運命の日まで残すところあと一ヶ月。
最近、フリーザ軍が各地で襲われる事件が起きているらしい。
犯人はビッグゲテスターと呼ばれる機械群だ。
科学技術が優れる文明圏が廃棄したコンピュータが増殖・融合してできたもの。
機械惑星として成り立っており、現在では破壊神による破壊対象にも指定されている。
他の惑星のエネルギーを喰らい尽くして増殖するため、危険だからだ。
「というわけで、俺としても業務のため情報を聞きたいと思ってます。フリーザ社長はなにか気づいたことがありますか?」
「………少しばかり、思い当たる節が」
破壊前の聞き取り調査を文章に起こしながら問いかけると、フリーザ社長は沈鬱に頷いた。
いつもこうして記録に残して、後から破壊の効果測定に使っているのだ。
せっかく破壊してるのにそれが宇宙のためにならないのでは話にならないからな。
こういうのは振り返りとその後の経過観察が一番大切だ。
お付きの天使ウイスさんは相変わらず微妙な顔で俺を見守っている。
フリーザ社長は額に一筋の冷や汗を流して口を開いた。
「どうも、我が軍の通信に妙な音声が入っていまして。こちらです」
「ふむ」
再生したデータを聞くと、どこか聞き覚えのある声が耳に入ってきた。
『愚弟よ。俺は帰ってきた。今度こそ俺は宇宙の帝王となり、お前達を支配する。覚えているがいい!』とのこと。
姿はなんともメタルだが、恐らくはフリーザ社長の兄であるクウラだろう。
社長、機械化手術で生かしてやったんかな。
意外と家族思いなところもあるなぁ。
俺の思考に気づいたのか、瞬時にフリーザ社長は苦虫わんこそば大会を開催したみたいな顔になった。
「奴は私が体を吹っ飛ばし、頭だけ宇宙に捨てました。己の愚かさをよく理解するようにとの処置だったのですが……」
「拷問やんけ。流石社長」
「でも結果的にあなたの手を煩わせることになってしまいました。申し訳ありません」
しゅんとした雰囲気だが、たぶん内心はクウラへの怒りでいっぱいだろう。
私に恥をかかせおってとか考えてるに違いない。
まったく社長は通常運転なんだから。
俺はにこにこ頷いてパタパタ手を振った。
「いえいえ、そんな。気にしないでください。俺は業務の流れに従ってるだけですから。ひとまず素性は分かりましたので、破壊に移りますね」
「ええ。我ら一門の恥でもありますので、迷惑かとは思いますがよろしくお願いしますね」
冷や汗と共に笑顔で俺を送り出すフリーザ社長を見て、俺も一礼した。
ウイスさんが「ふむ」と少し考える仕草をしてから口を挟む。
「おや、ここは破壊されないんですね。ビルス様なら禍根から断つとおっしゃるところですが」
「まさか。破壊は易いが創造には時間がかかる。宇宙の益を最大にするには、最小の破壊で最大の効率を発揮する必要があるでしょう。大した効果的裏付けもなく破壊はできませんよ」
社長への情も無いでは無いが、やはり根幹はそこである。
仕事である以上、成果こそが最も大事だ。
破壊という費用をかけるからには、ペイできなければ意味がない。
バイトが赤字を出すことはあってはならないのだ。
ウイスさんは「ビルス様……」と切なさにヨヨヨと泣いた。
どういう心境の涙やそれ。
今まで猫働かせてたんだから多少は仕方ないやろ。
汗びっしょりのフリーザ社長に別れの挨拶をしてから、俺は急ぎビッグゲテスターの所在地へと飛ぶことにした。
移動の権能でニューンと空を飛ぶ。
天使の権能を使った移動も相当に早いが、俺と同速くらいだからな。
なら各々走ったほうが手間が無かろうよ。
さて、ゲテスターの現場に行くと、ちょうど知らぬ文明圏の星を侵略中だった。
ウイスさんが素早く補足してくれる。
