長老の家は交通の便の悪そうな高台の上にあった。
ナメック人の男性1人も一緒についてきている。
男性の声に従い扉が開くと、なかのナメック人が慄いて声を上げた。
「なんて邪悪な気配だ!なんてものを連れてきてくれた!?最長老様に近づくな!」
「待てネイル。一応話を聞いてくれ」
俺はちょっとだけ膨れた。
俺を邪悪の権化みたいに言うやんけ。
ネイルと呼ばれたナメック星人に俺は一礼した。
「俺の目的はナメック星人の保護だ。ドラゴンボールもあれば嬉しいが、どうせ今は難しいだろう。普通に避難させる申し出になる」
「……言葉に嘘はないようだな。最長老様、いかがしますか」
最長老、というのは奥にいる老人だろう。
男女どっちだこれ。いや、まさかこれは俺が勘違いしていて、根本的には性別がないのか?
巨大な巻貝に似た椅子に深く腰掛け、最長老様は穏やかに微笑んだ。
「貴方様は……すこし、貴方様を見せていただいても構いませんかな」
「どうぞ、龍神に連なるものよ。俺の内を見るのならばどうぞご随意に」
しばし俺の頭に手を翳してそれを読み取る。
礼儀正しい人のようだ。
内心を読み取る術があるのに、その行使に人の許可を求めるとは。
しばし俺の内側を探ってから、最長老様は大きく息をついたようだった。
「………貴方は本当に、邪悪なもののようだ。人を人と思わず、悪を悪と思わぬ厄災」
「うっ」
「だが、だからこそ貴方は隣に善なるものを置くべきでしょう。今貴方の周りにいる方達は、善なるものだ。我々を助けんと欲するのも、その方達の影響ですね」
まあ、その通りだ。
彼らも人間だが、キモい羽虫の見た目をしている。
助けないとと思うけれど、どうしても動きが鈍るのは本当のことだからだ。
そんな時にブルマちゃんが「ねぇ黄衣さん!ナメック星の人たちが危険だわ!」と当然のように言ってくれたから、俺は動いている。
それが原動力になっている。
彼らには正しさの光がある。
俺は眉間に皺を寄せ最長老様を見上げた。
「やっぱり俺って邪悪?」
「私がこれまで生きた中で、これほど邪悪で、これほど強大なものは見たことがありません」
「そんなにかぁ」
俺はチリチリと触手を丸めた。
そんな言うほどでもないと思うんだけどなぁ。
「いいでしょう。私は後数日の命ではありますが、皆を安心させるためにも、貴方と共に行くことにさせてもらいます」
「それは良かった。俺の仲間も安心するよ」
俺が神域に繋がる大きな扉を出現させると、ネイルがひょいと最長老様の座る椅子を持ち上げた。
流石、屈強な種族のようだ。
扉の中に椅子ごと運び込んでいく。
中では神域のホール部分に繋がっている。
落とし子に案内を任せているから、迷子になったりはしないはずだ。
一応悟空君たちの生活スペースにも繋がっていて、時間が同期している時のみ行き来できるようになっている。
また、通常時間スペースにも体を動かしたり食事をしたりする設備も完備。
ナメック星人も快適に過ごせるはずだ。
最長老様さえ避難してしまえば、あとは皆、特にトラブルもなく後に続いてくれた。
そんな簡単な交渉を7回。
あと逸れて岩の下敷きになるなどして動けなくなったナメック星人を幾らか回収すれば完了だ。
一時間はあっという間に過ぎていったが、僅かな死者を除いて100ほどのナメック星人は全て避難は完了した。
ちなみに、フリーザ社長はまだ粘っているようだ。
ベジータ君が手を抜いているのはそうなのだが。
ベジータ君自身、出力が落ちてきているのもあるだろう。
やはりドラゴンボールの出力には限りがあったのだと思われる。
だが、それでも限界が近いようだ。
いよいよ倒れ伏すフリーザ社長に、俺は慌てて巨大なイカ姿で割って入ることにした。
気を纏わせた手刀によるとどめの一撃を、触手でもって受け止める。
硬い表皮は僅かな傷もなくその一撃を受け止めた。
【どうも、フリーザ社長。無事ですか?】
「なっ、貴様は黄衣!!!どこから嗅ぎつけてきやがった!」
「っぐ………!……助かりましたよ黄衣さん」
助かりましたと言う割には本気で屈辱的な顔のフリーザ社長である。
まあ、社長としては自分で勝ちたかったのは本当だろう。
武闘派な社長なことだ。
お偉いさんは後ろで指揮してるのが常だって言うのに。
俺は距離を取るベジータ君に、触手を蠢かせた。
【強くなったな、ベジータ君。見違えたぞ】
「ふん。余裕をこいていられるのも今のうちだ。貴様は俺がこの手で引き裂いてやる」
【その意気やよし】
俺が触手ざわりと広げると、フリーザ社長が後ろですんごい邪悪な笑顔でニタリ…って笑ったようだ。
社長、感情のジェットコースターかよ。
【ただそうだな、まずは君を見習って小手調べだ。サイバイマンみたいな感じで、ぶっ飛ばせるものならぶっ飛ばしてみるといい】
