セルゲーム開催当日である。
TVカメラまでやってきていて、遠くにはヘリも止まっている。
突然TV局に殴り込んでの変な脅しをしたセルにも関わらず、結構な注目具合だ。
まあ、かつてピッコロ大魔王が現れた時の大人は、まだ生きている。
その警戒心は生きていて、人々はそれなりにセルゲームの動向を注目していると言うことなのだろう。
俺は何もない碁盤状のリングを見た。
周囲も超能力で作られた不可思議かつ巨大なオブジェが立ち並んでいる。
凝った作りで、それだけで一見の価値ありと言った雰囲気だ。
多分セルが俺の目を楽しませようと、開催までの間にコツコツ作ってくれたのだろう。
写真撮っとこ。ぱしゃり。
俺は岩場の陰に椅子を作って座り、遠くからリング上のセルな様子を観察した。
本当は直接駆け寄って労ってやりたいが、カメラの前で変なことしたら西の都で買い物しづらくなってしまうからな。
もちろん権能で姿も隠している。
念話でセルへと声をかける。
『凄いリングだな!かっこいいよ!感動した!今日の活躍楽しみにしてるよ!』
『!!!我が父よ、ご照覧あれ。神の無聊を慰めるに足る見せ物としよう!』
『気合万全じゃん。いいねいいね、俺もワクワクしてきた!』
ちなみに、悟空君に苦言を呈されたので殺し合いはNGと双方通達しておいた。
本当に純粋な武道大会で、相手をリング外に出したら勝利だ。
さて、真っ先に現れたのはミスターサタンだ。
到着が早いだろうことはわかっていたから、それを見越して俺も来たわけだ。
ミスターサタンは人間だ。
特殊な力も無い、強さも無いごく普通の一般人。
だからセルにも「殺さず、優しくリング外に出してやって」と伝えてある。
車を降りたサタンは、カメラの前で決めポーズをとった。
そしてTVアナウンサーを呼んで勝利宣言。
可愛い。
変な形のポストに吠える小型犬みたいだ。
次に現れたのはベジータだ。
舞空術で現れた彼は、いつも通りの仏頂面だ。
こんな茶番に付き合う人ではないと思ったのだが、強いものとの闘争を望むサイヤ人の血が出場へと駆り立てたか。
とっつきづらい男だが、最近は多少の丸さも帯びてきたようま。
未来からやってきたトランクス君を鍛えてたり、おっかなびっくり育児にも参加してるし。
その後、戦士たちが勢揃いになって、いよいよ始まりの時といった感覚になる。
悟飯君がピッコロ君とお揃いの服を着ているのが可愛らしい。
あの師弟、本当にすごく仲が良いんだよな。
試合の初手はミスターサタンということで決まった。
サタンが我こそはと主張したからだ。
セル相手にもう完全に勝った気でいて、もう言動全部面白いんだよな。
この辺りでセルも納得して念話を飛ばしてきた。
『なるほど、我が父が用意したショーの一環か。確かにそこそこに盛り上がるし、非常に愉快だ』
『俺が用意したんじゃ無いけどね。でも良いなこれ。癒される。傷付けないようにね』
『偉大なる父の望む通りに』
お、ついに試合が始まる……。
ミスターサタンがリングに上がり、二人が相対した。
凄い!
チャンピオンベルトを掲げて!見せびらかして!丁寧に会場の端に畳む!
出たーっ、瓦!持参した瓦だ!
手刀で14枚一気に割った!経験者にしては少ない気がする!
セル不動!
不動のまま無反応でかかってくるのを待っている!
