ジャズ好きパイロットの相棒、異世界にて歌う 作:月光舞詐称者姫
「響……」
「……リリーちゃん」
病院に駆け込めば、そこには沈んだ表情の響が待っていた.
「聞いたわよ、翼さんが、」
「うん、歌ったの。奏さんと同じ、絶唱を……」
「絶唱……」
「奏者への負担を度外視した、シンフォギアの最大出力を超える力のことです。」
それに口を挟んだのは、二課のエージェントにして、普段は風鳴翼のマネージャーを務める男性、緒川慎次だ。
響に対して少々棘のある態度をとっていた翼を、嫌いにならないでほしいと声をかけたという。
「緒川さん……」
「2年前のツヴァイウィングのライブの日、犠牲者を最小限にする為に使った奏さんの絶唱は、同時に彼女の命を燃やし尽くしました。」
「じゃあ、翼さんは……」
頭をよぎった最悪の展開に対して、緒川は首を横に振る。
「幸いなことに、翼さん本人と天羽々斬の適合率が高かったおかげか、一命は取り留めましたが、予断を許さない状況です。」
その言葉に、落ち込むように響は頭を下げる。
「あの女の子が言ってました……目的は私だって……翼さんは、私を守る為に……あの時も……!」
ツヴァイウィングのライブの日、死にかけてしまった立花の目の前で、奏は絶唱を歌ったという。今涙を流す響の気持ちは、よく分かる。
「私なんかのために、あの人が命を捧げる必要は無かったんじゃ、かしら?」
「ッ!」
人助けという趣味のためならば自分を顧みない。そんな危うさを持つ響の内心をリリーはそう表現した。図星を突かれたのか響の目が大きくなり、緒川の瞳は対照に細くなる。
「分かるわ。私もそう思ったこと、あるもの。」
思い出すのは夢の記憶。彼女の妹、イースはそこで死ぬことになる。今でこそ最愛の家族だが、当時はただ同じ作戦に参加しただけの関係だった、イオを庇って。
そしてこの現実では、彼は自分を庇って姿を消した。
「キツイわよね。残されるのって。」
自嘲するかのように、天井を見上げる。
「今まて当然のように隣にあったものがもうなくて、なんでって怒っても、夢なら覚めてと嘆いても、どうしようもなく埋まらない、ぽっかりと空いた穴が残る。」
「翼さんは、奏さんの抜けた穴を埋めるために奮闘していました.同じ年頃の子が覚えて然るべき、恋愛も遊びも覚えずに、文字通り、1人で……」
彼女の言葉に、緒川は頷くように言う。2人の愛したツヴァイウィングは解散し、もう二度と一緒になることはない。
だがノイズは無くならない。その負担は、翼1人の肩にのしかかった。故に彼女は、剣にならなければならなかった。
「でも、心の穴は埋まらない。どうやっても、失ったものを埋める手段なんて無いのよ。」
「……私、言っちゃった。」
リリーの言葉に、響は涙を流す。
「奏さんの代わりになるって……なんにも、知らないで……!」
「そうですね……僕も、他の皆さんも、貴方に奏さんの代わりになって欲しいわけじゃ無い。」
「ええ、無くなったものは、どう足掻いても埋まらないもの」
涙を流す響を宥める緒川。その隣で、リリーはそう言う。
イースが居るから、イオが居なくなったという心の穴が埋まるわけじゃ無い。夢の中の自分も、居なくなったイースの代わりを、イオに求めたわけじゃ無い。
「じゃあ、どうすれば……」
「支え合うの、そして抱えていくのよ。」
あの世界で、自分はそうして生きていった。イオだけじゃ無い。多くの仲間と
「どうやっても、心の中に空いた穴は埋まらない。でも、その穴に落ちて行かないように、支え合うことはきっと出来るわ。」
手を繋いで、落ちないように引っ張りあって、笑い合う。新しく出来たそれは、かつてあったものに比べれば小さく脆いかもしれない。だが、
「新しく出来たものを育んで、穴を抱えて生きていくの。乗り越えるとか埋めるとか、そんなふうに思う必要は無いのよ。」
「支え合う……か。」
「人っていう字は、そうやって書くんでしょ?逆に、支えられずに1人で突っ走れば、いずれ人じゃなくなっちゃうわよ。」
風鳴翼が、自分を人ではなく剣としようとしたように。
「そっか……じゃあ、翼さんが起きたら、いっぱい支えてあげなくっちゃね!」
ぐっと涙を抑え込み、顔を拭って笑顔を浮かべる。
「ええ、その為には、強くならないとね。守られてるだけじゃ、ダメだから。」
響だけでなく、自分にも向けてそう言った。
一方、夜中の洋館、グライダーを足場に飛来した人影が着地する。狙撃型のアームドギアでリリーを狙っていたあの少女だ。
グライダーから降りれば、それは背中と肩を覆うアーマーへと変化した。
