この素晴らしい世界に祝福を!オールマイティ!   作:円卓騎士夫婦別姓

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次話からカズマさん視点です。


プロローグ

――魔王討伐から、一週間。――

 

 魔王軍の影が消え、祝賀が続くベルゼルグ。

 

 そこから二つ国境を跨いだ王国、リドル王国。

 出張先のその王国の研究室で(ちぎり)アイカは憂ていた。

 

 魔王は、どうやら倒されたらしい。

 幾度と無く幹部を葬ってきた、凄腕の冒険者に。

 

 それも、その冒険者は日本からの転生者らしく、更には、チート能力を持たずしてこの世に放り出されたんだそうで。

 

 ……すげー。

 

 すっっっっげーなマジで。

 

 私は、手に持っていた丸フラスコ――頭の中の音楽を色んなところに接続できるポーション入り(過去最高傑作)――をグビっと行きそうな勢いで、研究室のソファにどかっと腰を下ろす。

 

 だってあれだもんな、転生者だもんな。

 私と同じ。

 

 私なんて凄いよ。

 

 なんでも答え分かる能力、いやまあ流石に相当誇張だけどさ、そういう感じの能力貰って転生したのに……。

 

 ベルゼルグ王国研究所の助手……の、秘書だからな、私。

 

 秘書、秘書だって。

 

 私けっっこう頭良い自信あったんですけどね。

 

 なんか女神様に貰った能力もあるしさ、転生してきた時はもう……

 

 ……「あ〜! これ私、異世界インテリ無双生活来たわヒャッホーい‼」……

 

 ……ぐらいの感じで、小躍りさして貰ってたんですけどね。

 

 なんなんだろう、ここの連中皆優秀なんですよ。

 

 私だって、色々自分の能力だの脳みそだのフル稼働さして《不死(アンデッド)のポーション》とか作ったんですけどね?

 

 なーんでか……「それはダスティネス卿が思し召しでない」とか言われちゃってさ。

 

 私、出世できないんですって。

 

 ……は?

 

 クソ貴族がよ。

 知らねぇわボケが。

 

 思し召しじゃないじゃねんだよ、根拠を言えよ根拠を。

 胸だけ大貴族の癖して研究畑まで幅利かせて、しまいにゃ私の大発明をドブ溜りにぶち込んじゃったんだって、面白いよねホント。

 

 今度あれだ。

 なんかしら発明してアイツからあの憎たらしい両胸剥ぎ取ってやるか。

 うん、そうしよう。

 女としてワンランク落とす、価値を落とす。

 というか、そもそも私の方が胸ありそうなもんだけどな、どうなんだろ。

 

 

 ……とまあ、こんな感じで私は、異世界基準で測られる新鮮な地位の変遷に、逐一一喜一憂している。

 

 ……している、フリをしている。

 

 別に、誰かに何か隠すとかの目的があるわけではない。

 

 だってさ。

 

 つまんねぇんだもん、この世界。

 

 やってらんねぇよ、こうやって無理やり感情的になってる感じで波作んねぇとさ。

 

 ……この世界も元の世界も、本質はまっったく同じ。

 

 人間には感情があって欲があって、それのせいで人は意味を見出す。

 そして、そのせいで諍いが起こる。

 

 最初の拳が飛ぶと、あとは全自動で滅んでくわけだ。

 

 かったり〜い。

 

 マジで。

 

 人間なんてバカばっかだからなホント。

 

 なんでよ。 

 

 お話。

 

 お話できないの? お口が無いの? 

 

 お口が無いからそうやってグチャグチャグチャグチャ手出して問題解決することしか出来ないんですか?

 

 心底出来が悪いみたいでちゅねぇ……。

 

 ……勿論、頭の方が。

 

 空襲で子供が泣いてるの見過ごせる奴らの集団だからな、クソだよマジで。

 

 クソ、人間クソ。

 

 ダイナマイト爆破か何かしてブルドーザーで以下略だよ、マジで。

 

 もう街歩くだけで分かるしな、アホの集まりなのが。

 

 私が歩くだけで男の視線はみーんな私の胸、もしくは尻。

 女は顔見てムキってする。

 

 まぁ私可愛いしな、クソ美人だしな。

 

 ……キモイね、人間キモい。

 まじまじ見るやつもいるからな、潔くキモイわ。

 

 もうさ、整理整頓できないかな、人間。

 

 全人類スパコン脳みその方が、少なくとも私は暮らしやすいわ。

 少なくとも、私は。

 

