人造人間襲来の、運命の日。
カメハウスに集合した皆が、間も無く都に飛び立つ時だ。
俺は神様のいる天界でのんびり茶をしばきながら権能を用いて遠見している。
みーみー鳴くミニイカ君達も一緒だ。
そろそろ意識ごと同化しても良かったのだが、微妙に反抗的で拒否されたんだよな。
まあドクターゲロに会いたいらしいから未練たらたらというやつだ。
俺は下界を眺めながらソワソワとミニイカ君達に話しかけた。
「どう思うミニイカ君。悟空勝つかな?」
【ぶぶぶぶぶ】【ぶほっ】【ぬ゛ん】
見ろよこの顔、俺が話しかけるだけでコレだ。
反抗的なイカを中指でデコピンすると、イカ君はバランスを崩してコロコロと転がった。
他四匹がすごいブーイングをあげる。
なんなんやこいつら。
「なあ神様、産み落とした下っ端に反抗された時ってどうしてる?見せしめに一匹腑分けかな」
「やめんか。そのドクターゲロとやらに心を傾けておるだけだろう。情のある子らだ」
「でも悪い奴やんけ。君らチョロ過ぎ。流されすぎ。俺の化身だろ?」
「わたし思うに。おまえチョロいし流されすぎ。そっくり。次の神様の教育に悪い」
「これポポ。あまり強く責めては行かん。長年凝り固まったものがあるのだろう。一朝一夕で解決するものでもない」
神様達にまで凄くこき下ろされ、俺は素早くポフンと膨れイカになって床に転がった。
暴れてやるぞぉぉおお。じたばた。
デンデ君が俺の触手を撫でてくれる。
「でも、命を落とすはずだった僕らを助けてくださったじゃないですか。そうですよね、黄衣さん!」
【デンデ君は優しい子だね…ありがとう…今度祝福の授け方を教えるね】
俺は感動に涙しながら触手でヨスヨスした。
デンデ君は地球に滞在するナメック星人の中から、次代の神に立候補してくれた子だ。
将来的に皆と別れることになるだろうに、「地球の皆さんに恩返しできるなら」と笑顔で頷いてくれた、とてつもなくいい子である。
今は天界で修業中で、こうして権能の扱いについて学びながら心構えのほうの教えも受けているようだ。
さて、ミニイカ君と戯れている間に本番の時がやってきた。
ついにカメハウスが人造人間達によって襲撃されたのだ。
トランクス君がカメハウスで高まる気を察知して、南の都付近で右往左往している。
ちなみに、無事現在のトランクス君はついこの間生まれた模様。
やっぱりブルマちゃんの子供だったようだ。
父親はベジータ君で、地球人とのハーフということになるだろう。
ベジータ君はサイヤ人らしく父親どころか碌に彼氏らしいことすらせず、クソ忙しい時期の赤子を捨てて修行のためどっかいこうとしていたが。
俺がペンってしてやったので、今は育児に参加している。
ブルマちゃんは実家が太いからシッターもいるし、実質的な問題はないんだけどな。
でもブルマちゃんを困らせるのは許さんので教育的指導をしておいた。
「貴様の息子のカカロットもそうだろうが!!!」と言われて俺はぐうの音も出ず再びベジータ君をペンってやった。
旧支配者の図星を突いてはいけない。
古事記にもそう書かれている。
それに悟空君は悟飯君が赤子の時はちゃんと育児してたもん。
ともかく、話を戻そう。
人造人間達の出現場所が違うのは、俺が交渉したからだ。
南の都を襲うのは悟空君の居場所がわからなかったからで、エネルギー確保を兼ねて悟空君を炙り出すための行動だった。
ならば、初めから居場所がわかるなら民間人を襲う必要はないだろうと俺から提案したのだ。
それにドクターゲロも同意。
この襲撃に繋がったというわけである。
人がいないほうがやりやすいし、戦士たちが分散しなくても良くなるからな。
被害が出ない事を加味せずとも実質的にプラスだろう。
やってきたのはドクターゲロ自身と、19号のようだ。
彼らは間違いなく命を落とす。
ドクターゲロは自信満々だが、悟空君の実力は確実に彼らを上回っている。
ままならないものだ。
ミニイカ君達がキュウとも言わずに萎れている。
仕方ないから死後魂があの世に召される直前に介入して、ミニイカの霊体だけでも一緒につけてやろうか。
あの世で悪さしないように、ミニイカ君と大人しく過ごせよ。
戦闘は続いている。
乱戦というより、悟空君VSゲロ、他の戦士達VS19号と言った感じだ。
「おお、悟空君考えたな。前にクウラと戦った時を踏まえて、自分の気を変質させることでエネルギー吸収できないようにしてる」
