ハスターなオリ主とドラゴンボール   作:ラムセス_

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親子の情

 

 何とか二時間ほどで、全ての引き継ぎを終えることができた。

 

 猫はデータの読み方に悪戦苦闘で、一時間半が過ぎたあたりでノックダウンしたようだ。

 そのまま寝込んでしまわれた。

 

 おかしい。

 これは人間社会で一般的に使われる書類の作成法とデータ分析法のはずなのに。

 

 警察勤めの俺の化身に教えてもらったやり方を踏襲しただけで、特別な手法はほんの僅かだ。

 ただまぁ、猫にはちょっと辛かったかもしれん。

 

 

 そんなふうに四苦八苦して引き継ぎを済ませて地球に戻ると。

 セルはパワーアップして変なタラコ唇になっていた。

 

 まだ体内の17号を咀嚼するために潜伏しているようで、森の中で身を潜めている。

 まだ生まれたてで消化器官が発達していないのだろう。

 

 俺はふよっとイカ姿から人間型に戻り、洞窟の中に隠れ潜むセルに声をかけた。

 「よっ」と手を振れば、野太い声で返事が返ってきた。

 

「ッ!?父ィよ!」

「力の入り具合はどう?」

「17号を吸収し、あとは18号を吸収すれば完璧になる……が、未来の私をすでに吸収済みゆえ、そこは省いても構わないかもしれません」

「へぇ。あの卵の中身、お前が食ったのか。だから成長が早いんだな」

「私は父の細胞とゲロ様の研究成果によって強化された。完全体にならずとも、敵などいない」

 

 元々想定外のスピードで成長しているとドクターゲロも言っていたしな。

 俺の細胞の影響で再生力が爆増しているのだろう。

 ドクターゲロの死をもって自動で培養が開放状態になる設定だったのか。

 

 そうやって生まれたセルの幼体は、この時空に潜伏していた未来セルを捕食。

 その力で更なる急速成長を遂げたというわけだ。

 俺のところにやってきた後は悟空くんたちと交戦して、17号を捕食、逃げ延びたと。

 

 未来セルは連結世界からやってきたため俺の細胞を含まないから、捕食など楽な仕事だろう。

 

 俺はちょっとだけ頬をかいて、視線を左右に揺らした。

 なんとも言いづらいが、言わねば話が始まらない。

 さっきもデンデ君に背中を押されたし、こういうことは禍根になる前にきっちり伝えておかねばなるまい。

 

「あ、あのさ。えーっと、さっきは誤解してて言い方が拙かった」

「……と、言うと?」

「別に認知してないわけじゃないから。俺の化身ってか息子だろ。なら手助けぐらいするよ。潜伏に俺の家貸すよ」

 

 セルは少しみじろぎした。

 困惑した様子で片膝立ちになり、俺を見上げる。

 

「私はドクターゲロ様の手により作られたバイオロイドだ。貴方を父と呼んでいるが、それは私が勝手にそう呼んでいるのみ」

「権能接続的には息子で間違いないよ。俺らみたいな旧支配者の生まれ方なんて奇想天外だしな。それに、子を愛すのが人間の親の在り方だろ?」

 

 手を差し出して、微笑んでやる。

 

 俺は長い生の中、息子なんて悟空君しか居たことがない。

 己を受け継いだ似姿たる怪物に愛を傾ける自信がなかったし、自分のことで手一杯だったからだ。

 産むからにはきちんと養育したい。

 一人前に育てる義務もある。

 

 部下として権能の一部をこねくり回した端末、すなわちイタクァなんかも作ったしたが、所詮不出来な部下でしかなかった。

 

 ───それがこんな短期間に二児の親になるとは。

 なんともまぁ分からないものだ。

 

 セルは少しだけ切なげに目を細めて、縋るように俺を見た。

 

「私を、子と認めるというのか」

「勿論。我が息子セル。お前は俺が認めよう。導こう。愛そう」

 

 俺に似て醜い怪物とされる姿が、だからこそ親しみやすい。

 羽虫の如き矮小さだが、乳幼児とはそういうものだろう。

 10億年もすれば大きくなるか。

 いや、バイオロイドだしそんなに生きないかな。

 俺の細胞も入っているから、もっと長生きしてくれると嬉しいんだが。

 

 頭を下げて僅かに震えるセルの肩を、俺は優しく叩いてやった。

 

