ハスターなオリ主とドラゴンボール   作:ラムセス_

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サイヤ人編
猫の裏のラディッツ


 

 いつも通り出勤途中のことである。

 

「やあ。久しぶりだね」

【………猫じゃん】

 

 目の前には、待ち構えていた猫が仁王立ちしていた。

 お付きの人も一緒だ。

 

 どうやら猫も怪我がまだ治っていないようで、動きがややぎこちない。

 随分と治りが遅いように見える。

 破壊の権能に特化しすぎて、自己治癒の力を持たないのかもしれない。

 

 お付きの男は澄ました様子。

 改めて見て、やはりこちらのお付きの方が数段厄介だ。

 存在規模が外なる神クラスと言うべきか。

 どうやら戦闘はできない…というかルールでガチガチに縛られているようだから多少安心だが。

 あれでは独立した存在というより、権能を詰めた人形にすら見える。

 

 俺はいつでも戦えるよう神域内に宇宙船を格納して、イカ姿をどろりと晒した。

 

【どうして俺の場所がわかったんだ?】

「予知夢だよ。予知夢でここを通るのが見えたからね」

 

 予知か。となると、今後は予知対策もしなければならないだろう。

 時間の組成が違うから安心してたが、そんな探知手段もあったのか。

 

 猫が意地悪そうに目を細めた。

 

「あの時は油断したが、今回はそうはいかない。今度こそ仕留めさせてもらう」

【嫌だなぁ、俺のことなんてほっといてくれれば良いのに】

 

 瞬きの間の沈黙。

 

 瞬間、猫が鋭い拳を放った。

 まるで瞬間移動の如き動きだ。

 相変わらず破壊の権能を纏ったそれを、魔術防壁でもって逸らしていく。

 

 この程度の防壁では真正面から受けたら全部剥がされてしまうからな。

 最小限の力になるように受け流しているのだ。

 

 しかし、それでも相手は破壊を得意とする神格。

 間に合わない箇所から防壁が剥がされていく。

 前回よりも動き自体は遅いが、俺の癖を掴んで的確に対処しているようだ。

 

 まったく、厄介な猫であることよ。

 俺も反撃のために触手に魔術を込めた。

 

【構築、装填数96。『魂の撃滅』の肉体付与を完了。術式再装填】

「厄介だね、その魂に直接攻撃する技。まだあちこちが痛むよ」

【俺の『魂の撃滅』を受けておいてよくそこまで動けるな。再生能力はほとんど無いだろうに】

「………これ以上受けたら流石に厳しいからな。対策させてもらったよ」

 

 「魂の撃滅」は魂への直接攻撃。

 肉体ではなく非実体の魂そのものを破壊する絶技である。

 俺の拳が当たらなくとも、掠っただけでその力は気を通り越して発動する。

 

 猫が距離をとったようだ。

 激しく気合を入れて、なんらかのエネルギーを放出しようとしているようだ。

 光がばちばちと弾けた。

 

 なんというか、こっちの世界の戦闘って全体的に暑苦しいよね。

 

 だが、たしかにそれは「対策」と呼ぶに相応しい技術であったようだ。

 真面目な顔で俺を睨み据えて、その成果をお披露目した。

 

「これを習得するのは苦労したよ。ずっと起きてて、この感覚を理解しなけりゃならなかった」

【目覚める気、ってとこかな。厄介だなぁ】

 

 それは気の一種だった。

 ブクブクと沸騰するような、溶岩のような気が体にまとわりつき、小さく爆発を繰り返している。

 

 気とは生命力、気合、意思の力であり肉体のエネルギーそのもの。

 この世界の全ての生き物はこの気で存在していると言っても過言では無い。

 

 それはその覚醒部分、起きて活動するエネルギッシュなパワーのみを抽出した弾けんばかりの生の鎧だ。

 眠りとは正反対の場所にあり、だからこそアザトースの夢たる魔術には少しばかり分が悪い。

 

 俺の元いた世界でも理屈は通じる内容だが。

 俺のいた場所では世界が夢そのものである以上、これを使うと宇宙が崩落しかねない。

 この「目覚めている宇宙」ならではの魔術対応だろうと思われる。

 

 猫がニタリ、と笑った。

 

 再び近接戦を挑まれたので、魔術による防壁を再展開する。

 しかしなるほど、その効果は確かなようだ。

 破壊の権能が宿った拳が突き刺さり、防壁が消し飛んだ。

 

