TS転生外宇宙系魔法少女ダークネス・ルーシィ 作:イア! イア!!
「私が来たからにはもう好き勝手はさせないぞ、化け物め!」
颯爽と現れた魔法少女、ソード・アリス。彼女は名前の通り銀色に輝く剣を振りかざし、学校を襲撃した怪物に戦いを挑んだ。
「ソードスラッシュ!」
ブンブン、と剣を振るとその軌跡に三日月状の刃が生じ、怪物の半透明な体を切り刻んでいく。見た目はゲームとかでよくある飛ぶ斬撃だけど、冷静に考えるとどういう原理なんだ?
とにかく巻き込まれてはたまらないので、慌てて校庭の遊具の影に隠れて戦いを見守る。
「と、とにかく助かった。あとはあの魔法少女が化け物を倒してくれれば……」
邪魔をしないように声を潜めて戦いを見守る。
半透明の軟体生物と、刃物を武器にした魔法少女。相性的には絶対有利に見えるが油断は禁物だ。
なんせ相手は意味不明な怪物なのであるからして。
「む……!」
しゅるしゅる、とドームの中央から再び触手が伸びてくる。目敏くそれに感づいた魔法少女が剣を大きく振り上げた。
「何度やっても同じこと……! セイクリッド・ザンスラッシャー!」
再び放たれる特大の斬撃。
空間をも引き裂くような一撃……それを、柔らかそうな触手は真正面から受け止めた。
先ほどと同じように、容易く真っ二つに引き裂かれる触手……いや、あれは……。
「!? 切れない!?」
そう。斬撃をぶつけられた衝撃でくにょくにょになったものの、触手そのものは千切れていない。まるで柳のように斬撃の衝撃を受け流して無傷の触手が、ソード・アリスに襲い掛かる。
「くっ」
文字通りの魔の手をひらりと身を翻して回避する魔法少女。再び何度も飛ぶ斬撃が放たれるが、駄目だ、あの触手には効いてない。
「適応能力でもあるのか? 不味いぞ、何にせよこのままじゃ……」
思わぬ流れに私は拳を握りしめる。だが、しかし、貧弱な小学生の身では何の役にも立てない。
私が己の無力さにほぞを噛んだその時だった。
『ム、ミミィ……』
「! ルーシィ!?」
疲れ果てたような、相棒の声。はっとして振り返ると、ソード・アリスが突入する際に切り裂いた半透明の膜、その亀裂の隙間から見慣れたピンクの塊がふよふよ蠢いているのが見えた。
慌てて駆け寄り、身を乗り出して抱え上げる。
「ルーシィ、無事でよかった! 随分遠くまでふっとばされたように見えたけど、もしかして全力で走って戻ってきたのか?!」
『ムミミィ!』
がんばったよ、とでもいう様に体を震わせるルーシィ。この小さな体でよくもまあ。
「よーし、偉いぞ。……それでその、早速で悪いんだけど、魔法少女がピンチなんだ。力を貸してくれるか?」
『ミミィ!』
お安い御用さ、とでも言いたげに力強く一声鳴くと、ルーシィはくるんと小さなピンポン玉程の赤い玉に変身した。
眼帯を取り、ちょうどいいサイズのそれを右目に嵌め込む。
よぉし、変身だ!
