今にもやられそうな三人の間に割って入ったのはラディッツ君だった。
順当に半分ほど削り切ったところで、戦士三人は体力切れを起こした。
やはりクリリン君の消耗が早いな。
彼のコントロールがなければ戦線は維持できない。
そのままタンクのヤムチャ君がやられればもう勝ち目はない。
そんな時現れたのがラディッツ君である。
ナッパの攻撃を片手で防ぎ、ラディッツ君がふんぞり帰った。
「ふん、止まって見えるぞ」
「な……テメェ、生きてやがったのかラディッツ!」
半笑いでラディッツ君がいきがっている。
いや、ラディッツ君に悪感情はないんだが、どうもこう「いきがっている」としか形容できない負けフラグみたいなのが漂ってるんだよな。
なんでだろ。
修行サボって蹂躙ばっかに明け暮れてたナッパ君より強いのは確かなのに。
ナッパ君が青筋を立てて食ってかかった。
「原住民どもに負けて尻尾巻いて逃げ出した弱虫が今更なんだ?原住民に愛着でも湧いたか?」
「原住民などどうでもいい!俺はあれから一年イカ野郎に扱かれたんだ、試させてもらうぞ!」
「い、イカ?まさかテメェっ……あのしごきを受けたんじゃねぇだろうな!?」
ナッパ君の言葉にベジータ君まで慄く様子が見える。
大袈裟だな。戦闘力養成ハスターコース(フリーザ本部会館1F受付にて:講座終了済み)のなにがいかんのや。
ラディッツ君が拳を振り上げて宣言した。
「そうだ!1年、昼夜すらわからない状態でボロ雑巾のごとく扱われ、足が震えて立てなくなってもなお叩きのめされ!地獄のような1年だった!」
「ラディッツ……お前…」
急に同情的な空気になってきた。
サイヤ人って蹂躙するのは好きだけどされるのはノーセンキューって贅沢な種族だからな。
ナッパ君がスカウターを確認して狼狽えた。
「戦闘力2万1000、嘘じゃねぇ…あの弱虫がここまで成長してるってことは、イカの地獄みてぇなしごきに耐え抜いたってことか。ど、どうするよベジータ!?」
「ふん。ラディッツにしてはよくやったと褒めてやる。イカ野郎は気に食わんが、血反吐吐いて強くなれるのは確かだからな」
「よくやるぜ。俺はもう死んでもごめんだ。まあ、今はフリーザ軍を抜けたらしいが」
ナッパ君が気遣うような仕草を見せる。
俺は引き継ぎが終わってすでに退職済み。
フリーザ社長と個人的に連絡先を交換してあるし、宇宙情勢と運送業向きの伝手も教えてもらった。
すごく親切なんだよな、フリーザ社長。
悪どい会社だけど悪くなかったぜ……。
ベジータ君がゆったりと前へ出た。
「いいだろう。下がれナッパ。先達として少しばかり可愛がってやる」
「ッ!!!」
おおっと、これはまずい。
削れてるナッパ君を戦力温存して、ベジータ君自身が前に出ることにしたらしい。
この辺り、ベジータ君は非常に冷静だからの。
そして一対一を要求されたらプライドに懸けてラディッツ君は断れない。
「望むところだ!俺の力見せてやる!」
「威勢がいいな。多少は見直したが、所詮落ちこぼれは落ちこぼれだということを教えてやる!」
ナッパ君は観戦モードに入ったようだ。
「だがラディッツの野郎、いったいどこでイカに会ったんだ?あのイカの住まいがこの近くにあるってことか?」と頭を捻っている。
どうでもいいけど俺のこと終始イカで通すのやめてくれる?
名前忘れちゃった???ハスタさんですよ。
さて、始まった戦いはやはり一方的なものだった。
いくらラディッツが鍛え上げたとして、所詮は1年ぽっち。
加えてベジータ君は努力家だ。
蹂躙よりも自らを高めることを好む、プライドの高い子である。
俺に手も足も出なかったことにショックを受けて、ずっと鍛錬を続けて来たのだ。
たしか2年前、1回リベンジに来たんだったか。
触手で優しくペシってやったら大人しくなったが、ポテンシャルはあると思うんだよね。
あと100年ぐらい血反吐吐いて戦い抜いた上で権能を授かれば、もしかしたら猫に届くやもしれない。
まあ、ポテンシャルという意味なら悟空君の方が上だが……半分親の欲目が入っているから参考にはならん。
「動きが遅いぞッ!そんなものかラディッツ!」
「クソ、が……!」
「危機を直観する精度に関しては目を見張るものがあるが、全てが貧弱!お前はこの程度だということだ!」
強烈な蹴りが腹に決まり、「ゴハァッ!?」という声を上げて岩肌に突っ込んだ。
割れた岩石が地面に落ち、土煙がもうもうと立ち込める。
ニタリとベジータ君が笑った。
「次はどいつだ?どいつもこいつも、あのイカ野郎の弟子にしてはあくびが出るほどへぼい奴らだがな」
「それはどうかな?」
出て来たのはピッコロ君だ。
消耗が激しいヤムチャ君が、這いつくばりながら「ピ、ピッコロ!?」と顔だけをなんとか上げたようだ。
さて、どう出るか。
ピッコロ君が空中で構えを取ると同時に、ドロリと流体金属の如きものが空間に出現した。
それは滑らかに動き、流れ、不定形に揺らめいている。
ベジータ君が片眉を上げた。
「ほう、ナメック星人か。不思議な力を使うと聞くが、そんなもの一匹二匹いたところで意味などない。いいだろう、かかってこい」