 そうしたいな、そうさせてくださーい。

 まぁでもできねぇんだよな。終わってんだよな。

 

 

 

 ……あぁあ。

 

 

 

 ソファの背もたれに首を預けて私は、譫言も譫言な呟きを。

 

 

「……………………全能の力とか、無いもんかねぇ……」

 

 

 ……はっ。

 

 おもんないわ、撤回撤回。

 こんな無駄な行為にリソースを割いたのが恥ずかしいまであるわ。

 

 ……まあなんか、こんな事考えてないで別の発明でもするか。

 

 容姿端麗才色兼備、そんでチート有りでも、エリス銭無しだったらただのゴミ――

 

「――アンサー。」

 

 …………なぬ?

 

 私の《感知》が、……反応した?

 

 私は口角を研ぎ澄ませる。

 

 感知は――

 

 

「――存在します。」

 

 

 ……。

 

 

 私は、天を仰いだまま顔で両手を被った。

 

 

 

 ……………………っうっそぉ……。

 

 

 いやぁ、いや……え…………。

 

 

 …………ぇ嘘ぉ……。

 

 

 指の隙間から漏れて来る光を閉じ、私は考える。

 

 ……え?

 

 何? 

 

 どういうこと? ……どういうこと?

 

 あるんですか、全能。

 

 いやまあそもそも、全能なんて言葉がアホ過ぎというところがあるが、とりま今それは置いておいてだ。

 

 全能あるの?

 

 あるのに、世界ってまだこうなの?

 いや、ぃやいやいやいや。

 

 無いわ、流石に無い。

 私だけはちゃんと脳みそスパコンの自信あるからな、舐めんなよホント。

 

 可愛げのあるこのスパコンチート能力に向けて私は、ため息混じりでもう一度。

 

 

「全能を持つ能力者は、存在するんですか」

 

 

《感知》が応えて。

 

 

「………………だから……存在します」

 

 コイツ急に自我出してきやがったぞ、怖。

 

 

 …………いやまぁ、なんかなあ……。

 

 

 ホントに、全能ありそうですね、コレは。

 

 

 感知は使い勝手自体あんま良くないけども……嘘をつく事だけは、一回もなかったもんな。

 

 疲労の赴くまま瞼を閉じ、私は再び光を見る。

 

 ……というか、そうだとしたら。

 

 

 感知が指し示すまま、そうだとしたら。

 

 

 もし本当に、この世界に全能の能力者がいるとしたなら、その力は、誰が持ってる。

 

 ……誰が持っていて、何のために世界を放置している。

 

 そんなチート能力なら、きっと。

 

 誰の手も足も出ない最強の能力を持って、この世界に来た転生者で――

 

 

 ……………………。

 

 

 ……居る。

 

 

 居るじゃないか、心当たりが。

 

 日本から転生して来たのに、チート能力だけは何故か貰えずに来た――

 

 …………フリを、している奴が。

 

 私は、丸フラスコをコトンとデスクに置いて。

 

「サトウ、カズマ……」

 

 容姿端麗、才色兼備。

 

 オマケにチートの能力持ち。

 

 私は所謂、「持てる者」だ。

 

 

 ……人間なんて、クソだ。

 

 平和で楽しい世界なんて、人が作ろうとしても何処にもできやしないんだ。

 

 事実、魔王という共通敵が居なくなった途端に、ベルゼルグの外交は破綻しかけている。

 こうしてまた、違う国境線で殴り合いが起こるんだろう。

 敵が変わるだけで、本質は何も変わりやしない。

 

 この回帰は、いつ終わるのか。

 

 どの時代で、苦しむのは誰が最後で……。

 

 誰の手によって、終わるのか。

 

 ……。

 

 私は再び、忌むべきその名を唱えて。

 

「……サトウ、カズマ……!」

 

 

 違い無い。

 

 

 チート無しのフリをして、この狂った世界を肩肘張ってほっつき歩いてやがるサイコ野郎は。

 

 サトウカズマに、違い無かった。

 

 白衣を脱ぎ、型破りな行儀で私はデスクから書類を引き出す。

 

 退職願。

 

 こんな所で燻っている場合では無い。

 

 私は、「持てる者」なのだから。

 さっさとベルゼルグから抜けて、ここの国の科学技術の恩恵に与るなりなんなりで力をつけよう。

 

 

 私はつらつらと書類の必要項目を埋めて行ってから、書類とフラスコと白衣と共に、その研究室を出た。

 

 

 もしコイツ売ったら、いくらになんのかな。

 

 

 ――バタム。

 

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