「戻ったわよ、フィーネ。」
「……遅かったな。」
「偵察に行ってたのよ。」
そばかすの残る顔に不機嫌そうな表情を浮かべる彼女は、そう言いながらギアを解除。防弾ベストを着た、野戦服のような衣服を露わにし、こちらを見据える金髪の女、自分たちのリーダーであるフィーネにそう返した。
「偵察ね、貴方には彼女を連れてくるように言ったはずだけど。」
「無茶言わないで、私は狙撃手よ。」
こちらを見据えてくるフィーネにそう返す。
「あれ以上もたつけば、こっちが倒して回収しに行く前に風鳴弦十郎が来てた。」
「それまでに仕留めれば良かったでしょう。見ていたわよ。スナイパーが狙いを外すなんて。」
その言葉に舌打ちする。
「あの子について何か知ってるのかしら?アリシア。」
蛇のような鋭い瞳でこちらを見据えてくるフィーネ。その言葉に歯噛みするそばかすの少女、アリシア。
「知っているのね。」
「別に、詳しいことは。」
嘘だ。フィーネはそう感じ取った。
「まさか、貴方達の古巣かしら。」
「……まぁ、そんなところよ。」
「そう……詳しい話はまた今度聞かせてもらうわ.クリスが待ってるわよ。」
「えぇ……分かってる。」
そう言いながら、彼女はこの館に設置された、磔台の方へと向かって行った。
そこにはインナー姿で磔にされた、もう1人のフィーネの部下にして、彼女の相棒。雪音クリスの姿があった。
「……アリシア。」
「だいぶやつれてるわね、クリス。」
そう言いながら防弾チョッキを外し、夜戦服に手を掛け、ボタンを外していく。時期に彼女と同じインナー姿になれば、スパルタ兵の兜の刺青が見えた。
彼女は完全聖遺物、ネフシュタンの鎧を利用している。無限の再生能力と破格の耐久力を誇り、彼女達の纏うシンフォギアとは比べ物にならない出力を有すそれは、その代償として再生の際に彼女の体組織を巻き込み侵食する
よってこのように電撃で休眠状態にしてから摘出する必要があるのだ。
最も、半分は任務を失敗したクラスに対する罰という意味合いが込められている
この様子では、帰ってくる前にすでに電撃を浴びせられたらしい。
「大丈夫よ、ここからは、私がついてるから。」
そう言いながら、自分で拘束具を付けていく。手足に枷をつけてスイッチを入れれば、装置が枷につながる鎖を巻き取り、彼女はクリスと背中合わせになるように磔にされた.
「良いんだぜ?これはあたしの問題だ。お前が気にしなくても……」
「そう言うわけにもいかないわよ。相棒じゃない。」
自由な手首を回し、餌を求める雛鳥のように、彼女を求める手を探り当てて指を絡める
「あなたの為なら、私はこのザマエルのトリガーに何度だって指をかける。」
「お前があれば、どんな地獄だって楽勝さ。」
「2人とも揃ってるわね。さ、始めましょうか。」
フィーネは言う。世界から争いをなくすと。だから、その目的の為に今はこの苦痛を感受しよう。レバーが降ろされ、2人は降りかかる電撃に悲鳴をあげた。
痛みの中で繋がる、互いの手をしっかりと感じながら。
「なるほど、剣術を学びたい……というわけですね?」
「はい、今の私に足りないのはそれですから。」
朝、彼女は二課の本部にいる緒川の元を訪れていた
シンフォギアにはアームドギアと呼ばれる武器がある。彼女の場合、シースビットと剣がそれだ。だが彼女は夢の中の世界でも、この世界でも剣を扱った経験がない。
近接戦闘は相棒、イオの役目だったから。そんな自分が剣を手にすることになった
「皆さんの力になりたい、そう言ったら弦十郎さんから貴方を紹介されました.」
「なるほど、司令がですか。」
実は明朝に響と共に修行をつけてもらおうと弦十郎の家を訪れたのだ。だが、彼女の武器は剣、であればと弦十郎は、飛騨忍軍の技を受け継ぎ、翼にもいくつか技を授けた緒川のことを紹介していた。
「僕の修行は……少々厳しくいきますよ。」
「覚悟の上です!」
響も弦十郎の家でハードなトレーニングを積んでいるはずなのだ.負けてはいられない。
「では……ついてきてください。」
「ついていくって……どこへ?」
「ここでは修行ができませんからね。設備が整っている場所へ向かいます。」
「それって……」
にっこりと笑顔を浮かべて、緒川は言った
「はい、僕の生家、緒川邸です。」
リリーとアリシア、クリスと響次なら戦場での再会に向けて、彼らは準備を始めるのだった.
ninjaトレーニングルート。緒川さんの兄弟って細かい設定出てましたよね。
XDはまだイノセント・シスターまでしか履修できてないのであの2人が出てくるストーリーとかあれば教えて貰いたいです。