ひとまず、地球側の死者はドラゴンボールにて対処する方向で話がついた。
だが問題は1年後というタイムスパンや、更地になった街がそのままであることだ。
いくらドラゴンボールでも、それは取り返せない。
「っちゅーわけで、ナメック星というところに行ってそっちのドラゴンボールを使わせてもらうって話になったんだ」
「ベジータが狙ってるって話ですし、それも無視できませんから」
悟空君とクリリン君がそのように教えてくれて、俺はうむうむと頷いた。
今、ブルマちゃんは俺の持ってる宇宙船の中を確認しているところだ。
星図がバッチリ入ってるから、ナメック星を調べればすぐにそこへ目的地設定が可能。
1人用なので今回の旅には使えないが、見本としては完璧なものだろう。
みんなが乗れる大きめの宇宙船ということで、ブルマちゃんは昔神様が使っていた宇宙船の修理に取り組む予定だ。
「ところで黄衣。貴様はあのサイヤ人どもと同じ仕事をしていたらしいな。土地侵略の仕事か。人のことは言えんなァ?え?」
「………うす。俺が至らなかったからっす」
ニタニタ顔のピッコロ君にチクチク責められて、おれは全身の触手をクルクルにした。
羽虫だと思ってたんだ…でも違った…違ったのに続けてた……。
クリリン君もこれには「お金のためにそういうことするのは最低ですよ」と苦言を呈したようだ。
俺はポンとイカ姿に変身して、沢山ある目を全部瞑って体を丸めた。
顔を見られたくなかったからだ。
反省の色の見られないデカイカの姿に、悟空君が顔をくしゃくしゃにした。
「そりゃないぜ。じいちゃんも言ってたろ、悪ィ事したらごめんなさいするんだって」
「ご、ごめんなしゃい……薄汚い金で美味いもん食ってました……」
様子を見守っていた悟飯君が「黄衣さん、悪い事したの?」と純粋な目で問いかけてくる。
トドメを刺され、俺はイカの干物になった。
皆は愚かなイカの干物から興味を失い、相談に戻っていく。
「しかし、ベジータがドラゴンボールを手に入れたらまずいな。あいつなら絶対に復讐に来るだろうし」
「俺のかけた封印も、さすがにドラゴンボールを使われたら解除されてしまうだろう」
「フルパワーのベジータか。ちょっとワクワクすんな!」
「あ、それなら大丈夫だと思うよ。社長がベジータのこと止めるって言ってたから」
干からびたイカのカラカラの言葉に、皆が視線を集中させた。
テロンとした触手を上げてぴらぴら振る。
「観測した結果、ナメック星のドラゴンボールは三つ願いを叶えられるっぽいからね」
社長と相談の結果、一つは地球のドラゴンボールの強化・再装填に、もう一つは社長の不老に、最後がナメック星のドラゴンボールの保護機構作成に使ったらどうかという話になった。
ともかく、先回りした社長がベジータ君を防ぎつつ穏便に集めるらしい。
本当は社長は不老不死を願うつもりだったようだが、不老不死は問題も多いから止めたのだ。
不死を願うと概念系嵌め殺しのオモチャにされるし、猫みたいな破壊の権能には無意味だし。
生に飽くと自殺もできなくてマジで地獄だし。
どうせなら任意のタイミングで自己復活可能な力を求めたほうがいいとアドバイスしておいたのだ。
色々考えて、今回は不老のみにしたようだ。
不老は取り得だからあって損はないしな。
地球のドラゴンボールに関しては、今回だけのリチャージと再復活不可を撤廃してもらうといいだろう。
スパンも短くしてもらえたらなと思う次第であるが。
それは向こうのドラゴンボールのスペック次第か。
ついでに、今回の旅で次期神候補も見つけられればなと神様は思っているらしい。
宇宙船を見終えて帰ってきたブルマちゃんが「話決まってるなら先に教えておいてくれればいいじゃない!」とぷんぷん怒った。
な、何も考えてなかったよ。すまない……。
ますます縮こまって俺はカラカラに干からびた。
天津飯君の肩に乗る落とし子も「きゅむ…」と反省の色を見せている。
いや違うなこれ、「本体がご迷惑をかけて恥ずかしいです」の感情だわ。
落とし子君や、ちょっとこっちおいで。
「ブッ」と変な音を出して落とし子はそっぽを向いた。
抜け毛にまで反抗された!!!
