TS転生外宇宙系魔法少女ダークネス・ルーシィ   作:イア! イア!!

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忍び寄る血の怪異

 

 

◆◆

 

 

 

「おはよーう」

 

「おはよー」

 

 朝の通学路。小学生たちが学校の前で合流し、互いに挨拶を交わす。

 

 その流れの中に、私もひっそりまじってランドセル背中に登校中だ。

 

「ふわあ……」

 

 まだちょっぴり眠い。どうもここの所、眠気が取れない。ちゃんと早く寝てるはずなんだがなあ。

 

 あれかな。瓦礫に潰されて死にかける、という衝撃的展開からルーシィのおかげで命拾いしたけど、体を修復した影響がまだ残ってる感じなのかなあ。

 

 相談しようにも医者はヤブしかいねーからどうにもならないし。まあなるようになるかあ。

 

 ちなみにルーシィは大人しくおうちで留守番である。うちのルーシィは家で一人で我慢できる賢い子なのだ。でもペットカメラ欲しい。

 

 そんなこんなでぼやぼやと登校していると、ぽん、と肩を小さな手が叩いた。

 

「よっ、ユッキー」

 

「あ、トモくん。おはよう」

 

 声をかけてきたのはクラスメイトの一人だ。休日前と変わらぬ顔で笑う彼は、しかし私の顔を見て訝し気に眉をひそめた。

 

「その眼帯どうしたの?」

 

「ちょっとあってね。どう、かっこいい?」

 

「……いいな! かっこいいかも!」

 

 でしょー、と互いに笑いあう。小学生のセンスなんてそんなもんだ。

 

 まあ実際は眼帯の下に目ん玉はないから、あんまり話題にされても困るのでこれぐらいでちょうどいい。

 

「昨日何してた?」

 

「へっへー、アキラんちでゲームしてた」

 

「おぉー。どうして呼んでくれなかったのさ」

 

「だってお前電話でなかったし」

 

 あそっか、そりゃあな。昨日は朝早くから出かけてたっけ。

 

「ところで聞いたか? 昨日学校休みになった理由」

 

「ああ。怪獣みたいなのが暴れたんだっけ?」

 

「そうそう。すげーよな、怪獣だぜ怪獣!」

 

 そういって笑う彼の顔からは、不安や恐怖は見て取れない。彼にとって、怪獣の暴虐はテレビの向こうの世界なのだ。

 

 まあ、子供の世界はそんなものだ。自転車で行ける範囲が精々の範囲。それから向こうは別世界。

 

 成長と共にその範囲は広がっていって……それが果たして良い事なのかどうか、私には何とも言えない。

 

「ん? どした、また変な顔して」

 

「いんや、なんでもない。それより急いだほうがいいんじゃない? チャイムが鳴りそうだよ」

 

「あっやべっ」

 

 おしゃべりで脚を止めてる間に、すっかり周りに人はいなくなっている。私達は駆け足で玄関に急いだ。

 

 

 

 

 

 んでもって。

 

 これもまあ、うん。あり得る事だね。

 

「どうしてちゃんと連絡してないんですか!!」

 

「うひーん」

 

 保健室に連れ込まれた私を起こるのは、担当教諭の御堂先生。

 

 若い男性だる先生は、膝をついて私と視線を合わせて、怒鳴らないように声が低いままにこちらを糾弾した。

 

「そんな眼帯付けるような状態で……! ちゃんと連絡してくれないと、こっちも対応できないでしょう?」

 

「んーと、すいません……」

 

「ああ、もう。お母さんはこの事を知っているんですか? ……知らない!? ああ、もう! こっちからお仕事先に連絡しますよ、いいですね? 曽良尼さんは保健室でおとなしく寝ている事!」

 

 御堂先生は頭をガリガリとかきながら立ち上がり、職員室に戻っていった。

 

 残された私はベッドの上できょろきょろと周囲を見渡して、保健室の先生と目があって曖昧に笑ってごまかした。

 

「どしよ」

 

 たぶん、母さんには連絡つながらないと思うけど……思い返せば、うん。まともな大人がこういう反応する事は予想してしかるべきだった。

 

 そして話が大事になっていったらそのうち眼帯の下の中身がない、ってのもバレてしまうかもしれない。

 

 それはとてもよろしくないぞ。絶対に大騒ぎになるに決まってる。

 

 でもちょうどいいサイズのビー玉とか見つからなかったんだよな……流石に「義眼にちょうどいい玉ってないですか?」なんて聞く事もできないし。

 

 どうしようかなあ……。

 

 病院がそうだったみたいに、なんか曖昧に見逃されてくれないだろうか。たぶんダメだな、あれやったのルーシィだし。

 

 そしてルーシィは今、おうちでお留守番だ。

 

「ううんむ」

 

 一旦家に帰ります、とでもいってルーシィと合流するか?

 

 とりあえず、今はなるようにしかならない。

 

 私はベッドに横たわるとシーツをかぶって目を閉じた。重ね重ねいうが、どうも最近眠くて仕方がない。

 

 瞼を閉じると睡魔が襲ってきて、速やかに私は夢の世界に旅立った。

 

 

 

 

 

 そして、血生臭さで目を覚ました。

 

「こいつは……」

 

 ベッドから顔を起こし、周囲を見渡すと保健室の先生が床に倒れているのが目に入る。

 

 慌てて駆け寄り脈を確認する。

 

「……脈はある、息はしてる。命に別状はない、だけど……」

 

 先生の顔色はちょっと赤黒いというか、いや、これは……ちがうな。肌自体は青白い……。

 

「こいつは……」

 

 窓から外を見ると、学校周辺全体が赤く染まって……いや、違う。

 

「赤くて半透明の……膜?」

 

 そう。空から降りたクラゲのような膜が学校の敷地をすっぽり覆いつくしている。それが赤色を帯びているから、視界にあるもの全てが赤く見えるんだ。

 

「なんだこれ……」

 

 嫌な予感がする。私は保険の先生を楽な姿勢にさせて、廊下に飛び出した。

 

「う……っ」

 

 学校の中は死屍累々だった。廊下や教室に、生徒も先生も問わずみんなが倒れている。意識のある者はほとんどおらず皆苦しそうに呻きながら気を失っていた。

 

 一応数人の脈を図るが、弱弱しいとはいえそちらに問題はない。生きてはいる、が……。

 

「体温が低い……それに、唇の紫色……肌も白い……。貧血か?」

 

 先ほど保健の先生を見た時には気が付かなかったいくつかの要素。理由はわからないが、倒れてる人たちは血を抜かれてしまっているらしい。

 

 私が平気なのはなぜだ?

 

 いや、気にはなるがそれは後だ。今はとにかく助けを呼ばなければ。

 

「学校内に他に動ける奴は……いなさそうだな。動けるのは僕だけか」

 

 とりあえず電話を試してみるが、ダメだ。無線も有線も全部つながらない。となると、あの半透明な膜を突破して外に助けを求めるしかない。

 

「やれるだけやってみるか……!」

 

 私はロッカーからとにかくとんがってそうなアイテムを引っ張り出すと、校庭に飛び出した。

 

 

 

 

 

◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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