TS転生外宇宙系魔法少女ダークネス・ルーシィ   作:イア! イア!!

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僕の友達/私の全て

 

 

 ほぼ独り暮らし同然の生活である以上、必要な物は自分で買い出しに行く必要がある。が、いくらなんでも、ルーシィを人前に晒すと不味いぐらいの判断は出来る。

 

 かといってルーシィを留守番させるような、可哀そうな真似はできない。

 

 そのために用意したのが、ペット用のカバンである。鍵をかけたこれならば、人からルーシィを隠しつつ、ルーシィに外の世界を楽しませてやる事ができる。

 

 万が一見つかっても、ぬいぐるみだと言い張ればいい。実際にそうやっている人も大勢いる。

 

 こういう意味での趣味の多様性は、ありがたいものである。

 

「~~♪」

 

 がたん、ごとん、と揺れる電車に揺さぶられて町に向かう。電車の中の人はまばらだ。

 

 少し離れて、小さな子を連れた母親が座っている。

 

 懐かしいな。今生では覚えがなかったけど、前世では、母親と小さな頃よく買い物に出かけたっけ。小さな頃の事なのに、よく覚えている。逆に、大人になってからの事は、記憶があいまいだ。あまり覚えていて愉快な記憶ではなかったのだろう。

 

 子供の頃は早く大人になりたいと思った事もあるが、人生というのは、大人になると同時に終わりを迎えるものだったとは知らなかった。哀しいね。

 

「……うん?」

 

「……」

 

 と、気が付くとその小さな子供が、私の抱えているカバンを指をくわえて眺めている。とてとて、と歩いてきた子供が、じっと至近距離から私を見た。

 

「ねこちゃん? わんちゃん?」

 

「さあ、どっちだろうね?」

 

「んー……」

 

 興味津々で眺めてくる子供から、そっとカバンを遠ざける。いいかいルーシィ、ノリよく鳴き声だしたりしないんだよ?

 

『(モゾモゾ)』

 

「あら、すいません。うちの子が……」

 

「いえいえ」

 

 そんな感じでちょっとひやりとしたものの、無事に目的地に到着。

 

 人の多い街中をひょこひょこ歩き回って、本屋と花屋、そしてケーキ屋さんを見て回った私はちょっと休憩のために公園による事にした。

 

 ビルの間にひっそりと広がる小さな庭園、そのベンチに腰掛けた私は、周囲に誰もいない事を確認してそっとカバンの扉を開いた。

 

『ミュミュ』

 

「ふふ、お疲れ様。お菓子食べる?」

 

『ミィ!』

 

 ポケットにしまっていた飴ちゃんを与えると、ぱっくり裂けた口が私の指ごとくわえこんだ。ルーシィの口の中はわりとぱさぱさしていて、ねばねばしない。

 

 指を引き抜くと、ルーシィはもごもごと飴を口の中で転がしながら、にっこりと複眼を細めてご機嫌な様子。

 

『ミュッ!』

 

「ふふ、これでおーしまい。今色々食べたら、お腹がいっぱいになっちゃうよ。ごちそうが食べられなくなっちゃう」

 

『ミィ?』

 

 ごちそう? と首を傾げるルーシィに、私はさっき買ったケーキの箱を指し示した。

 

「これ、ハーフアニバーサリー記念。ルーシィと出会って半年だから、お祝いにしよう」

 

『……ミィ!!』

 

 びっくりして硬直する事数秒。

 

 ぶわ、と10を超える瞳を浮かび上がらせて、ルーシィが眼を見開いた。その瞳をうるうると潤ませ、ルーシィは擦り付けるように私の指先に頬をよせる。

 

『ミィミ~~……♪』

 

「ははは、くすぐったいって」

 

 どうやら、サプライズはお気に召したようだ。

 

「これからも、よろしくね、ルーシィ」

 

『ミミミミ!!』

 

 

 

 

 

 遠くで、何か地響きがした。

 

 

 

 

 

「あれ、何?」

 

『ミミ……』

 

