ハスターなオリ主とドラゴンボール   作:ラムセス_

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ニャルギレ

 

 悟空君がさっきから権能による転移を試みているようだ。

 焦る声で叫んだ。

 

「こいつ瞬間移動が効かねぇ!このまま地球で戦ってたら地球の方が持たねぇぞ!」

「父さん!後ろ!」

「っ!?」

 

 悟飯君の声により、間一髪のところで触手を回避する。

 

 そうか、悟空君は地球を気にして全力を出せていないらしい。

 そりゃそうだ。

 今の悟空君は弱っちい旧支配者(レッサー・オールド・ワン)程度の強さがある。

 地球で全力戦闘するには力がありすぎるのは間違いない。

 

 だからニャルを権能を用いて地球外に放り出そうとしているわけだが……。

 

 権能攻撃を当たり前のように無効化するのが外なる神である。

 概念戦闘こそが俺達の領域で、無効化される能力をいかに通すかの経験が悟空君には絶望的に不足していた。

 

 状況は悪い。

 まだニャルは悟空君との戦闘を楽しんでいるが、一度飽きればこの宇宙全土を飲み込もうと触手を広げ出すだろう。

 

 そのあたりでブウが起きたようだ。

 

 やや怯えた様子で「なぁになぁにー…?」とキョロキョロしている。

 後ろにいたビーデルちゃんがそれに気付いて駆け寄った。

 

「あなた大丈夫!?」

「…わかんない。オレ、アイツに酷いことされた?」

「今あの人たちが倒してくれるから、あなたはこっちにきて。怪我がないか確認しましょう」

 

 介抱するビーデルちゃんをきょとんとブウが首を傾げた。

 界王神様がたまらず叫ぶ。

 

「あなた、離れてください!それは魔人ブウです!本当に危険なんです!」

「今はそんなこと言ってる場合じゃないわ!みんなで力を合わせないと、この人がまた吸収されたら大変なんでしょう!?」

「そ、それは……」

 

 おお、創造神系列最高神たる界王神様が一生物に言いくるめられている。

 ブウは話の流れが見えないながら、ビーデルちゃんを見上げてヒョイっと立ち上がった。

 

「お前、優しい。あのデカいやつ嫌いだからオレも言うこと聞く」

「本当!?ありがとう!名前を聞いてもいい?」

 

 ブウは「ブウーーー!!」と叫んで非常に満足げな様子を見せた。

 まあ、いないよりマシと言う程度でしかないが、後衛に襲いかかる触手を弾くのにはちょうどいいか。

 

 ベジータ君も果敢にグミ撃ちしているが、後衛も段々押し込まれてきていたところだ。

 ちょうどいいタイミングだったと言えよう。

 

 セルは緑の神格の護衛で神のそばを動く気はないようだし。

 

 悟空君が焦りに一旦距離をとって顔を顰めた。

 俺はもごもごと腐肉をかき分けて触手をちょろっとだけ外に出して、悟空君に声をかける。

 

「ちくしょう!黄衣さん、なんかいい方法は無えのか!?」

『っ、仕方ない、悟空君!俺を瞬間移動させるんだ!』

「黄衣さんを助け出すってことか?」

『いや、多分俺を離すまいとニャルもついてくるから、それを利用して遠く離れた宙域に誘い出すんだ』

 

 俺が攫われると思ったニャルはバチギレだろう。

 だが、俺が自分で出て行ったりバトッたりするよりはキレ度が少ないはずだ。

 俺が戦闘に入れば間違いなく自暴自棄モードになったニャルが全力で暴れ散らかすから、それに比べればローリスクハイリターンだ。

 

 悟空君が頷いて全身に力を漲らせる。

 幾重もの触手を掻い潜る高速戦闘だ。

 打い払い、拳をふるい、踊るように避ける三次元戦闘。

 その中にあって慎重に隙を見計らい……俺の触手に触れた。

 

 瞬間移動が発動する。

 俺の触手に触れた瞬間、俺たちは遠く離れた無人の惑星へと瞬間移動していた。

 枯れた大地のみがある寂れた場所だ。

 瞬間移動の練習中に立ち寄った場所だろうか。

 

