ジャズ好きパイロットの相棒、異世界にて歌う   作:月光舞詐称者姫

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お待たせいたしました。次回は多分大幅に遅れます。学生の本文がありますので……


死線を越える剣× 死線じゃないとやる気を出さない剣

「セクエンス?」

「そ、かのアーサー王が握ったとされる宝剣の一つね。」

 

 シュミレーター室で起動したギアを見に纏うリリーに、了子が解説する。

 

「アーサー王の剣ってエクスカリバーじゃないの?」

「うーん、やっぱりそれが有名だけど、それだけって訳じゃないのよ?」

 

 王様なんだし、メインの剣の他にも色々持ってたワケ、と語る。

 

「セクエンスはその一振り。アーサー王が死線……命を落とすかもしれないような苛烈な戦場に赴く時、必ず帯剣していたという話があるけど……」

 

 そこで一度ため息をつき、了子はリリーのギアを見る

 

「まさかシュミレーターじゃ出力が上がらないなんてねぇ。」

 

 リリーの今のギアの色は、あの時とは違い黒。ライトブルーに発酵するラインが走っているが、それだけだ。響と共闘した時に浮遊していたソードビットも、手元の剣に結合し、一つの大剣の様に変化している。

 そう、実力をシュミレーターで測ろうとしたは良いものの、ギアの出力が目に見えて低いのだ.歌により発生するフォニックゲインの数値に異常はない。つまり

 

「死線、自分が死ぬかもしれない状況にならないと力が発揮されない……ってことですか?」

「恐らくは、ね。ノイズと戦ってた時は普通に起動してたみたいだし。」

 

 でもこれじゃ訓練にならないわ。と困ったように言う了子に、リリーも考える。

 

「まぁ、こっちで手段を考えてみるわ。一先ずは、その形態でも戦えるようにならないとね。」

「……はい!よろしくお願いします!」

 

 再びシュミレーターが起動し現れる、ホログラムで作られたノイズ。重く取り回しは悪いが、硬さと破壊力だけはある大剣を構え、彼女はシュミレーターに挑んだ。

 

 

「セクエンス……ねぇ。」

 

 リリーの去ったシュミレータールーム。別の部屋からその様子をモニタリングしていた了子は、ため息をつく。

 

「死線に立たなければ真価を発揮できない剣、聖遺物としての格は天羽々斬やガングニールには遠く及ばびはしない。」

 

 だが、シンフォギアはシンフォギア。一度ギアを預かった際に精密検査を行なったデータが、隣のモニターに出ている。蛇のように細めた目でそれを見ていると、

 

「了子君、詰めているな。」

「あら弦十郎君、そうね……気になるポイントも多いから……」

 

 弦十郎が扉を開けて入ってくる。いつものくりりとした丸い瞳に表情を戻してから振り返り、顔を合わせた了子は、そう言ってセクエンスのデータへと視線を戻す。

 あったかいもの、どうも。と差し入れのコーヒーを受け取り、画面を走らせる。

 

「出自不明のシンフォギア……か。」

「私以外にゼロから作れる人間が居るとは思えないけど……」

「だが、実際には存在している。リリー君はフレミング家の遺産として渡されたと言っていたが……」

「イオ・フレミング、ヨーロッパの大企業、フレミング・インダストリー社のご令嬢ね。」

 

 新たなデータを出す。金髪のツンとしたショートヘアの女性だ.

