ジャズ好きパイロットの相棒、異世界にて歌う 作:月光舞詐称者姫
キュイ、キュイ、と耳障りな音が鳴り響く中、人間の一団がひた走る。
「急げ、こっちだ!」
金髪のツンツンとした髪の女性が、二人のよく似た見た目の少女の手を引いて走る背後には、グロテスクな色合いにグロテスクな見た目をした“怪物”という言葉がふさわしい存在がひしめいている。
『ノイズ』数年前から発生し始めたという怪奇現象。徐に現れ、現代科学の装備の類が通じず、逆に向こうの攻撃を受ければ、体が炭素に分解されてしまうという、無数の死者を各地で出し続ける特異災害
「クソッ!」
そのうちの一部のノイズが、白く発行する部位をムチの様に伸ばして攻撃を繰り出してくる。それを見た女性は、手を引いていた二人の少女を抱え込み、隣の部屋に飛び込む。
勢いを余らせたノイズの触手は彼らの住んでいた家の壁を赤い粉塵に分解してしまった。
「このままじゃジリ貧か……リリー!」
リリーと呼ばれた少女はこの現象を前に震えている。一方、もう一人の少女、イースという彼女の妹は、こんな状況にも拘わらずうとうとしており、今にも眠りそうだ。
「イースと一緒に、この窓から外に出ろ。」
「イオは!?イオはどうするの!?」
「向こうにバイクがある。このまま3人で逃げても追いつかれるだけだ。俺がノイズを引き付ける。」
「待って、それじゃあ……!」
イオと呼んだ女性の言わんとすることを察して、止めようと声を上げる。
「迷ってる時間はねぇ。安心しろ、俺は必ずお前の元に帰ってくる。」
笑顔を浮かべ、ウィンクをするイオ。ほかに選択肢がないことも、年不相応に頭の良い彼女は十二分に理解できてしまった。
「絶対……絶対だよ!」
「あぁ、約束だ。さぁいそげ!」
窓を開き、リリーを抱えて地面に降ろし、うとうととするイースも抱えて立たせる。
「イース、お前ももう少しの辛抱だ。あと少し、眠気を我慢して走ってくれ。お前の為にも、リリーの為にもな。」
その言葉にこくりとうなずくイースに、いい子だ。と笑みを浮かべた直後、キュイ、キュイ、と耳障りな声が聞こえてくる。
「チッ、もう来やがった。さぁこっちだノイズども!」
声を上げ、壁を叩き音を出しながらイオが屋敷の中を走っていく。それを一瞬だけ見たリリーは、妹であるイースの手を取り、まっすぐ、ひたすらに、森の中を走っていった。もう二度と会えないんじゃないか、そんな予感と涙を流しながら必死に。
「う……」
ゆっくりと起き上がる。あたりを見回しながら、ここがどこかを理解する。
「また……あの夢か。」
そうボヤいた彼女の名は、リリー・シェリーナ。日本にある私立リディアン女子学院に通う少女だ。ヨーロッパの孤児だった彼女は、日本を拠点に活動する慈善活動団体に拾われて、ここにいる。
「イオ……」
だが、彼女を拾ってくれた彼女の家族、イオ・フレミングはもういない。10年前に家がノイズに襲われて、ノイズを引き付けると言って逸れた彼女は、結局リリーの元に帰ってくることはなかった。
ノイズに分解されてしまえば死体は残らない。だが発見された、彼女が逃走の為に乗っていったであろうバイクの残骸が、彼女の死亡を告げていた。
世界各地の子供に援助の活動を行っていたイオの生家、フレミング家。紛争地域にも手を伸ばしていたためか、万が一に備えていた遺書が見つかり、彼女にはフレミング家の遺産の一部が渡された。弁護士だという男性が管理してくれるそれと、ノイズ災害の援助金を使って、彼女は双子の妹のイースと生活を送っている。
「また会えたと、思ったのに。」
早くに起きてしまった故に、寝間着のまま、すやすやと隣のベットで寝息を立てる妹を眺めながら、暗い表情でそうボヤく。
彼女には、人には言えない秘密がある。奇妙な夢を見るのだ。夢の中は、彼女の住む日本より遥かに科学が進んだ未来。人類は宇宙にコロニーという居住区を建て、宇宙の人間と地球の人間で巨大ロボットを操り戦争をしていた。
そこのリリーとイースはテレパシーや透視といった超能力じみたものを持っており、地球の軍に、それを兵器利用するための実験台とされていた。そんな地球の軍、正式には地球連邦軍という組織が、リリー達と同じ超能力を用いて信仰を集める宗教テロ組織、南洋同盟との戦いの任務で出会ったのが、イオ・フレミングだった。
そして、その戦いの中で、毒を盛られたイオの身代わりとなってイースが死ぬ。残されたリリーはイオ、そして新たに加わっていくチームの仲間達と共に南洋同盟を撃退し、家族を得る。