最高かよ。
無限に見れる。ニャルにこの和みを共有したい。
屋台も欲しい絶対需要あるのに。
セルは俺の指示通り、優しく右手であおいでサタンをリング外に落とした。
傷付けないように風圧でふわっとやった形だ。
もちろん、好きなだけ打ち込ませてやった後で。
大型犬に猫パンチする子猫みたいだった。
あまりに和む。
ゴロゴロと転がったサタンは岩山にぶつかり、そのまま目を回したようだ。
すぐに気を取り直して、ぐぬぬとしながらアナウンサーさんに言い訳している。
俺は触手を合わせて神妙に頷いた。
良いもん見せてもらいました……。ストレスが吹き飛んだ気がします。
道化だが悪意がない、奇妙な人だ。
単純にあれらはカメラを意識したアピールで、ファンに向けたポーズの意味の方が強いからだろう。
だから嫌悪感はなく、妙にコミカルに見えるのだ。
その人格からか、不思議な柔らかさがあるように思える。
お次は悟空君の番だ。
開始の合図はない。
ただお互いの視線と気配だけがそれを示す。
素人には、ただお互いが消えたようにしか見えなかっただろう。
打撃音、空中で弾ける気が爆風となって耳と体とを穿つ。
あんなリングなどすぐに吹き飛んでしまうだろうが、せっかくなので俺の権能で守っておくとしようか。
移動とはベクトル操作的にも使えるのでな。
有名ラノベの無敵バリアみたいにもできるわけだ。
リングの無敵性に双方が気付いた。
先に動いたのはセルだ。
舞空術で空に舞い上がり、高めた気をエネルギー波の形で一気に放出する。
その射線が奇妙にズレている事に疑問符を浮かべた悟空君が、次の瞬間狙いに気づく。
「リングに跳ね返してオラに当てる気かっ!」
ニタリと笑うセルに、悟空君は挑戦的に笑いかけた。
それを受け止めて、そのままギリギリで上へと逸らす。
悟空君も俺が与えた権能を完全には使いこなせないのか、それはずらすだけで精一杯だったらしい。
光が花火のように、荘厳な光と共に空へと消えていく。
セルが感嘆の声を上げた。
「流石だ、我が兄よ。人の身で神の力をそこまで使いこなすとは」
「オメェもまだまだ見せてねぇ力が一杯あんだろ?」
「ふ、準備運動は終わりとしようか」
ぬうう、と掛け声と共にセルが金色に光を放つ。
何それスーパーセル?
サイヤ人の細胞を用いた強化だろう。
でも悟空君のスーパーサイヤ人ほどの上昇率を感じないのは、やはり純粋なサイヤ人ではないからか。
悟空君も俺の権能を用いて自分のエネルギーを再回収している。
それに混ぜて体内に隠して元気玉も作成しているようだ。
こうやって混ぜると、俺でも注視しないと元気玉の予備動作がわからない。
素晴らしい隠密性の必殺技だ。
セルが動いた。
純粋なスピードはセルのほうが上に見える。
だが悟空君は連続瞬間移動で位置を捉えられないようにして、互角の戦いが繰り広げられている。
気による瞬間移動と権能による瞬間移動を混ぜているのだろう。
出現場所の察知をより困難にしているようた。
でもあまり高く飛ぶとリングが意味ないからちょっと寂しい。
ふと思いついて、俺は黒々とした雲を垂れこめさせ、そこから触手を下ろした。
【注意。これより、一定高度以上の舞空術を禁止する】
「ッ!父よ……承知した」
「なんだよ、オラ達が飛んでも見えてるだろ?」
二人はしずしずと注意に従って高度を下げた。
これでよりリング外に叩きつけられる危険性が増したということだ。
競技性も高くなったことだろう。
流石に俺の触手を見て気付いたらしい。
クリリン君が「あのゲソ!黄衣さんか!?」と叫んで周囲を確認している。
俺は隠れているので見えないだろうが、その通り、俺である。
あとゲソってなんやねん。その通りだけど。
ミスターサタンは全身冷や汗を垂れ流しながら戦いを見守っている。
彼はこの激闘にも関わらず、まだ逃げようとはしていなかった。
怯えているのにも関わらず、先程の爆風でカメラマンが逃げたにも関わらず。
ただわなわなとしたまま、それでも威武堂々とした立ち姿を保っているようだった。
おお、純粋に逃げ損ねたんだと思うけど凄い貫禄だ。
俺が保護して、流れ弾に当たらないようにしてやろうね。
・バトル
二人ともブウよりちょっと弱いぐらい。
原作よりややトリッキータイプの悟空と、権能はあまり使えず純粋強化風セル。
・ニャルニャル
ついに触手を穴に通すことができた。
狭いので切り離して潜航させることとする。
我が夫のところに化身送った!!!
・魔人ブウラトホテプ
厄災の塊。