ハスターなオリ主とドラゴンボール   作:ラムセス_

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浮き上がる恐怖

 

 俺を呼んだ界王神様の顔色はすこぶる悪かった。

 

「すみません、緊急事態なのです。バビディが動き出して…どうか力を貸してください」

「いいけど。何があったの?」

 

 俯いた界王神様に代わり、お付きのキビトさんが回答する。

 二人の様子を見るに随分と深刻そうな様子だ。

 

「手短に話しますと、かつてこの宇宙を荒らしまわった魔人ブウというものがいましてな」

「あ、聞いたことある。破壊神業務の破壊対象になってたやつだ」

「ええ。まさに破壊すべき極悪非道なものでした。これにより4人いた界王神様の2人が殺され大界王神様まで吸収される惨事となりました」

 

 界王神様が言葉を繋いだ。

 企業で言えば取締役と社長がほとんど全員失踪したようなものだ。

 当時の混乱は計り知れない。

 その生き残りが今の界王神様、ということなのだろう。

 一人でよくぞここまで立て直したものだ。

 

 俺は腕を組んで続きを促した。

 

「その魔人ブウがどう関わってくるの?」

「妙、なのです。あなたは感じていないようですが、我々にはわかる。魔人ブウから強大な邪気が漏れ出しているのです。魔術師ビビディが、もう間も無くブウの封印を解くのかもしれない」

「……邪気かぁ、わからん」

 

 感覚を研ぎ澄ませてみても、俺には何か感じるところは無かった。

 この世界の神格ならではの感性だろうか。

 それにしてはピッコロ君が何か気づいた様子はないが。

 

 ふむ、と俺は困って界王神様に視線を向けた。

 

「というか、それならまず破壊神ビルスに話を持っていくのが筋な気がするけど…俺がでしゃばると怒られそう」

「あの方はいまお昼寝しておられて。お休み中に声をかけると酷くお怒りになられるのです」

「猫ェ」

 

 界王神様達は眉をハの字に下げてしょぼくれている。

 

 宇宙の危機だから対処しなくてはならない。

 だが現場は対応してくれないから、事務方が前に出ざるを得ないということか。

 

 いや猫を現場で働かせてるのがそもそも間違いと言われればその通りだ。

 猫なんだからのびのびオフィスを歩かせとくぐらいがちょうどいい。

 俺だってニャルに仕事を任せようとは思わないし。采配者の失敗だろう。

 

 俺は委細承知と頷いて見せた。

 

「了解した。なら俺が出るよ、案内してくれ」

「良かった、我々だけではブウが復活した時戦力的に不安でしたから。破壊神代理のあなたがいれば安心です」

 

 ほっと、本当にホッとしたように界王神様が胸を撫で下ろした。

 この神格も相当存在規模が大きいのに小心者なんだよな。

 存在規模に比して戦闘が苦手なのは分かるが。

 

 案内に従って荒野を進んでいく。

 天下一武道会子供の部が見られないのは少し残念だが仕方あるまい。

 後々悟天君の活躍を見ながら聞くとしよう。

 

 近づくごとに気配は濃くなっているようだ。

 「うう、なんて邪気だ!」と界王神様が眉間に皺を寄せた。

 何度確認してもよくわからないのが謎なんだよな。

 ピッコロ君や神様が何も言わないのは……いや、これは撹乱の魔術か?

 無意識にレジストしていたから気づかなかったが。

 

 俺と同じフォーマットの魔術だと?

 

 到着したそこには、岩場ばかりが並ぶ荒涼とした場所だった。

 どうやら巨大な宇宙船が土の中に埋まっているらしく、スキャンするとちょっと壮観だ。

 地中から飛び立ったらさぞや映画みたいなダイナミックな絵が撮れるだろうに。

 

「あそこです。あそこに魔人ブウがいます」

「なら早いとこまとめて潰してしまうか。魔術師というなら、下手に小細工を弄されると面倒臭いし」

 

 にゅるりとイカ姿になるのは本気で潰すためだ。

 封印解除直後のスタンを叩くのは常識だからな。

 それに少し嫌な予感もする。

 

 触手を広げて権能と魔術とを編み上げる。

 界王神か俺を恐怖の顔で仰ぎ見て、はっと何かに気付いたように目を見開いた。

 

「あれ……この邪気、似ている……?」

【範囲指定確認。生物に対するエネルギー割合を設定。影響範囲、極小。警告を省略し装填】

 

 まずは挨拶がてらヨグ=ソトースの拳。

 空間を歪曲させる破壊の一撃だ。

 

 瞬間、音もなく空間震の如き力が荒れ狂い、見えていた地上にある入り口が粉微塵に破壊される。

 

