ハスターなオリ主とドラゴンボール   作:ラムセス_

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平和な日々の始まり

 

 しばらく孫家の敷地でお世話になることになったなり。

 

 もちろん俺も生活に貢献している。

 ここでは手に入りにくい調味料や酪農品、娯楽用品などの提供とか。

 軽い家具や家自体の修繕とか。

 なくても構わないが、あると生活が豊かになる部分を狙って魔術でもってちちんぷいぷい。

 

 こういうの、俺の得意技だからね。

 

 俺が事情を話したら、「この家でゆっくりしていくといい」と言ってくれた悟飯さんには頭が上がらない。

 本当に優しい人達だ。

 

 彼らの生活を壊したくなかったが、少しでも力になれればと思って助力を申し出た。

 俺は魔術を大っぴらにしているが、それでも彼らはおおらかで、俺を喜んで受け入れて歓迎してくれた。

 

「黄衣さん!オラ魚釣ってきたから煮付けが食いてえ!」

「あいよ。どれ、ってうぉデカ!マグロぐらいあるやんけ。ちちんぷいぷい」

 

 俺は魔術を使ってさっと謎魚を食べられるように調理した。

 巨大な皿の上に、あっという間に知らん魚の煮付けが完成。

 俺が無から生み出した調味料ほか生姜なども入ってて、ほうれん草なども端にトッピングされている。

 

「うんまそー!!!じっちゃん!魚!」

 

 居間に駆けていく後ろ姿はいつだって元気いっぱいだ。

 悟空君はとんでもなく力が強いのにすごく繊細な力加減をする子で、あんなに元気なのに脆い扉を痛めもせずに開けていった。

 

 あんな力では、ドアノブ握るだけでもぎ取ってしまうだろうに。

 そんなことは一度もないし、孫悟飯老に飛びついて一緒に寝ても、怪我一つさせることはなかった。

 

 慌ててギュインと悟空君が戻ってくる。

 カゴいっぱいの木の実を持って、俺に押し付けた。

 

「いけね、忘れるとこだった!これ、黄衣さんにやるよ!前に美味いって言ってたろ。取ってきた!」

「良かったのか、美味しくてなかなか見つからないから悟空君も大事に食べてたのに」

「黄衣さんの飯のがうまいし!いっつも作ってもらってる礼だ!」

 

 再び慌ただしく走っていく。

 俺はポリポリと頬をかいて、かごを抱き直した。

 

 俺に食事は必要ないが、貰ったのだから美味しく食べよう。

 たくさんあるし、どうせならコンポートにしてみんなで食べようか。

 

 ニコニコした孫悟飯老が、ひょいとキッチンを覗き込んだ。

 

「助かるわい。やはりこんな場所では食事が単調になってしまうからなぁ。畑は裏でやっとるが、どうしても限界がある」

「構いませんよ。俺がいる間だけでも恩返しさせてください」

「それで、怪我というのは治ったのかな」

「………進捗1%以下、と言ったところでしょうか」

 

 俺は苦笑した。

 あの猫との戦いの後遺症で、俺の触手はたくさんもげて体中ヒリヒリと痛んでいる。

 本当は時間を早回しにして一晩で回復したかったのだが。

 ここは時間のルールが異なるから、時間干渉系魔術を根本から見直さねば使えない。

 つまり自然治癒に頼る必要があるわけだ。

 

 俺の自然治癒はそこまで早くない。

 旧支配者ゆえにいずれは完治するが、50年とかそういう感じのスパンになってくるだろう。

 

 これが這いよる混沌ニャルラトホテプとかなら一週間とかで治るんだが。

 それはまあ、存在規模の違いになるだろう。

 所詮は生命の枷に縛られた旧支配者、本物の外なる神とは違う。

 ままならないものだ。

 

 単純なエネルギー量の欠如のため、ドラゴンボールを使えたなら多少は治癒を早められるのだが。

 

 悟飯さんがふうむ、と言って腕を組んだ。

 

「宇宙にはお主ほどの恐るべき使い手がいる、ということか」

「ええ。あの猫みたいな生き物がどれだけ居るかはわかりませんが、奴らが地球で戦えばただでは済まないでしょうね」

「お主とて、武天老師様すら歯牙にかけぬほど強いだろうに。全く世界は広いものじゃ」

 

 憂いを帯びた眼差しは、彼、孫悟空のことを思っているのだろう。

 

 実際、俺はドラゴンボール本編のことはあまりよく知らない。

 ヤムチャが倒れ伏すこと、フリーザ様が53万であること、セルが風船みたいに膨らむこと。

 あとみんなのオモチャのブロリー。

 知ってるのはそのくらいだ。

 

 ………冷静に考えたらミームしか無いやんけ。

 