「まあ、そんなわけで悟空君との殺し合いは頑張ってくれ。どれだけ強くなれるか楽しみにしてるよ」

「……………は」

「死んでも蘇生するから安心してくれ。ふふふ、魂が丈夫な子はこういう点が安心できるな。3万回ぐらい死ねばだんだん自己蘇生の感覚も掴めてくると思う。悟空君もだな。二人ともいいライバルになってくれると嬉しいよ」

 

 昔俺もニャルと練習したもんな。

 戦いながら自己蘇生スピードをアップさせるためのフリースタイルバトルだ。

 

 流石にアザトースのメッセンジャーたるニャルほどの蘇生速度は再現できなかったが。

 俺も練習で随分と蘇生が早くなった。

 

「権能の使い方も実践で学ぶといい。痛くない死に方もな。悟空君と仲良くしてやってくれ」

「…………父上」

「どうしたセル。まだ動きづらいか?」

 

 17号を吸収したばかりで、まだ動くのが億劫なのかもしれない。

 心配で覗き込むと、セルは憂いを含んだ瞳を伏せた。

 

「……我が父は本当に恐ろしい神であることよ。神とは恐ろしいものであるとゲロ様も仰っていたが、その通りだ」

「えっっ、全力で父親ムーヴしてる俺へのコメントがそれ!?何かミスってますか俺!?!?」

 

 俺が困惑と共に叫ぶと、セルは「我が父に間違いなどありようはずもない」と断言した。

 俺氏、不服である。

 なにこれ凄く気を遣われてないか?

 

 ともかく、俺はセルを連れて一旦家に案内することとする。

 

 現在、俺は孫悟飯老の家から引っ越して、西の都郊外のアパートに住んでいる。

 純粋に交通の便が悪いのと、無限に湧き出る蚊蜘蛛ムカデゴキブリに耐えかねたからだ。

 あそこ、田舎すぎて時々1mもあるゴキブリ出るじゃんね。

 田舎なら古代の生き物も出るってことは、ペルム紀のゴキブリもおるっちゅーこっちゃ。

 

 セルは所在なさげな様子で俺に従って椅子に座った。

 

 椅子二脚机一つの簡素なダイニングテーブルだ。

 こうしてセルが座ると凄く小さく感じられる。

 足余ってるなこれ。可哀想だし後でソファに座ってもらおう。

 

 キョロキョロとあたりを見渡し、セルは困惑した。

 

「これが我が父なる神の住まいなのか…こんなものが……?」

「男の一人暮らしだもん、この程度のもんだよ。ちょっと使わない調味料が余ってるくらいさ」

「貴方は力でもって頂点に立ちたいとは思わないのか?全てを手中に収めて、愚かなものどもを平伏させたいとは思わないのか?」

 

 セルの疑問に俺はふうむと首を傾げた。

 

 アザトースがいる以上、真の意味で頂点に立つのは不可能だ。

 それを無視して、お山の大将ぐらいにはなれるだろうから、それを想定してみようか。

 

 俺は首を振ってセルの言葉を否定した。

 

「思わないよ。すぐ飽きる。飽きた」

「……飽きた?」

「ゲームのチートモードと一緒さ。何でもできるとすぐに飽きる。この『すぐ飽きる』ってのは無限に生きる俺たちにとって一番致命的でね。コンテンツの寿命を短くするんだ」

 

 常に俺たちは飽いている。

 だから通常旧支配者は現在のみに生きていて、忘れっぽく刹那的だ。

 そうでないと暇で暇で死んでしまう。

 

 ニャルなんて人間並みに飽きやすいからもう大変だ。

 いつも暇と寂しさを持て余して苛ついてたし。

 俺と会ってからは俺をおもちゃにすることで楽しそうにするようになったが。

 

 セルが少し瞳を揺らして俯いた。

 

「永劫を生きるものの苦悩、か」

「そんな大袈裟なもんじゃないよ。人並みに生きるのも楽しいってだけの話さ」

 

 セルは少しだけ瞬いた後、何かを考え込むようにじっと耐えて。

 それから真っ直ぐに俺を見つめ直した。

 

「私が貴方に尽きぬ娯楽を提供できたなら、私を認めてくださるだろうか?」

「ははは。そうだな、そんなことをしなくても認めてるつもりだけど、もししてくれたら嬉しいなぁ」

 

 俺はそれを冗談として受け取って。

 そのように笑いかけたのだった。

 





・警察勤めの化身
黒い風。元ニャル化身の移籍者。
時系列的には「ハスターなオリ主と米花町」のエピローグ直後ぐらいを想定。

・イタクァ
部下というより雑に使ってよく無くすボールペンみたいな扱い。
どっかしまって忘れて、出てきたら使ってる。
調子悪いと分解したり水につけたり。
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