ハスターなオリ主とドラゴンボール   作:ラムセス_

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心のアンカー

 

 武道大会セルゲームが開催される運びとなった。

 

 既にセルは不意をついて18号を吸収しており、完全体となっている、

 それでやることが武道大会というともまぁ、悟空の弟っぽくて良きなり。

 

 「我が父に捧げる娯楽」という名目らしい。

 地球代表選手が全員負ければ、地球人は全員殺害するとも言っていた。

 どうやら全力を出し切らせるための脅しのようだ。

 

 不器用な子だ。

 俺はニコニコしつつTVを回した。

 

 でも世の中に恐怖を与えるやり方はダメだぞ。

 信じてないらしくて皆怯えつつも動きが緩慢だからいいけど、避難民で経済が止まったりしたら大問題だからな。

 

 まだ6日もあるから、皆修行に打ち込んでいることだろう。

 

 俺がまったり家でぶらぶらしていると、ドアがノックされた。

 悟空君が遊びにきたらしい。

 

 金髪で、どうもスーパーサイヤ人の状態を完全に己のものにしているようだ。

 俺は扉を開けて彼を招き入れた。一人で来たらしい。悟飯君の姿はない。

 

「悟空君!ようこそ!上がって上がって!」

「おう、お邪魔させてもらう」

 

 上がり込んできた悟空君に茶を入れようと台所へ向かおうとするの、出し抜けに悟空君が口を開いた。

 その表情は随分と厳しい。

 

「何でこんなことすんだ」

「……?何が?」

「セルの言ってた我が父って、黄衣さんのことだろ。あの妙な力、同じ気配がした」

 

 もう悟空君は誰の権能かの見分けもつくようになったらしい。

 その成長は嬉しい限りだ。

 

 だが何で、と言われても要領を得ない。

 

「悟空君達に強くなって欲しかったからだよ。セルはそれを俺の娯楽としても提供してくれるつもりみたい。だから大会って体を取ったんだろうね。粋な子なんだから」

「地球人を全員殺すってのは」

「全力で戦えるようにって脅しじゃないか?まさかホントに殺したりしないよ。俺が禁じてるし」

「…………」

 

 悟空君はガクッと体勢を崩してはぁと息をついた。

 

「オラ戦いは好きだけどよ、殺しが好きなわけじゃねぇんだけど」

「ええー、贅沢だなぁ。俺が生き返らせてあげるから全力でやりなって。不殺ルールだと手加減ミスる事故が起きがちだし。最初から気にしない方が気分よく戦えるよ?」

「オラは構わねぇけど、ミスターサタンって人間も大会に出場するって噂だぞ」

「嘘!?!?」

 

 武道家達が無限の死の中で己を高めるのは良いことだ。

 だが、ただの人間が死んだら流石に可哀想だろう。

 慌ててチャンネルを変えると、悟空君のいう通り各局ミスターサタンの特集を報じていた。

 世界格闘技選手権のチャンピオンだ。

 なるほど確かに、俺の常識で考える人間として最強というにふさわしい強さだった。

 人間を子猫とするなら、特にふわっふわの子猫ぐらいだ。

 誤差かな?

 

 クリリン君とヤムチャ君とか、ああいう一人でムーンビーストの群れを薙ぎ払いそうな存在は人間とはちょっと違うからな。

 いや、純粋な技術で人間を超えてきた偉人なのだが、こう、あれはジャンルが違ってライオンみたいなもんでね。

 

 俺は腕を組んでうんうんと唸った。

 

「一応セルには殺さないよう伝えるよ。痛いのは可哀想だし」

「……このことは、クリリン達には伝えてねぇ。ピッコロは薄々勘付いてると思うけどな」

「???何が?」

 

 心底困った様子で、悟空君は渋い顔をした。

 

「オラこういうの苦手なんだけどなぁ。黄衣さん、時々ズレてっからなんて伝えりゃいいのかわかんねぇや」

「その言い回し、n回目でわかってきたぞ。俺の人間性に深刻な歪みが生じていますね…?」

「黄衣さんは人間じゃなくてイカだからこれが普通ってんならそうかもしれねぇけど。多分、親しい人を殺し合いさせるのは悪い奴の行いだと思うぞ」

 

