところ、今の俺はボロボロのボロだ。

 

 この宇宙に到着した直後、変な紫の猫みたいな人外に襲われて一戦交えたからだ。

 まったく、とんでもない神格だった。

 ビルス様、ともう一人の宇宙人に名を呼ばれていたか。

 

 完全戦闘特化というか、権能を闘争と破壊だけに極めたマジのマジな闘神だった。

 強いのなんのって、その速度は概念を置いてけぼりにしか、威力は一撃で俺の触手を複数本消し飛ばすほど。

 ただ、その分概念バトルには縁がなかったようだ。

 

 俺の魔術を絡めた概念戦闘には苦戦したようで、最終的には俺が押し切ったわけである。

 

 しかしまさか純粋なエネルギー出力で概念魔術を押し切ってくるとは。

 こちらとてその手の輩に対応するのには慣れているが。

 打ち消されないよう戦闘と並行して緻密に編み上げた俺の魔術の腕がなければ危なかった。

 

 そうして上手く隙をついて搦手で撃墜、そのままとどめを刺さず逃げ延びたというわけである。

 知らん外宇宙で神格を殺したら怖いことがありそうだったのでな。

 

 まあ、そうして目についたこの星に潜伏したわけだが。

 

「おお、またあの怖げな猫に見つかりませんように…!」

 

 俺は偉大なる父神ヨグ=ソトースに祈りを捧げてナムナムと震える声を上げた。

 この傷を癒すまで元の世界には帰れん。

 死んだらまた元の世界でリポップするだけだけど、こんな変なとこで死にたくない。

 

 ガサガサと草むらをかき分けて、俺は良さそうな広場を探した。

 今日は野宿の予定だ。

 

 なんか適当な場所に家を建てて、いい感じの食べ物を魔術で出して夜を凌ぐのだ。

 野草や果物は怖いし、変な生き物もたくさんあるから狩る気にはなれない。

 仮家を建てるのに適した開けたところがあるといいのだけれど。

 

 俺が周囲を見渡していると。

 

 ずむり、と上から逆さまに少年が振ってきた。

 

「おめー、人間か?」

「おわっ!?!?あー、その。えっと、人間を名乗るものです。はい」

「ヘンな言い回しだな!」

 

 俺は少年の言葉に滝汗をかいた。

 旧支配者が雑魚嘘を付くのはプライドが許さないのだが。

 だからと言って「人間じゃないですイカの化け物です」とは言いづらい。

 

 そのあたりで俺は少年に生えた尻尾に気付いた。

 ふむ、と改めてその生態を精査する。

 

「君こそ人間じゃないな。この星の原生生物か?」

「何言ってんだ。オラは人間だぞ。じっちゃんとここに住んでんだ」

 

 かけらの嘘も含まれない純粋な言葉だった。

 この少年は、どうやら本心から自分を人間だと思い込んでいるらしい。

 

 俺もそういう事例を知らないわけじゃない。

 人間至上主義の俺としてはなんとなく微妙な気持ちになった。

 

「じっちゃんという人物と二人で住んでるのか?実は俺はここに迷い込んでしまった旅人みたいなもんでな、少し挨拶と情報収集しておきたい」

「えーっと、じっちゃんに会いてぇってことか?」

「そゆこと。案内してくれないか?」

 

 少年は頷いて「お客さん初めてだ!オラ孫悟空ってんだ!」と元気に挨拶してくれた。

 朗らかでいい子のようだ。

 

 そんなわけで案内してくれているわけだが。

 

 ジャングルの危険生物でいっぱいだ。

 案の定道中にも現れた怪物に、少年は物怖じせずに対応してくれた。

 「ていっ!」と超デカ毒虫も象みたいなサイズのパンサーも一撃必殺。

 人間を遥かに超越したスペックだ。

 

 流石に一人で全部やらせるのは俺も申し訳ない。

 背後に忍び寄った狼のでかいのを、魔術で軽く吹き飛ばして撤退させる。

 「キュウン!」と哀れな犬みたいな声を上げて逃げていった。

 

 少年は「おめぇ強ぇんだな!」と目を丸くして喜んだようだ。

 俺も調子に乗って「戦闘は多少腕に自信があります」とキリリとした顔で答える。

 

 案内された竹林の中に佇む家は簡素で、本当に雨風防ぐことだけが目的のようなものに見えた。

 でも窓や細部は凝っていて、製作者の遊び心が表れている。

 

「じっちゃーん!お客さん来たぞ!アイサツしたいって!」

「おかえり悟空。……なんと、こんな辺鄙な場所に?武天老師様がそれとも……はて?どなたかな」

 

 出てきた人物はご高齢だが、足腰のしっかりしたおじいさんであった。

 真っ直ぐな背筋に柔らかな重心は武術一筋の重みを感じさせる。

 

 俺は頭を下げて丁寧に挨拶した。

 

「初めまして、突然不躾にすみません。旅の途中位置を見失いまして。どうかこの辺の地理と常識、植生を教えていただけないでしょうか」

「おや!それは大変じゃったろう。どうぞ、上がりなされ。茶を入れよう。悟空、湯を沸かすんじゃ」

「わかった!」

 

 悟空と呼ばれた人外の少年が駆けていく。

 

 その後ろの棚の上には、鈍く光る水晶玉のようなものが飾られている。

 俺は思わず目を見張った。

 

「ッ、それは」

「これを知っているのですかな。それは、大事なものなのでお渡しできないのじゃよ」

「………いえ、俺には不要なものです。ただ、飾るのは少々不用心に思えるので、その、金庫などにしまってはいかがでしょうか」

「ほっほっほ。この森と自然こそが盗人を遠ざける最高の金庫じゃわい。現に、客人など初めてのことじゃよ」

 

 なるほど確かに、と俺は思った。

 

 その球の名は「ドラゴンボール」。

 誰もが知る七つ集めると願いが叶うという夢の代名詞、架空のアーティファクト。

 世界的大ヒット漫画のタイトルでもある、願い球。

 

 そこには旧支配者たる俺をして、あまりに美しいとしか言えない術式が、小さな球の中に緻密に織り上げられていた。

 

 これは原理上、七つ集める必要はかけらもない。

 だが願いを叶えるものへの試練として、その工程が成立しているのだ。

 使用者は元手を必要とせず、ただ願うだけであらゆる事物が叶うことになる。

 

 エネルギーは未来に負債として分散され、わずか100年ほどのクールタイムで自然に解消されるようだ。

 とんでもないエネルギー効率であることよ。

 きちんと術式の規模を拡張して運用すれば、百年ごとに宇宙の仮創生すら可能だろう。

 

 極大の龍神が、その眷属に賜った力の具現を見れば、自ずと俺も理解せざるを得ない。

 

 孫悟空としていずれ世界を幾度も救う少年の後ろ姿に、俺は息飲んで目を見張った。

 

 ここは、ドラゴンボールの世界なのだ。

 

 

 創造神アザトースの眠りの外、真なる意味での外宇宙なのだと。

 





・「外なる神」ハスター
転生者。
ドラゴンボールの世界にポッとやってきた旧支配者。
この宇宙のルールの外から来たもの。
気を持たない。そのような理を知らない。

・破壊神ビルス
劇場版並みの激闘の末撃破され、現在治療中。
絶対奴は僕が破壊する。
あんな危険なものをそのままにはしておけない。
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