 俺は細く息をついて、悟空君のくれた果実をしゃくりと口に含んだ。

 甘酸っぱくて美味しい。品種改良されていない野の果実なのにかなり美味しい。

 

「悟空はこれから、多くの困難に直面するかもしれない」

「あの子は優しい子じゃ。だが、その強さを皆が放ってはおかんじゃろう。空から降り注いだ宇宙船の残骸がもたらす因縁も、きっといずれあの子に牙を剥く」

 

 悟飯さんの言葉に、俺はゆっくりと頷いた。

 

 彼には一応、俺の素性を軽く打ち明けてある。

 その上で悟空のことを聞かれたが、俺は知らないと答えるしかなかった。

 

 本当の親元に帰したかったのだろう。

 だが俺は彼がサイヤ人という宇宙種族であることしか知らない。

 サイヤ人というものについても、変身する戦闘民族であるというふわっとした原作知識のみ。

 その母星の位置など知りようもない。

 

 もう少ししたら悟空君が乗ってきたという球状の宇宙船に案内してもらう予定だから、俺の魔術で多少分かるといいのだが。

 

 まあ、なんにせよこれから激動の時代を迎える。

 多くの困難と苦闘が地球にもたらされる。

 「ドラゴンボールの世界では何回も全人類が死亡しているから、あの世界の一般人にだけは転生したくない」なんて冗談もあるほどだ。

 

 どうせ傷が癒えたら立ち去る世界だから、面倒を見る義理はないのだけれど。

 

 こうして会話してその人となりを認識してしまったからには、俺だって放っては置けない。

 悟空君は良い子だ。

 悟飯さんは、親切で物腰柔らかで、聡明だ。

 

 悲しいことは少ない方がいい。

 

 猫に見つからないようにするために、派手なことは出来ないけれど。

 できるだけ二人のためになることができたらなと、そう思うのである。

 

 

 

 

 

 

 というわけで、できることから一歩ずつ。

 

 俺は魔術で作り上げた悟空の影を、ボロボロで全身傷だらけの悟空君にけしかけた。

 

「だりゃりゃりゃりゃりゃ!!!」

【…………】

 

 悟空の連撃をかわして、悟空の影が突っ込んでくる。

 影が拳を繰り出そうとしたその瞬間、悟空は身を翻したようだ。

 

「そこだっ!!!」

 

 悟空の渾身の一撃が炸裂する。

 影が拳に貫かれ、ぷしゅりと内側の空気を失ったように消えていった。

 

 同時にバタンと倒れ伏した悟空がうめき声を上げる。

 

「ぜえ、ぜぇ……もうオラ一歩だって歩けねえ……!」

「お疲れさん。どうだ、自分の動きの荒は分かったか?」

「じっちゃんに『集中力が切れるのが早い』って言われてっけど、やっぱそれかなぁ。うう」

 

 舌を出して苦しそうに息をして、「おーいちち!」と眉を顰める。

 

 孫悟飯さんは昔拳法界で意外と有名だったらしく、隙を見つけては悟空君に拳法の基礎を教えてくれているようだ。

 そこで、俺は彼では提供できない「己との互角の戦い」「怪我と服の破れを気にしなくていい戦闘」を与えた。

 

 俺も当たり障りない戦闘力を得るために一緒に悟飯さんに拳法を教わっているが。

 やはり立ちはだかるのは手加減の問題だ。

 

 旧支配者が触手を振り下ろしたら人間なんてプチッといっちまうのよ……。

 

 今のところ、許可を貰って悟飯さんの動きそのものをコピーさせてもらっている最中だ。

 コピーが終われば、ひとまず悟飯さんと同程度には拳法家として戦える予定である。

 

 まあ、俺の真骨頂は魔法戦士型だから完全物理で戦ったりしないけれども。

 

 俺は悟空を覗き込んでヨシヨシした。

 人間をいじめているみたいでとてつもない罪悪感が押し寄せる。

 彼はサイヤ人だが、姿が人間なのが大変辛い。

 

 子豹に狩りを教えるために棒でつついている気持ちというべきか。

 実体は猫でなく豹なのだが、それはそれとして虐待感が強い。

 

 だが、これは今後の彼のためにも必要なことになる。

 俺は渋面を作って、恐る恐る悟空君に聞いてみた。

 

「あのさ、疲れとるやつとかいる?」

「もうちょっとで動けるから大丈夫!」

 

 サイヤ人の回復力えぐ。

 もうほとんど怪我塞がってきとるやんけ。

 

 俺は慄いて、もう一度悟空君をヨスヨスしたのだった。

 





・家事手伝いハスター
雨漏りや外壁の欠けの修理や、美味しい調味料の仕入れ、料理などをやってくれる。
ドラゴンボールの術式解析中。
きっとこれ、ダウングレード版だ。
この仕組みを作った神格が自ら手がけた大元の術式が見たい気持ち。
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