 少し威力が足りなかったのか、中の生物が一人生き残っているようだ。

 今のセルよりだいぶ弱いが、それでも相当強い類だ。

 だが瀕死らしく、動きが鈍い。

 

 その時である。

 ぶわり、と濃密な神気が吹き上がった。

 

 ひっ、と界王神様が喉を締め上げられたような声を漏らした。

 相手の存在規模は俺以上、クトゥルフのアンチクショウほどもある神格だ。

 

 決死の形相で宇宙船があった穴から飛び出てきたのは、耳の尖った魔族の男だ。

 「あれはダーブラ!」とキビトさんが叫んだ。

 誰か知らんが有名人らしい。

 

 だが直後に伸びた腐敗した触手に捕らえられ、ダーブラとやらは穴の中に引きずり戻された。

 

 そのまま、穴から苦悶の絶叫だけが響く。

 

 しばらくの静寂。

 現れたのは、ゴムのような表皮に覆われた、巨大で不定形な腐敗しかけのナニカであった。

 あちこちにこぼれ落ちそうな目玉がぎょろぎょろと埋め込まれている。

 人に似たやたら歯並びのいい口がいくつも乱雑に生えて、ガチガチと歯を鳴らしゲラゲラと笑った。

 

 それらの全てが萎びたピンクの身体から生えているようだ。

 太っていただろうぶよぶよのそれは触手に引きずられ、ボロ雑巾のように傷ついている。

 

 目玉全部が俺たちを捉え、哄笑した。

 

 宿主&浮き上がる恐怖の顕現。

 SAN値チェックはこの世界に存在しないが、界王神様が絹を裂いたような悲鳴をあげた。

 

 俺は二人を抱えて一旦距離をとった。

 

【やっべ、ニャルってば死ぬほど怒ってる。俺より存在規模でかいじゃんあれ】

「なんなんですか!?なんなんですかあれは!!!」

【この宇宙の敵。多分この世で一番邪悪で敵意があって有害。ほら見ろよあの顔。荒らすだけ荒らしてやろうって顔してる】

「あんなのの表情なんて分かりませんが!?!?」

 

 意外と余裕あるのか、激しく界王神様が突っ込んだ。

 

 しかしとんでもねぇな。

 あの規模じゃ退散魔術なんて効かないだろうし、殺すなんてもっと無理だ。

 あのブウとかいう被害者を助け出せば多少は小さくなるだろうか。

 いや誤差だなこりゃ。

 

 封印しようにも地球上で戦えばあっという間に人類種など滅び去るだろう。

 浮き上がる恐怖がニタニタと醜悪な笑みを浮かべてどんどんと膨れ上がった。

 

【我ガ夫ダ!!僕ノ!俺ノ!寄越セ寄越セ寄越セ寄越セ!!!】

【俺はものじゃないぞ。お帰りください。俺も早めに帰るんで】

【ヤダ!遊ブ遊ブ!!!!】

 

 ジタバタと暴れる浮き上がる恐怖が、より一層大きく邪悪な姿に組み変わっていく。

 キビトさんなんてもう気を失いそうな顔面蒼白具合だ。

 

 そのあたりで援軍がやってきた。

 ピッコロさん他戦士達だ。全員で地球外に避難してほしい。

 あっでも悟空君は俺に力貸して。

 

 何故かビーデルさんの姿もある。

 膨れ上がった浮き上がる恐怖の姿に身をすくませている。

 

 ピッコロさんが顔を青ざめさせて叫んだ。

 

「おい!何があった!」

【野生の邪悪が暴れてる!たぶん全てを殺し尽くすつもり!倒していいやつ!】

「倒していいって……とんでもない気だぞあいつ!」

 

 クリリン君の悲鳴じみた声を上げる。

 他のメンツも同意のようだ。うん、君らは討伐より先に逃げたほうがいいや。

 ベジータ君ですら愕然としてるし。

 

 ビーデルちゃんが「悟飯君あのイカ何!?!?」と明後日の方向で驚いている。

 俺じゃよ。

 

 俺は触手を振って「やぁビーデルちゃん。さっきぶりだね。今すぐここから逃げてね」と挨拶した。

 変な空飛ぶイカに名前を知られてて、ビーデルちゃんは慄いたようだった。

 





・宿主&浮き上がる恐怖
ブウを侵食して乗っ取ったニャルラトホテプの化身。
ブウの邪心と大界王神たちの常識とニャルの憎悪が詰まった欲張りセット。
今は夫の前なので猫かぶってる。

・ハスター
初撃で地球半分消し飛ばす覚悟で攻撃してればもうちょっと有利に進められてた。
油断。
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