激闘とはいえ、ずっと見ていれば飽きもする。
俺は自分のパイプ椅子を出現させてから、ちょっとだけで考えて隣のいい具合の草地にも椅子を出現させた。
せっかくなので社長の分のちょっといい椅子も出してみたのだ。
社長はニコニコと「ありがとうございます、ちょうど座りたかったとこでしたよ」と言って鷹揚に腰掛けた。
あ、どぞどぞ社長、お先どうぞ。
のんびりと観戦する。
悟空君は界王拳二倍を使ってベジータ君を押していたが。
ベジータ君もここに来て全力を出した。
気でもって擬似的な月を出現させ、大猿に変身したのだ。
【俺は、俺は伝説のスーパーサイヤ人になったのだ!!!貴様如きに負けるはずがない!】
スーパーサイヤ人って大猿のことなんかな。
再びベジータ君が盛り返してきてはいるが、動きに精彩を欠いている。
仕留めきれていないようだ。
有識者たるフリーザ社長の方を見ると、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
「所詮はバカな言い伝えですよ。あくまでこれはドラゴンボールの力。奴に何かあるとは思えませんから」
「なるほど。言い伝えかぁ。………んー、無くはない、のか」
見応えのある虫相撲を見ながら、俺は若干首を捻った。
サイヤ人2人の戦いを見て気付いたが、おそらく特定細胞が体内で増殖することで気の爆発的な上昇が見込まれる仕組み…なのだと思う。
すでに悟空君ならば条件は満たしているから、いつでも発動可能だとは思われるが。
まあ、急がすとも構うまい。
火事場の馬鹿力のようなもので、基礎力の方が大事だしな。
俺はその話題に興味を失って、ハラハラと戦いを見守るクリリン君達を尻目に雑談に入った。
「社長、普段内勤ばかりで全然動かれないのにすごい強かったですね。何か秘訣でもあるんですか?」
「ほっほっほ。まあ、私も生まれてこの方戦いで努力したことなどありませんでしたので、秘訣と言われましても」
「おお、生まれつき強いタイプ!本気出したら凄そう」
生まれつきこんなにでかいカブトムシは初めて見たかもしれん!
そのように俺が目を丸くすると、フリーザ社長は多少溜飲を下げたようだ、
まあ確かに戦闘しっぱなしのベジータ君とはまるで条件が違うし、負けても仕方あるまいよ。
俺だって今まで社長が戦ってるとこ見たことなかったし。
社長は上機嫌で「このようなことに巻き込んでしまいどうお詫びすればいいか…ぜひ本社へ来てくださいませんか?埋め合わせをさせてください」とニコニコと俺に提案した。
なんと誠実な社長であろうか。
ここで断るのも礼儀に反するので、「ぜひとも!」と答えて頷いた。
ことの次第をちょっぴり見守っていたクリリン君が「あ、怪しい…怪しすぎる……!」と呟いている。
別に社長は怪しくないのに。
凄く悪そうな羽虫の見た目をしているけど、人間らしい人だ。
嘘は自分の利益になる時しかつかないし、悪事は好きだが強者の前で取り繕うこともできる。
超悪い人だが、俺相手に怪しいそぶりはあんまりしないのだ。
「そういえば、ギニュー先輩はやられたんですか?あの体を入れ替える技があれば早々負けはしないと思ったのに」
「!?黄衣さん、貴方彼の技をご存知なのですか!?」
「前に仕掛けられたんで。せっかくなので俺の体渡してみたんですけど、そのまま肉体に潰されて魂が弾け飛びそうになったので慌てて救護室に連れて行きました」
「…………お詫びは必ず」
「気にしないでください。別の身体になってみたいっていう願望は俺もよくわかりますしね」
いいよね、俺も定命の人間になってそのまま穏やかに生涯を終えたいもん。
俺は魂こそが本体だから体なんて入れ替えても肉体が弾け飛ぶだけだけど。
同じくギニュー特戦隊のグルド先輩も「時間停止」の秘技を扱うからあれも必見だ。
あれのおかげで俺もこの世界の時間の組成を理解したようなものだし。
こう、パイみたいに薄い層が重なって一本まっすぐに伸びているんだよな。
ライン工場みたいな。
だからこの世界において厳密な意味での過去改変は不可能だ。