────なるほど、その通りですね……。

 

 ボフンと萎れ大イカに変身して、俺は床にうつ伏せになった。

 震える声で「良い悟空君には豚の丸焼きをあげようね…」と香辛料をたくさん詰めた豚の丸焼きをドゥンと一頭出現させた。

 成人のサイヤ人にはおやつみたいなもんだ。

 

 悪いイカからの差し入れです。ご査収ください…。

 

 「うひょー!」と喜色満面となった悟空君が大きなナイフでむんずと切り取った。

 

「モゴモゴ、うんめー!やっぱ黄衣さん料理上手ぇよな!ところで、兄ちゃんが国軍に就職した話ってしたっけ?」

「え、聞いてない。ラディッツ君?凄い出世だね」

「なんか格闘技術の教官やってるって。そのつながりでオラにも声がかかった」

「えっ良いじゃん!勤務時間に融通きくだろうし、家計も助かるよ!」

「んー、そういうもんか。ならやってみっかなぁ」

 

 ご、悟空君が手に職を得るだと!!!

 畑も適職ではあったけど、この超能力じみた力ならばもっと他に高給取りになれると思っていたんだよ。

 そうすれば悟飯君の教育費も賄えるし、大食漢二人で火の車の家計も持ち直すことだろう。

 

 しかも悟空君は人に教えるのが結構上手い。

 上質な師がたくさん居ただけあって、体系立ってしっかり基礎を鍛えるすべに長けているのだ。

 本人は感覚派だが、理論が身に付いているので言語化も上手い。

 

 嬉しくて俺は涙ぐんだ。

 後ラディッツ君も、一応媚び諂うことをベジータ君に叩き込まれたから礼儀は知ってるもんな。

 そんな昇進してたとは思ってもみなかったよ。

 

 食べ終わったところで、悟空君がまだお腹空いてそうな顔で俺を見た。

 とはいえ、家庭でもたくさん作ってもらってるだろうから、グッと堪えてこれまでとする。

 

 軽く肩を回して出て行こうとする悟空君が、振り返って俺を見た。

 

「黄衣さん、人間のふりって辛いか?」

「え、薮からスティック」

「オラの子供の頃から、だんだんこういうこと増えたからさ。やっぱかなり無理させてんのかなって」

「……………」

 

 俺が人間ではないのは本当のことだ。

 俺がいつも必死で人間に合わせているのも、本当のことだ。

 だが根本は、俺が細かなことにこだわっているからということが大きい。

 

 人間が羽虫かなんて、穢れてるか穢れてないかなんて、この世界で大した違いではないのに。

 人間には優しくすべきという俺の発想すら、神の視点からすればただの自己満足でしかない。

 

 今の俺のイラつきは、あるいは元の世界で地球が誕生する以前の、羽虫だらけの環境に嫌になっていた時期のそれに近い。

 

 そんなことすら悟空君に見通されて、情けないこと極まりない。

 

「心配かけてすまない。俺が帰るまでぐらいなら持つよ。あんまり変なこと言い出したら殴って指摘してくれ」

「オラに頼むかそんなこと?」

「悟空君にしか頼めないんだよ。俺、悟空君に嫌われたくないんだ」

 

 俺はいつも自分の感性のズレを理解しているから、人と暮らすときはなるべく近しい人をアンカーにしている。

 感性のアンカーだ。

 今のアンカーは悟空君。彼の指針が、俺の指針である。

 

 悟空君はむすっとしつつ、「わかった」と力強く頷いた。

 

 悟空君を送り出したその後ろで、TVはミスターサタンの特集を報道している。

 見れば見るほど普通の人間で愛おしさすら生じるやんね。

 なんでこの戦闘力でセル相手にいきがってるのか理解不能だが、それも加味して癒し動物動画を見てる気持ちというか。

 

 ちょっと見に行こうかな、と俺は頷いたのだった。

 





・アンカー
コナン:悪すら命を大切に、必ず法の下で裁くべし。
承太郎:悪を許さず、人の可能性を信じ、信念を貫くべし。
悟空:己を貫いた先に結果的に世界を救う。己をこそ磨くべし。

・ミスターサタン
知らん邪神イカに人道を教えるかも。
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