 じゅうじゅうと肉の焼ける音がして痛みが走る。

 痛たたた、酷いことしよるわ。

 

「観念するんだな」

【これで勝った気でいるのか。それはちょっとばかり早計だぞ?】

 

 俺は触手を蠢かせて、障壁と細い触手を盾にして詠唱時間を稼ぐ。

 あっという間に障壁が崩れ落ち、触手がぶち抜かれる。

 だがこんな単純なもの、コンマ一秒で良い。

 

 俺は術式を展開した。

 

【陰陽反転、日はまた沈む。おやすみの時間だ】

「ッ!?!?」

 

 猫の纏う気が不意に穏やかなものに反転する。

 猫がふらりと膝をついて、眠気を振り払うように頭を振った。

 

【ダメじゃないか、魔術神たる俺相手に概念勝負で挑んだら。破壊神なら破壊神らしく、権能一辺倒で磨き抜いてこないと】

「おまえ……!」

 

 絡め手は俺の得意分野。

 あらゆる口八丁手八丁でアザトースを納得させる、俺の領域である。

 

 俺がしたのは気の概念自体に干渉する、ごく単純な魔術である。

 気自体が目覚めを担っていたとして、それにアクセスする経路ほどまた別にあると言うか。

 詳しく説明すると論文になってしまうので説明しないが、ともかくロジックを破る魔術の基礎の基礎。

 

 俺は当然の道理として、覚醒を眠りに反転させたのだ。

 ずっと起きていないように、ずっと寝てもいない。

 その流転のルールを押し付けたのだ。

 

 力の入らない様子の猫に、俺は感慨なくトドメを刺しにかかる。

 丁寧に1万層を超える魔術式を40、重ねに重ねていく。

 

【極層組み換え準備……完了まであと13秒。術式全敷設。仮想接続を確認。極大神格封印術式を起動。魔封波逆解析妨害設置───『かくて万物は再誕する』】

 

 魔封波を元にした神格封印術式だ。

 

 限界まで遠い彼方の地に小さな宇宙を創世して、それそのものを密閉空間と成す。

 破りたければ破るが良い。

 有形の概念すらない世界に放り出されれば、それ即ち消滅あるのみ。

 

 なお、アザトースの権能の極小再現なので超疲れることに留意されたし。

 この場で倒れたい気持ちになりながら、俺は封印術式を完了させた。

 

 猫は彼方の宇宙へ、吸い込まれるように消えていった。

 場が沈黙が満たされる。

 

 

 

 俺は萎れたイカ状態になりながら、お付きの男性と向かい合った。

 

【見逃してくれると嬉しいんだけど。封印解呪は自由に試みて良いんで。というか、破壊神が封じられたのに機能停止しないんだな】

「天使は破壊神が死亡した時のみ機能停止するんです。封印や、あるいは丸ごと消滅した場合はその対象外なのですよ」

【怖。そんな概念から消滅するって、絶対あのアザトースみたいな人の仕業じゃん。近寄らんとこ】

 

 俺は震えて触手をクルクルにした。

 お付きの天使はため息をついて肩をすくめた。

 

「まあ、良いでしょう。どちらにせよ私では手が出せません。戦闘は固く禁じられていますから」

【心配しなくても俺は傷が治り次第帰るよ】

「………ところで伺いたいのですが、そちらの全王様はなぜ寝ておられるのですか?」

 

 難しいことを聞くものだ。

 俺としても、なんでこっちのアザトースは起きてんのと聞きたいところだし。

 

【さあ。寝るのが好きだったんじゃないか?眠りの中に俺たちを夢見るくらい、創世が好きみたいだしな】

「そうですか。優しい解釈ですね。なら、私も永劫世を見守り続けるほど世界がお好きなのだと思うようにしましょう」

 

 

 

 

 なお、もちろん会社には遅刻した。

 会議ブッチしたことをフリーザ社長にぺこぺこ謝罪しつつ、「ついに猫を仕留めました!!」と報告しておいた。

 金一封もらえた。

 やったぜ。

 

 そうして、勤務後家に帰ると。

 悟空君は死んでいたのである。

 





・旧支配者ハスター
激おこ暴れダイオウイカ。
荒ぶっている。
おおおおおおん暴れてやるぞ!!!!!

・ラディッツ
ほぼ原作通りだが、ハスターが羽虫嫌いだったせいかも。
誤解は多分にある。昇天済み。
詳しくは次回。
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