ジャズ好きパイロットの相棒、異世界にて歌う 作:月光舞詐称者姫
「デュランダル?」
「あぁ、敵が狙っていると思われる、我々二課が保有する完全聖遺物だ。」
「完全聖遺物っていうのは、響ちゃんの胸にある破片や、リリーちゃん達のペンダントとは違って、神話とかに語られてるような、損傷のない形を保った聖遺物のことよ。
因みに皆んなのは今みたいに適合する人間が歌うことでシンフォギアにしないと使えないけど、完全聖遺物なら一度起動すれば、誰でも好きな時に装備するだけで使うことができるの。」
あの女の子が装備してたネフシュタンの鎧がいい例ね。と了子が解説する。
「ま、とは言っても流石に代償はあるけどね.」
「代償?」
「強力な力には付き物なのよ。」
首を傾げた響に、伝説には良くあるものよ、と了子は言う。
「例えば魔剣ダインスレイフは、強力な力を得る代わりに、一度鞘から引き抜けば生き血を浴びせる。つまり誰かを切り捨てない限り鞘に収めることが出来ないという呪いが込められてるわ。
北欧神話の女神アンドヴァリの指輪はあらゆる物を黄金に変えられるけど持ち主に不幸をもたらす呪いがかけられてる。」
「なんか……怖いですね。」
了子の解説に、響はそんな感想を抱いた。
「ええ、危険な代物よ。だから丁寧に使わないといけないの。あぁ安心して、ガングニールにもセクエンスにも、そう言う逸話は無いから。」
「良かったぁ〜使う代わりにお前の心臓をよこせー!とか言われたらどうなっちゃうかと思いましたよ。」
「あぁでも、銃には一つあったわね。」
「ほえ?」
そう言いながら映し出されたのは、監視カメラに映った敵の狙撃型ギア奏者の姿。彼女が持つアームドギア、狙撃銃についてだ。
「悪魔ザミエルの魔弾と銃。もし彼女の聖遺物の由来がそれなら……まずいかもしれないわね。」
昔々、ある所にカスパールとマックスという2人の狩人がいました。カスパールは狩人としての名声を得るため、悪魔ザミエルと契約して力を得ていました。
しかし村一番の美人アガーテの結婚を賭けた大会を目前に、悪魔ザミエルは言います。
"契約の期限が迫っている。代償をよこせ"
でもカスパールは自分の命を捧げたくありません。ザミエルの力があればアガーテと結婚して更なる名声が手に入るのです。どうにかせねばと焦るカスパールの元にマックスが相談に訪れます
"大会目前のプレッシャーで力が出ない。何かいい方法はないか"
それを聞いたカスパールは閃きました。そうだ、契約の対価にマックスの命を差し出そう。
カスパールはマックスを森に誘い、そこでザミエルを呼び出します。ザミエルは2人に七発の魔弾を授け、山分けするように言います。2人はマックスが4、カスパールが3の魔弾を持つことで了承しました。
マックスは喜びます。これで自分の恋人、アガーテと結ばれることができると。それが、自分とアガーテの命を代償に作られた物であるとは知らずに。
「それで、2人はどうなったんですか?」
了子が語った、
「二人は三発ずつ、計六発魔弾を使って同点になるの。そのまま試合は延長戦、司会の領主は、空を飛ぶ鳩を撃ち抜くように言うわ。」
カスパールは魔弾を使い切った。だが、マックスにはまだ一発残ってる。
「そして、それこそが悪魔ザミエルの罠だった。」
放たれた弾丸はアガーテに迫る。だが魔除けの薔薇を持っていたアガーテからは幸運にも弾丸は外れ、代わりにカスパールを撃ち抜くのだった。
「ことの次第を正直に説明しまたカスパールは、アガーテからの陳情もあって、執行猶予付きの処分を受け、許された後にアガーテと結ばれることになるわ。」
二人を利用しようとしたカスパールは報いを受け、二人は結ばれめでたしめでたし。それがこの物語だ。
「へぇ……あれ?でも魔弾は使い切ったんですよね?だったら聖遺物に出来ないんじゃ……」
「ええ、魔弾はね。」
「ん?二人が授けられたのは魔弾だけなんじゃ……」
「……あれ?カスパールさんがマックスさんを生贄にしようとしたのは、契約延長のためなんですよね?