過去を変えた段階でラインが分岐してしまい、未来には波及しないからだ。
そうして過去改変を続けると、無限に路線が増えていき。
いずれ宇宙は飽和して崩壊する。
なんでこんな繊細な時間の作り方にしたのやら。
「あ、そうだ。ひとまずナメック星人は保護したから、今後は地球に仮滞在しながら移住先とドラゴンボールの修復をしてもらう予定です」
「!!あの龍が死んでしまいましたが、復活可能なのですか!?」
「うん。まあ、術者さえ生きてれば全然OKですよ。最長老もご高齢だから、次世代に受け継ぐみたいですけどね」
「ならば私のところで次の星に良い場所をご提案しておきましょうか。我がフリーザ軍にはより良い星が揃っていますよ」
「ううむ、なんかナメック星の人達って割と潔癖症だから、他の人が住んでたとこは嫌かも。元々無人の星でいい場所あります?」
「なるほど……それは難しいですね。後ほど調べさせます」
そんな感じにまったりしているうちに、決着がついたようだ。
先ほどから悟空君が押され気味の中、こそこそ元気玉を集めていたからな。
それを体が弾けるギリギリまでまで溜め込んで、全力で射出したらしい。
俺は気を持たないから元気玉に参加できないが、任意で中の神域のナメック星の人たちに提供を呼びかけさせてもらった。
星自体も危機的状況でたくさんの生命力を放っていて、結構集まったようだ、
それがベジータ君に炸裂、ベジータ君はノックダウンして大猿化も解除。
同時に体内のエネルギー過多で全身から血を噴いて、相打ちみたいになった悟空君が倒れ伏す。
ベジータ君もまだ生きているようだ。
「クソッタレぇ……!」と絞り出すような声を出している。
俺は椅子から立ち上がって、とことこと見学しに行った。
「ふーむ、どうする?悟空君的に殺しはアレだろ?」
「………つ、次は全力の時戦いてぇなぁなんて思ったり…」
俺が悟空君を治療すると、息も絶え絶えに悟空君が笑う。
まったく、無茶しおって。
俺がいなけりゃ死ぬしかない内臓損傷具合だったぞ。
ピッコロ君が「サイヤ人とはいつもこうなのか?」と嫌そうに頭を抱えている。
それを聞いた社長が「こうですよ。ですが黄衣さんのご子息なだけあってかなり理性的な方です。他のはもっと手に負えません」と訳知り顔で頷いた。
社長、サイヤ人の制御には昔から苦労してるもんな。
サイヤ人、謎にこき下ろされてる件。
俺は悟空君の願いを聞き入れるべく、うむと一つ頷いた。
「仕方ない。なら俺がなんとかしましょう」
「ええっ!?なんとかって、できるんですか!?」
「クリリン君。俺を舐めてもらっちゃ困る。ドラゴンボールでできることは、俺が本気を出せば大体できると言っても過言ではない」
実は過言で、気を扱う作業は俺では代替できないんだがな。
まあでもあれだ。俺も怪我がなければもっといけるから。うん。
「ちちんぷいぷいー」と魔術を構築。
160層の魔術をグネグネと編み上げて、気絶したベジータ君の体に結えつける。
そしてオマケに首輪をひとつ。
別に意味はないが、見えてた方が何かと安心できるだろうという処置だ。
もちろん実体のある首輪ではないので破壊はできない。
「はーい、これで条件を満たさない限り、他人に危害を加えられません。位置情報把握できるし、首輪を通じて生命力を外から吸い出せます」
「ほう!行動を制限しつつエネルギータンクとして放し飼いにできる!いい技術ですね!」
「おい黄衣、生命力機能はオミットしておけ。地球についたら総スカンを食うぞ」
社長が目を輝かせて笑顔になるのに対して、ピッコロ君がため息をついて忠告した。
まあ……うむ。
元々は社長に提出するために作った技術だし、ちょっと悪どいのは否定しない。
地上げに際して反抗する住人は殺していたからな。
死体などによる環境悪化を防ぐための清掃に費用もバカにならなかった。
だから「原住民を生きたエネルギータンクとして再利用しつつ新たな産業に繋げる手法」として提案するつもりで考えた技だ。
もちろん、今はそんなことするつもりは欠片もない。
