ハスターなオリ主とドラゴンボール   作:ラムセス_

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大団円の裏と表

 

 戦闘が続いている。

 やはり頭一つ飛び抜けている悟空君の実力に、ベジータ君が怒りに打ち震えて歯を食いしばっている。

 

 俺はカメラがいないことを確認して、そーっとピッコロ君に後ろから近寄った。

 

「よっすよっす。どう、実力分布的に」

「お前か。最悪孫がやられても、俺が次点で封印して、次にベジータか悟飯が決めれば問題ないとは思うが」

「俺が前に教えた技あるじゃん。それなら悟空君にも負けないだろ?」

「あんな未来に負債を貯める技を軽々に使えるか」

 

 ふん、とピッコロ君が忌々しそうに吐き捨てた。

 ピッコロ君はどうもこの武道大会が意外と平和なものだと気付いているらしい。

 地球人殺戮不可だしな。看板に偽りあり。

 

 戦い続ける悟空君には翳りが見えている。

 だがその中でパチパチと赤い光が弾け、その力を煌めかせている。

 悟空君に与えたわずかな権能が強まって、内側の何かを引き摺り出そうとしているのだろう。

 

 かつてサイヤ人にも神格がいたのかもしれない。

 その遠い名残が、遠い時を超えて現代に甦ったか。

 

 ベジータ君が憤懣遣る方無しと言った様子で歯軋りした。

 

「カカロットめ、まだ上を隠しているのか…!」

「俺の与えた権能が化学反応を起こしたんだろうな。いいぞいいぞ!」

「五月蝿い!イカがでしゃばらずともやつなら同じ境地に辿り着けただろう!クソが…!」

 

 でしゃばりイカしょぼんぬ。

 君らってば、戦いというフィールドにおいて完全に両思いなんだわ。

 

 そして決定的な一打が入る。

 瞬間移動カメハメ波、を、間一髪避けたところを読み切っての奇襲元気玉だ。

 それはセルの上半身を消し飛ばし、遠く岩山をいくつもくり抜く決戦兵器だ。

 おお!とクリリン君達が息を呑む。

 

 上半身を失った足が、ぐぐぐ、と力む仕草を見せた。

 

 束の間の静寂ののち。

 ぬるんと上半身が再生して、セルは何事もなかったように立ち上がった。

 「テンカウント以内だったと思うが、どうかな?」とやや冷や汗をこぼしてニヒルに笑う。

 

「ああ、五秒もなかったな」

「酷いじゃないか、殺生は禁止だと父なる神からお達しがあっただろう」

「悪いな、つい力が入っちまった。だがそれはオメェも同じだろ、セル」

「そうだな。我らの激闘に父なる神もお喜びだ。心も沸き立つというもの」

 

 二人とも盛り上がっているらしい。

 お、逃げたカメラさんが戻って来ている。再び中継が再開されたようだ。

 

 俺はなるべく目立たないよう、コソコソ端っこの方で丸くなった。

 

 何も知らないトランクス君から、全員でセルを囲ってボコろう的な提案が出されるも。

 ベジータ君に一蹴されてしょぼんとしたようだ。

 

 トランクス君、時々サイヤ人にしては驚くほどクールな意見を出すもんな。

 それだけ未来世界で苦労してきたのだと思うと涙が止まらない。

 食料が無限に出る壺一つであんなに喜んでたんだし、そりゃあもう厳しい生活を強いられて来たのだろう。

 ほろり。

 

 悟空君とセルはお互いに消耗して来ている。

 そろそろ最後の決着に入るだろう。

 

 ぬうううう、とセルが叫び、背中から幾重もの太く長い触手を露出させた。

 触手についた目玉がぎょろぎょろと動き回り、縦に裂ける口には乱杭歯が並んでいる。

 俺とお揃いの触手だ。

 

 こうして第三者としてみるとほんと酷ぇデザインの触手だな。

 赤黒紫のグロモツでタス…ケテ…って聞こえて来そう。

 

「これで決着をつけてやる……こうなっては手加減もできんぞ、我が兄よォォ!!」

「望むところだ!!!」

 

 悟空君の髪が赤く、一段と神格の領域に染まっていく。

 存在の格と権能がようやく合致し、権能が本来の出力でもって駆動し出す。

 

 すなわち「移動」。

 それは悟空君の理解の範疇に収まり、万能な移動の権能となって世界を書き換えていく。

 ニッと悟空君が笑った。

 

 瞬間、凄まじい近接ラッシュが繰り広げられる。

 「移動」により全てを紙一重で見切って躱す悟空君に対して、セルはその出力上の優勢を利用して圧倒的な物量と破壊力で攻め込んでいる。

 

 悟空君が攻めに出た。

 セルの位置を移動にて己の位置と入れ替えたようだ。

 その無防備な背中に打ち込むのは、巨大な元気玉だ。

 

 なるほど、位相をずらしてはるか上空で貯めていたらしい。

 そのまま二度目の決定打がセルを思いっきり消し飛ばした。

 

 セルも負けてはいない。

 切り落とした触手が悟空君の背後から襲い来て、わずかに逸れた元気玉がリング上に落下。

 そのまま跳ね返って二人を直撃した。

 

 「悟空ッ!!!!」とクリリン君が絶叫する。

 爆風でカメラも何もかも吹っ飛び、砂けむりであたり一面見えなくなった。

 

 煙が晴れると。

 リングの外には大の字で落下した満身創痍の二人の姿があった。

 

 悟空君は権能でエネルギーを逸らしたらしい。

 セルは自分の再生力で頑張ったようだ。

 二人とも、よく生きてるといった有様だった。

 

 悟空君が息をするのもやっとという様子で笑った。

 

「へへ、これ相打ちってのか?どっちが先に落ちたとかあんのかな」

「私の方が羽で空気抵抗を増やしていたから落下は遅かったろう。私の勝ちだ」

「あっ、ずりぃぞ!ならオラもちょっと飛んでたしオラの勝ちだった!」

 

 その妙に仲のいい様子に、クリリン君が目を丸くして瞬いたようだ。

 

「勝った……のか?も、もう地球の破壊は行わないんだよな?」

「そもそも、我が父に殺生は禁じられていた。お前達が本気になれるように私は発破をかけたまでだ」

 

 今明かされる衝撃の真実ゥ!