「ダークネス・ルーシィ、セットアップ!」
義眼をはめ込んだ右手でそのまま顔を覆い、指の間から赤い右目を輝かせる。
ギラリ、と光が私の体を包み込んだかと思うと、衣装が黒く燃え上がり、全身を包み込む。その炎の中で体格すらも変化して、髪も長く伸びていく。炎が一際強く燃え上がるとそれはアシンメトリーなゴシックドレスへと形を変える。
フリルの覆い甘え袖をしゃらりらん、と振り回して炎を振り払って、決めポーズ。
「ダークネス・ルーシィ、永久の闇より今ここに覚醒。さて、どうしたものか」
袖をふりふりしながら、上空での戦いを見上げる。
戦況は完全に逆転している。刃を受け付けない怪物の触手に、ソード・アリスとやらは随分と苦戦を強いられている。今は上手くやり過しているようだが、あれでは捕まるのも時間の問題だ。
仕方ない。手助けしてあげますか。
「闇の風よ、我を運べ」
適当なセリフと共に、ぴょーいと跳躍。相変わらずの重力を無視した、上から糸で引き上げられるような挙動で舞い上がると、私はドームから伸びる触手に向けて両腕を振りかざした。
「暗黒の衣よ、伸びろ」
フリルの一部がシュルシュルと伸びる。それはソード・アリスを追いかけまわしていた触手に絡みつくと、有無を言わせず引っ張って動きを封じた。
「なんだ?! ……ま、魔法少女!? 救援か、助かる!」
「刃は引いて切らねばただの棒。剣士はいつから棒きれを振り回すようになったのか、驚いたな」
「なぁにい!?」
おっといけね、口が滑った。
私はぐいぐい、とフリルを引っ張って、触手をピンと引っ張った。
よし、これなら多少の斬撃耐性があった所で……!
「小娘、今だ。張り詰めた物ほど壊れやすい、お前はそれを良く知っていそうだが?」
「なんだ貴様、喧嘩を売ってるのか?! ええい、あとで覚えていろ!」
眉を怒らせながらも、ソード・アリスはそのチャンスを逃さなかった。閃いた刃が、今度こそ触手を真っ二つに両断する。切断面から得体のしれない汚濁液を吹き出しながら地面に落ちていく触手。
「よしっ!」
「ふん。聖剣とやらは随分と鈍と見える、闇の刃の足元にも及ばぬ」
「あんだとぉ!」
いっけね、これだと熊本弁じゃなくてただの悪口だ。もうちょっと語彙を増やさないと……。
「待て、互いに言い争っている場合ではない。鮮血を求める奇獣への刑罰が先だ」
「くっ、それもそうか……!」
なんとか穏便に相手を宥められた。二人して空中で向き直り、学校を包む半透明の巨大な怪物を見上げる。
奴は依然として健在だ。ソード・アリスによって切り裂かれた大きな開口部もいつの間にかふさがれており、切断された触手も何ごともなかったように再び伸びてきている。
その一撃を振れないように二手に分かれて回避しつつ、私は違和感に目を細めた。
……タフすぎる。なんだかんだでソード・アリスの一撃はかなり強力な一撃だったはずだ。それを何発も撃ち込まれて平気というのはどうにも腑に落ちない。
それほど常識外れの耐久力を持っているのか。あるいは、そもそもこれまでの攻撃が奴のHPを削っていない、という事か。
私は千切れた甘え袖のフリルを見下ろして小さく頷いた。恐らく、そういう事だ。
「聖剣の徒よ、心眼を研ぎ澄ませ。奴は虚栄の獣、汚らわしきその心臓は塔の底に埋められている!」
「は、え? 何?! 塔が何!?」
「お前の鈍は空を叩いていただけという事だ」
「はあ!?」
ええい、いちいち説明している時間はないか!
私は右目を手で覆い、その下で瞳を赤く燃やした。言葉で伝えるのが難しいなら、行動で示す!
「輝け我が魔眼よ! その赤き空の下、汚れた虚を映しだせ!」
解放した右目から、ビカーと赤い閃光がサーチライトのように放たれる。その光が巨大なクラゲのごとき怪物の体を精査する。
あった。
一見すると何にもない半透明の壁。その内部で、脈動する何かが逃げるように動き回っている。
あれが本体だ!
あっ、くそ、ちょこまか動きやがって! 私一人では照らし出すので精一杯、ブチ潰すまで手が回らない!
パイセン、よろしくお願いします!
「やれ、鈍包丁娘!!」
「ええい、さっきから黙っていれば今度は包丁呼ばわりだと、許さん! ならばその目でしかと見るがいい、この聖剣の切れ味を!」
じゃき、と両手で聖剣を構え直すソード・アリス。その剣が再び光を帯びる。
「三度目の! セイクリッド・ザンスラッシャー!!」
裂帛の気合と共に放たれた斬撃。
光の奔流となって迸ったその一撃は、逃げる怪物の本体をしかと捉え、真っ二つに両断した。
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