どうでもいい羽虫だと思ったからエネルギー化した方がお得だろうと思っただけで、流石に人間にそんな酷いことをするつもりは無いからな。
今回ベジータ君に再利用したのは、単に犯罪者なので大人しくしつつ、食い扶持稼ぎに困ったら自身のエネルギーを直接売れるようにとしただけだ。
俺が直接見張れるように地球に連れてくから、多少は働いてもらわないと困るし。
俺が外部提供するつもりがないことを社長に話すと、社長は至極残念そうな顔をした。
「そうですか。気が変わったら教えてくださいね」とのこと。
この人も大概凄く悪い人なんだよなぁ。
ピッコロさんが「本当に大丈夫なのか、おい」と梅干しみたいな顔をしている。
大魔王に言われたくないわい。
倒れ伏していた悟空君が、ようやくある程度息が整ったようだ。
気の欠乏でよろよろと立ち上がり、こちらへやってくる。
「へへっ、オラも結構やるだろ」
「悟空はすごいよ。でも俺も結構頑張ったのに出番なしかぁ。ちょっと惜しい気がするかも」
「どうでもいいが、これからどうする気だ。そこのサイヤ人を放っておくのが」
俺は気を失った首輪付きベジータ君を見ながら提案した。
「社長、一旦ベジータ君はこっちで預かりますよ。地球と合わせてそっちの犠牲者をドラゴンボールで復活させたい。死者はいますか?」
「ギニュー特戦隊と、ザーボンさんとドドリアさん、キュイさんが。単独で捜索中にベジータに刈り取られまして」
「おお。ゲリラ戦の王者やん。ならナメック星のドラゴンボールの復活を待ってから、3つの願いは地球のドラゴンボールの即時使用と強化、社長の不老、ドラゴンボールの保護機構作成。で、地球のドラゴンボールで1年以内にサイヤ人に殺されたものの復活、ぐらいかな」
「ギニュー特戦隊はあれでも替えの利かない人たちです。頼みましたよ」
頷いて合意成立。
そのまま社長は一旦帰るようだ。岩陰に隠れていた円盤型の宇宙船に戻っていく。
ナメック星のドラゴンボールがどれほどで回復するのか未知数だしな。
またドラゴンボールが復活した時に地球に来て貰えばいいだろう。
悟空君はフリーザ社長の強さも見ているからちょっぴりそわっとしている。
だが、今はその時ではないということで我慢しているようだ。
えらいぞ悟空君!
「さて、俺らも帰る……前に、一旦避難したナメック星人達の家財を持ってきてもらおうか。持ち出したいものが山ほどあるだろうし」
「ここに住むのではダメなんですか?」
「たぶん向こう10万年は絶望的な異常気象になるよ。最悪全球凍結するかも。今逃げた方が無難だと思う」
すごい土煙が空を舞ってるし、地殻にも甚大なダメージが与えられている。
やるとしたらドラゴンボールに星の再生を願うしかないだろうが、温厚な彼らはそれをしないと思われれる。
とりあえずブルマちゃんに通信しようか。
ピピっと魔術で念話を電波体に変えて通信。
『よーっす、決着。ナメック星人の家財持ち出しが完了したら戻りまーす』
『黄衣さん!無事だったのね!はぁ、助けられて良かったわ。地球に一時的にでもゆっくりできる場所を作らなきゃならないわね』
『あとベジータ君捕獲完了。連行します』
『なんでよっ!?!?私の船に乗せるんでしょ!?私殺されちゃうかもしれないじゃない!』
『俺が見張るって社長に言っちゃったし。悟空君が再戦したいっていうからつい』
俺の言葉にブルマちゃんは「孫君に無限に甘いのなんとかならないの…」とため息を漏らした。
後ろでは悟空君とクリリン君がハイタッチしている。
そんなわけで。
俺たちは無事ミッションをクリアして、地球に帰ることになるのであった。
・Z戦士フリーザ概念
別に仲間でもなんでもないが、邪神イカのご子息と仲間達なので丁寧に接しているだけ。
イカの仲間が思ったより甘ちゃん達だったので、本格的に業務方針転換を急ぐつもり。
仲間が喚いてイカが動いたら厄介なので。
・イカ
みんなに触発されてブラックホールで特訓し出した。
超重力スクワット(?)秒間1000回!
うーん運動した気がしない。
ニャル組み手が恋しい。
・ニャル
夫に呼ばれてるのに行けなくて悔し過ぎて物理的に爆発した。