 

「15年前の不祥事で会長の父親が自殺。お姉さんと協力しての建て直しを計る一方、自分の資産を利用してNPO法人を立ち上げてるわね。」

「世界各国の戦災孤児などの保護、か。リリー君も」

「ええ、2人はイオの団体の日本の施設で育ったけど、彼が訪問しているところにノイズが発生、子供達を逃すために囮になった後、彼の使ったと思わしきバイクの残骸と炭化した跡が見つかったわ。」

「状況から見ればまず死んでいるが……」

「えぇ、このシンフォギアが出て来た。」

 

 聞けば、これはイオ・フレミングが残していた遺言状により、名指しで渡されたものだという。

 

「イオ・フレミングは間違いなくこれを彼女に託してるわ。一体なんの目的があって……」

「なんらかの理由があって彼女にこれを託して自分は死んだ.あるいは、セクエンス以外にもノイズに対抗できる手段を隠し持っており、生きているのを隠している……か。」

「どっちの線も考えられるけど、情報が少なすぎるわ。」

「俺たちの権限じゃ、フレミング・インダストリーまで捜査の手も伸ばせんからな。」

 

 彼らは日本の秘密組織。海外の企業を捜査する権限はない。

 

「ええ。それにこのシンフォギア、妙なのよ。」

 

 次に出たのはシンフォギア自体の解析データ。

 

「私の作ったシンフォギアは、異端技術の力を科学技術で開放するものなんだけど……いくつか、現代科学では説明のつかないブラックボックスカされた部分が見つかったわ。」

「このシンフォギアには、別の異端技術が関わっているということか?」

「そうなるわね。」

 

 聞けば聞くほど奇妙なギアだ。

 

「本当に、いったい誰が、どんな目的で作ったのかしら。」

 

 そう言う了子は、弦十郎に気づかれぬよう、目を細めて資料を睨みつけるのだった。

 

 

「案の定、ノイズが相手なら問題ないわけね!」

 

 二箇所に出現したノイズ。響と翼、リリー単独に分かれての撃退劇となった。

 この振り分けに対する理由は主に3つ。一つは、まだ戦いなれてなく、アームドギアと呼ばれる武装を展開できない響を単独で向かわせるのも、経験の浅い2人を組ませるもの良くないという弦十郎の判断

 

 奏のアードギアであるガングニールを纏う人間を認めたくないのか、2人の間にできてしまっている不和を解消したいという二課の面々の判断

 

 そして、死線でしか力を発揮しないセクエンスの真価を計りたい了子の判断だ。

 

「その調子よ、リリーちゃん。ギアとの適合率も良好!」

「バットの扱い方が手慣れているな。」

「ええ、天性の才能、と言ったところかしら。」

 

 周囲の監視カメラや計機などから戦闘を観測する弦十郎達は、リリーの動きをそう評価する。

 剣を使った戦闘には慣れていない。何かの真似のような形で振るってこそいるが、間合いの管理や踏み込みは素人のそれだ。だがノイズ相手にそれを補って余りある、シースビットの操作。

 時に盾としてノイズの攻撃からリリーを防ぎ、時に矛としてノイズを貫く。拙い剣は、撃ち漏らしを切り捨てる程度にしか使われない。

 

「それはつまり伸び代があると言うことだ。しかし……彼女からは妙に場慣れしている雰囲気を感じる。」

「場慣れって……」

「いや、彼女の過去は理解しているつもりだ。だがあれは……」

 

 普通の、妹想いの少女のような雰囲気の中に少しだけ隠れた.戦場を歩いて来た兵士のような緊張感の高さ、弦十郎は、リリー・シェリーナという少女を測り兼ねていた。そこに

 

「ッ!新たなアウフバッヘン波形を確認!」

「なんだとッ!?」

 

 新たな問題が、舞い降りることになる。

 

 

「敵の襲撃!?」

『そう、ネフシュタンの鎧……あのツヴァイウィングのライブの時に奪われた聖遺物を纏った女の子が現れたの!そっちのノイズは』

「あらかた片付きました! 急いで救援に……ッ!」

 

 そこで感じ取った、脳裏に電流が走るような感覚。何か悪いものが来る、夢の中で幾度となく感じ取った感覚。それに従い、動かしたシースビットの一つが、彼女の脳天を正確に狙った弾丸を弾いた。

 

 

「防がれた?」

 