 瞬時に激怒したニャルの触手をステップで避けて、悟空君は距離をとった。

 あとのメンツは追ってはこないようだ。

 邪魔になることを理解しているのか、はたまた一時共闘していたブウが暴れた時のための押さえ役として残ったか。

 

 なんにせよ、場には巨大な浮き上がる恐怖と俺たちの身が残された。

 これで悟空君も全力を出すことができる。

 そして猫が来ても地球が破壊されることはない。

 

 完全なる状況下において、ニャルがゲタゲタ笑いをやめてポツリと言葉を落とした。

 

【─────羽虫如きが、擦り潰されたいのか】

『バチギレじゃん。どうどう』

 

 俺がヨシヨシしたが全然聞く耳持ってくれないようだ。

 そりゃ俺を移動の権能で攫おうとしたんだからな。

 

 俺はムツゴロウさん並みに熱心にニャルを撫でながら口を開いた。

 

『悟空君は俺の息子でね、いい子だよ。ね、鎮まりたまえ』

【!?!?!?ドロボウネコ‼︎】

『違うわい。養子です。つまりニャルの息子ってことだけど』

【………ペッ、羽虫キライ】

 

 劇毒の唾を吐いて、ニャルは触手攻撃を再開した。

 だめかー。

 

 というかお前知能あるくせにどうして会話を拒否してカタコト怪異のフリをするの。

 いや、わがままを通したい時のニャルはいつもコレだが。

 

 俺は大人しくニャル内でぶらぶらしながら、ウイスさんに声をかけた。

 

『どうもです。破壊神ビルスの調子どう?』

『お休みになられてます』

『布団引っぺがすのってできそう?』

『天使は破壊神に破壊行為の強制をすると一発アウトの可能性がありますので……残念ながらできかねます』

『ああー、それじゃ無理だな。ルール厳しいよな天使って』

 

 俺の世界における外なる神に近しい存在だが、ルールの塊と言っていいのが天使だ。

 意思ある自立した権能であり、強力な力とは裏腹にその自由意志は非常に制限されている。

 

 そうなると、あとはもう一回界王神様に発破をかけて、加えて悟空君の成長に期待するしかなさそうだ。

 

 今、ニャルと悟空君は戦闘を続けている。

 戦いの中でより強く、鋭く、洗練されていく悟空君の様は見惚れるほどに美しい。

 

 戦闘開始の時はあれほどに絶望的だった差が、三段、二段と縮まって。

 もうほんのわずか背を伸ばせば届くほどの高みへと引き上げられていく。

 戦いの中で成長する極限の生命。

 美しく極まったそのあり方が、目を惹きつけてやまない。

 

 いつのまにか青く輝く髪が、銀の輝きを僅かに帯び始める。

 

 へえ、天使が使ってる高速戦闘把握系技術だ。

 人間の演算力で再現できるものとは思わなかったが、流石だな。

 というか、感情と理性を機械的に切り離せない限り無理だとばかり思っていたが。

 

 あんなに小さかった子が、たった数十年でこんなにも大きく

 

 だがそう、そこまでして「スタートラインに立っただけ」なのがニャルラトホテプという怪物である。

 化身でしかないが、俺すらも上回る存在規模に夢を起点にした無尽蔵と言える回復力を持つ。

 

 ちっとも潰れない羽虫にニャルもムキになってきたらしい。

 段々動きが荒っぽくなってきた。

 

【ギギギギギギ…がァァアアアアア!!!】

「ッぐわぁ!?」

 

 悟空君が耳を押さえて呻いた。

 魂への直接攻撃を行う叫び声だ。

 概念打撃を受けたことがなかった悟空君は、それに嵌って一瞬無防備になる。

 

 その腹に触手が直撃して、悟空君は吹き飛ばされた。

 

 ブーブー!卑怯なり!

 内側でシュプレヒコールをすると、中に生えてきた触手にベンっと頭を爆散させられた。

 

 ぼ、暴力反対……。

 





・身勝手の極意“兆”
使いこなすには遠い、天使の技術。
自身で長らく超サイヤ人ゴッドのまま鍛錬を続けていたら開花し始めた。
激しさではなく穏やかさの中にこそ開かれる。

・その頃の地球
ブウが残されてしまい空気が割と地獄。
みんな引き気味なので、怒ったりビーデルが実家に連れ帰る予定。
素直で素敵な人よ、ねぇブウ君!
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