そう言って、戦士たちを神域から解放する。
もちろん、悟空君たちのいるスペースの内部時間は実に3年もの月日が流れている。
内部に俺の分身も派遣したから、事情説明もバッチリだ。
好戦的な顔付きで現れた戦士たちのその顔ぶれに、ベジータ君が僅かに目を見張ったようだった。
「へへっ、久しぶりだなベジータ」
「カカロット……それに貴様は地球のナメック星人か。所詮今の俺の敵ではない。軽く揉んでやろう」
「それはどうかな?孫、貴様が核だ。前に出過ぎるなよ」
「き、緊張するなぁ。俺なんかが本気で行けるのか?」
現れたポケモン…ならぬ戦士たちに、ベジータ君はその強大な気を解放した。
その6割ほどの気でもって、悟空君が相対する。
ベジータ君が目を見張ってその気の大きさに驚いたようだ。
気封印プラス重力部屋無限組み手がすごい効いたようで、凄まじい勢いで成長したんだよな。
気封印は分からんが、重力が大きいだけでなぜ成長できるのか。
そういうものだと納得するしかない不思議である。
俺もブラックホールに飛び込むと少し動きづらいし、真似してみたら強くなるかもしれんなぁと思うなど。
「これでも敵わねぇんか。でも勝負は分かんねぇかんな。行くぞベジータ!」
「コケにしやがって…叩き潰してやる!!」
激しい空中インファイトが始まる。
まずは悟空君が一対一を望んでいるからだろう。
ピッコロ君たちは好きにさせるつもりのようだ。
サイヤ人ってこう言うの好きよね。
その間にフリーザ社長を俺が回復させれば、気は回復せずとも肉体ダメージは消えたらしい。
社長は「ありがとうございます、黄衣さん」と言って立ち上がった。
もう青筋ブチブチである。笑顔だけど全ギレしている。
怖。話しかけんとこ。
戦況を見守るピッコロ君にすすすっとすり寄る。
「今回の戦計画は?」
「まず孫の気の済むまで戦わせて、ダメそうならクリリンが攻撃を逸らしながら隙をついて俺が封印する」
「悟空は負けず嫌いだから、なんだがんだ俺らが出る前に勝つかもしれないですけどね。悟空には界王拳があるし」
「うーん作戦とは」
俺はおおらかな作戦にニコニコした。
本当は悟空君を前衛に出してクリリン君で戦況コントロールしながらデバフループ決めてくのが一番いいのだが。
最善が最も個々人に合うとは限らないしな。
まあ、皆が納得しているなら俺が口出しする必要もあるまいよ。
フリーザ社長がなんとか心を持ち直したのか、俺に話しかけてきた。
「それで、この方達は?」
「今戦ってるのは悟空君で、俺の息子みたいな感じ。あとの2人は悟空君の戦友です」
「なんと、お子さんでしたか。道理でお強い。指導もしていたんですか?」
「多少は。直接の弟子はどちらかというとこっちのピッコロ君ですけどね」
「ほう、そこのナメック星人の方ですか」
値踏みするような視線に、居心地悪そうにピッコロ君が眉間に皺を寄せた。
「ナメック星人は龍神の眷属で、生まれながらに多少の権能を持つようだからな。神の権能の制御なら俺が一番詳しいから教えてみたんだ」
「……それこそがドラゴンボールを生み出した力だと?」
「そうだよ。願いを叶える、という龍神の権能だ。ドラゴンボールはその権能を下ろす媒体でしかない。根本は術者の権能だから、術者が死ねばドラゴンボールも機能を失うんだ」
神……とフリーザ社長が静かな声で呟いた。
ピッコロ君が俺を肘でどついて小声で囁いた。
「おい、碌でもないやつに碌でもないことを教えるな」
「調べればすぐわかることじゃん。それにこれ隠してもない事実だと思うよ」
「貴様はどうしてこう……もういい」
呆れられてしまったようだ。
なんか俺、みんなの間ではちゃらんぽらんなやつだと思われてる節があるんだよね。
ぷいっと膨れて遺憾の意を表明する。
そんなピッコロ君の方も、改めてみるとすごく大きな気配がする。
俺に気は分からないが、きっと戦闘力を測ったら結構な数値になるだろう。
中で最長老様の権能でも受けたのか、その素質が大きく開花しているようだ。
権能の方も成長しているように見える。
見上げる上空で激戦を繰り広げる悟空君もまた、輝かんばかりの才能の煌めきをみせている。
これでは、ピッコロ君に教えた新技を使う機会もなさそうだ。
俺は目を細めて、戦いの行く末を見守ったのだった。
・スーパーベジータVS界王拳悟空
力の天秤が激しく揺れるので、お互い舐めプして戦いが長引く接戦。
アニメ十話分ほど戦ってる。
・フリーザ
馬鹿め!!!掛かったな!!!
の顔でベジータを見た。
破壊神級の相手に突っ込んでいくなど所詮猿ということですか!ほーっほっほっほ!!!
と、思ったら本人戦わなさそうでちょっとガッカリ。