 「な、なにィーーー!!!」と戦士達の叫びがこだまする。

 あっ俺の名前出すのやめてねって思ったけど後の祭り、悟空君はあっけらかんと笑ってことの顛末を話し出した。

 

「いやぁ、こいつの父ちゃんって黄衣さんのことでさ!黄衣さんを喜ばせるためにやってたみてぇなんだよ」

「黄衣さん!?!?あ、だから悟空のこと兄って呼んでたのか!?」

「我が父の無聊を慰めるための催しだ。だが、単なる試合では父にお見せするには足りないと考えた。お前達の本気さが足りないとな」

「っつーわけでな、悪ぃなみんな!」

 

 ガクンと来ているクリリン君や天津飯君に対し、なぜかベジータ君は「ほう……イカ野郎もたまにはまともなことを考えるじゃないか」と高評価。

 サイヤ人の業の深さを思わせる。

 ピッコロ君は「人騒がせな野郎どもだ」と嫌そうな顔でため息をついた。

 

 俺はしずしずと大きなイカ姿で進み出て深々と一礼した。

 顔を見られるのが恥ずかしかったからだ。

 

【すみませんでした。後で皆様には無料ドラゴンボール代わりに一人ずつ俺が誠心誠意願いを叶えさせていただきます】

「まあ、ゴホン。修行に身は入ったからな。強くなれたし総合的には良かったんじゃないだろうか」

 

 聖人みたいなことを言い出した天津飯君に、俺は這いつくばって土下座イカになった。

 

【では各自解散でーす。参加賞については俺から金一封をお送りしますので後ほどお届けに参ります。激闘を繰り広げたセルと悟空君に関しては特別賞をお送りします】

「ちょちょちょちょっと待ってくれよ!17号と18号は!?」

 

 クリリン君が我慢できないとばかりに抗議の声を上げる。

 

 あの剥製にされてしまった可哀想な人間のことだろう。

 俺はパチクリと瞬いた。

 イカ胴体をくねらせて首を傾げる仕草をする。

 

【何って、もうだいぶ昔に死んでるだろ?俺が存在を知った頃には既に改造されてたし】

「生きてたよ。生きてたんだ……記憶は失ってたけど、間違いなく……」

「プログラムで動いてたわけでなく?」

 

 「それは、分からないけど…でも人間らしかった!」とのこと。

 俺はうーんと触手を組んで考え込んだ。

 剥製の動くおもちゃだと思ってたから、特に何も考えてなかったんだよな。

 過去未来の別の世界を見通してそのあり方を確認する。

 

 そして、俺はカッと目を見開いて叫んだ。

 

【うぉぉぉおお魂あるやんけ!?マジに生きたまま剥製にするやつがあるかあのマッドサイエンティスト!?!?】

 

 可哀想な人間!!!!!!

 魂が追い出され、肉体だけ生きた剥製になったんだとばかり思っていたが!

 魂まで剥製の中に閉じ込められて弄られてたなんて。

 

 俺はワタワタと満身創痍のセルの肩を揺さぶった。

 

【セル!セル!ペッてして!17号と18号!】

「けふ。我が父よ。そう都合よく吐き出せはしませんが…」

「むむむぅ、仕方ない!魂だけ救出して肉の体を付与しよう!それなら結果は同じだろう!」

 

 俺はカブを引き抜く動作でずるずると人造人間の魂を引き抜いた。

 うんとこしょ、どっこいしょ。

 

 引き抜いた魂に元の肉体を参考に作った健康な体を付与して、馴染ませていく。

 

 「18号さん!」とクリリン君が慌てて駆け寄った

 なんか春の香りがして、俺はセーフと冷や汗を拭った。

 俺の催しのせいで敵同士の仄かな恋が散ることなどあってはならない。

 

 俺はムニュッと人間形に変形に変化して、セルと悟空君に肩を貸した。

 

「一旦別の落ち着ける場所に移動しようか。人造人間のその後についてもあるし」

「ならじっちゃんのとこだな。カメハウスなら広いし、ブルマ達もいるだろうしな」

 

 皆でそのように頷き合い、合意する。

 ベジータ君もついてくるようだ。

 どうも自分もセルと戦いたいと思っているらしく、隙を見て喧嘩を売るつもりに見える。

 

 

 そうして、ひとまずの決着のあと。

 荒野で目を回していたミスターサタンが一足早く目を覚まして、カメラの前で改めて勝利宣言を決めて。

 気付けば世界的スターになっていたのは、のちに判明する話である。

 

 ああ、後でサタンにも参加賞とお詫びの品を贈らないとな。

 





・未来に負債を貯める技
ピッコロの奥の手。
具体的にはドラゴンボールGT。
願いを叶える龍族の奥義を反転させ、マイナスエネルギーの塊たる黒煙の龍を呼び出す。

・その頃のフリーザ様
全てが順調だったのに猫が戻って来たって聞いて激萎え。
猫が業務引き継ぎの負荷で寝込んだって聞いて満面の笑顔。
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