泣きの涙で震えていると、全然気にしない悟空君が「おーい、ブルマ!なんかいいトレーニングルーム作れねぇかな!」と手を振った。
移動中暇だからということらしい。
ブルマちゃんは困った様子を見せた。
「流石に無理よ。神様の使ってた宇宙船を再利用するとして、そんなスペース取れないわ。一から建造すれば別だけど」
「俺が神域貸そうか?無限に広くてどんだけでも暴れられるよ」
「本当か黄衣さん!サンキュー!」
ニッコニコしてシュッシュと拳を突き出している。
ピッコロ君も好戦的に微笑んだ。
「今の俺がどれだけ出来るか試したい。相手になれ、孫悟空」
「お、ピッコロなら相手にとって不足ねぇ!でもあの封印のやつは勘弁してくれよな!」
「ふん。どうだかな」
いいライバル感だ。
ヤムチャ君が「宇宙船に入るのか、この人数」と一言つぶやいたので、ブルマちゃんは眉間に皺を寄せたようだ。
「完成までに誰が乗るか決めときなさい。天下一武道会形式でいいんじゃない?」
「!!!」
その時、武道家たちの目に光が奔る───!
みんな好きだねそういうの。
俺は自分の宇宙船で行くから除外だが、ブルマちゃんもちょっとばかり楽しそうだ。
あと誰もしおらしいイカについて心配してない。
自業自得だって?そうだね……。
そんなわけで、ナメック星に誰が行くのか大会が開かれたのであった。
「あの、猿どもめがァァアアア!!!」
フリーザは激怒と共に震えた叫び声を上げた。
放たれた気だけで執務室が半分崩落したが、この宇宙船に穴を開けないだけ気を使っていたと言えるだろう。
秘書であるカタツムリ型宇宙人が「ひぇっ!?」と身を縮こまらせて机の裏に隠れた。
フリーザは荒い息をついて拳を振り下ろしそうになるのを何とか堪えた。
「……ナメック星まで到着するのにどの程度かかる予定ですか」
「あ、あと30日を予定しております。ベジータ達とほぼ同じタイミングになると思われます」
「奪い合いならばギニュー特戦隊に任せればよいでしょう。だが罷り間違っても、アレが到着した時に集め終わっていないのはまずい」
アレ相手に、フリーザは「ドラゴンボールを集めておく」と言ってある。
これ以上の失態は晒せない。
アレは気が長く弱者の事情を汲んでくれる方だが、それが無限に続くわけではないことは重々承知している。
アレの根本は、自身以外の全てを愛しいオモチャとして扱う非人間性だ。
他人への気遣いはよくできた置き物への気遣い。
他人への心配は落としたぬいぐるみへの心配である。
少しその気になるだけで、フリーザ軍はフリーザの命もろとも消滅するだろう。
「彼我の実力差もわからぬ野蛮な猿が…こんなくだらないことで手間をかけさせて、ただでは死なせませんよ…なぶり殺しにしてくれる……!」
「ひっ、おやめくださいフリーザ様!これ以上は宇宙船が!」
その声でなんとか、再び昂る力を抑えることができた。
あのイカは有害だが、博識で利用価値がある。
なんでも、破壊神とは生物が権能を授かったものらしい。
神の階層の頂点には、全てを統べる神が立つという。
フリーザの目的は、その全ての頂点に立つことだ。
自身のプライドにかけて、己の上に立つものなど認めない。
そのためには長い時が必要になる。
気長に、慎重に、焦らずことを進めなければならない。
あのイカもあと40年もすればいなくなると聞いている。
ならば、今は忍耐の時だ。
必ず猿どもを血祭りにあげて、イカとの良好な関係を維持するのだ。
「事業内容も変更すべきでしょうね。現在の資金を元手に、よりアレに目をつけられにくい商売に転換する。どうせ受け継いだ事業に則っていたにすぎませんから、形式などどうだっていい」
全ては己が頂点に立つために。
そのように、フリーザは怒りと焦りに震える腕を押さえたのであった。
・邪悪なイカ
羽虫型の猫ちゃんばっかで流石に愛が薄れてる。
これでも本来よりめちゃくちゃ愛情深い方。
所詮旧支配者よ。
それよりポンな性格を治したほうがいい。
・ニャルニャル
やさぐれるイカに涙が止まらない。
可哀想……我が夫可哀想……そんな羽虫プチプチ潰して憂さ晴らししていいんですよ?
ほら、羽虫が苦しむ声聞くとちょっと気分晴れますよ???
思念波送ろ。みよんみよん。