 街を一望できる巨大な電波塔、東京スカイタワー。その上に、錆色のギアを纏った少女がいた。あどけなさとそばかすの残る童顔の彼女は、冷ややかな瞳でそのボルトアクションライフル型のギアのスコープを覗いていた。

 スコープには、慌てて遮蔽物の影に隠れるセクエンスの奏者の姿が映っている。

 背後から狙いをつけ、即座に遮蔽に飛び込んだおかげで顔は見えなかった。だが

 

「次は仕留めるわ。」

 

 そう言いながら、銃身を上空へと向け狙いをつける。

 

「(あの髪色にあの防ぎ方、まるで……いえ、まさかね。)」

 

 脳裏をよぎる嫌な予感を、スナイパーらしく振り払いながら。

 

 

「スカイタワーの屋根からの狙撃だと!?直線距離でどれだけ離れていると思ってる!?」

「長射程高火力攻撃……まさかイチイバル?」

「いえ、反応一致しません、新たなシンフォギアです!」

「馬鹿な……昨日の今日だぞ!一体……何が起こっている……!」

 

 ネフシュタンの鎧を見に纏う少女と、謎の狙撃型シンフォギア。次から次へと現れる事態に、この場所で起きようとしている何かを予感して、弦十郎は冷や汗を流した。

 

 

「狙撃……それに今の感覚って……」

 

 夢の中で自分が使っていた超能力。やけにリアルで記憶に残る夢。夢じゃないような感覚がするような、自分に喪失感を味合わせてくる夢

 研ぎ澄まされたような第六感。夢の中でニュータイプと呼ばれたもの達が使っていたもの。自分のそれはそこまで強い良ものでは無かったが……

 

「ッ!来る!」

 

 慌ててそこから飛び退けば、上空から弾丸が降り注いだ。

 

「曲射!?狙撃銃で!?」

『リリーちゃん、相手は正体不明のシンフォギアを纏ってるわ!』

「聖遺物はなんでもありってわけ!?」

 

 さらに上空から弾丸が降り注いでくる。

 

「そもそも向こうはどうやって私を……ッ!」

 

 辺りを見回せば、鳥のような形状の奇妙なドローンが飛行している。錆色の輝きからして明らかに聖遺物。

 彼女は知る余地もないが、狙撃型アームドギアを扱う少女の技の一つ L-o.D.C(Lock-on.Da.Capo)である。鳥型ドローンの視界は彼女のスコープと共有され、ロックした敵に向けて弾道を曲げることを可能にする。

 

「また来るッ!」

 

 彼女が頼れるのは直感のみ。この距離と弾速では銃声は遅れてやってくる。もう一度上空で曲がり飛来した弾丸を飛び退いて回避。

 

「かかった。」

「ッ!?」

 

 そこに、別方向から建物の間を縫うように迫って来た弾丸がリリーを襲おうとして、

 

「ッ!?」

 

 スコープが初めてリリーの顔を正面から捉え、慌てて、彼女のこめかみに迫った弾丸を逸らした。

 目を見開き、呼吸が乱れる

 

「冗談でしょ、アンタも来てたの?」

 

 運命の残酷さを呪いながら、呼吸を落ち着かせる。

 

「でも、関係な……」

『聞こえるか、撤退だ!』

「クリス?」

『野郎、絶唱を使いやがった!』

 

 絶唱、奏者の命を削る代わりに絶大な威力をもたらす大技。それを食らったと言う仲間の通信に息を呑む。

 

「ッ!大丈夫なわけ!?」

『なんとかな……だがこれ以上は無茶だ!』

「……わかったわ。」

 

 狙撃銃を手に持ち、立ち上がる。

 

「……決着は今度ね。また会いましょう。」

 

 リリー。そう言葉を残して、少女はスカイタワーから飛び降り、姿を消していった。




ネタバレ防止にタグの数を減らしてるので段々とタグが増えていく予定です。
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