「ヤードラット星ですね。住人はスピリットと呼ばれる力を扱い、さまざまな能力で便利に暮らしているようです」
「へえ……おお、なるほど。気の権能的側面を増強しているのか。『生』という権能だ。生物が持ちうる最小単位の権能。面白いな」
星の外側から間接的に観察すると、皆が皆、ある程度の気の扱いを習熟している様子が見てとれた。
瞬間移動による運送、化身作成による労働、巨大化による土木工事。
なるほど、その力は生活に密着しているらしい。
戦闘のためではなく、生活のための気だ。
「これは文化的に保護価値が高いな。早くゲテスターだけ取り除いてやらないと……あれ、悟空君おるやん」
「黄衣さんの息子さんという、悟空さんですか?」
「そう。俺が権能渡したらどっか飛んでっちゃって。修行中でした」
一週間に一度は連れ帰ってやっているが、多少の家事の後また修行に出てしまっている。
一応その度に宇宙の珍しい品は持って帰っているみたいだが。
まあ、チチちゃんはカンカンだよね。
俺が頭を下げて養育費などは負担させてもらっているし、育児も可能な限り手伝っている。
実際、人造人間への対処をしなければ生活丸ごと破壊されるから、そっちを優先するのは仕方ないことではあるんだけど。
うむ、いい父親ではないのは間違いない。
俺も人のこと言えないから強く言えないんだよな。
本来旧支配者にとって息子って大きい抜け毛でしかないから、育児の概念すらないのだ。
ニャルなんて子供結構いるけど全部暇なときつつき回すためのオモチャだしな。
俺の父ヨグ=ソトースは俺のこと溺愛してくれたから、俺もなるべく気にして育児はしていたけれど。
ちょっと反省しつつ、悟空君とメタルなクウラの戦闘を見守って行く。
悟空君はいつの間にかとんでもなく権能を使いこなしていた。
瞬間移動はもちろんのこと、権能で拡散させた自分の気を回収、再利用しているようだ。
移動もとい「エントロピーの操作」によるものだろう。
ほぼ永久機関と化している。
他にも風を使って細やかな動きを加速させたり敵の動きを阻害したり、すごい器用さだ。
全部戦いに直結させてるのがサイヤ人らしく戦闘IQ高い。
お、スーパーサイヤ人になった!使いこなせるようになったのか!
シュインシュインと煌めく光に歓声を上げていると、ウイスさんが声をかけてきた。
「息子さんに力を分けられたんですか?」
「小指の先ほどな。別に戦闘用じゃなかったのに、それだけであそこまで戦えるなんて。やだ、悟空君ってば天才!」
「確かに相当な才能はありそうですね」
俺はホクホクと頷いた。
いずれ俺の権能の写しを正式に渡したほうがいいだろうか。
支配域の維持の仕方も教えてと。
旧支配者ハスターの息子となるとやはり敵も多いかもしれないし、権能の扱いは覚えて損はない。
悟空君連れて白痴の魔王アザトースに謁見にも行かなきゃ。
俺も昔父ヨグ=ソトースに連れられて行ったしな。
いや、こっちのアザトースっぽいものに挨拶するのが先かな。
格上の神に喧嘩ふっかける時の作法も教えとかないと。
そのようにニコニコしていると。
ウイスさんから「あなたはこの宇宙に腰を落ち着けないで早くお帰りくださいね」とピシャリと言われてしまった。
ぶーぶー!
なんだよ夢を語るぐらい別にいいだろ!
存在するだけでアザトースみたいなのの顰蹙を買うかもって?
早く帰りますね……。
なお、激闘の末メタルクウラは爆散。
無事俺の仕事はなくなったのだった。
・ウイス
バイト君がすごく仕事ができる人で切ない日々。
ビルス様より仕事できる……(しょぼんぬ)。
これで外から来た邪神でなければ言うことなかったんですけど。
・フリーザ社長
連帯責任で破壊されそうでマジ緊張してた。
猫なら連帯責任で破壊してた。
2人が帰った後勝利の雄叫びを上げた。