 脚の裏から伝わってくる振動に顔を上げる。怖がるように身を寄せてくるルーシィを抱きしめて、私は周囲を見渡した。

 

 見渡す限り、何か異変のようなものは見当たらない。ああでも、ここは人気のないビルの陰だから、外に出たら違うのかも。

 

 ルーシィをカバンに戻そうとした私は、ふと頭上を何かが横切ったような気がして顔をあげた。

 

「え?」

 

 見上げた先。

 

 公園の隣のビルの中腹に、大きな何かが刺さっていた。

 

 ビルの上半分が、圧し折れて私の上に振ってくる。

 

 

 

 

 

◆◆

 

 

 

『ミィー! ミミミィー!!』

 

「う……っ」

 

 ルーシィの、聞いたことが無いような必死の呼びかけ。それを聞いて、私は眼を覚ました。

 

「何が……うっ」

 

 思わず身を起こそうとして、激痛に手足がひきつる。

 

 いや、これは痛みなのだろうか? 痺れといったほうがいい。ずっと正座していて足がしびれて、ビリビリし始める直前のそれに似ていて……。

 

 頭のどこかで、神経が死んでるからだ、と冷静な自分が語っていた。

 

「るー……しぃ……。どこ……?」

 

『ミミミィ!』

 

 呼びかけるとすぐに反応があった。横たわる私の顔のすぐ前に、ピンクの塊がふよふよ蠢いている。だけど、おかしいな。よく見えない。

 

 世界が。半分に、なってしまった、ような。

 

 周囲を見渡すと、公園は見る影もなく瓦礫の山に待っていた。せっかく買ったケーキが大きな石につぶされて転がっているのが見える。

 

「あ……う……っ」

 

 見下ろせば、私の腰から下は瓦礫の下だった。何の瓦礫だろう。

 

 そこまで考えて、私は意識を失う直前の事を思い出した。

 

「そっか……ビルが、崩れて……い゙っ」

 

 ずずん、と地面がゆれて、それが体に響いて苦痛の声が出る。がほっ、と吐き出す息は、なんだかやたらとじめっとしていた。

 

 ああ、これは。

 

 知っている、感覚だ。

 

「ルーシィ……お前は、お逃げ……」

 

『ミミミィ!!』

 

 顔いっぱいに浮かばせた目玉に涙を浮かべながら、ルーシィがイヤイヤと首を振る。そんな彼を私はなんとか抱きしめて、ぎゅ、と顔を寄せた。

 

 どうやら、私は助かりそうに無い。

 

 でも、せめてこの子だけは。

 

「これまで……ありがとう。お前といられて……僕、幸せだった……」

 

『ミミミィィィ!! ミィイイイ!!』

 

「だから……お前だけでも、逃げて。あの幸せな日々を……せめて、お前は覚えて、いて……」

 

 思い返す、幸せだったルーシィとの日々。

 

 だけど、ああ、おかしいな。

 

 思い出す端から、それは泡のように消えていくばかり。

 

 段々、頭が回らなくなっていく。血が足りないとかそういうレベルじゃなくて、私という存在を動かす動力が消えていくのが分かる。

 

 世界が。私が。

 

 黒く染まっていく。

 

 これを私は知っている。だから、せめて最後に、心残りの無いように……。

 

「お前は……どうか。しあ、あせに……」

 

『ミィ! ミィ! ミィ!!』

 

 ピンクの顔を赤く染めたルーシィが泣き叫んでいる。だけど、私にはその涙を拭ってやる事ももうできない。

 

「さよ……なら……」

 

 瞼が重たくてもう眼を開いていられない。いや、そもそも私は眼を空けて居られたのだろうか。

 

 わからない。

 

 何もわからない。

 

 二度目の闇が、私を飲み込む。

 

 

 

 

 

 

 

 死。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その、暗黒の色に私の全てが塗りつぶされる直前に。

 

『ミミミミィ!!!!!』

 

 形容しがたい、輝く虹色の渦巻く黒色が私の闇を飲み込んだ。

 

 

 

 

 

◆◆

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