幸せな世界ではある。けれどやはり、そこにはイースがいない。チームの仲間も大勢死んで行った。そしてこっちには、最後までその夢の世界で寄り添っていたイオが、自分とイースを生かすために死んでしまった。
「デント、オルフェ、アリシア、ビアンカ……」
仲間達の名前を呟く。まだまだ居る、大勢の仲間。チームTrust、失って、傷ついて、また集まって笑い合った仲間達が誰もいない。
涙が出る。妙にリアルなその夢の者たちを求めずにはいられない。
「嫌だよ……皆んな一緒に居たいよ……」
そんな言葉と涙が溢れた。拭うものは、誰もいない。
「はい、お待たせしました.」
「わぁ……美味しそー!これ、リリーちゃんが作ったの!?」
「私のはまだお客さんに出せる味じゃないよ。」
運んできた皿を、自分と同じリディアン音楽院に通う少女、立花響と小日向未来の前に置く。そこに乗る熱々のお肉と野菜が生地によって一塊になり、室内の灯りの光を受けて艶めかしく輝くソースによって色付けされた料理を見て、響が目を光らせる。
彼女の妹、イースはハンデを抱えている。彼女は日に3時間起きると、3時間寝る。そのサイクルを必ず繰り返すのだ。その為、彼女の通うリディアンではなく、そうした特殊な環境で生きる子供たちをケアする専用の学校に通っている。
そういった場所の費用や彼女の生活費は、国から出るノイズ災害被災者支援金と、フレミング家の遺産で賄われている。しかし、使っているだけでは当然だがお金は減るばかりだ。だから彼女はリディアン近くのお好み焼き屋、『ふらわー』にて、誘ってくれた店主のおばちゃんの好意に甘える形でアルバイトをしている。
そして、その事情は常連客であるこの2人も知るところであり、『人助け』が信条である響は、リリーと生活面で響が世話を焼き、勉強面でリリーが世話を焼く持ちつ持たれつの関係である。
「またまたぁ、修行中なんでしょ?食べてみたいなぁ、リリーちゃんの作ったお好み焼き!」
「はいはい、時間と材料があったらね。」
そんな風に、友達と他愛無い会話をして、バイトを終えれば、イースの迎えにいく。
「イース、今日のお勉強はどうだった?」
「そっか、よかった。」
普段は滅多に喋らないが、自分が話しかければ微笑みかける。その表情で、リリーはイースの気持ちや言わんとしている事を読み取っていた。
友達がいて、家族がいて、暖かい家もある。でも、何かが欠けている。そんな世界は、いきなり崩壊を迎えることになる。
「ねぇイース、お腹は空いてない?食べてきたの?美味しかった?」
「そっか。それじゃ、デザートにプリンでもどうかな?」
「ふふっ、そうだね、楽しみだ。」
そんな他愛無い会話をしながら歩く帰り道、ふと、道の隅を見て、そこにある、黒々とした炭の塊に気づく。
「ッ!?」
間違いない、あれはノイズの痕跡だ。近くに居る。その事実に冷や汗が止まらない。ゆっくり、ゆっくり、イースの手を引いて今来た道を下がる。
「逃げるよ、イース!ッ!?」
そして、振り向いて走り出そうとした時その正面に居るグロテスクな見た目の存在を目にしてしまう。
ノイズは目の前、リリーの学生鞄に付けられた、誕生日プレゼントの赤いペンダントが、きらりと街灯に照らされて光を反射する
もう、日常には戻れない。これは、彼女が理想を掴み取る為に歌を口ずさむ物語
早速ですがアンケートを募集させていただきます。彼女、リリーの纏う聖遺物についてです。選ばれる聖遺物によって、作品の展開が変わる場合が存在します。どの聖遺物が彼女をどんな未来に導くのか、それは今後のお楽しみです。
まぁニッチなガンダム作品とクロスしてる小説をどれほどの方が読んでくれるかは分からないのですが……
リリーの聖遺物は……
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ギリシャ神話:英雄殺しの骸
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アーサー王伝説:王の宝剣が一振りの破片
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インド神話:王子の弓の弦
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ケルト神話:猛犬の戦車の残骸
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中国史:武帝の天裂く剣の欠片
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日本神話:地に穿たれし矛の先端