「余裕でいられるのも今のうちだ!」
爆発的な速力で、ピッコロ君が近接戦を仕掛けた。
攻撃に連動して液体金属が斧の形状に変化して、容赦なくベジータ君の首を落とそうと振り下ろされる。
それを嘲笑ったベジータ君が動いた。
斧を破壊せんと、強烈な拳が斧の横っ腹に叩き込まれる。
しかし。
それはカケラも斧にダメージを与えることなく、拳に痛みを残すだけだった。
慌ててべジータ君は痛みに呻きながら斧を避けたようだ。
「馬鹿な!なんて硬さだ!」
「この宇宙で最も硬い金属だそうだ。この通り、防御にもなる!」
カッチン鋼、と呼ばれるこの宇宙独特の鋼だ。
牽制に放たれた気弾が、再び液体と化したカッチン鋼の形状変更によって禍々しいデザインの盾となって現れる。
ピッコロ君が少しだけ距離を取る。
そのまま気を集中する姿勢を取って、同時に牽制であろうカッチン鋼の粒により雨を降らせた。
凄まじい土煙と爆撃のような破壊音。
カッチン鋼は超重量だから、少量をただ落下させるだけでもかなりの攻撃力となる。
「雑魚が面倒なことを!舐めるなァ!!」
「!!!」
カッチン鋼の雨が気に弾かれて吹き飛んだ。
周囲に被害を与える前に具現化を解除したようだが、それはピッコロ君も織り込み済みのようだ。
チャージを終えた気の一撃が、ベジータ君を貫かんと迫る。
「魔貫光殺砲!!」
「!」
凄まじいエネルギーの奔流だ。
ナッパ君ぐらいなら軽く貫いていたことだろう。
だが、この程度ではベジータ君を倒すには足りないだろう。
咄嗟にガードの姿勢に入ったベジータ君に、ほとんどを防ぎ切られてしまっていた。
土煙まみれになったベジータ君が、口から唾を吐き出しながら鼻で笑って見せた。
「ふん。たいそうな必殺技だったようだが、豆鉄砲と変わらんな。その盾はちょいとばかり厄介だが」
「まさか俺の技がこれだけだとでも思ってはいないだろうな?」
「なに?」
「貴様の気を解析する時間は十分稼げた。本番と行こうじゃないか」
見せつけるようにピッコロ君が巨大な気を練り上げ、立ち昇らせる。
ベジータ君は邪魔もできたろうに、正面から打ち破ってやるつもりらしい。
待ちの構えだ。
こう言うの、サイヤ人の悪いところなんだよな。
二つのカッチン鋼による巨大な盾に、「封」という文字の刻印が浮かぶ。
俺と一緒にTV越しに見ていた武天老師様が目を見開き、「ま、まさかあれは!」と驚愕の様子を見せた。
「対象定義確認、権能構成、我が父がその身に受けた力を思い知れ!」
神術・封神封魔法。
魔封波ではない。
これはそれを元にした、権能によるルールの押し付けだ。
ぐにゃんと空間が歪み、気と共に大盾に吸い込まれていくベジータ君が、「ふ、ふざけるな、クソッタレェエエエ!」と叫んだ。
凄まじい気を爆発させ、無理やりに権能のルールをかき消していく。
その純粋な気の総量によって術が解かれ、ベジータ君が自由の身となる。
ニタリとベジータ君がしたり顔をした。
「はぁ、はぁ、驚かせやがって……なに?」
「弾かれることは想定済みだ。そういう技なのだからな」
自身の体が半分透けていることに、ベジータ君はようやく気づいたようだ。
気の総量もガクンと落ち込んでしまっている。
「神術・封神封魔法。貴様の気と存在そのものをカッチン鋼に封じ込めた。これを取り返すにはカッチン鋼を破壊するしかない」
「ち、力が入らん…!」
「俺を殺しても無駄だぞ。俺が創造したカッチン鋼は俺の死後も残り続ける。加えて、俺がもしカッチン鋼を消せば……永劫、貴様はそのままだ」
実体化の解除と破壊は別のものだからな。
カードゲームにおける「破壊」と「除外」の違いみたいなもんだ。
カッチン鋼を破壊するか術者が解除するかだけが、この権能の解除方法になる。
権能バトルは無効化されるところからスタートだ。
それを読んで10手20手先まで見越して術を構成しなきゃダメよ。
ハスターさんとの約束だ。
ちなみに、正しい対処法は仕掛けられた時に逆解析して対象をその辺の石とかに押し付けることである。
反射対策は俺がバッチリ指導したから、逸らすのが正解だ。
もちろん対象変更干渉対策も教えたが、そこまでピッコロ君では手が回らなかったらしい。
完成系としては、わざと対象変更干渉を弱く作って敵の動きを誘導するトラップ的な動きになるだろう。
ベジータ君は怒りに震えて気を燃やした。
「ゆ、許さんぞ貴様ら……全員消し飛ばしてやる!」
「あり。いいとこピッコロに持ってかれちったか?」
そこに、満を持して悟空君が到着したようだ。
・封神封魔法
魔封波を元にした界王神系列権能技。
カッチン鋼の内部に敵の存在そのものを閉じ込める。
というか練り込める。
不発でも対抗に要した分は持ってく仕組み。
永続デバフ技。ハスターの戦いのいやらしい部分を継いだ。
・現在のハスター
新しく宇宙運送業を始める予定。
起業の準備をしつつバイトで稼いでる。
社長「まあまあ、そう急がなくても良いじゃありませんか」ってやんわり田舎に押し留めようとしてる。