じゃあ、元々の栄光を約束する契約では何を授けたんです?」
気がついた響の言葉に、了子は頷く。
「ソロモン72柱とか、ルシファーとか、そういう高名な悪魔というわけでもなければ、銃というものが登場した後の比較的新しい時代の聖遺物。はっきり言ってガングニールや天羽々斬ほどの格はないと思うけど、」
裏を返せば、比較的新しい分現存している可能性は高い。
「もしこれがザミエルの銃なら、使用者に求められる代償はどれほどのものなんでしょうね。」
「なぁ、アリシア……」
「なに?クリス。」
体内に残留したネフシュタンの摘出を終えたクリスは、疲れた体にエネルギーを取り込むように食事をとりながら、それを向かいの席でただ眺めるアシリアに問いかけた。
「大丈夫なのかよ、その……」
「あぁ、これのこと?」
トントンと、右手に装備した弾丸のホルダーを指し示した。7つのホルダーは、うち3つが空欄となっている。
「大丈夫よ、人工臓器はフィーネに新調してもらったもの。食事できる頻度も増えたわ。」
武装国家バルベルデ。二人は、戦火の絶えない南米の地で出会った。
方や平和的なチャリティー活動の為に訪れてた両親を殺され、捕虜となったクリス。
方や幼馴染と一緒に誘拐され、この地まで売り飛ばされたアリシア。そう言う子供たちを集めて、兵士にして、戦力にする。それもただの兵士ではない。
聖遺物の力を兵器化し、国の力を不動のものとするための兵士にして実験台。ザミエルの魔銃の破片は使用に契約と代価を要求する特殊な聖遺物。破片を利用したギアを見に纏う兵士、コードネーム『魔弾の射手』は、代々その力をバルベルデの為に使ってきた。
授けられる弾丸は七発。使用すれば敵を撃滅する無双の力を得られるが、その代価として、一発撃つごとに、彼女の肉体から臓器が一つ減る
バルベルデにいた頃の任務で2度、クリスと共に、国から逃げ出す際に1発。アリシアの体からは、肝臓と、肺の片方、そして右足の肉と骨が消えている。バルベルデの粗悪な人口臓器でなく、フィーネに拾われた際に与えられたそれと、失った骨と肉の代わりにアリシアの皮に包まれた機械が無ければ、彼女は生きていない。
最も機械では完全に肝臓の喪失を補うことができず、食事は普段出来ず点滴で栄養を取っている。
「悪い……そんな身体で、」
「気にしないで良いのよ、フィーネもあれで壊れるようには作ってない。けど……」
ホルダーを手でなぞる表情は暗い
「四発目を使うことになる日が、近いかもしれないわね。」
次は何を持っていかれることやら。歴代の魔弾の射手達は、七発目を撃つと同時に、心臓を捧げられて死んでいったと言う。
「悪いわね、リリー。」
夢に見るあの世界の記憶では、次第に可愛い妹分のようになって行った少女にそう詫びる
「結局、この世界でも似たようなことになりそうよ。」
「ん?どうしたんだ、アリシア。」
「いいえクリス、なんでもないわ。」
目を閉じてそう呟いてから、彼女は再び、食事を楽しむクラスの表情を楽しむ顔を彼女へ向けた。
「デュランダル移送……ですか?」
「はい、二課の地下に安置されているデュランダルを、別の施設へと移設します」
そう言いながら、木刀と木刀をぶつけ合わせるのは緒川とリリー。シンフォギアは、戦いながら歌わないと出力が上がらない。つまり喋りながら戦うことは、歌いながら戦うシンフォギアの練習にも繋がる。喋る、剣を振るう、二つのことをバランスよくこなすのが、リリーの成長につながるのだ。
「無論、相手からすればデュランダル強奪のまたとない機会です。ネフシュタンの少女も、スナイパーのギア奏者も襲撃に来るでしょう。お二人には、その護衛をお願いしたいのです。」
「何もないに越したことはないけど……ねっ!」
「まだまだ太刀筋が甘いですね。」
「うきゃう!?」
隙をついたと思って振るった一撃は、呆気なく返されて彼女は何度目か分からない地面にキスをする羽目になるのだった。
前回次が決戦みたいな風に書いてましたが次がデュランダル争奪戦です。ごめんなさい。