「ベジータも来たようだな。地球が危機に陥ることはなさそうだ」
緑の神格がほっと息をついて目を細めた。
悟空君とゲロの戦いは一方的だった。
サイヤ人の舐めプ癖が出てるが、それを加味しても負ける要素は見つからない。
他の戦士達も19号との戦いで押され気味だが、負けるほどではない。
そこにベジータ君も到着して、今トランクス君も向かっている。
戦力は十分だろう。
ドクターゲロが叫んだ。
「やはり使うしかないか……くくく、人造人間17号に18号!出番だ!!!」
「っ!なんか隠し玉があるみてぇだな!」
「ふはは、孫悟空よ!邪悪な神に育てられた男よ!見るがいい!」
瞬間移動と見紛う速さで、見知らぬ男女が現れた。
見たことない顔だ。
【みいみい】【みみっみ】【むー】
「ああ、あれがドクターゲロが攫って人造人間に改造された人か。可哀想なことをするなぁ」
現れた2人の人造人間に、勝利を確信したドクターゲロがやや安堵に顔を緩める。
「よく来た、17号、18号」
「はいゲロ様。我々をお呼びくださってありがとうございます。それでは……」
彼らは姉弟のようだ。
怜悧な顔の弟、すなわち17号がニタリと悪辣に笑って右手をゲロへと翳した。
瞬間。
ゲロの頭と動力源、そして両手をエネルギー波で吹き飛ばした。
凄まじい出力に、あっけなくゲロが命を落とす。
その死骸を18号が蹴り付けて吐き捨てた。
「クソジジイが。せいせいしたよ。これからどうする18号」
「ひとまず孫悟空を殺す、でいいじゃないか?別にやることないし」
「でも目の前にいるし、すぐに終わるよ」
「確かに……困ったな」
学校帰りにどこ行くかみたいな軽い会話だ。
彼らにはどうでもいいことなのかもしれない。
真っさらにされてしまったが故の空虚。
移動の権能ですでにゲロの魂は捕まえてある。
ぺしょぺしょに凹んでいるミニイカ五匹の魂だけ引き摺り出して、ゲロと紐で結ぶ。
どうせ地獄だろうが、イカ君がついてるからいいだろうよ。
ミニイカ君達は魂だけでも強すぎるので、人格部分をそのままに、動力部分だけ削ってグネグネ加工して、見た目程度の戦闘力に加工し直す。
地獄を騒がせるつもりはないからな。
魂を失ったミニイカの体が完全に俺に馴染んでいく。
ポイとゲロを放せば、ゲロはそのままミニイカ君にキューキュー抱きつかれながらあの世に召されていった。
丁寧に培養された多量の俺の細胞が完全に俺に馴染み、力が戻る。
あと少しで帰還のための跳躍が可能になりそうだ。
そのおかげで権能出力もばっちり。
見通せていなかった時空間系列の視界も確保できた。
俺はその景色を見て、パチクリと瞬いた。
いい考えを思いついたので、念話で緊張の空気が漂う現場に声をかけることにした。
『では君たちに提案しよう、人造人間17号、18号。君たちを吸収せんと、ドクターゲロの最高傑作がやってくる。それを倒すのを目標にしたらどうだ?』
どうせ吸収されるんだろうが、そうしてくれたほうが悟空君の力試しにもちょうどいい。
ペロリと唇を舐めてうっそりと微笑む。
後でドラゴンボールで生き返るんだし、万事解決というやつだ。
俺が帰れば、悟空君は独り立ちせねばならない。
それまでの間に彼を一人前にする事を考えたら、ことは急いだほうがいい。
ああ、ようやくこんな羽虫だらけの宇宙からはおさらばするのだ。
違った、羽虫じゃなかった。でもみんなみんな、あまりにも穢らわしい。
俺の気が邪悪に感じられれるのは、根本的に異物たるアザトースの影響によるところが非常に大きい。
つまり逆に言えば。
俺にとって、全部が全部穢らわしく感じるってことで。
羽虫の如き存在規模だから全然気にならないけれど、やはり塵も積もれば山となる。
己の中の光がへたってきた気がする。
早く帰らないと。
悟空君は羽虫ではない。羽虫ではない。羽虫ではない。
まあともかく、ドクターゲロのバイオロイドが悟空君の力試しのいい相手になってくれるといいのだが。
そのように考えて。
俺はニタニタとことの次第を見守ったのだった。
・邪悪イカ
本当に早く帰ったほうがいい。
実はめちゃくちゃにストレスを抱えてて、夜な夜な元の世界を思って酒かっくらって泣いてる。
ここにも大切な人はいる。でも、辛いのもほんと。
・ニャルニャル
イカの涙にもらい泣きしてる。
ばっちい羽虫に囲まれて何十年も野宿なんて!
我が夫本当に可哀想…(ほろり)
・全王様とアザトース
トモダチ。
最近一緒に笛の音で踊ってみたりしてる。